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骨髄移植【こつずいいしょく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

骨髄移植
こつずいいしょく
bone marrow transplantation
骨髄は,血液成分の赤血球ならびに顆粒 (かりゅう) 球など,白血球を産生する場所である。この骨髄腫瘍 (しゅよう) ができたり,放射線や薬剤の影響で障害を受けたりすると,重篤な免疫不全や貧血状態となる。このようなとき,貧血や免疫機能を回復させるために骨髄の組織を直接,骨髄の中や静脈内に投与する治療法を骨髄移植という。これには大きく分けて,あらかじめ保存しておいた自己の骨髄を移植する自家骨髄移植と,HLA抗原が適応した他人から採取した骨髄を移植する同種骨髄移植がある。世界ではすでに1万例以上,日本でも 600例以上に実施されている。適応となる主な疾患再生不良性貧血,急性非リンパ球性白血病慢性骨髄性白血病などである。しかし骨髄移植の前に,腫瘍性の骨髄細胞を消失させるためにX線照射や6-MPなどを用いた化学療法,放射線療法を行なう必要がある。これは重い副作用がでるので,それに耐えるだけの体力がなければ行なえない。しかし,今まで治療が絶望視されていた疾患でも骨髄移植を行なうことによって抗癌剤を大量に投与できるようになり,その結果,治療成績も向上し,長期生存例も多く見られるようになった。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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朝日新聞掲載「キーワード」

骨髄移植
白血病や再生不良性貧血などで、血液を正常につくれなくなった患者の治療の一つ。血縁者や骨髄バンクに登録されたドナーから提供された骨髄液を患者に点滴し、中に含まれる造血幹細胞によって患者の血液をつくる力を取り戻す。移植には原則、HLA型(白血球の型)の一致が必要で、兄弟間で4分の1、他人では数百から数万分の1の確率で一致するとされる。
(2015-06-29 朝日新聞 朝刊 1道)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

