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行動主義【こうどうしゅぎ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

行動主義
こうどうしゅぎ
behaviourism
アメリカの J.B.ワトソンにより 1913年に提唱された心理学上の一主張。ワトソン主義ともいわれる。意識を対象とする伝統的心理学に反対して,心理学が科学として自立するためには,客観的に観察可能な行動にのみその対象を限るべきであるとした。したがって内観法は不要とされる (→内観 ) 。さらにワトソンは刺激=反応説によって行動をとらえ,複雑な行動には I.P.パブロフ条件反射原理を適用し,極端な環境主義的立場をとった。

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デジタル大辞泉

こうどう‐しゅぎ〔カウドウ‐〕【行動主義】
科学的心理学は外部から観察し観測できる行動だけを研究対象とすべきだ、という主張。1913年、米国のワトソンによって唱えられ、従来の主観的な内観主義を排して心理学を科学化する働きをした。
ニヒリズムを否定し、行動的ヒューマニズムを重んじる文芸上の主義。アンドレ=マルローなどの紹介に際して日本で生まれた用語で、昭和9年(1934)から10年代の初めにかけて、阿部知二小松清舟橋聖一らが雑誌「行動」を中心に主張した。

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世界大百科事典 第2版

こうどうしゅぎ【行動主義 behaviorism】
J.B.ワトソンが1912年に提唱した心理学理論のもとに形成された学派。古代ギリシア以来心理学の伝統は,人間の心とその働きについて思索し,主観的な意識現象を内観法によってとらえ記述するものであった。ワトソンはこれに反対して,科学としての心理学は意識とか内観を排除して,対象を客観的な行動に限定すべきであり,それを観察可能な刺激‐反応の側面からだけ扱い,そこに行動の法則を組織的に求めていくべきだと主張した。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

こうどうしゅぎ【行動主義】
アメリカのワトソンが唱えた現代心理学の方法論の一。あらゆる心的現象を内省的方法によらず、外部から客観的に観察しうる行動を通して研究しようとする立場。ビヘイビアリズム。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

行動主義
こうどうしゅぎ
behavio(u)rism
心理学の対象を意識としないで、人および動物の客観的な行動とする立場。ブント以来の意識心理学に対し、「内観」を退け、もっぱら刺激と反応との関係、それから構成された体系を扱う。1913年、アメリカの心理学者ワトソンは『行動主義者からみた心理学』という論文により、この立場を主張し、以来、アメリカ心理学の主要な潮流となっている。[小川 隆]

初期行動主義

狭義の行動主義はワトソンに代表される初期行動主義で、19世紀に発達した動物心理学の成果、パブロフの条件反射学、ジェームズの機能主義などに育成されたものである。その主張の要点は、(1)意識内容の構成要素を明らかにしようとした構成心理学に対し、生体の機能を行動を通じて明らかにしようとする。(2)特殊な器官の機能を研究する生理学と異なって、生体の全体の機能を問題にする。(3)内観法によらないで、観察者の影響をできるだけ除いた自然科学的方法による。(4)行動を複合的なものとみ、刺激―反応の最小単位である反射、条件反射から明らかにしようとする。(5)行動は環境内の刺激に対する条件づけの結果であるとし、生得的面より習得的面を重視する。
 こうして、感覚は刺激に対する差別反応、感情は内臓器官の活動、思考は発声を伴わない言語反応などとみなされ、すべての意識は刺激―反応の関係に置き換えられる。[小川 隆]

新行動主義

初期行動主義は、生体の全体の機能を扱うとしながら、あまりにも刺激―反応の関係が直接的である点、刺激―反応の関係を受動的にだけ扱っている点、反射・条件反射の単位を要素として、行動の全体をそれらの複合として扱う点などが反省され、1930年ごろから、新行動主義といわれる動向が現れることになった。広義の行動主義はこの動向を総称する。
 行動主義は、人と動物とに共通な行動の性質を考究する道を開き、主観主義、擬人主義の偏見を正したし、習得行動の重視によって教育の可能性についての示唆を与えたといえるが、生得的行動、本能や発達についての知見では、西欧に淵源(えんげん)する精神分析学や比較行動学(エソロジーethology)の立場と対照的である。[小川 隆]
『B. F. Skinner About behaviorism (1974, Alfred A'knopf, New York)』

