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隠居【いんきょ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

隠居
いんきょ
本来の意味は官職を退いて自宅に居すること。言葉は平安時代からあったが,戸主が生存中に家督,財産を相続人に譲渡することを隠居と称するのは室町時代に始り,鎌倉時代に法制上の問題となった。江戸時代の武士の隠居には願い出によるものと刑罰によるものとがあったが,前者には老衰 (70歳以上) と病気との2種の理由が認められた。明治民法においては,生きているうちに戸主権家督相続人のために放棄する行為を隠居とし,戸主が 60歳以上であること,および相続人をあらかじめ承認しておくことが規定されていた。こうした法律で規定されたような隠居とはに,広く行われてきた隠居制による家族形態も一般的である。

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デジタル大辞泉

いん‐きょ【隠居】
[名](スル)
官職・家業などから離れて、静かに暮らすこと。また、その人。民法旧規定では、戸主生前に家督を相続人に譲ることをいう。「社長のポストを譲って隠居する」「御隠居さん」
俗世を離れて、山野に隠れ住むこと。また、その人。
江戸時代の刑罰の一。公家武家で、不行跡などを理由に当主地位を退かせ、俸禄をその子孫に譲渡させた。

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世界大百科事典 第2版

いんきょ【隠居】
煩雑な社会を逃れて山野に隠棲すること,官位を捨て家督を次代に譲って社会生活から遠ざかることを意味する。平安時代の貴族社会にあって隠居は退官を意味したが,武家社会では家督相続など家のあり方をあらわす重要な慣行となった。江戸時代の武家社会では,隠居と家督相続が同時に行われるのが普通である。隠居の契機は相続人の婚姻や,隠居人の年齢的肉体的諸条件による場合が多い。また江戸時代では公家・武家の不行跡者にたいする刑罰の一種で,不行跡者を現在の地位から強制的に退隠させ,法体させた場合も隠居と称されている。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

いんきょ【隠居】
スル
勤め・事業などの公の仕事を退いてのんびりと暮らすこと。また、その人。 楽- 店を息子にまかせて-する
民法旧規定で、戸主が生存中に家督を譲ること。
「隠居差控」の略。
世俗を逃れて山野などに閑居すること。 城南ぜいなんの茅宮に閑寂を耕してぞ-し給ひける/太平記 35

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

隠居
いんきょ
家長が家長権、つまり家長としての地位、権限などを息子など継承者に譲渡して退隠の状態に入り、あわせて村落生活でも「家」の代表を次代に引き継ぐこと。明治民法では、戸主が生前に戸主権を家督相続人に譲ることをさし、諸種の規定を設けていた。隠居の語意は「隠れて居る」ということであったが、その内容は時代、地域や階層によってさまざまな展開を示した。平安時代の公家(くげ)社会では隠居は致仕退官を意味した。
 隠居をもって家督の譲渡をさすようになったのは戦国時代のことで、武将の間では家督を嫡子に譲り、自らは若干の財産を保留して退隠する風潮が広まった。この風は江戸時代の武家社会にも伝えられ、嫡子が成人妻帯して家長たるにふさわしい格式を備えると、相続と隠居をあわせ行った。別に罪科により家長権を剥奪(はくだつ)して隠居させる法もみられた。また町人社会には壮年の間に「若隠居」して、以後風流な生活を楽しむのを人生の理想とする傾向が生じた。それは「楽隠居」を形成し、これがしだいに隠居の一般通念となっていった。
 村落社会では現在も全国にわたり多様な隠居が認められる。とくに隠居者の生活はその居住、食事、経済などをめぐってさまざまである。たとえば隠居者の居所を取り上げても、隠居は同居隠居、別居隠居、分住隠居と3大別される。これは居所について、隠居者と継承者が屋棟(やむね)を同じくするかどうかによる分類である。なかでも別居隠居が隠居の主体をなしているが、これにも、隠居者夫婦だけが別棟の隠居屋に出る単独別居、継承者夫婦以外の家族員、つまり弟妹などを連れて出る家族別居があり、さらに長男の成人、結婚に際して次男以下を伴って隠居別居し、やがて隠居屋をもって次男以下の分家にあてる隠居分家の3種がみられる。ついで分住隠居とは、隠居に際して父親は本家に、母親は分家に分かれ住み、その後父母の葬式や年忌なども本分家別々にするものである。
 別居隠居ではしばしば食事、経済も別になり、一家のなかに複数の世帯を形成する。それは家族をもって世代別の居住を理想とする観念に基づくもので、ひいては夫婦家族(核家族)中心の家族構成をとるに至り、「家」の複世帯制を導くといえる。このような観念に支えられた隠居慣行は、福島県以南の太平洋岸各地、とくに伊豆諸島や三重県南部、紀伊半島、ついで瀬戸内海地方や四国、九州地方の各地に分布している。これらの地域はまた「末子相続」の慣行と重複する所も少なくなく、あわせて日本の家族慣行に独特な光彩を放っている。[竹田 旦]
『穂積陳重著『隠居論』(1915・有斐閣) ▽竹田旦編『大間知篤三著作集 第1巻』(1975・未来社) ▽竹田旦著『民俗慣行としての隠居の研究』(1964・未来社) ▽竹田旦著『「家」をめぐる民俗研究』(1970・弘文堂)』

