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通過儀礼【つうかぎれい】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

通過儀礼
つうかぎれい
rites de passage
フランスの人類・民俗学者 A.ファン・ヘネップの提唱した用語。人間の生涯における誕生,成人,結婚,死亡などの各段階を通過する際に行われる儀礼で,ある社会的地位や役割から他のそれに変ることを保障する意味をもつ。これらの儀礼は一般に共通の特徴をもち,たとえば,成年式では,儀礼を受ける者は集団から限定され,一定期間隔離されて,生と死の葛藤と生の勝利などが象徴的に表現される祭礼が行われ,その後新しい衣服や名前が与えられるのが通例である。このような儀礼は,古代文化の王位継承の儀礼における「死と再生」を主題とするものに原型がみられるといわれている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

つうか‐ぎれい〔ツウクワ‐〕【通過儀礼】
人が一生のうちに経験する、誕生・成年・結婚・死亡など、年齢的に重要な節目にあたって行われる儀礼。→イニシエーション
(比喩的に)その集団に入る者が、必ず経験しなくてはならない事柄。「新入生の球拾いは、我が部の通過儀礼だ」

出典:小学館
監修:松村明
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日本文化いろは事典

通過儀礼
日本には産湯や七五三、結婚の習俗、長寿の祝いなど、古来から続く通過儀礼があります。しかし、人々の意識、社会構造などの変化と共に、その多くが 廃れつつあるのも事実です。そんな中、今でも根強く残る儀礼もいくつか存在します。お宮参りや七五三で晴れ着に身を包み、神社へお参りに行くのは今でも一 般的ですし、厄年のお祓いに行く人も途絶える気配はありません。これらの通過儀礼の核の部分には「子供が無事に育ち、長生きできるように」のような人々の想い、願いがあります。私たちの身近にころがっている儀礼の意義を知れば、数々ある日本のしきたりをわずらわしいものと思わなくなるかもしれません。日本文化いろは事典では、通過儀礼を 「い」特徴、「ろ」起源・由来、「は」方法・行事という内容でご紹介しています。

出典:シナジーマーティング(株)

世界大百科事典 第2版

つうかぎれい【通過儀礼 rites de passage[フランス]】
人の一生には,誕生,命名,成人,結婚,死などいくつかの節目があるが,こうした節目は,個人が生活する社会内での身分の変化と新しい役割の獲得を意味している。そのためいかなる社会でも,人生の節目の通過に際して,その平安を保障し新しい身分への移行を公示する目的で,それに応じた儀礼を行っている。狭義には,このような個人の成長過程にともなって行われる人生儀礼のことを通過儀礼と呼ぶことが多い。広義には,ある場所から他の場所への通過(川を渡る場合や村を通るときなど)や,国王や族長の戴冠や就任(身分の変化)などに際して行われる儀礼も通過儀礼のなかに含まれる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

つうかぎれい【通過儀礼】
民俗学者ファン=ヘネップの用語で、ある状態から別の状態へ移行する際に行われる儀礼。特に、人の一生における誕生・成人・結婚・死などの際に執り行われる儀礼をいう。 → イニシエーション

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

通過儀礼
つうかぎれい
les rites de passageフランス語
人の一生は、誕生、命名、入学、成人、就職、結婚、還暦、死など、いくつかの節(ふし)からなっている。こうした人生における節は、個人が属する集団内での身分の変化と新しい役割の獲得を意味している。そのため、いかなる社会でも、人生の節の通過に際して、それぞれの節に課された条件を満たす一連の儀礼を行っている。このような人生の節に伴う儀礼を一般に通過儀礼とよぶが、個人の成長過程に行われる儀礼のみが通過儀礼ではなく、ある場所から他の場所への空間的通過や生活条件の変化、宗教的集団や世俗的集団から他の集団への移行などに際して行われる儀礼も通過儀礼である。したがって、村の少年たちが若者組へ入るときの儀礼、秘密結社へのイニシエーションinitiation、王や首長などの就任式なども通過儀礼と考えてよい。[綾部恒雄]

