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認知

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認知
認知とはブランド認知のことをいう。ブランド認知の項参照。

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デジタル大辞泉

にん‐ち【認知】
[名](スル)
ある事柄をはっきりと認めること。「反省すべき点を認知する」
婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、その父または母が自分の子であると認め、法律上の親子関係を発生させること。
cognition心理学で、知識を得る働き、すなわち知覚・記憶・推論・問題解決などの知的活動を総称する。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

にんち【認知 reconnaisance[フランス]】
認知とは,嫡出でない子(非嫡出子)と親との間で法律上の親子関係を発生させる手続で,主として父親との間で必要とされるものである。認知には,父親が自発的に自分の子であることを認める任意認知と,子のほうから父親に対して請求し,判決または審判で認められる強制認知の二つの方法がある。
[認知制度の型と性格]
 婚外親子関係の発生については,父の認知という形式的行為を必要とする立法しかた(フランス型)もあるし,また,父子関係は子の懐胎可能期間中に子の母と交渉したという事実によって父と推定する立法のしかた(ドイツ型)とがある。

出典:株式会社平凡社
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にんち【認知 cognition】
生理学・心理学用語。生体のもつ情報収集,情報処理活動の総称。cognitionは一般には認識と訳され,知識の獲得過程や知識それ自体を意味するが,心理学や生理学では,上記のような意味で,認知と訳されることが多い。認知は感覚,知覚,記憶など,生体が生得的または経験的に獲得した既存の情報にもとづいて,外界からの情報を選択的にとり入れ,それを処理して新しい情報を生体内に蓄積し,さらにはこれを利用して外界に適切な働きかけを行うための情報処理の過程をいう。

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大辞林 第三版

にんち【認知】
( 名 ) スル
それとしてはっきりと認めること。 「目標を-する」
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、親が戸籍法の手続きによって、自分の子とする。認知されるとその子は非嫡出子となる。自発的に行うことを任意認知、裁判による場合を強制認知という。
〘心〙 〔cognition〕 生活体が対象についての知識を得ること。また、その過程。知覚だけでなく、推理・判断・記憶などの機能を含み、外界の情報を能動的に収集し処理する過程。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

認知
にんち
法的に婚姻関係にない男女の間に生まれた嫡出でない子(非嫡出子)について,法律上の親子関係を発生させること(民法第779条)。母と子の親子関係について判例は,原則として認知を待たず分娩の事実によって発生するとしている。父と子については,父が任意にする任意認知と,子から父に対する裁判による裁判認知とがある。任意認知は,父が事実を承認し,戸籍法に従って届け出をすれば効力を生じる。父の意思によらない認知の届け出は無効だが,意思に基づくかぎり認知は取り消せない。遺言でするときは,遺言執行者が届け出をする。裁判認知では,家庭裁判所の調停での合意や審判,不成立の場合は地方裁判所の判決によって認知が確定する。認知の効力は,子の出生のときまでさかのぼるが,胎児を認知するには母の承諾,成人になった子を認知するにはその本人の承諾を要する。子が死亡したあとでも,子に直系卑属(→直系尊属)があるときは認知できる。また,父が子を認知しないまま死亡した場合,父の死亡日から 3年以内に検察官を被告として提訴することで認知することができる。これを死後認知という。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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認知
にんち
cognition
心理学用語。広義には,知覚,学習,記憶,想像,思考,判断,推理作用など,生体が知識を得る働きに含まれるあらゆる過程ないし機能の総称。感情および意志の働きと対比された認識作用一般をさす。狭義に感覚,知覚と対比させた形で用いる場合には,外界の対象,事象を,それからくる感覚刺激のみならず,過去の経験ないし学習によってたくわえられた概念,図式,象徴機能などと関連づけて受取り,それら対象,事象の意味的側面をとらえ,かつ当該生体に対して適切な行動を解発させるための準備状態をつくり上げる,より高次の過程をさす。厳密には知覚と区別することはむずかしいが,生体の情報処理過程を当該個体の全体的機能との関連において扱おうとするとき好んで用いられる用語。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

