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自我【じが】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

自我
じが
ego; self
心理学的,倫理的意味では経験的な個体性についての意識をいう。精神分析では現実との間に接触を保ち,イド超自我とを仲介する意識的なパーソナリティの側面のこと。発達過程でイドより分化し,さらにこの自より超自我ないし自我理想が分化して成熟の段階に達するとされる。さらに,自己を志向している心理過程をさす。自分自身の興味や資質などにのみかかわり合い (自己中心的) ,もっぱら自分自身の安寧をはかろうとする (利己的) 過程などが含まれる。存在論的意味では経験的自我を構成するところの同時的かつ継続的偶有基体としての恒久かつ不変の現実存在をいい,論理学的意味では,思考する主体をいうが,この主体の統一性と同一性とは,直観に与えられた多様な所与を総合し,意識のうちに生起する諸表象間の関連を保つための必要条件である。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

じ‐が【自我】
自分。自己。
哲学で、知覚・思考・意志・行為などの自己同一的な主体として、他者や外界から区別して意識される自分。⇔非我

㋐心理学で、行動や意識の主体。自我意識。
精神分析で、イド超自我を統制して現実への適応を行わせる精神の一側面。エゴ

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

じが【自我】
〈我(が)〉という漢字は,もとは〈ぎざぎざの刃をもった(ほこ)〉を描いた文字で,〈峨〉と同系の語であったが,音の共通性から自称の語として用いられるようになったといわれている。今日の中国語でも,自称には〈我wŏ〉が用いられる。日本では,自称は古来〈わ〉や〈われ〉(あるいは〈あ〉〈あれ〉)であったため,それらに〈我〉が当てられたわけである。一方,〈自〉という漢字は鼻をかたどったもので,鼻を指さして〈自分〉を示すことから,自分の意に転用された語であるという。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

じが【自我】
〘哲〙 自分。自己。意識や行為をつかさどる主体としての私。対象(非我)・他者(他我)から区別されるが、他我もまた一個の自我である。人格や作用の中枢として、認識の根拠・道徳的行為や良心の座となる。 ⇔ 非我
〘心〙
自分自身に関する主体としての意識の総体。自我意識。
精神分析で、イド・超自我とともに人格を構成する心的領域。イドと外界の現実や超自我との間で現実原則に従って調整をはかるもの。エゴ。 → イド超自我

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

自我
じが
self
思考、意志、行為などの諸作用の遂行者をいう。哲学の課題は自我の探究であり、それはデルフォイの箴言(しんげん)「汝(なんじ)自身を知れ」への応答であるといえるだろう。ギリシアの哲学者ヘラクレイトスの「我は我自らを求めたり」ということばは、その応答とみることができる。この「汝自身を知れ」を真に体現したのはソクラテスである。ソクラテスは「無知の知」の自覚を通して、知を愛し求めるという哲学の地平を切り開いた。
 しかし自我の問題が哲学の根本問題として登場したのはデカルトにおいてである。デカルトは方法的懐疑によって、けっして疑うことのできない「我の存在」に達し、そこに最初のもっとも確実な知識をみいだした。デカルトにおいて我は思惟(しい)する実体である。それに対しヒュームは自我を知覚の束にすぎないとし、自我の実体性を否定した。カントはあらゆる私の表象に「我思惟す」が伴うことができねばならないとし、経験的自我とは区別されるこの超越論的自我のうちに、経験の可能性の究極の根拠を求めた。この自我を実体とすることは否定される。カント倫理学においてこの超越論的自我に対応するのが、「我意志す」としての道徳的人格である。フッサール現象学は、自然的態度にある自我において隠蔽(いんぺい)されていたものを開示することによって、人間的自我の真実態が超越論的自我であることを証示する。それは自己忘却から自己を取り戻す試みであり、この自己省察こそが現象学である。現象学はそれゆえデルフォイの箴言「汝自身を知れ」に新たな意味を与えたといえる。実存哲学は自我の問題を実存へと深化した。それは死、不安、限界状況などの分析を通して、人間の有限性、「私がある」ことの神秘を示した。
 自我の問題は今日、自我の自立性の崩壊としてとらえられる。しかし自我の崩壊は、自我の偶像化からの解放とみることができる。「汝自身を知れ」という箴言が、人間に、神ならぬ身であることの自覚を促すものであるとすれば、それは同時に、自我を超えたものの承認を意味するであろう。今後とも、自我は哲学の根本問題であり続け、「汝自身を知れ」はつねに新たな応答を要求するであろう。自我とはそもそもこの私であり、「私がある=私である」は神秘であり、驚異だからである。[細川亮一]

