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視聴覚教育【しちょうかくきょういく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

視聴覚教育
しちょうかくきょういく
audio-visual education
視覚,聴覚に訴える教材・教具を用いて行う教育。 17世紀に J.コメニウスが『可感界図示』という絵入り教科書を著わして以来,具体的経験を基礎とする教育の方法 (直観教授) が唱えられた。 20世紀には光学的・電気的機械が発明され,これらの教育的利用が進むにつれて近代的視聴覚教育の考え方が形成され,第2次世界大戦後になって急速に発展した。その生成,発展には各種の機械的教具の技術的発達が深い関連をもっている。日本でも昭和初期から民間教育運動として映画教育や放送教育が試みられたが,戦後,占領軍の精神的,物的支援によって一般化した。最近ではテレビ放送の利用が中心となり,映画の利用は沈滞ぎみである。教師が視聴覚教具を利用すれば情報伝達の機能は大きいが,児童,生徒に問題発見・解決の手掛りを与えるように教具を活用させるほうがより重要であり,そこに視聴覚教育の新しい意義が見出される。

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デジタル大辞泉

しちょうかく‐きょういく〔シチヤウカクケウイク〕【視聴覚教育】
実物・模型・映画・スライド・テレビ・ビデオ・レコード・コンピューターなど、視覚や聴覚に訴える教具を利用して行う教育。AV教育。

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世界大百科事典 第2版

しちょうかくきょういく【視聴覚教育】
教科書を典型とする文字文化中心の教育とは異なり,視覚や聴覚に直接訴えることで学習の効果を高めようとする教育。利用される器材を大きく分類すると,(1)スライド,映画,テレビなどの映像物,(2)写真,イラスト,図表など印刷可能なもの,(3)ラジオ,レコードなどの聴覚機器,(4)実物,標本,模型などの教具に整理される。このほかに,視覚,聴覚,視聴覚という分類や,さらに視覚部分を静止と動態とに区別するやり方もある。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

しちょうかくきょういく【視聴覚教育】
視覚と聴覚に訴える教育法。標本・スライド・映画・ラジオ・レコードなどに加えて、テレビ・ VTR ・オーバー-ヘッド-プロジェクターなどの機器を取り入れ、またティーチング-マシン・プログラム学習・ランゲージ-ラボラトリーの導入、コンピューターの利用など教育工学的な手段・方法を採用したもの。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

視聴覚教育
しちょうかくきょういく
audio-visual education
狭義には、教授・学習過程において、言語教材と非言語教材の適切な組合せとそれらを提示する教具の適切な組合せを探究し、実践していく教育領域。視聴覚教育は、audio-visual educationの訳語として、第二次世界大戦後アメリカから日本に導入された用語である。そこには、教授の手段を言語だけに頼ること(言語偏重主義verbalism)を排して映像による教育可能性を追求し、科学および技術の成果を教育へ導入することによって具体的経験の豊かな裏づけを保証し、知識や情意を効果的にはぐくみ教えようとする考え方があった。
 一方、広義の視聴覚教育とは、教育の理論と実践の一分野であって、学習過程を制御する各種メッセージの構成と活用に関与するものである。すなわち、(1)いかなる目的にせよ、学習過程において使用される画像的および表情や心の動きなどで伝えられる非表示的メッセージの、それぞれの特質および相対的長所と短所とを研究すること、(2)教育場面における人間と機械との組み合わせによるメッセージを教育場面で予想される流れに沿って構造化し、組織化することである、ということができる。いいかえれば、広義の視聴覚教育とは、「授業システムにおける個々の要素および授業システムの全体について、その設計、製作、選択、管理、および利用に関することである」(現在のアメリカ教育工学会Association for Educational Communications and Technology=AECTの前身DAVI「アメリカ視聴覚教育部」による定義、1945)ということができよう。[篠原文陽児]

