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虚血性心疾患【きょけつせいしんしっかん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

虚血性心疾患
きょけつせいしんしっかん
ischemic heart disease; IHD
血液の循環不全で心筋の一部に虚血を生じ,そのために起る心疾患の総称で,動脈硬化性心疾患,冠動脈性心疾患とほぼ同義語である。臨床的な病型としては,狭心症心筋梗塞が代表的である。原因としては,最も一般的なものは冠状動脈のアテローム性硬化症であるが,動脈炎や塞栓,大動脈弁膜症や先天異常が原因となることもある。重度の冠状動脈硬化症の場合は,常に虚血性心疾患を発生させるが,軽症であれば,心筋の虚血を起さないで経過することもある。また,側副血行の発達の程度も関係する。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

虚血性心疾患
心臓の筋肉(心筋)は、冠動脈によって酸素や栄養が補給されている。冠動脈が細くなったり心筋の酸素の需要が異常に高まると、心筋に十分な酸素が行き渡らずに機能不全に陥る。これを冠不全といい、さらに、心筋虚血を生じて種々の症状を示すものが虚血性心疾患。主な原因として、冠動脈硬化症やそれに伴う冠動脈血栓症がある。虚血性心疾患には、原発性心停止、狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈がある。原因となる危険因子は、高血圧症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、喫煙など。
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

デジタル大辞泉

きょけつせい‐しんしっかん〔‐シンシツクワン〕【虚血性心疾患】
冠状動脈に狭窄(きょうさく)・閉塞が生じ、心筋への血流・酸素供給が阻害されることによって起こる、心疾患の総称。狭心症心筋梗塞など。動脈硬化が主な要因。冠状動脈疾患冠動脈心疾患IHD(Ischemic Heart Disease)。

出典:小学館
監修:松村明
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編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

虚血性心疾患
 心筋の虚血が原因で起こる疾患.一過性の狭心症と心筋の壊死を起こす梗塞がある.

出典:朝倉書店
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生活習慣病用語辞典

虚血性心疾患
心筋 (心臓を動かしている筋肉) の血液の流れが低下または遮断され (虚血) 障害が生じた状態をいいます。主な疾患は狭心症と心筋梗塞です。冠動脈 (心筋に酸素栄養を送る血管) が動脈硬化で狭くなったり、詰まったりすることが原因です。

出典:あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)
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家庭医学館

きょけつせいしんしっかん【虚血性心疾患】
 心臓に酸素や栄養を運んでいる冠(かん)(状(じょう))動脈(どうみゃく)の異常によっておこる狭心症(きょうしんしょう)(「狭心症」)、心筋梗塞(しんきんこうそく)(「心筋梗塞(症)」)を総称して、虚血性心疾患といいます。
 虚血性心疾患は、日本では死因別の死亡率が年々低下しています。しかし、人口の高齢化にともなって、近年、患者さんの絶対数は増加の傾向にあり、おもな死因の1つになっています。

