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虫垂炎【ちゅうすいえん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

虫垂炎
ちゅうすいえん
appendicitis
虫様突起炎ともいう。盲腸炎は俗称。虫垂 (虫様突起) の急性炎症である。症状腹痛吐き気嘔吐で,腹痛はまずみぞおちの部分に起り,次第に右下腹部に限局してくる。直接の病因は,起炎菌として腸内細菌が認められるので,腸内感染が有力であるが,アレルギー説,あるいは精神的な要因も無視できず,さらに非特異的抗原抗体反応との関連も注目されている。急性虫垂炎の場合は白血球の増加がみられる。過去 100年近く,虫垂切除を唯一の対策としていたが,各種抗生物質の開発,疾病観の変化によって,内科的治療の可能性が拡大しつつある。続発症として,慢性虫垂炎のほか,虫垂炎性腹膜炎がある。

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デジタル大辞泉

ちゅうすい‐えん【虫垂炎】
虫垂炎症。初め上腹部やへその辺りに痛みがあり、しだいに右下腹部にうつる。吐き気・発熱などを伴い、悪化して破れると腹膜炎を起こす。俗に盲腸炎ともいう。虫様突起炎

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栄養・生化学辞典

虫垂炎
 虫垂の炎症.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

ちゅうすいえん【虫垂炎 appendicitis】
虫垂は細い管腔をもっているが,この管腔がなんらかの原因で閉塞すると炎症が起こってくる。これが虫垂炎であるが,盲腸炎とも俗称される。炎症を起こすものは各種の腸内細菌で一定していない。虫垂炎の原因については腸内感染説のほか,血行感染説,アレルギー説や食事に関係があるとする説などいろいろで,決定的なものはない。10~20歳代に最も多く起こる。 症状は便通異常(便秘あるいは下痢),食思不振,悪心などのあとに右下腹部に疼痛が起こってくる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

ちゅうすいえん【虫垂炎】
虫垂の急性炎症。右下腹部の疼痛とうつう・発熱・悪心おしん・嘔吐などの症状が見られる。俗に盲腸炎という。虫様突起炎。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

虫垂炎
ちゅうすいえん
appendicitis
虫垂の炎症で、もっとも頻度の高い腹部急性の外科疾患。一般には盲腸炎ともよばれ、虫様突起炎とよんだこともあったが、1939年(昭和14)に虫垂炎という名称に統一され現在に至っている。原因については古くから種々の説があって、まだ決定的なものはない。すなわち、虫垂内容の停滞など、ある一定の条件下で腸内細菌が虫垂粘膜に炎症をおこすとする腸内細菌説や、扁桃(へんとう)炎の溶血性連鎖球菌など細菌が血流に入って虫垂に定着し炎症をおこすとする血行感染説のほか、食事性酵素説、アレルギー説、自律神経説、糞石(ふんせき)説、異物説、寄生虫説、ウイルス説、外傷説などがある。誘因としては、暴飲暴食、感冒、胃腸炎、便秘、過労などがあげられる。また、発症は乳幼児や高齢者に少なく、10~30歳に多い。かつては男性に多くみられたが、最近は頻度の男女差がなくなってきたほか、一般に菜食者よりも肉食者、農村よりも都会に多く、同一家族に発病率が高い。
 症状は、前駆症状として食欲不振、悪心(おしん)や嘔吐(おうと)、下痢や便秘などがみられることもあるが、突然に腹痛や悪心で発症することが多い。まず上腹部痛に始まり、しだいに右下腹部に限局するようになる。最初は間欠性の仙痛様の疼痛(とうつう)であるが、やがて回盲部に限局した持続性の痛みとなる。発熱は37~38℃程度のものが多く、39℃を超えたり、直腸内体温が腋窩(えきか)体温より著しく高くなる場合(腹膜炎)は進行したもので、初期にはみられない。なお、他覚症状としては診断に役だつ圧痛点がいろいろあるが、回盲部の圧痛は大半のものにみられる。
 治療は、外科的に虫垂切除を行うことが原則とされているが、内科的に局所の安静と冷罨法(あんぽう)を行うとともに、強力な抗生物質を投与する保存療法も行われる。これによっても再発を繰り返したり、炎症が持続・進行し続ける場合、あるいは初めから腹膜刺激症状のある場合は、外科療法の適応となる。
 なお、慢性虫垂炎(俗に慢性盲腸)とよばれるものは「いわゆる慢性虫垂炎」という程度の意味で、定義は不明確である。普通は虫垂自体の病変ばかりでなく、虫垂炎経過後の周辺臓器の癒着、これに基づく腸管の通過障害や機能障害による症状も含まれている。[岡島邦雄]

