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詩経【しきょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

詩経
しきょう
Shi-jing
中国最古の詩集。前9世紀から前7世紀にかけての詩 305編を収める。伝承によれば,孔子が門人の教育のために編纂したもの。「風」「雅」「」に大別され,「風」はさらに 15の「国風」に分れて黄河沿いの国々の民謡を主とし,「雅」は「大雅」と「小雅」に分れ,周の朝廷の宴会に歌われたもので,建国伝説を詠んだ長編叙事詩を含む。「頌」は「周頌」「魯頌」「商頌」に分れ,祖先の廟前で奏せられた神楽 (かぐら) と考えられる。詩の形式は4言で1句,4句で1章となるのが基本。伝承されるうちに各学派がそれぞれのテキストにそれぞれの解釈をもつようになり,漢初には斉,魯,韓,毛の4家があったが,次第に毛家の伝えたいわゆる『毛詩』が他を圧倒するようになり,今日完全に伝えられている『詩経』は『毛詩』であるとされる。五経の一書。

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デジタル大辞泉

しきょう〔シキヤウ〕【詩経】
中国最古の詩集。五経の一。孔子編といわれるが未詳。周の初めから春秋時代までの詩305編を国風・雅・頌(しょう)の3部門に大別。国風は諸国の民謡で15の風、雅は朝廷の音楽で小雅・大雅の二つ、頌は宗廟(そうびょう)の祭祀(さいし)の音楽で周頌・魯頌・商頌の三つがある。漢の毛亨(もうこう)らが伝えたものだけが現存するので「毛詩」ともいう。

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世界大百科事典 第2版

しきょう【詩経 Shī jīng】
中国最古の詩集。五経の一つ。孔子以来,儒家経典とされた。諸国の民謡を集めた〈風〉,宮廷の音楽〈雅〉,宗廟の祭祀の楽歌〈頌〉の三部分から成る。〈風〉は,〈国風〉とも呼ばれ,周南・召南・邶(はい)・鄘(よう)・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳(ひん)の15国160編,〈雅〉は,小雅74編・大雅31編,〈頌〉は,周頌31編・魯頌4編・商頌5編を収める。風は,結婚,恋愛,狩猟,建築,労働,出征農事など当時の人民の生活の各方面を題材に,愛の喜び,死者への哀悼肉親への思い,搾取者への憎悪,時間の推移への恐れ,時代の悪さへの悲嘆など,さまざまの感情を率直にうたう。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

しきょう【詩経】
中国最古の詩集。五経の一。孔子の編と伝えるが未詳。西周から春秋時代に及ぶ歌謡三〇五編を、風(民謡)・雅(朝廷の音楽)・頌しよう(祖先の徳をたたえる詩)の三部門に分けて収録。風は一五に、雅は小雅・大雅の二つに、頌は周頌・魯頌・商頌の三つに分かれる。現存のものは漢代の人毛亨もうこうが伝えたとされ、「毛詩」ともいう。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

詩経
しきょう
中国最古の詩集。黄河流域の諸国や王宮で歌われた詩歌305首を収めたもので、『書経』『易経』『春秋』『礼記(らいき)』とともに儒教の経典(いわゆる五経)の一つとされた。西周初期(前11世紀)から東周中期(前6世紀)に至る約500年間の作品群と推測されている。内容は、周王朝の比較的安定した時代にふさわしい明るい叙情詩から、混乱期を反映する暗い叙事詩まで多彩だが、数のうえでもっとも多いのは恋愛詩である(婚姻詩を含めて全体の約半数)。したがって『詩経』は、儒教以前の古代歌謡の黄金時代に花開いた中国文学史上まれな恋愛文学ないし女流文学の一面をもっている。
 口頭で伝承された作品群がいつ文字言語に写され編集されたか明らかでないが、現存の『詩経』は漢の毛(もう)公の伝えたとされる『毛詩』(その注釈が『毛伝』)で、風(ふう)・雅(が)・頌(しょう)の3部から構成されている。風(十五国風(こくふう)、160首)は諸侯国の民間歌謡を主とし、そのテーマは、恋愛、結婚、生活、戦争という歌いの場を縦軸に、熱情、喜び、悲しみ、戯れなどの感情を横軸に交差させて示すと、たいていこの座標に収まるが、8割は恋愛・結婚の喜び・悲しみに集中する。歌垣(うたがき)的な祝祭を背景に恋愛のゲームを歌う「行露(こうろ)」(召南(しょうなん))、「新台(しんだい)」((はいふう))、「桑中(そうちゅう)」((ようふう))、動植物や投果・渡河などの象徴を用いて大胆な求愛を歌う「鶉之奔奔(じゅんしほんぽん)」(風)、「有梅(ひょうゆうばい)」(召南)、「(けんしょう)」(鄭風(ていふう))、愛の顛末(てんまつ)を描いた叙事詩「氓(ぼう)」(衛風(えいふう))、失われた愛の悲劇や葛藤(かっとう)をつづる「谷風(こくふう)」(風)、「墓門(ぼもん)」(陳風(ちんふう))、「鴟(しきょう)」((ひんぷう))、婚姻のしがらみによる苦悩を描く「載馳(さいち)」(風)など、古代女性の熱烈な息吹を伝える作品が多い。雅(小雅(しょうが)74首、大雅(たいが)31首)は宮廷、社会、戦場、歴史が主舞台で、貴族の饗宴(きょうえん)での祝福や歓迎、兵士の望郷や将軍の武勲、亡国の憂いや社会悪への憤りなどをテーマとする詩、また、周の起源や建国を歌う叙事詩(「生民(せいみん)」「緜(めん)」「文王(ぶんおう)」など)、そのほか小雅には国風的な恋愛・結婚の歌も含まれている(「采緑(さいりょく)」「小弁(しょうはん)」「何人斯(かじんし)」など)。頌(周頌31首、魯(ろ)頌4首、商(しょう)頌5首)は祭場が舞台で、おもに祖先への頌歌や求福をテーマとする。『詩経』で使用されている言語は甚だ難解であるが、文体論的分析を通して種々の特徴がとらえられる。たとえば国風の基本詩形は四言(4シラブル)のリズムを基調とし、4詩行をもつ連(れん)(スタンザ)が3回反復される。
 周南・樛木(きゅうぼく)(つる草に絡みつかれる木でもって、女の積極的な愛を受ける男の幸福を歌う)