心理学における自我

心理学における自我egoの概念は、かならずしも明確なものではなく、また多様な意味に使われている。一般には、いろいろなものを感じたり、考えたり、行動したりする自分というものを自覚するが、この意識したり行動したりする自分の主体を自我という。しかし、自我という概念は、このほかにも特定の意味をもつものとして使われている。そのなかでもオーストリアの精神科医フロイトの自我の概念は独特の意味をもっている。[春木 豊]
自我と自己
現にここにある自分は統一的な全体として存在しているものであるが、その自分について分析的、反省的に振り返ってみたとき、たとえば、かつてアメリカの心理学者W・ジェームズがいっているように、知る主体としての自分と、知られる客体としての自分に分けることができる。前者を自我といい、後者を「自己」と区別することがあるが、自我と自己のことばはかならずしもこのように明確に分けて使われるとは限らず、混同されることも多い。
 主体としての自我そのものが何であるかさまざまな議論があるが、それは、自分の意識や行動の主体として直接に経験されるものそれ自体であるとする説、あるいは自分の意識的・行動的活動を統一し、統制するものが必要であるとして、考え出された概念であるとする説などに分けられる。
 このような自我は、自分を自律的に統制し、意識や行動を整理し、環境の状況に応じて自分を適切に積極的に行動させ、自分の行動に対する反省を行い、自らの行動の価値規準を維持し、自己と環境との調和を図って、自分であることを維持するための機能を果たしている。[春木 豊]
フロイトとユングの自我
フロイトの意味した自我の概念は、彼の人格論の一部を構成するものとして使われている。すなわち、人格は本能的欲求に基づいて行動するエスEs(イドid)、社会的規範に従って行動する超自我、それにこれらの欲求を統制し、現実の環境に適応すべく行動する自我から成り立っているとする。ここにおいては自我は、人格の中軸にあって、全体の調和、統制を図る機能をもつものとして考えられているといえる。スイスの精神科医ユングはさらに、意識の中心にあって、それを統制しているのは自我であるが、無意識を含めて、両者の全体を統制するものとして、自己の概念を用いている。
 このような自我は、年齢とともに発達し変容していくし、また文化的な環境によって、さまざまな様相がみられる。[春木 豊]
『北村晴朗著『新版 自我の心理学』(1977・誠信書房) ▽梶田叡一著『自己意識の心理学』(1980・東京大学出版会)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

じ‐が【自我】
〘名〙
① 自分。自分自身。我(われ)
※足利本論語抄(16C)学而第一「我れ平生戒慎て毎日三たび自我が身に過失有りや否と視察する也」
② 哲学で、他人や外界と区別された認識、行為の主体であり、しかも体験内容が変化しても同一性を持続して、作用、反応、体験、思考、意欲の働きをする意識の統一体。我(われ)。エゴ。⇔非我
※宗教哲学骸骨(1892)〈清沢満之〉「其行路に於ては常に自他相助け彼我相倚るものなり。此の如き自我を名けて因といひ他彼を名けて縁といふ」
③ 心理学で、意識の主体。自我意識。精神分析では、人間の行動を調整し現実に適応させるものと規定している。これは幼児期に自覚されはじめるが、確立するのは青年期とされている。
※煤煙(1909)〈森田草平〉二九「要吉は何と言ふこともなく自我の屈辱を感じた」

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