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精選版 日本国語大辞典

こうどう‐しゅぎ カウドウ‥【行動主義】
〘名〙
① ニヒリズム批判から、行動を重視して生じた一九二〇~三〇年代における文学上の主義。第一次世界大戦後フランスに現われ、アンドレ=マルローなどを代表とする。
※いはゆる行動主義の迷妄(1935)〈大森義太郎〉「フランスの行動主義は〈略〉知識階級が懐疑、自棄の状態からみづからを救はうとした苦闘の尊い所産であるが」
② ①に触発されて興った日本の文学運動。昭和九年(一九三四)後半、舟橋聖一、阿部知二、青野季吉らによって推進され、翌一〇年にかけてマルキシズム陣営との間で盛んな論争をひき起こした。行動主義文学。
※いはゆる行動主義の迷妄(1935)〈大森義太郎〉「わが国のいはゆる行動主義は、〈略〉なにより先にマルクシズムの反対物として現れてゐる」
③ 心理学で、科学的な心理学の課題は、客観的観察と数量的計測によって、外的刺激とそれに対する反応、つまり行動との関係を法則的に明確化するところにあると考える立場。一九一三年アメリカの心理学者ワトソンが提唱したもの。〔現代文化百科事典(1937)〕
④ 一般に思索・内省などよりも、実際の行動を重視する考え方。
※人間と真実の問題(1938)〈窪川鶴次郎〉続「駿介の生活の実践力の強さは、つまり行動主義は」

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最新 心理学事典

こうどうしゅぎ
行動主義
behaviorism
1913年にワトソンWatson,J.B.が発表した「行動主義者から見た心理学」から出発した現代心理学における方法論。

【行動主義の背景】 行動主義の発生に影響を与えたいくつかの考え方がある。一つはジェームズJames,W.の機能主義であり,心の構成ではなく,その機能に基づく分析を行なった。彼は心の生理学的説明をめざしたが,研究方法としての内観(自分で自分自身の意識を観察する方法)は維持しており,ワトソンは機能主義心理学もまた科学的心理学たりえないと批判している。もう一つは動物研究の流れであり,ロエブLoeb,J.とジェニングスJennings,H.S.はワトソンと同時期にジョンズ・ホプキンス大学におり,ワトソンはロエブの指導を受けた。最初の経験的強化理論を構築したソーンダイクThorndike,E.L.,類人猿の研究を始めたヤーキーズYerkes,R.M.も行動主義に寄与したように思えるが,ワトソンはソーンダイクをまったく評価していなかったし,ヤーキーズもまたワトソンに批判的だった。

【ワトソンの行動主義】 ワトソンは科学の目的を「予測と制御」であるとした。行動は外的行動と外からは観察されない内的行動に分けられ,思考なども微小な筋肉運動などの分析で研究できるとした。1913年の論文では具体的な研究方法は示されなかったが,のちにパブロフPavlov,I.P.の条件反射conditioned reflexの理論を知り,それを主たる方法とした。ただパブロフが大脳の研究法として条件反射をとらえていたのに対し,ワトソンは脳研究への関心は薄かったといえる。

【ワトソン以降の行動主義の思想的背景】 ポスト・ワトソンの行動主義への移行には,論理実証主義logical positivismと操作主義operationismが大きな役割を果たしている。操作主義では「概念は一連の操作と同義語」であるとされた。これが操作的定義といわれるもので,知能のように直接知覚できないようなものでも「知能テストで計られたスコア」のように操作によって定義できるとした。もう一つの大きな特徴はカテゴリーエラーの指摘であった。たとえば「時間はいつ始まったのか」といった設問はノンセンスであるとした。操作主義と双子のような思想運動が論理実証主義で,問題を真偽の検証可能なプロトコル命題にすることにより同じように扱えるとした。つまり,どのような科学の問題も形式論理の命題に落とし込めれば,同じように扱える。そこから,すべての科学は同じという統一科学unified scienceを主張した。二級科学であった心理学も,この考え方によれば科学たりえたのである。この学派も「物自体とは何か」といった設問は偽問題として退けた。さらにライルRyle,G.やウィトゲンシュタインWittgenstein,L.J.は,プロトコル分析ではなく日常言語の分析で心の研究をめざす哲学的行動主義philosophical behaviorismを提唱していった。

