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腰部脊柱管狭窄症【ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう】

家庭医学館

ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう【腰部脊柱管狭窄症 Lumbar Spinal Canal Stenosis】
[どんな病気か]
 X線検査で、腰部変形性脊椎症(せきついしょう)(「変形性腰椎症(腰部変形性脊椎症)」)と診断されたもののうち、馬尾神経性間欠性跛行(ばびしんけいせいかんけつせいはこう)という、特徴的な症状を示すものを、腰部脊柱管狭窄症といいます。
 中年の男性に多く発病します。
[症状]
 腰痛(ようつう)のほかに、背すじを伸ばして立っていたり、歩いていると、腰が重くなる、下肢(かし)(脚(あし))がしだいにしびれてくる、下肢に力が入らずもつれる、下肢全体が痛む、といった症状がおこり、歩けなくなります。しかし、しゃがんだり、いすに腰かけるなどして腰を丸くして休憩すると、症状が消え、歩けるようになります。
 このような症状を、馬尾神経性間欠性跛行といいます。
 ひどくなると、あおむけやうつぶせに寝ただけで足がしびれ、横むきに背中を丸めて寝ないと眠れなくなります。
 会陰部(えいんぶ)にもしびれがおこり、排尿や排便の障害、ときには尿や便を失禁(しっきん)することもあります(膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい))。
[原因]
 脊柱管は、脊椎の後部(背中側)を上下に貫いている管で、この中を脊髄(せきずい)が通っており、脊髄の後ろを黄靱帯(おうじんたい)が縦に走っています。腰椎(ようつい)の脊柱管には、脊髄馬尾神経(せきずいばびしんけい)が入っていて、ここから下肢に行く神経が分岐しています。
 老化による腰椎の変形で椎体(ついたい)に骨棘(こっきょく)ができたり、椎間関節(ついかんかんせつ)や黄靱帯が肥厚(ひこう)すると、脊柱管が狭くなり、中の馬尾神経がしめつけられます。背すじを伸ばして立ったり歩いたりすると、馬尾神経はさらにしめつけられ、神経自体に循環障害がおこり、下肢のしびれや脱力感がおこるといわれています。
[検査と診断]
 痛みなどで歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる間欠性跛行は、血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)、動脈硬化症など下肢の血管の病気でもおこりますが、この場合は、足の先の動脈の拍動が触れなくなります。これに対して腰部脊柱管狭窄症では、動脈の拍動を触れることができ、背骨をそらすと下肢のしびれや腰痛がおこるので、鑑別できます。
 また、椎間板(ついかんばん)ヘルニア(「椎間板ヘルニア」)でも、よく似た腰痛がおこりますが、ヘルニアの場合は、前かがみになると症状が強まるのに、この病気では症状がやわらぐので、鑑別できます。
 X線写真では、変形性脊椎症に特有の、さまざまな変化がみられます。
 脊柱管の狭窄の程度や範囲、脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)や脊髄動静脈奇形との鑑別など、X線ではわからないことを詳しく調べるため、脊髄造影が行なわれることもあります。これは、脊髄腔(せきずいくう)にX線に写る造影剤を注入して撮影するものです。造影剤にヨード製剤が用いられるため、検査前に、必ずヨードに対するアレルギーがないかどうかを調べます。
 ヨード過敏症がなくても、検査後24時間は、歩行や体位に制限があるので、医師の指示を確実に守ることが必要です。守らないと、けいれんや頭痛などをおこすことがあります。
 CTやMRIも診断に威力を発揮します。最近は脊髄に針を刺さなくてもよいMRIを多用します。
[治療]
 背骨を後ろにそらすと症状が悪化するので、腰椎が過度に後ろにそらないようにする特殊なコルセットをつけます。
 このコルセットは、ふつうのコルセットと異なり、後方と側方に入っている支柱で腰を固定し、下腹部は大きなストラップ(帯(おび))で圧迫するようにして支えます。これで背骨を後ろにそらせなくなりますが、上腹部にあたるところは、やわらかい素材でできたメッシュ(網目)になっているので、症状がやわらぐ前かがみの姿勢は自由にとることができます。
 また、前方にかたむきすぎた骨盤(こつばん)や腰椎の弯曲(わんきょく)を矯正(きょうせい)するために、腹筋を強化する運動療法を行ないます。これは、このコルセットをつけたままでも行なえます。
 歩行時には、脊柱の負担を軽くするために、つえや手押し車の使用が勧められます。
 骨盤牽引(こつばんけんいん)や、薬剤の内服といった治療では、一時的に軽くなっても、持続的な効果は期待できません。
 神経症状が強いときは、神経ブロックが有効なこともありますが、あくまで対症療法ですから、くり返し行なわないほうがよいでしょう。また神経ブロックで、他の病気や副作用がおこったりすることがないわけではないので、主治医とよく相談してください。
●手術
 コルセットの装着や運動療法を行なっても症状が軽くならない場合は、脊髄造影で脊柱管の狭窄部やその範囲を確認したうえで、手術をするかどうかが決められます。
 手術は、全身麻酔のうえ、背中をたてに切開し、椎体のでっぱりや黄靱帯でせまくなった脊柱管を十分に広げるため、脊柱管の後方をおおっている椎弓(ついきゅう)という骨を広範囲に切除します。
 椎弓の切除は、脊柱管の狭窄の範囲によって、2~3個の腰椎から腰椎全体(5個)におよぶものまであります。手術で脊柱管を十分に広げ、神経の圧迫を取り除けば、手術直後から足のしびれや痛みがなくなり、からだをまっすぐに伸ばして眠ることができるようになります。
●手術後の養生
 手術後、ギプスベッドやコルセットが必要になることは、ほとんどありません。椎弓切除の際に関節突起を摘出した場合を除けば、一般に術後2~3週間で、痛まずに歩くことができるようになります。しかし、日常生活を自分で行なえるようになるまで、しばらくは入院することになるでしょう。
 手術前の病気の状態によって、回復に要する期間は個人差があるので、退院後は担当医と相談しながら、リハビリテーションを進めることになります。ふつう、軽作業であれば、手術後2か月くらいからできるようになります。
※広範脊柱管狭窄症(こうはんせきちゅうかんきょうさくしょう)は、厚労省の特定疾患(とくていしっかん)(難病(なんびょう))に指定されており、治療費の自己負担分は、大部分が公費での支払いとなります。

