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類推【るいすい】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

類推
るいすい
analogy
意味上密接に結びついている形態素間の音形が異なる場合,意味の共通性にならって音形の面でも共通性をもつ語形をつくりだすことをいう。それにより音形と意味との関係を合理化し負担を軽くする心理作用である。普通,言語の形態上の不規則を規則化する作用をなす。最近東京で聞く「姉」の /'a˥ne/ というアクセントは「兄」 /'a˥ni/ への類推によって生じたものである。古い二段活用動詞が一段化した変化,たとえば「受クル」 (もとの連体形) が「受ケル」に変っているのは,クの発音がケに変った音韻変化ではなく,語幹を一つに統一しようとする類推作用による変化である。すなわち「受ケ (-) 」 (未然・連用・命令) と「受ク-」 (終止・連体・已然) の2つであったものを,同じ動詞の活用形は語幹も1種類にしようとし,頻度の高い連用形の語幹に統一したものである。類推による変化を類推変化といい,そうしてできた新しい語形を類推形という。音韻変化との違いは,(1) 音韻変化が意味に関係ない発音そのものの変化であるのに対し,類推変化は意味が関与する変化であること,(2) 音韻変化が起った単語は起る前の語形との歴史的同一性を保っている,すなわち同じ単語の姿が変ったものであるのに対し,類推変化はもとの単語に基づきながらも,別の新しい単語をつくりだすものであること,(3) 音韻変化は規則的に起るのが原則であるのに対し,類推変化は使用頻度の高い不規則形には作用しない場合があること,(4) 音韻変化が不規則形を生み出すのに対し,類推変化はそれを規則化させるのが普通であることなどである。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

るい‐すい【類推】
[名](スル)
類似の点をもとにして、他を推しはかること。「過去の事例から類推する」
論理学で、二つの事物の間に本質的な類似点があることを根拠にして、一方の事物がある性質をもつ場合に他方の事物もそれと同じ性質をもつであろうと推理すること。結論は蓋然的。類比推理。類比。比論。アナロジー。
ある語形または文法形式との関連から、本来の語形または文法形式とは別の新しい語形または文法形式を作ろうとする心理的な作用。この種の働きによって、多くの不規則な語形が規則化されていくことがある。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

るいすい【類推】
哲学上の概念については〈アナロジー〉の項で記すので,本項では法学上の類推について述べる。ある事項Aについて規定した法規は存在しないが,Aに類似した事項Bについては法規が存在するとき,その法規をAに適用することである。たとえば民法210条は,土地の所有者の囲繞(いによう)地通行権(〈袋地〉の項参照)を規定しているが,所有権者以外の土地利用権者については規定がない。このような場合に民法210条を後者についても適用することは類推適用である。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

類推
るいすい
analogy
analogical inference

類比またはアナロジーともいう。二つの物事に共通点があることを認めたうえで、一方の物事にみられるもう一つの性質が他方にもあるだろうと推論すること。たとえ話による推論といってもよい。たとえば、勤勉な外国人と友人になったあとで、その外国人と同じ国の、別の人に会ったとき、彼女も勤勉だろうと考えるのは、類推にたった考え方である。つまり、国籍が同じであるという共通点をもとにして、勤勉であるという性質も共通だろうと考えているからである。事実、この類推は当たることもあるだろうし、外れることもあるだろう。天気と人の感情とが変化しやすいことに目をつけ、天の背後に感情の激しい神がいるだろうと考えるのも類推だが、この類推は現代人の多くは支持しないだろう。このように、類推はかならずしもつねに頼りになる推論方法ではない。しかし、直観に恵まれた人の類推が大発見のきっかけになることもしばしばあることは、科学史などで報告されている。

[吉田夏彦]

言語学における類推

語形Aと、これに関係ある語形A′(たとえばAが「活用」した形、Aから派生した形、あるいは逆にAを生み出すもとになった形など)、および、Aとなんらかの点で類似した性質をもつ(たとえばAと同じ品詞に属する)語形Bがあるとする。このとき、Bについて、機能のうえでAに対するA′に相当する語形Xを求めるにあたり、形のうえでもこれに倣って、同じ要領を当てはめた語形B′をもってそのXとすること。すなわち、いわばA:A′=B:Xとして、X=B′と求めること。AとA′との間に語形、機能の両方について成り立っている関係が有力で一般性の高いものと認められる場合に、Bについてもこれと並行的な関係を成り立たせようとする心理が働く結果、このようにしてB′を求めるわけである。