認知
にんち
法律上、婚姻関係にない男女間に生まれた子(嫡出でない子、婚外子)を父または母が自分の子であると認めること(民法779条以下)。婚姻外の関係から生まれた子と父母との間には、認知があって初めて法律上の親子関係が生じる。民法は父または母が認知できると規定しており(779条)、したがって、民法は、父子関係においてだけでなく、母子関係においても認知によって初めて法律上の親子関係が生じることを前提としていることになる。しかし、母子関係は分娩(ぶんべん)という事実により明らかであるから、母の認知という行為を必要とせずに、子の出生と同時に法律上の親子関係が生じるとされている。
 認知には、親が自由な意思によってするもの(任意認知)と、親が認知しない場合に子の側から裁判所に訴えてなされる認知(強制認知)とがある。任意認知は戸籍の届出によってする(民法781条1項、戸籍法60条)。したがって、認知の意思を子または母に対して直接に告げても、それだけでは認知をしたことにならない。この点においては、認知について形式の要求は厳格であるが、他方では、この要求は緩和されている。すなわち、認知をするには認知届をするのが本来であるが、父が認知届でなく出生届をしてそれが受理されると、その出生届には認知届としての効力が認められる。なお、遺言によって認知をすることもできる(民法781条2項)。この場合には、認知届が必要ではあるが、父が死亡すると同時に認知の効力が生じる。
 強制認知は、子、その直系卑属(子、孫など)またはこれらの法定代理人が原告となって父または母となるべき者を訴える(民法787条本文)。この訴えを認知請求の訴えという。父または母が死亡したときには、検察官を相手方とする(人事訴訟法42条)が、父または母が死亡した日から3年を経過すると認知の訴えは提起できなくなる(民法787条但書)。認知があれば、子の出生のときにさかのぼって親子関係が生じる。しかし、このことは、婚姻外の関係から生まれた子が嫡出子たる身分を認知によって当然に取得することを意味するわけではない。[高橋康之]
 なお、国際的親子関係については、項目「嫡出でない子」の「国際私法上の親子関係」を参照されたい。[編集部]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

したため‐し・る【認知】
〘他ラ四〙 物事を処理し管理する。
※源氏(1001‐14頃)行幸「政のおもふきをしたためしらむ事は、はかばかしからず、あはつけきやうにおぼえたれど」

出典:精選版 日本国語大辞典
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にん‐ち【認知】
〘名〙
① ある事柄をはっきりと認めること。
※具氏博物学(1876‐77)〈須川賢久訳〉四「我が見聞認知せる他人の容貌性質行状等を」
② 法律上の婚姻関係のない男女の間に生まれた子を、その父または母が自分の子と認めること。認知によってはじめて法律上の親子関係が生ずる。
③ (cognition の訳語) 心理学で、知識獲得の過程とそれによって得られた知識をいう。知覚に比べて高次の認識をさす。心理学の立場としては、知識獲得の過程を外在的にとらえる条件反射説に対して、発達や場の理論による内在的過程を重視するものが認知説といわれる。

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最新 心理学事典

にんち
認知
cognition
認知とは,何かを認識・理解する心の働きを指す場合,その結果を指す場合,あるいはそうした認識を可能にする能力,構造,機構を指す場合などに用いられる語。認識cognitionと同義で,心理学関連の分野では認知という用語がよく用いられるが,情報工学やAI(人工知能)などでは認識という用語もよく用いられる。日本語では「認知」とされるが,英語でcognitionという用語が使われていないケースも少なくない。たとえば,パターン認知(認識)や音声認識などの場合には,recognitionという用語が使われるし,リスク認知,対人認知の場合のようにperceptionという用語が使われたりもする。

 人間の心の働きは,早くから知情意という3分類がなされてきた。知は何かを知ることであり知覚,認識,理解などを指し,情は何かを感じることであり感情や情動を指し,意は何かを行なおうとすることであり意図や意志を表わしている。認知とはこの分類でいえば知に該当する。

【認知と他の心理機能】 ただし,実際にはこの三つは相互に深いつながりをもっており,多くの場合認知が情や意と独立に行なわれているわけではない。感情の状態によって注意の度合いや,記憶や,思考の仕方が変化することはよく知られている。また何かを行なおうとする動機や,動機が何によって生み出されるのかが,学習に強く影響することもよく知られた事実である。その逆もまた真であり,認知の結果,感情や動機づけが変化することはいうまでもない。

 心理学の中では,感覚,知覚,認知という区別が行なわれてきた。一般に感覚sensationとは,特定の感覚器が受け取る刺激の察知やその強度の把握に用いられる(たとえば「赤い」,「熱い」など)。知覚perceptionは特定の感覚の察知だけではなく,その感覚を与える対象の全体的な把握を含む場合に用いられる(眼前の対象が「丸くて赤くて光っている」など)。認知はさらに知覚内容を関連する他の情報と結びつける活動を含む場合を指すことが多い(眼前の「丸くて赤くて光っている」ものを「赤信号だ」とすることなど)。一般に認識する内容の複雑さに応じて,感覚,知覚,認知を使い分ける傾向がある。ただしこの区分も曖昧であり,どこまでが知覚であり,どこから先は認知であるという明確な線引きができるわけではない。