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精選版 日本国語大辞典

いん‐きょ【隠居】
〘名〙
① (━する) 世の中のわずらわしさを避けて山野など閑静な所に引きこもって暮らすこと。また、その人。隠棲。閑居。楽隠居。
※続日本紀‐延暦二年(783)三月丙申「田麻呂、〈略〉十四年宥罪徴還隠居蜷淵山中、不時事
※今昔(1120頃か)一三「只隠居を好む心のみ有り」 〔論語‐季氏〕
② (━する) 官を辞し、世間での立場を退き、または家督を譲って世の中から遠ざかって暮らすこと。また、その人。また、一般的に、家長が生存中に、自分の自由意志によって、その権利を相続人に譲ること。また、その人。
※九暦‐九暦抄・天徳三年(959)一二月一四日「遣殿上諸衛佐等、令記京中隠居高年等之員、為恩給云々」
※浮世草子・世間胸算用(1692)四「されば今迄は惣領どのに隠居(インキョ)したまへども、二男の家をもたれければ、又気を替て、そこへ隠居の望み」
③ 表舞台から去ること。身をかくすこと。
※吾妻鏡‐文治二年(1186)三月一四日「前備前守源行家・前伊予守源義経等、姧心日積、謀逆露顕。逐於都城外、亡命山沢。隠居之所粗有其聞
※浮世草子・西鶴織留(1694)一「母親、隠居(インキョ)の戸をあけて下女をおこし」
⑤ 江戸時代、公家または士分の者に科した刑の一つ。不行跡や取締不十分などを理由に、その地位を退かせ、その食祿をその子孫に譲らせること。
※わらんべ草(1660)五「大倉彌太郎虎明〈略〉寛文元年、十一月、隠居被仰付、同十九日、法躰也」
⑥ 老人。老人を呼ぶ場合、また老人の自称としても用いる。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「こっちはねむくってならねへ。隠居(インキョ)さんこそ寝倦(ねあき)なはるから、夜の明るのを待兼なはるけれど」
⑦ 江戸時代、江戸小伝馬町の牢屋内には囚人達の私的な役人がいたが、そのうち官から命ぜられないで囚人たちの間で内々に決めた役人の名称。主要な牢内役人を退いた者を何々隠居などと呼んで優遇した(たとえば、大隠居、若隠居、隠居並)が、そのほか元入牢した際、名主をして牢法を心得ている者を「隅の隠居」、雪隠(せっちん)、すなわち便所への道にいる者を「つめ(雪隠のこと)の隠居」と呼ぶような例もある。
※歌舞伎・小袖曾我薊色縫(十六夜清心)(1859)序幕「(牢へ)行きゃア隠居と立てられて、見舞の初穂を喰ふ株だが」

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かくれ‐い ‥ゐ【隠居】
〘名〙 隠れていること。また、その所。
※雅兼集(1135頃)「隠れゐの木くれの月のもるのみや紅葉散る夜のとりどころなる」

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旺文社日本史事典 三訂版

隠居
いんきょ
家長が家督権・財産権を相続人に譲り隠退すること
隠居の称は室町時代以後らしい。江戸時代,公家・武士には願出隠居,強制的な罪科隠居の別があり,庶民間では安逸のため,楽隠居する風も生じた。

出典:旺文社日本史事典 三訂版
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