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観念【かんねん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

観念
かんねん
idea
元来は仏教の用語で,真理またはを観察思念するという意味。今日ではギリシア語イデア訳語として,いろいろな意味に用いられる。古代ギリシアでは,イデアは事物の超感性的な原形中世では神の心のなかにあるイデアを原形として万物が創造されたとする。近世では,デカルトイギリスの経験論者によって,イデアは人間の心のなかに現れる意識内容,または表象を意味するにいたった。一般に,観念は,知覚心像ほどに具体的ではないが,概念ほど抽象的ではない。

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デジタル大辞泉

かん‐ねん〔クワン‐〕【観念】
[名](スル)
物事に対してもつ考え。「時間の観念がない」「固定観念
あきらめて、状況を受け入れること。覚悟すること。「もうこれまでと観念する」
哲学で、人間が意識の対象についてもつ、主観的な像。表象。心理学的には、具体的なものがなくても、それについて心に残る印象。
仏語。真理や仏・浄土などに心を集中して観察し、思念すること。観想

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世界大百科事典 第2版

かんねん【観念】
ギリシア語のイデアideaに由来する英語のアイディアideaやドイツ語のイデーIdeeに相当する語(ただし,ドイツ語のイデーは〈理念〉と訳されて,特別の意味をもつことがある)。イデアは元来,見られたものごとの形,姿などの経験的,具象的な対象を意味した。しかし,プラトンによって,それは経験的な個物を超越した不変,永遠の存在の意味を負わされるに至った。イデアには数学的対象や今日一般に抽象概念と呼ばれるものも含まれるが,とくにプラトンでは倫理的概念が重視され,その頂点に位するのが万人の究極的に追求すべきのイデアとされることによって,イデアは同時に理想,理念の意味をも担う。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

かんねん【観念】
スル
物事について抱く考えや意識。 彼とは義務の-が違っている 経済-に欠ける 時間の-がない 固定-
あきらめること。覚悟すること。 もうだめだと-した
idea 主観としての人間の意識内容。思考の対象となる心的形象。表象。心理学では具体的な映像・心像を伴わないものをいう。 → イデア
仏教の瞑想法の一。精神を集中し、仏や浄土の姿、仏教の真理などを心に思い描き、思念すること。 一心に極楽を-するに他の思ひ出来れば/今昔 15 (1) 華厳経の意で用いられた語。その後西周にしあまね生性発蘊(1873年)で英語 idea やフランス語 idée の訳語とした。 (2) 類義の語に概念があるが、概念は同一の性質を持つ事物に共通する、言葉で表された意味内容の意を表す。それに対して観念はある物事を意識したり思考したりしたときの、主観的な意識内容を表す
[句項目] 観念の臍を固める

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

観念
かんねん
idea英語
ideフランス語
Ideeドイツ語
人間があるものについて心中にもつ表象を指示する用語。一般的には、感覚的あるいは空想的表象から理性的、知的表象にまで及ぶ広い範囲の表象一般、あるいはそのいずれかをさすものとして使われる。哲学の術語としては、感覚的あるいは感性的表象に対立するものとして、知的表象ないしは概念、さらにはその複合体を意味するのが本来の用法である。[坂部 恵]

古代・中世における用法

近代ヨーロッパ諸語での観念に相当することばは、すべて、ギリシア語のイデアideaに由来し、この語はまたidein(見る)に由来するものとして、元来、見られたもの、姿、形といった意味をもっていた。これを哲学用語として独特の意味をもたせて導入したのはプラトンである。すなわち、彼は、オルフェウス教からピタゴラス主義を通して受け継がれた肉体にとらわれた感覚的世界と霊的な超感覚的世界をたてる二世界論的な形而上(けいじじょう)学を背景に置きながら、相対的な知覚の対象としての個物でなく、知性的認識によって把握される永遠の普遍妥当的な実在をイデアの名でよんだのである。イデアは、単に真実在としてのみならず、諸物の原型として、価値的規範的意味を担い、この性格は、諸イデアの頂点に位するとされる「善のイデア」において極まる。感覚的世界の個物の側からみれば、それらは、その範型であるイデアにあずかる限りにおいて実在性を得るとされるのである。アリストテレスは、このプラトンの考えを批判的に継承しつつ、形相eidosと質料huleの結合として個物をとらえ、可能態から現実態への移行として事物の生成を考える方向を打ち出したが、ここでもなお、形相が事物の本質規定をなすという規範的性格はある形で生かされていた。プラトンの哲学はとりわけ新プラトン主義を介して、また、アリストテレスの哲学は、その主要部分をいったんアラブ文化圏の哲学を仲介して、古代末から中世にかけてのキリスト教哲学に受け継がれるが、ここでも、イデアないし形相は、創造神の知性における世界の諸事物の超感覚的原型として、その高い度合いにおける実在性、規範性という性格を保存したままで継承された。とはいえ、普遍概念と個物のどちらに実在性を与えるべきかという問題をめぐる「普遍論争」において、普遍概念の実在を否定する唯名論の側には、古代唯物論の認識論を継いで、観念を二次的生成物として考える方向もまたみられた。[坂部 恵]

