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食物連鎖【しょくもつれんさ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

食物連鎖
しょくもつれんさ
food chain
生態系内で食物エネルギーが,植物から動物というように食うか(捕食)食われるか(被食)を繰り返しながら,一連生物群を通じて移っていく関係。北極地方の生態系を研究したチャールズ・エルトンが食物連鎖の概念と原理を『動物生態学』Animal Ecology(1927)で明らかにした。食物連鎖の流れは一般に,緑色植物草食動物肉食動物へと連なり,生物遺体は微生物をはじめとする分解者によって無機塩などに分解され,それがまた植物に吸収されていく。現実の自然界では,このように 1本の食物連鎖が独立して存在することはきわめてまれで,互いにさまざまな生物種を食物とするため複雑に入り組んだネットワーク(食物網)を形成していることが多い。ある生物が食物連鎖のどの部分に属するかを,生態的地位(→ニッチ)と呼ぶ。
食物連鎖が人間の生活との関連で特に問題となるのは,連鎖を通じた有害物質の濃縮である。これは生物濃縮,食物連鎖濃縮,生物的増幅などと呼ばれる。有害物質が廃水などに混入して環境に排出されると,食物連鎖を通じて他の生物の体内に移るが,連鎖の段階(栄養段階)を経るごとに濃縮され,大きな被害をもたらす。たとえば水俣病のような水銀中毒は,工場廃水が海水を汚染し,プランクトンの体内に取り込まれた水銀がそれを食べた魚の体内に蓄積し,最終的に魚を食べたトリ,ネコ,ヒトなどに発症する。水銀汚染は沿岸にかぎった話ではない。魚のなかでも小型魚類を捕食するマグロなど食物連鎖の上位にある大型魚類には,生物濃縮によって特に高濃度の水銀汚染がみられる。
食物連鎖は人口爆発との関連でも問題になる。食物連鎖をエネルギーの流れからみると,ある場所に降り注ぐ太陽エネルギーのごく一部が緑色植物の光合成によって化学エネルギーに変えられ,それを草食動物が摂取する。草食動物も,光合成によって生まれたすべてのエネルギーを利用できるわけではなく,一部は未利用のまま終わる。このように,連鎖の各鎖ごとに利用できるエネルギーは減少し,栄養段階の上位に位置するものは,その下位のものより利用できるエネルギーの量が少なくなる。たとえば農作物をつくる場合,食物連鎖の段階を一つ上ると利用可能なエネルギーはおよそ 1桁減少するといわれる。そのため,食物連鎖の各段階の生物の個体数を図示すると,ピラミッド状になる。人類は肉食をするが,その肉をとる家畜は草に依存し,草は地中の土壌微生物に依存している。このようにみると,食物連鎖の最上部にいる人間は高い序列にいる存在というよりは,むしろ依存するものの多い,弱い存在といえなくもない。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

しょくもつ‐れんさ【食物連鎖】
自然界における生物が、食う食われるの関係で鎖状につながっていること。植物草食動物に、草食動物は肉食動物に食われる。

出典:小学館
監修:松村明
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編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

食物連鎖
 生物は諸種の生物を食べて生存しているが,それを食べるものと,食べられるものを順次つなげて示したもの.

出典:朝倉書店
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ダイビング用語集

食物連鎖
野生の生物たちはすべて食物を媒介とするひとつながりの生態系を持っている。プランクトンを食べる生物がいて、それを小魚が食べ、それを餌とするより大きな魚がいて…という具合。弱肉強食と表されることもあるこうした命のシステムのことを食物連鎖と表現する。

出典:ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』
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世界大百科事典 第2版

しょくもつれんさ【食物連鎖 food chain】
生物群集において,A種がB種に食われ,B種はC種に,C種はD種に食われるという,食う食われるの関係があるとき,A,B,C,Dは食物連鎖をなすといい,A→B→C→Dと表す。この語は,1927年にイギリスの動物生態学者C.S.エルトンが提唱した。彼は動物群集を解析するにあたって食物関係を重視したのであるが,これは生物群集の重要な基本構造であると現在でも考えられている。食物連鎖をたどって行くと,最終的には緑色植物に行きつく。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