出典:小学館
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食の医学館

きょけつせいしんしっかん【虚血性心疾患】

《どんな病気か?》


 虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)とは、心臓を動かす筋肉(心筋)に栄養分や酸素を運ぶ冠動脈(かんどうみゃく)が、動脈硬化(どうみゃくこうか)などで狭くなったり閉塞して、心臓の機能が低下したり、心筋に壊死(えし)が起こる病気で、狭心症(きょうしんしょう)と心筋梗塞(しんきんこうそく)を総称したものです。心筋に送られる血液の量が不足(虚血)することからこう呼ばれます。
 欧米では死亡原因の第1位にあげられる国が多い病気ですが、日本は現在第2位。しかも死亡率は年々低下の傾向にあります。しかし、食生活の欧米化などにより、今後、増加するのではと懸念されています。
 虚血性心疾患では、脂質異常症、高血圧症、喫煙、糖尿病(とうにょうびょう)が4大危険因子としてあげられます。また、加齢とともに動脈硬化がすすむこともあり、高齢になるほど発症が多くみられます。
〈冠動脈の障害で心筋の機能が低下する〉
●狭心症
 心臓は、各臓器に酸素と栄養素を供給するために血液を送りだす、たいせつな役割をになっています。その量は1分間に約5リットル、60~80回もの収縮を行っています。そのため、心臓の筋肉である心筋はとても厚く、丈夫にできています。
 もちろん、この心筋自身にも酸素と栄養素を運ばなければならず、その役割をするのが心臓を取り巻くように伸びている冠動脈です。しかし、この冠動脈に障害が生じれば、酸素も栄養素も心筋に供給されなくなり、その機能が低下してしまうわけです。
 原因となる冠動脈の障害には2つあり、1つは動脈硬化によるもの、もう1つは冠動脈のけいれんによって起こるもの。いずれも冠動脈が狭くなり、血流が少なくなって、心筋機能が低下します。
 この状態が狭心症です。おもな症状は胸、とくに左胸の痛みや圧迫感ですが、首がしまるような感じ、背中の痛み、頭痛、動悸(どうき)、息切れ、めまいなどの症状を訴えることもあります。
 これらの症状は、外気温が低い環境で体に負担をかけた場合にでやすく、安静にしていると、症状は消えてしまうことが多いという特徴があります。ただし、けいれんが原因の場合は、早朝などの安静時に起こることが多いのが特徴です。
 狭心症では、すぐ命にかかわるということはそれほど多くありませんが、放っておくと心筋梗塞にすすむことがあります。
〈動脈がつまって心筋への血流が止まる〉
●心筋梗塞
 心筋梗塞も狭心症と同様に、冠動脈が狭くなって起こります。多くの場合、動脈硬化によって動脈中に血栓や脂肪のかたまりが生じて血流が悪くなっているところに、運動や興奮などで急激に血圧が上がり、動脈がつまってしまうというものです。血液の流れが止まり、心筋に血液が行き渡らないと、心筋の一部が壊死(えし)を起こして機能を失い、心不全(しんふぜん)を起こして死にいたることもあります。
 症状は狭心症と同様に、はげしい胸の痛みを感じますが、狭心症は安静にしていると数分でおさまるのに対し、心筋梗塞では30分以上続きます。また、狭心症と同様のほかの症状も、狭心症より長く、持続します。

《関連する食品》


 食生活においては、虚血性心疾患の4大危険因子を排除し、冠動脈の動脈硬化を予防することがたいせつです。
 まずは、コレステロールの多い食品をとらない、塩分をひかえる、適切な1日の摂取カロリーを維持することです。
○栄養成分としての働きから
 そのうえで、心筋を丈夫にする食品を積極的に摂取しましょう。心筋の材料はたんぱく質ですから、マグロなどの良質なたんぱく質を豊富にとりましょう。
〈海藻類やシイタケ、レタスが心筋を機能させる〉
 また、心筋を円滑に機能させるためにはビタミン類やミネラルの摂取も重要です。とくにビタミンA、C、Eはコレステロールを血管に蓄積させる原因となる酸化作用を防止する働きもあるので有効です。トマトやレタス、ピーマンなどから摂取しましょう。ミネラルは海藻類のほか、シイタケにも豊富です。とくに漢方でも天日干しをした干しシイタケの薬効が高いといわれています。
 便秘も発作を誘発させる要因になりますが、予防するためには食物繊維が有効です。こんにゃくやキノコ類、レタスやワカメを毎食たっぷりととるようにしましょう。同時に、リンゴや豆類に含まれる水溶性の食物繊維はコレステロール値を下げる働きもあるので、摂取には水溶性の食物繊維を選ぶといいでしょう。
 発作防止にはカキも有効です。アミノ酸の一種であるタウリンが豊富に含まれており、心臓の興奮を抑え、血栓の形成も予防します。
 そして循環器系において有効なのがDHAやIPAなどの不飽和脂肪酸です。これらは血栓の形成を防止します。サバやイワシ、アジやブリなどの青背の魚に多く含まれます。
○漢方的な働きから
 漢方でも、虚血性心疾患に有効な食品がたくさんあげられています。狭心症に効果があるとして有名なのがラッキョウです。毎食2~3粒を食べると、心筋梗塞の予防にもなるといわれています。弱った心臓には豚の心臓(ハツ)が有効です。弱った臓器を強くするには動物の同じ臓器がよいという漢方的な考え方にもとづくもので、気持ちを落ち着かせてくれるので、興奮や心労による発作を予防する意味でも効果があります。
 また、キクラゲは血を浄化し、さらさらにしてくれる効果があるので、危険因子を直接的に改善し、虚血性心疾患を予防します。
○注意すべきこと
 危険因子の1つである糖尿病のある人は、砂糖の過剰摂取に気をつけなければなりませんが、同時に油脂の摂取にも注意しましょう。油脂のなかには、血中コレステロール値を上げるトランス型脂肪と呼ばれる物質を形成するものがあります。これらはバターなどに多く含まれているので、砂糖の摂取を注意するのと同時に、ケーキやクッキーなどの菓子類はひかえるようにしましょう。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

