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読本【よみほん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

読本
よみほん
江戸時代の小説一種。絵を中心とする草双紙に対して「を読む本」という前期読本と後期読本とに分けられる。前期読本は,寛延天明 (1748~89) 期に上方で行われたもので,中国の白話小説の翻案小説。和漢混交文雅文で書かれ,短編が多い。享保 13 (28) 年岡島冠山が『水滸伝』を翻訳したのを契機に白話小説の翻訳,翻案が流行,寛延2 (49) 年都賀 (つが) 庭鐘の『英草紙 (はなぶさぞうし) 』によって読本の型が成った。雅文調の読本文体を定着させた建部 (たけべ) 綾足の『本朝水滸伝』,雅文小説の完成をみせて前期読本の最後を飾った上田秋成の『雨月物語』などがある。後期読本は,江戸を中心として,文化・文政・天保 (1804~44) 期に全盛を誇った伝奇小説。初めは大衆的な中本形読本が流行したが,やがて滝沢馬琴が現れ,儒教的な勧善懲悪思想と仏教的な因果応報思想をあわせもった長編を開花させた。山東京伝の『桜姫全伝曙草紙』『昔話稲妻表紙 (むかしかたりいなづまびょうし) 』,馬琴の『椿説弓張月 (ちんせつゆみはりづき) 』『南総里見八犬伝』などに代表される。

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デジタル大辞泉

とく‐ほん【読本】
太平洋戦争前まで小学校で国語の授業に使用した教科書。また一般に、教科書のこと。
読みやすいようにやさしく書かれた入門書や解説書。「文章読本

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編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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よみ‐ほん【読本】
江戸時代の小説の一種。絵を主とした草双紙に対して、読むことを主体とした本の意。寛延・宝暦(1748~1764)のころに上方(かみがた)に始まり、文化・文政期(1804~1830)に江戸を中心に流行した。空想的、伝奇的な要素が強く、因果応報勧善懲悪思想などを内容とする。和漢混交雅俗折衷の文体で書かれ、体裁半紙本が多い。上方中心の前期は上田秋成建部綾足(たけべあやたり)ら、江戸中心の後期は山東京伝曲亭馬琴らが代表的作者で、「雨月物語」「南総里見八犬伝」などが著名
古文書をわかりやすく現代の文字に直したもの。

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世界大百科事典 第2版

よみほん【読本】
江戸中・後期の代表的な小説ジャンルの名称絵本など〈見る〉本に対して,文章を〈読む〉本という素朴な区分法に発する呼称だが,江戸中期の小説ジャンルの分化にともない,特定の小説様式の形態,概念を総称する名称となった。半紙本5冊1セットの短編物,あるいはそのセットを積みかさねた長編物の形で行われるのを普通とし,内容的には,時代物であることと,物語のなかに幻想怪異奇瑞,伝奇など珍奇幻怪な説話的要素を盛り込むことを常とした。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

とくほん【読本】
明治期から第二次大戦直後まで、小学校の国語教科書として使われた本。また、広く教科書一般をもいう。
種々の問題について、やさしく解説したよみものに付ける名称。 文章- 人生-

出典:三省堂
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よみほん【読本】
江戸後期の小説の一種。絵を主体とした草双紙に対して、読むのを主とした本の意。寛延・宝暦(1748~1764)頃、上方に興り、寛政の改革以後江戸で流行、天保(1830~1844)頃まで続いた。中国白話小説の影響を受け、日本の史実を素材にした伝奇的傾向の強い作品が多く、勧善懲悪・因果応報思想などを軸として雅俗折衷的な文体で記された。半紙本五、六冊を一編とし、口絵・挿絵を伴う。都賀庭鐘・上田秋成・山東京伝・曲亭馬琴などが著名で、「雨月物語」「南総里見八犬伝」などが代表的。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

読本
よみほん
江戸時代の小説の一様式。書型は大本(おおほん)(美濃紙(みのがみ)二つ折りの大きさ)、半紙本(はんしぼん)(半紙二つ折りの大きさ)、中本(ちゅうほん)(美濃紙四半截(せつ)の大きさ)の3種があるが、半紙本が主流。挿絵が他の小説様式よりも少なく、文字を読む比重が大きいところから読本という。歴史に題材をとり、筋の展開のおもしろみを意図したうえで勧善懲悪・因果応報思想をもってこれを統一し、主題を明確にたて、合間には和漢の書籍に基づく議論や知識を開陳し、人情描写にも配慮し、硬質な和漢混淆(こんこう)文でつづる。中国の小説の様式や筋・趣向を学び取ることによって生まれた、近世ではもっとも知的で近代小説に近づいた小説である。[徳田 武]