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精選版 日本国語大辞典

ちゅうすい‐えん【虫垂炎】
〘名〙 盲腸の先端にある虫垂の炎症。最初上腹部および臍部に痛みを発し、しだいに右下腹部にその痛みが限定してくる。便秘、はき気、発熱を伴うことが多い。俗に盲腸炎という。虫様突起炎。

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六訂版 家庭医学大全科

虫垂炎
ちゅうすいえん
Appendicitis
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 虫垂炎は、虫垂に化膿性の炎症が起こる病気です。虫垂は、盲腸(もうちょう)(右下腹部の小腸から大腸につながった下の部分)の先に突き出た5~10㎝ほどの先端が閉じた突起物で、長さ6~8㎝、太さは鉛筆程度です。虫垂は、リンパ組織が集まっているため、免疫に関与するともいわれていますが、少なくとも成人では不要と考えられている臓器です。

 虫垂炎は、一般には「盲腸」あるいは「盲腸炎」という通称で知られていますが、これは昔、虫垂炎の発見が遅れ、炎症が盲腸まで広がった状態で発見されたケースが多かったためです。

 急に激しい腹痛を訴え、外科的な治療を必要とする病気を総称して「急性腹症」といいますが、虫垂炎はそのなかでも最も頻度の高いもので、15人に1人が一生に一度この病気にかかるといわれます。虫垂炎の発症のピークは10~20代ですが、小児や高齢者も含めてどの年齢層でもみられます。男女差はありません。

 虫垂炎は適切に治療されれば予後のよい病気ですが、治療しないまま放置しておくと、虫垂は破裂し、細菌を含んだ腸の内容物が腹腔内へ漏出して膿瘍(のうよう)(感染によるうみがたまったもの)を形成したり、腹膜炎を起こして命取りになることもあります。また、細菌が血流に乗って全身に広がると敗血症(はいけつしょう)(菌血症、敗血症、敗血症性ショック)になり、命を脅かすこともあります。実際、かつては死亡率が60%以上もある恐ろしい病気と考えられていました。

原因は何か

 虫垂炎の原因はまだ完全にはわかっていませんが、糞便(糞石)や異物、リンパ組織の過形成、まれには腫瘍などで虫垂の入り目がふさがったり、狭くなることがきっかけになると考えられています。これにより、虫垂の内圧が上昇して血行が悪くなり、そこに細菌が進入して感染を起こし、急性の炎症が起こると考えられています。

 炎症の程度により、カタル性(粘膜層の軽い炎症)、蜂窩織炎(ほうかしきえん)性(全層の化膿性炎症)、壊疽(えそ)性(虫垂壁全層の壊死(えし))に分類され、多くの虫垂炎はカタル性から始まり、炎症が進むにつれて蜂窩織炎性、壊疽性へと進展します。壊疽性では、穿孔(せんこう)に至ると腹膜炎を合併します。

症状の現れ方

 腹痛、食欲不振、発熱、吐き気、嘔吐が主な症状です。典型的な経過としては、上腹部やへそのまわりが突然痛み出し、次に発熱、吐き気や嘔吐、食欲不振が起こります。数時間もすると吐き気は止まり、数時間から24時間以内に痛みが右下腹部に移ってきます。この部分を押して離した時に痛みがひどくなります(反跳痛(はんちょうつう)、ブルンベルグ徴候)。ただ、このような典型的な症状を示すことは決して多くなく、半数程度にすぎません。

 発熱は37~38℃の微熱のことが多く、39℃以上の場合は穿孔性腹膜炎や膿瘍形成を考える必要があります。

検査と診断

 疼痛が腹部全体やみずおち(みぞおち)に始まり、次第に右下腹部に移動して、吐き気、嘔吐、発熱を認めた場合、虫垂炎の可能性が考えられます。しかし、こうした症状は虫垂炎に特有というわけではなく、尿路結石、急性腸炎、大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)、骨盤内での炎症などでもみられます。したがって、診断に際しては、これらの他の病気も視野に入れながら、おなかの診察(触診)を軸に採血、腹部のX線撮影、超音波検査などの結果を総合して診断します。とくに重要なのは炎症の程度を示す白血球数で、虫垂炎の場合には、その値が異常に高くなります。