きょけつせいしんしっかん【虚血性心疾患 ischemic heart disease】
冠動脈疾患coronary artery diseaseともいう。心臓に酸素と栄養を送る冠状動脈の障害により,血流が減少または不足して起こる病気の総称。狭心症,心筋梗塞(こうそく)などが含まれる。狭心症心筋梗塞【編集部】

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大辞林 第三版

きょけつせいしんしっかん【虚血性心疾患】
冠不全により心筋が酸素不足に陥ったために起こる心疾患の総称。狭心症と心筋梗塞に大別される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

虚血性心疾患
きょけつせいしんしっかん
ischemic heart disease
心筋への血流量が不足して心筋細胞への酸素供給が滞り、心室筋をはじめとする心筋に虚血を生ずるためにおこる心疾患の総称。心筋へは冠動脈を通じて必要な大量の酸素とエネルギーが供給されていることから、冠動脈心疾患ともよばれる。略称IHD。日本の発症率は欧米に比べて低いが、高齢化と食習慣の欧米化に伴い増加傾向にある。
 多くは動脈硬化が原因で、冠動脈に狭窄(きょうさく)や閉塞を生ずると血流が滞って心筋は虚血に陥り、一過性の閉塞では狭心症となり、血栓などにより完全に閉塞し虚血が持続すれば心筋は壊死(えし)に陥り心筋梗塞(こうそく)となる。両者とも症状として胸痛を伴うが、狭心症が短時間で収まるのに対し、心筋梗塞では長く続くことがあり、痛みの程度も心筋梗塞のほうが激しい。とくに急性心筋梗塞は突然死に至ることもある重篤な危機的状態をもたらす疾患であり、治癒してもさまざまな合併症を伴う。動脈硬化をおこす危険因子には、高血圧、喫煙、高脂血症、糖尿病、肥満などがある。遺伝的素因の研究も進みつつある。薬物療法のほか、カテーテル治療など低侵襲な治療法が開発されている。重症例では手術が適用となり、冠動脈バイパス術などの治療法がある。[編集部]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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内科学 第10版

