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酒石酸【しゅせきさん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

酒石酸
しゅせきさん
tartaric acid
2個の不斉炭素原子をもつジカルボン酸で,化学式は HOOC*CH(OH)*CH(OH)COOH (*印は不斉炭素原子) 。 L- ,D- およびメソ酒石酸の3種の異性体が存在する。ワインから L- 酒石酸が発見されて以来,立体化学上重要な発見がこの化合物を中心になされた。つまり L.パスツールによる DL- 酒石酸の光学分割とメソ酒石酸の発見,J.ベイブゥートらのX線回折による絶対配置の決定と相対的立体配置の相関関係の確立などである。L-酒石酸は柱状晶で,融点 170℃, (水) 。 D- 酒石酸の物理定数および種々の化学的性質は L- 酒石酸に等しく,ただ旋光度の値の符号が逆なだけである。

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デジタル大辞泉

しゅせき‐さん【酒石酸】
ブドウなどの果実に存在する有機二塩基酸無色の柱状結晶で、水溶液には快い酸味がある。清涼飲料水や製菓、染色などに用いる。化学式C4H6O6

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栄養・生化学辞典

酒石酸
 C4H6O6(mw150.09).(CH(OH)COOH)2.ブドウに多く含まれる酸.

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世界大百科事典 第2版

しゅせきさん【酒石酸 tartaric acid】
ジヒドロキシコハク酸とも呼ばれるカルボン酸。酒石酸は化学の発展に寄与した点でも,その歴史は興味深いものがある。以下にその足跡をたどってみる。 これといって大きな化学工業のなかった近代初期までの時代に,醸造業は化学の発展に大きなつながりをもっていた。ブドウ酒製造の際の副生物である酒石酸とその塩は,当時大量に純粋なものが得られる数少ない物質の一つであった。1769年,K.W.シェーレによってブドウ酒中からL‐酒石酸(右旋性)が発見された。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

しゅせきさん【酒石酸】
二個のヒドロキシル基をもつ炭素数四の直鎖状ジカルボン酸。化学式 C4H6O6 三種の光学異性体がある。酒石からつくられる無色または白色の結晶で水によく溶ける。爽快な酸味があり、清涼飲料に用いるほか、染色・食品工業などに広く利用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

酒石酸
しゅせきさん
tartaric acid
ヒドロキシカルボン酸の一つ。2,3-ジヒドロキシコハク酸ともいう。化学式はC4H6O6、分子量150.9である。ワインをつくる際に沈殿する酒石に含まれているので、この名が与えられた。2個の不斉(ふせい)炭素原子をもつが、それぞれの不斉炭素原子が同じ種類の置換基(H、OH、COOH)をもっているので、立体異性体は3種類しかない()。すなわち、右旋性の(R,R)-酒石酸、左旋性の(S,S)-酒石酸、光学活性をもたない(R,S)-酒石酸である。(R,S)-酒石酸はメソ酒石酸ともよばれる。メソmeso異性体は「不斉炭素原子をもつが旋光性(光学活性)を示さない異性体」をさす名称である。メソ体では二つの不斉炭素原子に結合している3種の置換基がすべて正反対の位置にあって、分子が対称中心をもっているので旋光性を示さない。1974年にIUPAC暫定命名法が決まる以前は、(R,R)-酒石酸はL-酒石酸、(S,S)-酒石酸はD-酒石酸と命名されていて、現在でもDとLを使う命名法も使われている。(R,R)-酒石酸と(S,S)-酒石酸の等量混合物であるラセミ体は、光学活性をもたない別の結晶形をとり、ラセミ酸racemic acid(ブドウ酸)ともよばれる。「旋光性のない光学異性体等量混合物」をさして一般に使われている「ラセミ体」の語源はこのラセミ酸に由来する。
 天然に存在するのは、(R,R)-酒石酸が主であり、遊離の酸、カルシウム塩およびカリウム塩として広く植物界に分布している。(R,R)-酒石酸は1769年スウェーデンのシェーレにより発見され、その後1822年にはラセミ体のブドウ酸が発見された。さらに1848年から1853年の間にフランスのパスツールが光学活性についての一連の研究を発表し、ラセミ体を光学分割すると、(R,R)-酒石酸のほかに天然に存在しない左旋性の(S,S)-酒石酸が得られることや、光学分割できないメソ酒石酸が存在することが知られた。
 ブドウやワインに含まれていて、ワイン製造の際に得られる酒石は酒石酸水素カリウムを主成分とする。これを精製して(R,R)-酒石酸がつくられる。このほかにマレイン酸を原料とする製法が知られている。食品添加物として認められていて、清涼飲料水、果汁、キャンディー、ゼリー、ジャム、ソースなどの酸味料としてクエン酸、リンゴ酸などとともに用いられている。このほかに染料工業、写真、有機合成原料などに用いられる。[廣田 穰・末沢裕子]