発生

近世前期の元禄(げんろく)(1688~1704)から享保(きょうほう)(1716~1736)にかけて、中国の長編講史(歴史)小説を翻訳した通俗軍談が続出した。『李卓吾先生批評―三国志』の忠実な翻訳『通俗三国志』(1689~1692刊)はその有名なものである。これらの軍談のうちには『新刊―大宋(そう)中興通俗演義』を翻訳しつつ、その間に翻案をも交えた『通俗両国志』(1721刊)のごとき作品があるが、その翻案法には後期の長編読本に通じるものがあり、また実際に読本に多くの影響を与えた。そこで、通俗軍談が読本の主要な源流であるといえる。このほかに『前(ぜん)太平記』(1681ころ成立)のごとき日本の戦乱を虚構化した近世軍記、『勧善桜姫伝』のごとき僧侶(そうりょ)の説法の種本を読物化した仏教長編勧化物、『殺報転輪記』のごとき実際の事件を虚構化して写本で読まれた実録物も、それぞれ読本の源流を形成している。これらの源流を摂取し、「三言二拍」などの中国白話小説を翻案して造本・内容ともに典型的な読本としての様式を初めて確立した作品が都賀庭鐘(つがていしょう)の『英(はなぶさ)草紙』(1749刊)である。これは9話の短編を収めるが、以後、寛政(かんせい)(1789~1801)ころまでは同様な短編集が主として上方(かみがた)で多作され、上田秋成(あきなり)の『雨月(うげつ)物語』(1776刊)は、それらのうちの白眉(はくび)とされる。
 一方、中国の一大雄編『水滸(すいこ)伝』の建築的な構成と精妙な人間像の描き分けに刺激されて、『湘中(しょうちゅう)八雄伝』(1768刊)、『本朝水滸伝』(1773刊)などの水滸翻案物も相前後して続出し、それら長編読本の伝統を踏まえて、のちには曲亭馬琴(ばきん)の『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)』という大作が完成される。しかし、これら前期の作品はなお多く知識人の遊戯であった。[徳田 武]

展開

寛政の改革のころから江戸にも出版形態が確立し、現実の世相の描写を抑圧された職業的戯作(げさく)者が、直接に現実を描かなくてもすむ読本を執筆するようになる。山東京伝(さんとうきょうでん)の『忠臣水滸伝』(1799、1801刊)は、『仮名手本忠臣蔵』という演劇の世界に『水滸伝』の趣向を撮合(さつごう)した長編で、造本や挿絵にも技巧を凝らした、江戸読本の典型を打ち出す。その弟子筋にあたる曲亭馬琴も、それより早く、中本ではあるが『高尾船字文(たかおせんじもん)』(1795刊)を著し、以後2人は競作する形で江戸読本を多作するが、中国白話小説を勉強して筆力旺盛(おうせい)な馬琴が主導権を握り、日本化した『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』『朝夷巡島記(あさひなしまめぐりのき)』『近世説美少年録(きんせせつびしょうねんろく)』『開巻驚奇―侠客(きょうかく)伝』などの本格的な演義体小説を創出した。柳亭種彦(りゅうていたねひこ)、式亭三馬(しきていさんば)、為永春水(ためながしゅんすい)らも読本を著すが、いずれもその資質にはあわず、上方にも速水春暁斎(はやみしゅんぎょうさい)などが多作するが、主導権を上方に取り戻すには至らなかった。[徳田 武]

影響

1885年(明治18)に坪内逍遙(しょうよう)が『小説神髄』で『八犬伝』の勧善懲悪を否定してより、読本の影響力は弱まるが、なおも明治30年代まで盛んに読まれ、実は馬琴通の逍遙や幸田露伴(ろはん)などが続作ともいうべき作品を著した。[徳田 武]

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精選版 日本国語大辞典

とく‐ほん【読本】
〘名〙 (「とく」は「読」の漢音) 読み、習うための書物。特に、「小学読本」と総称される国語教科書をさしていい、さらに、教科書一般をさしていう場合もある。
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉一「わたくしは、とくほんの一をよんでゐます」
[補注]「読書」「読者」など、呉音読みの「どく」が一般的になったため、「読本」も近年、「どくほん」とも読まれる。

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よみ‐ほん【読本】
〘名〙
① 読み習うべき書物。とくほん。
※寤寐集(1626頃)「我読本(ヨミボン)前に在故に、頭を低て見ると思て覚ぬ」
② 江戸後期の小説の一様式。絵を主にした草双紙類に比して挿絵が少なく、読むことを主体にした本の意で、広義には八文字屋の浮世草子や滑稽本・人情本をも含めていったが、文学史上では、寛延・宝暦(一七四八‐六四)の頃、上方におこり、寛政の改革以後江戸で流行し、天保(一八三〇‐四四)頃まで続いた小説をさす。中国小説の影響を強く受け、怪異性や伝奇性が濃く、漢文調・擬古的文章で表現する点に特色がある。上方の都賀庭鐘(つがていしょう)・上田秋成、江戸の山東京伝・滝沢馬琴などが代表的な作家である。
※談義本・穴意探(1770)序「近年よみ本高まん自慢、粋知り類」
③ 古写本や古文書をわかりやすく現代の文字に書きかえたもの。翻字したもの。また、その本。
※先祖の話(1946)〈柳田国男〉自序「先祖の話といふやうな平易な読み本が」

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旺文社日本史事典 三訂版

読本
よみほん
江戸中・後期,宝暦(1751〜64)前後から現れた小説の一形態
絵を主とした草双紙・絵草紙に対して,文を読むことを主とした本の呼称。前期読本の流行は京坂を中心とし,上田秋成の『雨月物語』など。化政期(1804〜30)には江戸読本の全盛を迎え,山東京伝の『昔話稲妻表紙』,滝沢馬琴の『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』など勧善懲悪を主張したものが多い。

出典:旺文社日本史事典 三訂版
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