 たとえば、「書ク」の命令形が「書ケ」であることをすでに知っている者が、「志ス」という動詞を初めて知り、その命令形は何かを考える場合を想定してみよう。この場合、書ク:書ケ=志ス:X、X=志セ、として求めるのが類推である。こうした類推は多くの場合は的(まと)を射ているのであり、言語の修得は類推があってこそ可能なのである。

 一方、実際には用いられていない形を類推によってつくってしまう場合もまたある。次のように分類してみよう。(1)Xを求めようとすること自体が的外れな場合(東北の人が「鳥コ」「鍋(なべ)コ」などの「コ」をとれば標準語形になることを知り、「タバコ」についても「タバ」とだけいってしまったというような場合)。(2)他の規則を適用してXを求めるべき場合(書ク:書ケに倣って「見ル」の命令形を「見レ」というような場合。「見ル」は一段活用だから規範的には「見ロ」というべきところ)。(3)Bが、当該の比例式適用の例外になっている場合(giveの過去形をgivedというような場合)。(4)Bに当該の比例式を適用すること自体に問題はないはずなのだが、たまたまB′が現実に用いられていない場合(「勉強」:「勉強スル」などに倣って、「科学」についても「科学スル」というなど)。

 このように既成の形ではない形を類推によってつくった場合、多くは誤用として斥(しりぞ)けられてしまうが、ときには、類推でつくられた形が力を得て新しい形として広く用いられるようになる場合もある。前出の(2)~(4)のなかでは、一般におそらく(4)がもっとも、類推形が受け入れられやすいであろう。また、Xに相当するものとして、B′以外にすでに他の形(古くからの形、規範的な形)B″が存する場合となにも存しない場合とがあるわけだが、概して、競合する形B″が存しない場合のほうが、類推形B′が力を得て定着しやすいと想像される。だが、B″が存しても、類推形B′がこれを駆逐したり、これと併存したりすることもある。たとえば「無理カラヌ」は前出(2)の例で、規範的には「無理ナラヌ」(=B″)というはずのところだが、「無理カラヌ」がすっかり定着している。なお、(4)の特別な場合として、ある語の派生形のようにみえる語形があって、派生のもとになる形に相当するものがないとき、前者から後者を逆に類推でつくりだす場合があり(たとえば名詞typewriterから動詞typewriteをつくる)、これをとくに逆形成back-formationとよんでいる。

 ある言語現象が、類推の比例式が成り立つ状態にすでにある場合、それはかなり安定した状態といえ、類推の成り立たない状態へと言語変化がおこる可能性は一般に小さい。一方、類推の比例式が成り立たない状態にある場合、成り立つ状態への変化がおこることはしばしばある。あるいは、ある種の比例式が成り立っていても、統一性をさらに強める別の比例式が成り立つ状態へと変化することもある(日本語のかつての一段動詞、二段動詞がともに一段動詞になったのもその種の現象とみなせる)。このように類推という心理作用は、言語の状態を保持する要因となる場合も、言語変化を促す要因となる場合もあるが、いずれにせよ、一般にその言語体系(の少なくとも一部分)における統一性を強める要因として働く。

 以上、語形について説明してきたが、構文、表記、発音などに関しても類推とみなしうる現象はよく見受けられる。

[菊地康人]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

るい‐すい【類推】
〘名〙
① 同じたぐいの事、または類似の点をもとにして他の事を推しはかること。アナロジー。類測。
※舎密開宗(1837‐47)内「初学一々製し試ること能はず薬局所鬻の鉛丹、鉛黄、銀密陀を観て類推すべし」 〔漢書‐終軍伝〕
② 論理学で、二つの物事の間のある点の類似性から、他の点での類似性を推理すること。アナロジー。類比。類比推理。
③ 言語学で、ある語形や文法形式が変化する際の要因として、何らかの点で類似があり、しかも勢力のある他の語の語形や文法形式がモデルになること。たとえば、四段活用の可能動詞「書ける・読める」などへの類推で、「見る」「食べる」などに可能の助動詞「られる」のついた「見られる」「食べられる」が、「見れる」「食べれる」と変化したりする場合。その変化を類推変化、変化して生じた形を類推形という。

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