【心理学史の中の認知】 心理学史の中の認知,さらに心理学史の観点からすれば,認知という用語は行動主義behaviorismと対比的に使われ,ある研究の立場,スタンスを表わすこともある。行動主義では主に強化に基づく刺激と反応との間の関数関係を特定することが目的とされてきた。こうした立場とは異なり,強化を要しない行動,報酬とは無関係な生体の内的状態に言及する際に認知ということばは使われていた。たとえば認知地図認知的不協和,認知スタイルなどの用語が挙げられる。一方,情報科学の考えに触発されて,1970年代あたりから急速に発展した認知心理学cognitive psychologyにおいては,認知という用語の使われ方がもう少し限定的となる。そこでは,刺激(入力)と反応(出力)の間で何が行なわれているかに焦点が当てられる。つまり,入力情報にどのような内部処理(計算)が行なわれるのか,その結果どのような出力(表象)が生み出されるのか,またその内部処理はどんな構造によって可能になるのかを探究するのが認知研究となる。このような文脈で認知ということばが用いられる場合には,カテゴリー化,推論などはもちろん,そこからの目標の生成,プランニング,意思決定,実行過程のモニタリングまでもが含まれる。

【認知と意識】 認知ということばは通常,対象を意識的に把握するという意味合いをもち,認知された事柄は多くの場合,言語的に記述可能であると思われている。また学習や思考などの一定以上高次の認知は,そのプロセスについても言語化や意識的なコントロールが可能であるかのように一般には考えられている。しかしながら,認知は意識consciousnessや言語languageが関与しない場合にも成立している。プライミングを用いた潜在記憶研究では,事前に経験したことによって後続の課題の成績が変化するが,このことに被験者が気づくことはない。また事前の課題において被験者が意識できないレベルの刺激(サブリミナル刺激subliminal stimulus)を提示することによっても同様の効果を得ることができる。このことは意識化されなくてもある種の認知状態が生起しており,それによって行動に影響が出ることを示している。認知は言語化とも独立である。熟練した行動は多くの場合言語化することはできないし,その行動をコントロールする過程を意識することもできない。たとえば歩行に関しては,重心の移動,そのスピード,各関節の曲がり具合,およびそれらの間のタイミングなどを瞬時に認知して制御する必要があるが,こうした過程について人間はほとんど何も語ることはできない。一般に熟練した行動にかかわる認知はほとんどの場合言語化できない。

 またわれわれは,行動や判断を意識的にコントロールできると思っているが,必ずしもそうではない。錯視図形はそれが錯視であることを知っていても,錯視がなくなるわけではない。また偶発学習のように記憶しようという意識がなくても,かなりの程度の記憶がなされてしまう。さらに人の思考や判断の過程についての内省は,事実と一致しないことが多いことも知られている。このように認知は,意識や言語とはかなりの程度独立したものである。

【認知の進化,認知の発達】 認知は生得的な機構と経験から獲得された知識とによって可能になる。この場合,環境からの働きかけが一切必要ないとか,出生直後からその認知が可能ということを意味するわけではない。通常の環境で育つ人間であれば,ほぼ確実に出会う環境からの情報により半ば自動的に発現するのであれば,それは生得的といえるだろう。こうしたことからすれば作業記憶や長期記憶の存在やその間のつながり,知識の貯蔵の形式や活性化のされ方,3次元の知覚,模倣,言語理解や発話などの認知機能を実現する構造も進化的に形成されてきたものであり,人間という種に普遍的に存在しているという意味で生得的と考えられる。一方,人間に限らず生物一般は生後直後からさまざまな経験を重ね,それらの一部を認知機構の内部に貯蔵し,必要な場面でそれを再利用する。これによってより適合的な行動を行なうことが可能になる。人間の場合,内部に貯蔵されたものは一般に知識knowledgeとよばれるが,それはエピソード,概念,手続きなどのタイプに分かれる。

【認知と文化】 人間の認知は経験によっても影響されるということから,認知と文化cultureの関係を考える必要が出てくる。文化とはそこに所属する人間の経験のあり方をコントロールする装置だからである。一対一の対応はないが,ある文化内ではある特定の言語が用いられることが少なくない。ある言語には存在するが別の言語には存在しない単語は数多い。単語は概念を表わすわけだから,異なる言語の間では世界の認知のされ方が異なる可能性がある。サピア-ウォーフの仮説Sapir-Whorf hypothesisは,こうした可能性を最初に指摘したものである。実際には言語と認知の関係は複雑であり,この仮説を肯定する見解と否定する見解がある。