こつずい‐いしょく【骨髄移植】
白血病などの治療のために、HLA抗原などの組織適合性が一致する提供者(ドナー)から採取した骨髄を、静脈から患者に注入する治療法。

出典:小学館
監修:松村明
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家庭医学館

こつずいいしょく【骨髄移植】
◎骨髄移植の方法と効力
◎骨髄移植を受けるのに適した時期
◎骨髄移植の副作用

◎骨髄移植(こつずいいしょく)の方法と効力
●骨髄移植とは
 がんの化学療法で、いちばんネックになるのは、白血球(はっけっきゅう)や血小板(けっしょうばん)が減少する副作用が出ることです。これは、骨の内部にあって血液成分をつくり出す造血組織である骨髄が、抗がん剤によって障害されるためです。これを骨髄毒性(こつずいどくせい)といいます。
 このような障害を避けるために考えられた治療法が骨髄移植で、とくに白血病の治療によい治療成績があがっています。
 骨髄移植には、つぎの3つの方法があります。
①同種骨髄移植(どうしゅこつずいいしょく)
 抗がん剤を大量に使用したり、放射線を全身に照射すると、骨髄のがん細胞とともに正常細胞までも破壊されます。そこで、患者さんの骨髄細胞を全滅させてから、他人の正常な骨髄細胞をもらって造血機能を回復しようとするのが、同種骨髄移植です。
 骨髄細胞を移植するには、ドナー(提供者)に全身麻酔(ますい)をかけて腰の骨(腸骨(ちょうこつ))から骨髄液(こつずいえき)を採取し、患者さんに点滴(てんてき)で注入します。すると、骨髄液中の幹細胞(かんさいぼう)(分化・成長して血球をつくり出すもとになる細胞)が血流にのり、骨髄に定着して増殖(ぞうしょく)を始め、正常な血球をつくる能力が回復されるのです。
 治療中は、白血球がなくなる時期が続き、感染の危険があるため、無菌室に入って厳重に管理されます。
 この同種骨髄移植は、白血病や悪性リンパ腫(しゅ)によく用いられ、早い時期に行なう治療では、約60%の人が治っています。
 移植反応(いしょくはんのう)の対策 骨髄細胞のつくり出す血液成分のうち、白血球(リンパ球や単球)には体外から入ってきた異物を攻撃するという免疫(めんえき)作用があります。移植された他人の骨髄でつくられたリンパ球は、患者さんの細胞組織を異物と認めて攻撃するため、移植反応(移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう))がおこります。重症の場合は死亡することもあります。
 これを防止するために、患者さんとドナーの間で、リンパ球の型(HLA)が合うことが重要です。
 この適合ドナーは、兄弟の間では4分の1の割合ですが、血縁関係のない他人同士では何百人から何万人に1人の割合になり、ドナーを見つけるのは困難な現状です。そのため、骨髄バンクが開設され、ドナーの登録を受け付けています。
②自家骨髄移植(じかこつずいいしょく)
 あらかじめ患者さん自身の骨髄を採取し、冷凍保存しておいて、大量の抗がん剤投与や放射線照射の後、体内に戻す方法が、自家骨髄移植です。
 他人の骨髄を使用しないので、免疫反応がおこらず、副作用のない利点がありますが、再発率が高くなる傾向があるので、予防策が研究されています。
 自家骨髄移植は、子どもの神経芽細胞腫(しんけいがさいぼうしゅ)や悪性リンパ腫の治療によく用いられます。ただ、採取した骨髄細胞の中に、もし、がん細胞がまじっているような場合、完全に取り除けるのかという問題も残されています。
③末梢血幹細胞移植(まっしょうけつかんさいぼういしょく)
 骨髄移植が有効な治療法であるのは、骨髄から採取した骨髄液に赤血球(せっけっきゅう)、白血球、血小板などの血球をつくり出すもとになる造血(ぞうけつ)幹細胞があるからです。しかし、同種骨髄移植では免疫反応がみられたり、自家骨髄移植ではがん細胞が混入している危険性があるので、幹細胞だけを抽出(ちゅうしゅつ)して移植できれば、大きな利点になります。
 一方、末梢血(血管を流れる血液)には、成熟した血球が流れていて、幹細胞はわずかしか含まれていません。
 ところが、化学療法後の骨髄回復期や、G‐CSFなどの造血因子を投与した後には、血中の幹細胞が大幅に増加することがわかってきました。この幹細胞を、あらかじめ患者さんの末梢血から採取して冷凍保存しておき、大量化学療法後に戻す自家末梢血幹細胞移植(じかまっしょうけつかんさいぼういしょく)が行なえるようになりました。
 この方法では、ドナーや無菌室を必要としません。造血機能の回復も早く、悪性リンパ腫、乳がん、子どもの神経芽細胞腫などに実績があがっています。
 また、他人の末梢血から、麻酔をすることもなく幹細胞を採取する、同種末梢血幹細胞移植(どうしゅまっしょうけつかんさいぼういしょく)も試みられています。
 さらに、新生児の分娩(ぶんべん)時に切り離される臍帯(さいたい)の中に幹細胞が大量に含まれていることがわかり、これを活用する方法も検討されています。

◎骨髄移植(こつずいいしょく)を受けるのに適した時期
 骨髄移植で治療成績をあげるには、病気の早い時期がよいとされます。
 急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病では、抗がん剤で白血病細胞を減少させて症状がみえなくなる時期を寛解期(かんかいき)といいます。最初の第1寛解期と再発後に再び症状が治まる第2寛解期がありますが、第1寛解期に骨髄移植するのがもっとも効果的とされます。
 慢性骨髄性白血病では慢性期で、診断後1年以内が効果的です。悪性リンパ腫は化学療法のみで治癒(ちゆ)する可能性が高いので、再発した場合に、早めに骨髄移植を行なうとよいでしょう。