歴史的背景

「視聴覚教育」という用語や理論構成が現れたのは、1930年代以降のアメリカにおいてである。すなわち、第二次世界大戦を契機に、短期間に大量の軍需生産と軍事訓練の能率をあげるため、アメリカの産業界、陸海空軍が、非言語的教材を効果的に提示することを目標に、スライド、映画、レコード(のちに録音テープ)を活用し、またその開発に力を注いだことに始まる。その後、この分野の研究者や専門家が戦争の終結と同時に大学に戻ったとき、これらの新しい機器は、それまでは考えられなかったものの教材化を可能にした。
 とくに映画の教育への利用は、「視覚教育」visual educationとよばれ、視聴覚教育成立の直接的な端緒を開いたといえる。その後トーキー映画やテレビジョンが新たな教具として導入されるに及び、視聴覚的教育は単に視聴覚教材、すなわち非言語的教材の効果的提示方法にとどまるものではなくなった。すなわち、アメリカの教育学者エドガー・デールEdgar Dale(1900―1986)は、言葉による教育効果をより高めるために非言語教材が利用されるべきであると考えた。そこで、言語教材と非言語教材の双方を含む「おのおのの抽象的表現は結合されなければならない」(Audio-Visual Methods in Teaching, 1946)とし、「豊かな学習経験」という考えを基盤として、教育・学習経験を分類した「経験の円錐(えんすい)」Cone of experienceの考え方を提唱した。視聴覚教材とよばれるものは、直接的・目的的経験、模擬経験、見学、展示、テレビ・ラジオなどのメディア、視覚・言語シンボルに至るまで多岐にわたっている。これらは、人間の概念形成に関する発達段階と密接な関係がある。
 なお、1658年にコメニウスによって著された絵入り教科書『世界図絵』Orbis pictusは、今日の視聴覚教材の先駆であり、当時からその意義は高く評価されていた。コメニウス、ルソーらを経てペスタロッチによって体系化された直観教授の思潮は、19世紀における教育改革の主要な原則であったが、見学、演示、展示などの観察活動や生徒の直接的・目的的活動の重視という形で、今日の視聴覚教育の思潮のなかに受け継がれている。[篠原文陽児]

視聴覚教育から教育工学へ

1960年代の高度経済成長、1970年代以降のエレクトロニクスの長足な進歩、そして1980年代以降の電子および通信産業の目覚ましい発展などによって、日本の教育界で活用される機器は著しく進歩し、開発されてきた。ところが、教師や指導者によって操作され、処理されるべきソフトウェア(プログラム)の開発は、今日においてもいまだ十分であるとはいえず、さらに、いかに現実の教育の場面でソフトウェアを適用するかという理論および実践についての研究も不徹底であるといえる。オーバーヘッド・プロジェクター(OHP)、VTRをはじめとするこれまでの教育機器についてはもちろんのこと、1978年(昭和53)に出現したマイクロコンピュータの普及によるCAIおよびCMIについても同様の指摘がなされた。今日でも、電子メディアを使ったeラーニング、そして21世紀の主要なメディアと考えられているマルチメディアや、インターネットを活用したWebラーニング、あるいはとくに企業内での知識・技能の定着を目的としたWBT(Web Based Training)においても、メディアリテラシーあるいはメディア教育のありようとともに、ソフトウェアの開発とそれをいかに適用するかという理論と実践についての研究は大きな課題である。教師、研究者、技術者などが、視聴覚教育の理論、方法、内容について合理的、科学的、総合的探究を深め、その成果を科学的な教育改革と、教育改善に寄与する教育工学的研究にまで高めていくことが期待される。[篠原文陽児]
『教育工学研究成果刊行委員会編『教育工学の新しい展開』(1977・第一法規出版) ▽西之園晴夫著『教育学大全集30 授業の過程』(1981・第一法規出版) ▽中野照海編『教育工学』(1982・学習研究社) ▽エドガー・デール著、西本三十二訳『デールの視聴覚教育』(1985・日本放送教育協会) ▽マーシャル・マクルーハン著、栗原裕・河本仲聖訳『メディア論――人間の拡張の諸相』(1987・みすず書房) ▽白鳥元雄・高桑康雄著『メディアと教育』新訂版(1999・放送大学教育振興会) ▽菅谷明子著『メディア・リテラシー――世界の現場から』(岩波新書) ▽E. Dale Audio-Visual Methods in Teaching, 3rd ed. (1969, Dryden Press, New York)』

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