虚血性心疾患(循環器疾患と遺伝子異常)
 虚血性心疾患は心筋梗塞,安定狭心症,不安定狭心症などを含む広い疾患概念である.それぞれの疾患について遺伝学的背景が存在するが,ゲノム上においてはDNA変異とDNA多型の2種類の概念に分けられる.Mendel型遺伝形式をとる単一遺伝子病の原因となるのが生殖細胞系列におけるDNA変異であり,疾患罹患性の決定因子となる.DNA多型は非患者集団においても認められるため,疾患罹患に対して決定的なものではなく危険因子である.DNA多型は,ほかのDNA多型や環境要因との複合的な相互作用により疾患の発症にかかわると考えられている.
(1)多因子疾患の危険因子としての遺伝的素因
 近年のゲノム研究の進歩により,多数の患者群と多数の対照群を比較するゲノムワイド関連解析が可能となり,数多くの虚血性心疾患関連遺伝子が同定されている.その一部を表5-4-1に示す(dbGaP database).表には含まれていないが,日本においても関連解析は進んでおり,炎症関連遺伝子が複数同定されている.
 これまでに明らかになった関連遺伝子のオッズ比は最大でも1.8程度で,既知の冠危険因子と比較すると必ずしも大きな危険因子ではないが,複数の関連遺伝子を組み合わせることによりオッズ比は高まる.後述するが,エビデンスの強化により罹患危険性マーカーとして利用可能となる.
 巨大冠動脈瘤や冠動脈石灰化を合併する川崎病については,Ca2/NFAT経路上にある2つの遺伝子が冠動脈病変合併症の有無に関連している.
 ただし,関連解析によって得られる知見はEBM(evidence-based medicine)におけるエビデンスレベル3であることに留意すべきである.メタ解析あるいは前向き研究により,エビデンスレベルをあげる必要がある.
(2)Mendel型遺伝形式をとる虚血性心疾患の原因遺伝子
1)MEF2A遺伝子:
常染色体優性遺伝形式をとる家族性冠動脈疾患の家系において,この遺伝子のエクソン11に21塩基の欠損が認められた.その他3カ所のアミノ酸置換を伴う変異も報告されている.この遺伝子は転写因子をコードしており,上記の変異は主要転写活性化領域あるいはその近傍にあたる.遺伝子変異により転写活性化能が失われるが,冠動脈疾患との機能的連関は明らかではない.
2)LRP6遺伝子:
この遺伝子は,LDL受容体遺伝子ファミリーの一員であり,平滑筋細胞での発現量が多い.Wntシグナル経路に存在し,細胞周期活性にかかわることで,血管平滑筋細胞の増殖を制御している.この遺伝子のR611C変異が,若年発症型冠動脈疾患の原因となる.細胞生物学的にはこの変異により,PDGF刺激による血管平滑筋細胞の増殖が促進され,動脈硬化につながる.
(3)冠動脈疾患を合併する遺伝性脂質代謝異常症の原因遺伝子
1)LDL受容体遺伝子:
家族性高コレステロール血症の原因遺伝子の1つである.LDL受容体はアポ蛋白B-100あるいはアポ蛋白Eを認識し,リポ蛋白を循環血液中から肝臓へ輸送する役割をもつ.遺伝子変異によりこの機能を失い,血清コレステロール値が高値となる.遺伝子変異は60カ所以上報告されており,変異のホモ接合体では幼児から小児期より冠動脈疾患の合併をみる.ヘテロ接合体においては男性では20代から,女性では40代から冠動脈疾患が認められる.
2)PCSK9遺伝子:
この遺伝子はエンドプロテアーゼファミリーに属し,LDL受容体の分解にかかわる蛋白をコードしている.この遺伝子の変異はLDL受容体の分解を促進することで血中LDL量を増加させ,家族性高コレステロール血症の原因となっている.一方で,決定因子ではないが,同じ遺伝子内の変化でありながら,血中LDL量を低下させる多型も存在する.この多型は冠動脈疾患罹患に対して保護的に働く.
3)LDLRAP1遺伝子:
常染色体劣性遺伝形式をとる家族性高コレステロール血症の原因遺伝子である.この遺伝子がコードするのは,LDL受容体の細胞質部分,リン脂質あるいはエンドサイトーシスにかかわるクラスリンコンポーネントと結合するアダプター蛋白であり,LDL受容体の細胞内取り込みにかかわる.9種類のDNA変異が同定されているが,ほとんどがナンセンス変異あるいはフレームシフト変異であり,本来の蛋白がつくられず,機能を喪失する.
4)ABCA1遺伝子:
血清HDLコレステロールの低値を呈する常染色体劣性遺伝形式をとるTangier病や家族性HDL欠損症の原因遺伝子である.この遺伝子がコードする蛋白はATP結合カセットをもつトランスポーターであり,HDLの形成に重要な役割を果たす.両疾患合わせて20種類以上のDNA変異が報告されており,いずれも機能喪失型である.
5)ABCG5/ABCG8遺伝子:
常染色体劣性遺伝形式をとるシトステロール血症の原因遺伝子である.両遺伝子は同一遺伝子座に逆方向に存在しており,遺伝子間の双方向プロモーターにより,同一の発現制御を受け,肝細胞および小腸上皮細胞で共発現している.肝臓では胆汁へのコレステロール排出,小腸では植物ステロールとコレステロールを小腸腔内に排出する機能をもつ.両遺伝子合わせて15種類以上の遺伝子変異が報告されている.
6)APOA1遺伝子:
アポリポ蛋白AI欠損症の原因遺伝子である.アポリポ蛋白AIはHDLの主要な構成成分であり,遺伝子変異による機能喪失により著明な低HDL血症を呈する.20種類以上の遺伝子変異が報告されている.
7)APOB遺伝子:
常染色体優性遺伝形式をとる家族性アポB-100欠損症の原因遺伝子である.アポ蛋白BのLDL受容体結合領域に遺伝子変異をきたし,LDL受容体への結合能が低下している.
8)APOE 遺伝子:
APOE 遺伝子のE2アイソフォームは受容体への結合能を欠いており,家族性III型高脂血症においてはE2アイソフォームのホモ接合体が病態の基盤となっている.
9)LIPC遺伝子:
非常にまれな肝性リパーゼ欠損症の原因遺伝子である.3種類の遺伝子変異が報告されている.
(4)その他
 コレステリルエステル転送蛋白欠損症はCETP遺伝子の異常が原因で著明な高HDL血症を呈するが,心血管病合併との関係については結論をみていない.
 家族性複合型高脂血症,家族性Ⅳ型高脂血症は冠動脈疾患の合併をきたしやすいが,原因遺伝子は不明である.小児期の疾患で冠動脈病変の合併を認める川崎病あるいはgeneralized arterial calcification of infancyについても決定因子となる遺伝子変異は明らかになっていない.[田中敏博]
■文献
この分野の進歩は非常に早く,かつ大量の知見が集積されているため,web上のデータベースを参照することが必須である.dbGaP database (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gap)Online Mendelian Inheritance in Man (http://omim.org)