通過儀礼の過程

通過儀礼ということばを初めて用いたのは、オランダの民族学者でフランスで活躍したファン・ヘネップである。通過儀礼にも比較的単純なものから複雑なものまでいろいろあるが、一般には儀礼の過程がいくつかの段階に分けられていることが多い。ファン・ヘネップは、もっともよくみられる通過儀礼の区分は、分離の儀礼rites de sparation、過渡の儀礼rites de marge、および統合の儀礼rites d'agrgationの3区分であると述べている。第一段階の分離の儀礼は、個人がそれまであった状態からの分離を象徴する形で行われる。旅に出たり、若者宿に入ったり、死を象徴する行為を伴ったりするのがそれである。たとえば、日本の嫁入り婚で、「出立(でた)ちの儀礼」のあと、娘の使っていた茶碗(ちゃわん)を割ったり、屋敷の入口に架かっている橋を落としてしまったこと、オーストラリアのカラジェリ人の成年式で、若者がホルドへの成員から儀礼的な別れの涕泣(ていきゅう)を受けて旅に出ることなどは、これまでの関係からの分離を意味していた。インドのトダ人には、女が妊娠すると、5か月目に「村ばなれ」とよばれる儀礼があり、トダの社会的生活の中心である聖なる産業である酪農から儀礼的に分離され、別小屋に住んだ。第二段階の過渡の儀礼は、個人がすでにこれまでの状態にはなく、また新たな状態にもなっていない過渡的無限定な状態にあることを示している。過渡儀礼では、きたるべき新しい生活に対処するための学習や修行に努めることが多い。カラジェリ人ではこの儀礼の間中、無言の行で、身ぶりによってすべてを表現する。こうした無言の行のうちに、過渡期の境界儀礼としての無限定状態が象徴されている。また、過渡儀礼においては、男の女装、女の男装という中性化、司祭による聖なる王の罵倒(ばとう)という価値の転換、胎児化を象徴する始原回帰的行動など、過渡的不安定を示す行動が観察される。死者が出た場合の服喪という現象も、遺(のこ)された者たちのための過渡期であり、彼らは分離儀礼によって過渡期に入り、この期間の終わりに「喪明けの儀礼」を行って一般社会に再統合されるのである。第三段階の統合の儀礼は、分離儀礼と過渡儀礼を終えた個人が新しい状態となって社会へ迎え入れられる儀礼であり、一般に大規模な祝祭が行われる。日本の嫁入り婚における「披露」「親子固めの杯(さかずき)」「床入りの儀」などがこれに相当し、これらの統合儀礼が終了することによって、嫁は夫側の家族の一員として統合されることになる。日本では死人が出ると、その近親者がみな穢(けがれ)の影響を受けるとする考え方が広く行き渡っていた。こうした状態を忌みとよぶが、元の生活へ戻るために、死の穢をぬぐい落とす行為がいろいろと行われた。たとえば、不幸のときには生臭物(なまぐさもの)を食べないが、葬後3日目とか7日目などに生臭物を食べて平常に戻るという精進ばらいの儀礼なども統合儀礼の一種である。アフリカのンデンブ人の即位式では、首長となって村に帰ってくることが統合儀礼を意味していた。このように通過儀礼は、一つの典型的な儀礼としては分離、過渡、統合という過程をたどるが、念入りな儀礼になると、過渡儀礼のなかにさらに分離、過渡、統合という三つの通過儀礼が観察されるものもある。[綾部恒雄]

通過儀礼理論の展開

通過儀礼の上記にみられるような性格に対して、チャプルE. D. ChappleとクーンC. S. Coonは強化儀礼というカテゴリーを設け、それまでのある状態から他の状態へ移行する個人にとっての危機を克服し、平安を保障する目的で行われるものを通過儀礼とし、季節の変化とか伝染病の予防など、集団にとって一つの危機を克服するために行われるものを強化儀礼として区別した。また、グラックマンは、通過儀礼を、個人の身分の変化に伴う社会関係のバランスの破綻(はたん)から生まれる社会的不安定を避ける機能をもつものとしてとらえている。V・ターナーによる無構造・無体制の移行期にある集団としての「コミュニタス」論は、ファン・ヘネップの通過儀礼における「過渡」の概念を発展させ、その無限定的属性から、象徴論的に儀礼の本質に迫ろうとしたものである。[綾部恒雄]
『ファン・ヘネップ著、綾部恒雄・綾部裕子訳『通過儀礼』(1977・弘文堂)』

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精選版 日本国語大辞典

つうか‐ぎれい ツウクヮ‥【通過儀礼】
〘名〙 (rite de passage の訳語) 人が生まれてから死ぬまでに経過する、誕生、成人、結婚、死亡などに伴う儀礼。

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