 一方,言語を超えた文化差を指摘する研究もある。たとえば,西洋的なものの見方と東洋的なものの見方は異なるという指摘は以前からよくなされてきた。近年はこれらの直感を裏づける,より厳密な研究が行なわれ,西洋は分析的で焦点化された認知や試行が行なわれている一方,東洋は包括的で総合的な認知や思考が行なわれているという報告がなされている。また,一定以上近代化した社会ではどこでも公教育が行なわれている。こうした教育によっても認知は変化することが知られている。一般に公教育を受けた場合には,具体的な文脈情報に依存する度合いが低くなり,形式的・抽象的な思考が可能になる。しかし,文脈情報を無視することは,必ずしも妥当とはいえない。こうした意味で学校文化が育てるのは,学校的な知性であるという指摘がある。

 人間は言語という道具をうまく活用することで文化を発達させた。人間と対話すること,教育を受けること,書物を読むこと,これらはすべて言語の存在を抜きにしては考えられない。言語を利用した文化によって,他者の経験を自分の中に効率的に取り込むことが可能になった。こうしたことにより,進化的に見ればきわめて短い時間で,人間が他の生物とは異なる発展を遂げたとする指摘がある。

 また人間はさまざまな道具toolを利用して,それを文化として蓄積してきた。道具は人間の行なう知的作業の一部を代行するものであるので,これをうまく利用することで知的作業の効率,生産性,創造性が高まる。近年は,紙や鉛筆などの道具に加えて,コンピュータや,インターネット,あるいはそれらを含む状況一般との関係で認知をとらえようとする研究が進められ,状況的認知situated cognition,あるいは分散認知distributed cognitionの研究として展開している。すなわち認知は個人の中にのみあるのではなく,環境や他者とのかかわりの中に埋め込まれているとする考え方である。【認知の比較研究】 認知の比較研究はヒトの認知を構成する記憶,注意,選択,推論など多くの機能が基本的には動物でも認められることを明らかにしてきた。もちろんヒトにおいて傑出している認知能力もあり,その一つは社会的認知である。社会生活を営む上で他者の情動に関する感受性はきわめて重要であり,共感はその基本的な機能である。共感empathyは他者の情動を自分の情動と共有することであり,他者の情動の認知であるにとどまらず自己と他者の情動とのマッチングである。したがって,共感は他個体認知と自己認知をつなぐものと考えることができる。

 他者の状態と自己の状態の関係は4通りに分けることができる。他者の不快が自分の不快になることが基本であり,これが「負の共感」である。同情がこれに当たる。逆に他者の快が自己の快になるのが「正の共感」である。しかし,他者の快が不快に感じられること(いわゆる嫉妬など)も考えられ,逆共感といわれる。さらに他者の不快を快とする場合(日本語での「他人の不幸は蜜の味」)は,ドイツ語のSchadenfreude(シャーデンフロイデ)が慣用的に用いられている。

 他者の不幸が嫌悪性をもつ負の共感は多くの種で認められている。他者の不快の表出はしばしば自己にとっても危険の信号となり,これが嫌悪性をもつことは危機回避としての機能をもつ。他者と自己が同じ強化を得ている場合には,正の共感は社会的促進として考えられ,これは摂食行動などで認められるが,快状態にある個体を観察することが動物にとって一般的に強化効果をもつかどうかは疑問の余地がある。逆共感はそれによる直接的な利点はなく非合理的な行動だと考えられるが,持続的な社会においては公平性の基礎をなすものだと考えられる。Watanabe,S.(2011)はマウスを用いて正の共感,負の共感を示す結果を得ている。人間社会の公平性のような規範化されたものを動物社会で求めることはできないが,逆共感はその前駆となるものの一つだろう。Schadenfreudeにおいても直接的な利点はなく,ヒト以外の動物では認めにくい。ヒトのSchadenfreudeの本質的な特徴は快感を秘匿するところにある。他者の不幸が快感であることのあからさまな表明は社会の維持には不適切であり,このような敵対的な情動の秘匿は長期持続的な社会の維持に必要な行動であると思われる。