しょくもつれんさ【食物連鎖】
自然界における食うものと食われるものとの一連の関係。 A という生物が B に、 B が C に、 C が D に捕食される場合、 A → B → C → D のように示す。連鎖の数は四か五が普通。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

食物連鎖
しょくもつれんさ
生物群集内のすべての生物は互いに食う・食われるの関係でつながっており、この一連の関係を食物連鎖という。北極圏のツンドラでは、シロクマ→キョクチギツネ→ライチョウ→トナカイゴケというつながりが成立し、これが一つの例である。初めて食物連鎖図を描いたのは、アメリカの生態学者シェルフォードV. E. Shelfordで1913年のことであるが、27年にイギリスの生態学者エルトンC. S. Eltonがこの分析を動物群集研究の基礎に置いてから、広く調べられるようになった。
 ある生物群集の食物連鎖を調べてみると、いくつもの食べる種といくつもの食べられる種とがそれぞれの段階に存在し、相互に関係しあい、しばしば食物網とよばれるように、複雑に入り組んだ関係図ができあがり、連鎖を調べ尽くすことは不可能でさえある。それにもかかわらず、連鎖にはいくつかの一般的特徴がみいだされる。第一には、ひと連なりの連鎖には普通四つか五つの段階があり、七つ以上の段階があるのはきわめてまれなことである。第二に、連鎖には、前例のように「生きた植物」から始まって動物へと連なる生食連鎖grazing food chainと、枯死植物→トビムシ類→クモ類→……のように生物遺体から始まる腐食連鎖detritus food chainの二つの基本型があるが、後者の場合も元をたどれば緑色植物に行き着くのである。緑色植物は太陽エネルギーを有機化合物の中に取り込むわけであるから「動物も太陽エネルギーを食べて生きている」ことがいえる。第三に、群集が違えば違った組合せの生物がいるが、種が違っても互いに似た関係が存在しているのである。ツンドラにすむキョクチギツネはウミガラスの卵を好んで食べ、冬にはシロクマの食べ残しで飢えをしのぎ、一方、熱帯アフリカのサバンナでは、マダラハイエナがダチョウの卵を食い荒らし、ライオンが殺したシマウマの残り物を食べているのが、その一つの例である。
 群集のなかで、ある種の生物が何をしているかということ、すなわち、その生物の生物的環境における位置、その食物ならびに敵に対する諸関係を「生態的地位」ecological nicheという。すべての生物は群集内で、ある生態的地位を獲得しなければ生存と繁栄を図ることができないわけで、群集内の調節の多くはこの地位を巡る種間の関係に基づいているのである。連鎖を理解するうえでの要点として、さらに、同じ種でも、違った区域に生息したり、発育期が違ったり、季節が違ったりすると、食物は異なって、必然的に違った生態的地位を占めることがある。晩秋に川の下流域で孵化(ふか)したアユはそのまま海に流れ下り、翌春までの稚魚期を海で過ごすが、この時期にはケンミジンコを摂食し、魚食魚に食べられる地位にある。それが川へ遡上(そじょう)し、そこを生息場所とする未成魚期や成魚期には、付着藻類を食べ、魚食魚や魚食性鳥類に捕食される地位に変わるのである。
 食物連鎖を量的な側面から分析する研究も当然行われている。複雑に入り組んだ連鎖を栄養段階で整理し、エネルギーの流れと物質循環に還元して、これらの動態を探るのもその一つの方法である。
 なお、食物連鎖に類似した用語は、食物環、食物網、食物錯雑などいくつかあるが、食物環は群集内の食物連鎖の全体を表し、後二者もほぼ同じ意味に使われる。[牧 岩男]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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