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六訂版 家庭医学大全科

虚血性心疾患
きょけつせいしんしっかん
Ischemic heart disease
(お年寄りの病気)

高齢者での特殊事情

 米国の65歳以上の高齢者では、その3割の人が狭心症を含めた虚血性心疾患(狭心症(きょうしんしょう)急性心筋梗塞(しんきんこうそく)など)の臨床的徴候を示すといわれており、日本でも高齢社会の到来とともにポピュラーな疾患になってきています。

 75歳未満では男性に多くみられる病気ですが、75歳以上では男女間の差は少なくなり、85歳以上ではほぼ同じ頻度になります。また、虚血性心疾患による死亡者の85%は65歳以上であるといわれています。

●狭心症の場合

 狭心症のひとつである労作性(ろうさせい)狭心症は、歩行などの運動や労作によって1~15分続く前胸部痛、前胸部不快感などが誘発され、安静あるいはニトログリセリンの舌下錠(ぜっかじょう)によって数分以内に軽快する経過が特徴的です。しかし、高齢者では前胸部痛よりは息切れや疲れやすさを訴えることが多くなり、部位も必ずしも胸骨部の痛みではないことがあり、誤診の原因になります。

 さらには、胸痛などを伴わない無症候性心筋虚血(むしょうこうせいしんきんきょけつ)も、3割程度の人に認められるといわれています。また、認知症や意識不鮮明のため狭心痛の症状を正確に伝えられない人がいるので注意が必要です。

●急性心筋梗塞の場合

 同様に、高齢者の急性心筋梗塞では、典型的な胸痛を訴えるものはその3分の2にすぎず、神経学的症候を示したり、胃腸症状を訴えることが多くみられます。これらの結果、高齢者は発症から医療機関受診までに、若い層に比べてより長い時間を要してしまい、治療の遅れにつながってしまいます。

 高齢者の急性心筋梗塞例では死亡率が高く、肺水腫(はいすいしゅ)心不全(しんふぜん)心原性ショックなど重い合併症を起こしたり、心臓ペースメーカーを必要とする伝導障害あるいは心房粗細動(しんぼうそさいどう)などを合併する場合の多いことも知られています。