【ワトソン以降の行動主義】 論理実証主義の影響下にスティーブンスStevens,S.S.は方法論的行動主義methodological behaviorismを構築した。これはきわめて明快な行動主義で,私的経験と公的世界を区分し,後者のみが科学研究の対象であるとした。ハルHull,C.L.は仮説演繹法に基づく公理系としての公理論的行動主義axiomatic behaviorismの体系を構築した。要求低減need reductionとそこから派生する動因driveの低減が,個体レベルでの学習の機構であるとした。習慣強度()は強化数の関数であり,これに動因(D)と誘因(K)を乗じたものが反応ポテンシャル(),さらにそこから反応抑制(I)を減じたものが有効反応ポテンシャル()になる。ここでの反応抑制は,反応そのものによる抑制(I)と条件性抑制()からなる。この体系は公理系として美しいばかりでなく,心理学に登場した初めての学習の数量モデルであった。トールマンTolman,E.C.の認知的行動主義cognitive behaviorismでは,行動を指標として用いつつも仲介変数としての認知を導入したことに大きな特徴がある。学習は目的-手段関係means-end relationの理解であるとし,潜在学習latent learningの実験で学習そのものと外に現われた行動の違いを明らかにした。彼の体系はしだいに複雑なものになり,他の研究者が理解しづらいものになっていったが,動物の空間認知という考え方は後に海馬研究において復活した。

 スキナーSkinner,B.F.は,行動分析behavior analysisといわれる過激行動主義radical behaviorismの体系を構築した。ワトソン以降の流れの中では行動修正behavioral modification,行動薬理behavioral pharmacologyなどの応用分野を生み出した実り多い体系であった。スキナーはオペラント条件づけの方法に強化スケジュールschedule of reinforcementといわれるさまざまな強化の与え方を考案し,実験装置としてスキナー箱Skinner box,行動測定器としての累積記録器を開発した。また,複雑な行動(たとえばハトに卓球をさせる)も単純な行動から少しずつ訓練していく逐次的接近法successive approximationによって形成されることを示した。この行動形成shapingという手法は,プログラム学習という教授法を生み出した。彼は一貫して記述を重視した立場を取り,同じ被験体で実験変数を変化させる被験体内計画法within subject designを用いた。彼は心の存在を認めない立場を取るが,スティーブンスと異なり私的経験を研究対象とし,言語行動の分析を行なった。この研究法はライルやウィトゲンシュタインに近い。行動の説明を安易に神経系に求めることを戒めたが,これは当時としてはそれぞれ独立に研究を進めた方がよいという歴史認識に基づくもので,心理学は本来生物科学の一分野であると考えていた。しかし,「皮膚の下の話をするな」という標語はスキナーの追随者たちを硬直した神経科学嫌いにし,行動分析の孤立化を招いた。

【行動主義のその後】 スキナー自身は,行動を形成する随伴性を個体発生的随伴性ontogenetic contingencyと系統発生的随伴性phylogenetic contingencyに分けたが,後者の研究をする者は少なく,種差を問題とする動物行動学とは折り合いが悪かった。しかし,オペラント条件づけは動物行動の研究法としては優れた手法であり,やがて比較認知科学や脳研究へと発展していった。行動主義の理論は結局学習理論であり,心理学者の関心が学習以外に向かうと行動主義心理学の果たす役割もまた少なくなっていった。 →強化スケジュール →行動修正
〔渡辺 茂〕

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