L-酒石酸

融点168~170℃、比重1.76、比旋光度+11.98°。水によく溶け、エタノール(エチルアルコール)にもかなり溶けるが、エーテルにはほとんど溶けない。加熱すると分解して、一酸化炭素、二酸化炭素、アセトン、酢酸、ピルビン酸などを生ずる。

D-酒石酸

比旋光度の符号が反対で、-11.98°である点を除くと、性質はL-酒石酸と同じである。

メソ酒石酸

融点140℃、比重1.67(一水和物)。普通、一水和物として存在するが、加熱すると結晶水を失い無水和物となる。光学活性は示さない。[廣田 穰・末沢裕子]

ブドウ酸

融点206℃、比重1.697(一水和物)。水から結晶させると一水和物が得られるが、加熱すると100℃ぐらいで結晶水を失い無水和物となる。光学活性は示さない。[廣田 穰・末沢裕子]

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精選版 日本国語大辞典

しゅせき‐さん【酒石酸】
〘名〙 オキシカルボン酸の一つ。化学式 C4H6O6 D‐酒石酸、L‐酒石酸、ブドウ酸、メソ酒石酸の四種の光学異性体があるが、ふつうにはL‐酒石酸をさす。単斜晶系柱状結晶。植物の果実などに含まれ、広く存在する。清涼飲料水・シロップ・ベーキング‐パウダーなどの原料、マスキング剤、沸騰散などに用いられる。ジヒドロキシコハク酸。〔泰西方鑑(1829‐34)〕

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化学辞典 第2版

酒石酸
シュセキサン
tartaric acid

2,3-dihydroxybutanedioic acid.C4H6O6(150.09).2個の不斉炭素原子をもち,右旋性のL-酒石酸(2R,3R)と,左旋性のD-酒石酸(2S,3S)とがある.これらの対掌体のラセミ化合物はブドウ酸ともいう.また,光学不活性なメソ酒石酸(2RS,3SR)も知られている.普通,単に酒石酸というときはL-酒石酸をさす.

L-酒石酸:天然には,遊離の酸あるいはカルシウム塩,カリウム塩,およびマグネシウム塩として,ブドウ,そのほか果実中に広く存在する.このものは酒石(tartar,ブドウ酒の発酵中にできる酒石酸水素カリウム)から製造されるのでこの名称がある.酒石から難溶性のカルシウム塩として取り出し,これを酸で分解すると生じる.無色の柱状結晶.融点170 ℃.1.7598.+12.0°(水).pK1 2.93,pK2 4.23.水100 g に対する溶解度は139 g(20 ℃),無水エタノールでは20.4 g(15 ℃).アセトンに可溶,クロロホルムに不溶.熱すると二酸化炭素,一酸化炭素を発生して炭化する.また,塩酸や希硫酸,あるいは30% 水酸化ナトリウム溶液と煮沸すると,DLおよびメソ酒石酸になる.清涼飲料水などの酸味剤,染色,めっきなどに用いられる.【D-酒石酸:水溶液中で左旋性-12.0°(水)であるほか,物理的および化学的性質はL-酒石酸とまったく同じ.一部の植物中に存在する.ブドウ酸の分割によって得られる.【】ブドウ酸:ラセミ酸,パラ酒石酸ともいう.フマル酸を過マンガン酸カリウムで酸化するか,マンニトールを硝酸で酸化すると得られる.一水和物は10 ℃ で結晶水を失い無水物となり,206 ℃ で融解(分解)する.旋光性はない.水100 g に対する溶解度は20.6 g.カルシウム,ストロンチウムの定量試薬に用いられる.[CAS 133-37-9]【】メソ酒石酸:マレイン酸を過マンガン酸カリウムで酸化すると得られる.無水物は融点140 ℃.一水和物は板状結晶.1.666.水100 g に対する溶解度は125 g(20 ℃).pK1 3.11,pK2 4.80.水,塩酸と加熱するかアルカリと処理すると一部ブドウ酸になる.光学活性を示さない.水素カリウム塩は冷水にも溶けやすいので,ほかの異性体から容易に分離できる.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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