【動物の自己認知】 動物の自己認知self cognitionは,鏡に映る自己像を自分であると理解できるかどうかによって検討されることが多い。チンパンジーは初めて鏡を見たとき,鏡映像に対して威嚇やあいさつなど,他個体に対する社会的行動を示す。しかし,すぐにこれらの社会的行動は消失し,自分の体のうち直接見られない部位を調べるなどの自己指向的行動を示すようになる。同様のことは,ヒトでも小さな子どもや先天盲で開眼手術を受けた人などで見られる。これらのことから,鏡映像を自分であると認識するためには,鏡を見るという経験が不可欠であると考えられている。ギャラップGallap,G.G.(1970)は,チンパンジーの鏡映像に対する自己認知を実験的に検討するために,マークテストmark testを考案した。マークテストとは,動物に気づかれないように,額など直接自分では見えない場所にマークを付け,後で鏡を見せたときに,マークに触れるなどの自己指向的行動が出現するかを検討する方法である。このマークテストでは,ヒト,ボノボ,チンパンジー,オランウータンなどの類人猿がマークを触れるようになるのに対して,類人猿以外の霊長類の多くは,かなり長い期間,鏡に触れる機会があっても,社会的行動が消失せず,自己指向行動が見られない。霊長類以外の哺乳類では,ハンドウイルカ,シャチ,アジアゾウが,鳥類ではカササギが自己鏡映像に対する自己指向的行動を示すことが報告されている。また,無脊椎動物ではイカで自己認知を示唆する結果が報告されている。したがって,鏡像自己認知recognition of mirror self-imageはヒトとの生物学的類縁とは関係なく,いくつかの種の進化の過程で独立に生じた認知能力だと考えられる。ただ,マークテストでの自己指向的行動の解釈には,これを自己意識の反映で,心の理論の基盤となるものだとする立場と,鏡に映る自分の姿の視覚情報と自分の運動感覚との見本合わせ能力とする立場がある。Toda,K.ら(2008)はビデオの遅進再生装置を用いて,ハトが自分の運動感覚とその動画とのマッチングが3秒程度まで可能であることを得た。

 動物の自己認知は,長い間,鏡映像自己認知というパラダイムに限定されていたが,1990年代半ばに,非言語手続きによってエピソード記憶やメタ認知を検討する手法が考案されたことで,飛躍的に研究分野が拡大した。

【メタ認知metacognition】 自分自身の知識の有無,記憶の確かさ,確信度などの認知過程をモニタリングすること,および目標に応じて行動を調整することを総称してメタ認知という。記憶に関するモニタリングをとくにメタ記憶ともいう。動物におけるメタ認知を研究する手法は,スミスSmith,J.D.ら(1995)によって考案された。彼らは,ハンドウイルカに,ある基準音と比べて刺激音の周波数が同じか低いかを弁別するように訓練した。テストでは,回答選択肢に加え,回避選択肢が与えられた。回避選択肢を選ぶと主課題は弁別が容易な課題と置き換えられ,報酬が得やすくなった。一方,回避を多用すると,課題置き換えにより長い時間がかかるペナルティが与えられた。ハンドウイルカは,刺激音が基準音に近づくにつれ,より高頻度で回避し,この傾向は,同じ課題遂行中のヒトのそれと一致していた。この結果から,イルカがヒトと同様に,確信のなさを手がかりに回避していたと考えられる。この研究以降,動物のメタ認知は,知覚弁別や記憶再認などの主課題とは別に,それの遂行前,遂行中,および遂行後の回避選択による副課題を付加し,主課題の難易度や成績と副課題の選択の相関を調べることで検討されている。また,回避選択以外にも,課題が難しい時に,追加情報(ヒント)を希求する行動もメタ認知であると考えられている。

 上述のハンドウイルカ以外では,霊長類がさまざまな課題でメタ認知的行動を示すことが報告されているが,他の動物では研究報告数自体が少ないため,どの動物にどのようなメタ認知があるのかは明らかになっていない。しかし,ハト,ニワトリ,カラスなどの鳥類において,課題遂行後の確信あり,なし判断が回答正誤と相関することを示すことが報告されるなど,メタ認知は霊長類に限定されるものではないと考えられている。動物では,自己意識や内省的過程に関する研究は長い間,鏡映像自己認知に限定されていたが,メタ認知研究はこれらを別の側面から検証可能な形で定義した点で大きな意義がある。 →意識 →感覚 →感情 →記憶 →社会的学習 →知覚 →知識 →認知心理学 →弁別学習 →メタ認知
〔鈴木 宏昭〕・〔渡辺 茂・後藤 和宏〕

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