◎骨髄移植(こつずいいしょく)の副作用
 骨髄移植では、白血病細胞を死滅させるために大量の抗がん剤や強い放射線が使用されるので、副作用もおこります。吐(は)き気(け)などの症状のほか、感染症、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)、出血性膀胱炎(しゅっけつせいぼうこうえん)、肝障害などの合併症や、免疫反応である移植片対宿主病がみられることがあります。かつては年齢があがるほど合併症もおこりやすかったのですが、現在では、副作用の治療法が進歩し、G‐CSFなどの白血球を増やす薬剤が開発されたため、45歳までなら良好な治療成績があがるようになっています。

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世界大百科事典 第2版

こつずいいしょく【骨髄移植 bone marrow transplantation】
重症の再生不良性貧血,白血病,先天性免疫不全症や,一部の遺伝性血液疾患など,骨髄機能が極端に病的になったものに健康な骨髄を移植して健康状態に回復させようとする治療法。移植にさきだって,病的細胞の根絶と移植骨髄に対する拒絶反応防止のため,患者は大量の化学療法と全身放射線照射を受ける。次いで,組織適合性の合致した提供者の主として腸骨の骨髄から採取された骨髄血を注入する(同種移植)。なお,骨髄に異常のない一部の進行癌の患者では,同様の処置により癌細胞の撲滅をはかったのち,あらかじめ凍結保存しておいた自身の骨髄血を注入する(自家移植)。

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大辞林 第三版

こつずいいしょく【骨髄移植】
白血病や再生不良性貧血など難治療の病気の患者に、提供者の正常な骨髄細胞を静脈内に注入して移植する治療法。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

骨髄移植
こつずいいしょく
bone marrow transplantation
骨髄細胞を用いた造血幹細胞移植。略称BMT。1950年代にアメリカのE・D・トーマスらは、イヌを対象とした多くの骨髄移植の研究を行った。イヌ主要組織適合抗原dog leukocyte antigen(DLA)を一致させ免疫抑制剤を使用すると、移植後に長期生存率が得られることが明らかになった。このような動物実験の成績をもとに、1959年には急性リンパ球性白血病の患者に全身放射線照射後、一卵性双生児同胞の骨髄が移植された結果、移植後2週で造血および臨床症状が完全に回復した。ヒトでも条件を整え骨髄移植を行えば成功することが判明し、以後、多くの血液悪性疾患の治癒を目ざす治療法として確立されてきた。
 骨髄提供者(ドナー)は自己、同胞、血縁者、非血縁者の場合がある。造血幹細胞移植一般にいえることであるが、患者と提供者のヒト白血球抗原human leukocyte antigen(HLA)の型が一致しているほうが治療成績がよい。患者と骨髄提供者のHLAが異なるほど、移植された骨髄が拒絶されやすく、また、移植片対宿主病graft versus host disease(GVHD)がおきやすい。
 HLAは両親それぞれから遺伝するので、同胞の間では4分の1の確率で合致することになる。したがって、同胞がいる場合はHLAを検査して合致する同胞を骨髄提供者に選択する。HLA一致の同胞がいない患者に骨髄を提供するために、非血縁者ドナー登録(骨髄バンク)が各国で設立されている。イギリスでは1975年に世界で初めての骨髄バンクが設立され、1986年には世界規模の国際骨髄ドナープログラムnational marrow donor program(NMDP)が開始された。日本では1992年(平成4)に骨髄移植推進財団による日本骨髄バンクJapan marrow donor program(JMDP)が設立され、HLAが一致した非血縁者から骨髄を提供する制度が整備されている。
 移植のために骨髄を採取する場合、通常は骨髄提供者に全身麻酔をかけ、腸骨に骨髄採取専用の穿刺(せんし)針を刺し、骨髄液を吸引する。骨髄移植に必要な細胞量は患者体重(キログラム)あたり2~3×108個とされる。実際には成人で500~1500ミリリットル程度の骨髄液が必要になる。[比留間潔]
『正岡徹編『骨髄移植の現況』(1991・日本医学館) ▽高久史麿編『骨髄移植マニュアル』(1996・中外医学社) ▽加藤俊一著『骨髄移植ガイドブック』(1996・日本医学館) ▽森下剛久・堀部敬三・森島泰雄他編『造血細胞移植マニュアル』第3版改訂新版(2004・日本医学館)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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