南有樛木 南の国のしだれ木に
壘(a)之 かずら草のはうという
楽只君子 喜びあふれる殿方に
福履綏(b)之 良き人の幸(さち)もたらさる

南有樛木 南の国のしだれ木に
荒(a)之 かずら草のおおうという
楽只君子 喜びあふれる殿方に
福履将(b)之 良き人の幸みたされる

南有樛木 南の国のしだれ木に
栄(a)之 かずら草のめぐるという
楽只君子 喜びあふれる殿方に
福履成(b)之 良き人の幸とげられる

 これは伝承童謡と似た形式であるが、言語の技巧は甚だ高度である。反復で変換される語(a・b)は、横の列に音声上の類似性、縦の列に意味上の類似性をもつ語(パラディグム)を配置し、漸層法や遠近法の効果をつくりだす。また、各連で自然(前半2行)と人間(後半2行)を並べる平行法により、無関係の二物間に隠喩(いんゆ)(メタファー)を発見ないし創造するという手法(「興」という)を編み出した。そのほか、西欧の古代・中世文学にもみえる定型句(フォーミュラー)の手法や、わが国の本歌取(どり)に似た手法もあり、豊富なレトリックと相まって中国詩学の源泉となっている。『詩経』はすでに孔子(こうし)のころから知識人の教養とされたが、詩の最初の意味はしだいに忘れられ、秦(しん)の焚書(ふんしょ)を経て、四つのテキストが出現した。しかし後漢(ごかん)の鄭玄(じょうげん)の注釈(『鄭箋(ていせん)』という)により解釈の体系性を与えられた『毛詩』のみ生き残った。『毛伝』と『鄭箋』を敷衍(ふえん)した唐(とう)の孔穎達(くようだつ)の注釈(『毛詩正義』)をあわせて古注といい、南宋(なんそう)の朱子(しゅし)の新注(『詩集伝』)と対する。新注は古注ほど硬直していないが、歴史主義的、道徳主義的解釈では共通する。儒教的解釈学から解放されて『詩経』の真の姿に迫ろうとする試みは20世紀に始まった。フランスのマルセル・グラネの社会学的研究(1919)が先鞭(せんべん)をつけ、聞一多(ぶんいった)の民俗学的研究(1937)が続く。イギリスのアーサー・ウェーリーの優れた英訳(1937)、スウェーデンのB・カールグレンの言語学的研究(1942)も現れ、新しい「詩経学」が緒についた。[加納喜光]
『吉川幸次郎訳注『中国詩人選集1・2 詩経国風 上下』(1958・岩波書店) ▽目加田誠訳『中国古典文学大系15 詩経・楚辞』(1969・平凡社) ▽目加田誠著『詩経訳注』上下(1983・龍渓書舎) ▽高田真治著『漢詩大系1・2 詩経 上下』(1966、68・集英社) ▽松本雅明著『詩経諸篇の成立に関する研究』上下(1980、81・開明書店) ▽白川静著『詩経研究 通論篇』(1981・朋友書店) ▽加納喜光訳『中国の古典18・19 詩経 上下』(1982、83・学習研究社) ▽中島みどり著『中国詩文選2 詩経』(1983・筑摩書房) ▽石川忠久著『詩経』(1984・明徳出版社) ▽境武男著『詩経全釈』(1984・汲古書院)』

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精選版 日本国語大辞典

しきょう シキャウ【詩経】
中国最古の詩集で、五経の一つ。三〇五編。撰者未詳。孔子が約三〇〇〇の古詩から選んだものともいう。風・雅・頌の三部から成り、風は国風ともいい、黄河流域の諸国の民謡で一五に分かれ、雅は周王朝の宮廷歌で大雅・小雅の二つに分かれ、頌は祖先神をまつる歌で周頌・魯頌・商頌の三つに分かれる。ほぼ紀元前一一~六世紀間の歌と推定され、四言の詩型を中心として、くりかえしが多い。漢の毛亨(もうこう)が伝えた書が唯一の完本であるため「毛詩」ともいう。毛亨の伝、鄭玄の注、唐の孔穎達(くえいだつ)の疏が古注の標準で、宋の朱熹の「詩集伝」が新注と呼ばれる。詩(し)。毛詩(もうし)

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