治療とケアのポイント

●狭心症の場合

 症状、心電図、運動負荷試験などで狭心症の診断(あるいは疑い)がついたら、次に冠動脈造影(かんどうみゃくぞうえい)検査(心臓カテーテル検査)を行うことを検討します。冠動脈のどこに、何カ所、どんな狭窄(きょうさく)病変があるのかを知るために行う検査です。患者さんの全身状態、理解力、腎機能、あるいは希望(人生観)を加味して検査を行うか否かを決めますが、条件が満たされれば85歳を超える人でも安全に検査することが可能です。

 最近の狭心症の検査では心臓カテーテル検査による冠動脈造影のほかに、マルチスライスCTスキャンを用いた冠動脈CTアンギオグラフィ(CTA)も行われるようになってきました。腕の静脈に造影剤を注入することで冠動脈を映し出すことができるので、カテーテルを体内深くまで入れる必要がなく、外来で検査できます。冠動脈狭窄の判定能力は心臓カテーテル検査による冠動脈造影に及びませんが、スクリーニング検査として用いられるようになってきました。

 狭心症の治療は、内科的薬物治療、外科的冠動脈バイパス手術、そしてカテーテルによる冠動脈インターベンション治療(風船による冠動脈拡張術、ステント留置術など)の3種類の治療法から、ひとつあるいは複数を組み合わせて行います。主治医とよく相談し、病状と患者さんの希望に合った治療法を選択します。なお、後二者の治療を行うためには、前述した冠動脈造影検査が必須になります。

 日常生活では、冠動脈の動脈硬化の進行を防ぐために糖尿病高血圧脂質異常症をきちんと管理し、禁煙することが極めて重要になります。医師に指示されたカロリーや塩分の摂取量を守り、ダイエットにより肥満を解消することも大切です。

 それまで安定していた狭心症の症状が急に出やすくなったり、症状が強くなった際には、急性心筋梗塞の前触れ(不安定狭心症)であることがあるので、すみやかに主治医に相談してください。

●急性心筋梗塞の場合

 突然、強い胸部痛を訴えて発症する急性心筋梗塞は、発症直後の6時間あまりが治療上の“ゴールデンアワー”と呼ばれています。この間に、冠動脈の血流を再開させる再潅流(さいかんりゅう)療法を行うと一部の心筋を梗塞壊死(こうそくえし)から救い、患者さんの心機能を保持し、生命の危険(死亡率)を改善しうるのです。このため、15分を超えて続く胸痛発作がある時には、ただちに救急医療機関を受診することが大切です。

 急性心筋梗塞では、年齢、合併症(腎機能の低下、認知症、出血性疾患など)、心筋梗塞の規模と循環動態、発症からの時間経過などを総合的に判断し、保存的治療、冠動脈血栓溶解(かんどうみゃくけっせんようかい)療法、緊急冠動脈インターベンション治療のなかから治療法を選択します。

 保存的治療は、安静、鎮静、酸素吸入、硝酸薬(しょうさんやく)の投与などの一般的治療を行ったうえでCCU(心臓集中治療ユニット)において行われます。不整脈の監視と治療、ポンプ失調に対する薬物および機械的補助療法、機械的合併症(心破裂、心室瘤(しんしつりゅう)形成など)の予防と治療が中心になります。

 発症から6時間以内で禁忌がなければ、各施設の状況により冠動脈血栓溶解療法あるいは緊急冠動脈インターベンション治療を行います。

その他の重要事項

 高齢者がCCUなどに入院すると、CCU症候群と呼ばれるせん妄(もう)状態を来すことがしばしばあります。せん妄とは、軽度あるいは中等度の意識障害とともに妄想や興奮、うわ言などが続く状態のことで、病気による苦痛、不安、孤独感などの精神的・肉体的ストレスを背景に現れます。

 病棟内で日ごろ慣れ親しんだ家族の顔を見、会話をすることで予防できることもあり、症状が現れても落ち着かせることができます。こまめに面会することは、高齢の患者さんにとって重要な精神的支えなのです。

野村 周三

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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