近世における新たな展開

中世末期に至って広く影響を及ぼすようになった唯名論の考えのなかに、すでに、観念を人間の心に現れる表象、想念、意識内容とみなす見方が現れていたが、この方向は、近世に入り、神中心的な見方が、人間中心的に人間の意識を出発点として事象を考察する行き方に転換するとともに力を得て、観念の語の今日に至る用法がここに確立された。この用法の転換は、観念を(1)心が外界から受け取った感覚的観念、(2)心が自分でつくりだした想像的観念、(3)人間の心に生来備わっている本有観念の3種に分けて考えるデカルトにおいてみられるが、このうち第三の本有観念の存在を否定して観念にかかわる問題の近世的な取扱いに決定的な一歩を踏み出したのはロックにほかならない。すなわち、ロックは、経験の構成成分として「感覚」と「反省」を想定し、それらによる「単純観念」の取得と「複合観念」の合成の働きによって、人間の認識活動を説明することを試みたのである。この経験論的手法は、イギリスではヒュームによってさらに徹底され、フランスではコンディヤックの感覚論からデスチュット・ド・トラシらの観念学(イデオロジー)にまで展開された。一方、デカルト―ロックの流れに出ながら、イギリスのバークリー、フランスのマルブランシュ、メーヌ・ド・ビランら、プラトニズム的なイデアの考えになんらかの形で連なる人々が近世においてもみられることも見落としてはならない。[坂部 恵]

今日における諸問題

本有観念を否定し観念の取得と合成のメカニズムによって経験の生成を解き明かそうとしたロックは、人間の認識の形成と展開において言語の占める役割に当然のことながら注目し、記号学(セーメイオーティケー)の構想を示したが、この構想は、古代のエピクロス学派から中世の唯名論を通して受け継がれたものにほかならなかった。今日、記号論ないし記号学は、さまざまな現代的手法によって装いを新たにして、復権の機運をみせているが、観念の問題をめぐる新たな思考の展開は主としてこの領域にみられ、また期待もされるといえよう。たとえば、本有観念の有無をめぐるチョムスキーとピアジェの論争などにみられるように、観念をめぐる古来の問題が、新たな学的探究の文脈のうえに繰り返されることから、プラトンやエピクロス以来の問題が今日なお生きていることが観取される。[坂部 恵]
『斎藤忍随著『プラトン』(岩波新書) ▽稲垣良典著『人類の知的遺産20 トマス・アクィナス』(1979・講談社) ▽ロック著、大槻春彦訳『世界の名著27 人間知性論』(1968・中央公論社)』

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精選版 日本国語大辞典

かん‐ねん クヮン‥【観念】
〘名〙
① (━する) 仏語。心静かに智慧によって一切を観察すること。また一般に、物事を深く考えること。
※性霊集‐四(835頃)請奉為国家修法表「親授灌頂、誦持観念」
※今昔(1120頃か)一五「我、一心に極楽を観念するに」
② (━する) 覚悟すること。また、あきらめること。
※虎明本狂言・宗論(室町末‐近世初)「ただやきしを一つで下さるるときに、くゎんねんのいたしやうが有るに」
※黄表紙・敵討義女英(1795)上「もふこれがこの世の暇乞ひだぞ。観念しろ」
③ ある(抽象的な)物事に対する考え、意識。
※小学読本(1884)〈若林虎三郎〉一「童生の既に経験して観念を有するもののみを撰択し」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一「一番先に見付たものが之を食ふ権利があるものとなって居る。〈略〉然るに彼等人間は毫も此観念がないと見えて」
④ 哲学で、何かを意識したり、考えたりしたときに、意識のうちにあらわれる内容。人間の意識内容として与えられているあらゆる対象。
※生性発蘊(1873)〈西周〉一「観念の字は仏語に出づ、今此書には英のアイデア、仏のイデーなる語を訳す」
[語誌]元々は①の意味の仏教用語であったが、中世以降、②の意味に転じ、日常的に使用されるようになった。明治期に入ってから、西周が、④の挙例「生性発蘊」において、「観念」を仏語と意識しながら英語 idea の訳語にあててから、哲学上の新しい意味を持つようになり、定着した。

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