 触診は、右下腹部の圧痛(押した時の痛み)がポイントとなります。虫垂炎が進んで虫垂壁に穴があいて(穿孔)、急性腹膜炎を起こすと、腹壁の緊張が増して板のように硬くなります(筋性防御(きんせいぼうぎょ))。また、急性腹膜炎を合併した場合には、腹部を圧迫して手を離す瞬間に痛みが増強します(ブルンベルグ徴候)が、これは腹膜が刺激された状態で、手術適応を判断する際に重要です。

 採血では、炎症の程度を表す白血球数や反応蛋白(CRP)の値が問題となります。炎症が起こると、早期に白血球が増加し、急性虫垂炎の場合では約90%の人で10000/μ以上の値を示すといわれます。この値も治療の方法を決定するひとつの指針となります。高齢者では反応が出にくいことがあります。

 典型的な虫垂炎の場合は、診断は症状、おなかの所見、血液検査から臨床的に行います。所見が非典型的または不確かな場合、とくに訴えのあいまいな子どもや精神障害者、炎症の進行にもかかわらず症状や発熱、白血球増多などの現れにくい高齢者では、腹部超音波検査やCT検査で虫垂の形態的な変化を確認して診断することがあります。これらの画像検査は、ある程度炎症が進行した虫垂炎の診断に有効で、大きくはれた虫垂や虫垂壁の肥厚を確認します。また、虫垂内部の糞石や、虫垂のまわりのうみ(膿瘍)や腹水、腸管の麻痺像も確認できます。

 虫垂炎は約10%ほどの誤診があるといわれています。鑑別診断を要する病気として、女性では、骨盤内炎症性疾患(PID)、卵巣出血、卵巣嚢腫茎捻転(のうしゅけいねんてん)子宮外妊娠、などがあります。次に腸の病気として、結腸とくに盲腸近くの大腸憩室炎、メッケル憩室炎、回盲部(かいもうぶ)周囲炎、腸重積症、この近くの大腸がんなどがあります。小児では、急性腸間膜リンパ節炎が誤診しやすい病気です。

治療の方法

 急性虫垂炎の病期は、前述したように大きく3段階に分かれており、軽いほうからカタル性、蜂窩織炎性、壊疽性と分類されています。かつては虫垂炎との診断が得られれば、すべて手術していました。しかし最近では、薬物療法が進歩し、カタル性のものについては、抗生物質による内科的治療で治るようになっています。よく「虫垂炎をちらす」といういい方をしますが、これは薬剤で炎症を緩和することを指します。ただし、薬物療法の場合、10~20%の割合で再発します。

 腹膜刺激徴候が明らかな場合や、画像検査で虫垂が1㎝以上に腫大(しゅだい)して虫垂の壁構造の破綻や膿瘍がある場合は、虫垂炎が蜂窩織炎性や壊疸性まで進んだことを意味しており、緊急手術が必要です。早期に手術を行った場合、死亡率は1%未満と非常に低く、入院期間も1週間程度ですみます。

 手術方法としては、従来から行われている「開腹手術」と、「腹腔鏡を用いる手術」の2通りがあります。まず、開腹手術ですが、これには「交差切開法」と「傍腹直筋(ぼうふくちょっきん)切開法」があります。交差切開法は傷が目立たないのが利点です。一方、傍腹直筋切開法は、おなかのなかにうみがたまっていた場合でも、その方向に切開する長さを延長できるのが特徴です。

 腹腔鏡による手術は、おなかに小さな穴をあけるだけですから、傷が極めて小さく、入院期間も2~3日で短くてすみます。

 それぞれの方法には、メリット、デメリットがありますので、手術を受ける場合には、医師の説明を十分に聞いてから選択することが大事です。

病気に気づいたらどうする

 腹痛、嘔吐、発熱という虫垂炎の主症状がそろっている場合にはもちろんですが、典型的な症状が出ていなくても、虫垂炎を疑った場合には、ともかく医師の診察を早く受けるべきです。虫垂炎は自然によくなることはなく、放っておくと、穿孔して腹膜炎を起こし命にかかわります。とくに小児の場合は、症状が出現してから穿孔を起こすまでの時間が短いので注意しなくてはなりません。

武田 宏司

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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