出典:小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

内科学 第10版

腰部脊柱管狭窄症(脊椎脊髄疾患)
定義・概念
 腰部脊柱を構成する骨性要素や椎間板,靱帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり,馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現したもの.臨床症状として間欠性跛行が出現する.分類 原因により先天性と後天性に分類されるが,ほとんどは変形性脊椎症,変性性すべり症などの加齢による後天性である.
疫学
 50歳以上の男性に多い.高齢者の増加とともに本症も増加している.狭窄の好発部位はL4/5椎間である.
病態生理
 本症では椎間板高位にて,前方からの椎間板の膨隆,後方からの椎間関節の変形,黄色靱帯の肥厚により狭窄が起きる.この狭窄の程度は腰椎の動きにより変化し,通常は腰椎の前屈で軽減して後屈で増強する.
臨床症状
1)自覚症状:
腰痛,下肢痛,下肢のしびれが起きる.これらの症状は立位,歩行によって悪化して臥位や座位で軽快する.歩き始めはよいが,歩いているうちに脱力,しびれ,疼痛が起こって歩行の持続が困難となるが,短時間座って休息することで再び歩行可能となる間欠性跛行が特徴的である.腰椎を前屈位にしていれば間欠性跛行は起きないので,乳母車やショッピングカートを押しての歩行や自転車ならば症状が発現しない. 馬尾の圧迫により排尿障害を伴うことがある.
2)他覚症状:
障害神経根の分布に従った感覚障害があることもあるが,安静時には他覚的な運動感覚障害を認めないことも多い.アキレス腱反射は低下することが多い.腰椎を30秒程度後屈させると,臀部痛,下肢痛が増強することがある.
検査成績
 腰椎単純X線では,脊椎症性変化(椎体の骨棘,椎間板の狭小化,椎間関節の硬化・変形)を認める.腰椎MRIでは狭窄による馬尾,神経根の圧迫の程度が明らかになる.脊髄造影およびCTミエログラフィ(CT myelography:CTM)では,腰椎前後屈による動的な狭窄を評価できる(図15-18-6).
鑑別診断
 間欠性跛行の鑑別診断では,下肢の慢性動脈閉塞症による血管性間欠性跛行が重要である.血管性では腰椎の姿勢を問わず下肢の運動負荷で症状が発現し,立位での休息でも症状が軽快する.負荷時の症状は腓腹筋の痙攣性疼痛のことが多い.また血管性では安静時に足背動脈,後脛骨動脈などの拍動が触知できないことが多い.
経過・予後
 すべての患者が悪化するわけではなく,軽度・中等度の患者の半数程度では手術をしなくても良好な経過が期待できる.治療
 薬物療法としては,疼痛軽減のために非ステロイド系抗炎症薬,筋弛緩薬が使用される.硬膜外ブロックや神経根ブロックは腰痛および下肢痛に有効である.経口プロスタグランジンE1が少なくとも短期間は神経症状に有用である.保存的治療が奏効せず日常生活に不自由を感じる場合には狭窄部位の除圧術を考慮する.[安藤哲朗]
■文献
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会編:腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011,改訂第2版,pp1-164,南江堂,東京,2011.

出典:内科学 第10版
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それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

六訂版 家庭医学大全科

腰部脊柱管狭窄症
ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう
Lumbar spinal canal stenosis
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 腰椎(ようつい)内部の神経の通路である脊柱管が狭くなることにより、神経組織が圧迫されて症状が出現する病気です。医学的には異なるさまざまな病態を含む疾患群ですが、加齢変化が主な原因であることが最も多く、一般的に日本では脊椎(せきつい)の変性や変性すべり症によって起こる「変性脊柱管狭窄症」のことを指します。

原因は何か

 主な原因は加齢変化ですが、生まれつき脊柱管が狭い人や椎弓(ついきゅう)椎間関節(ついかんかんせつ)の形状が異なる人に多くみられます。また、変性すべりによるものは女性に多くみられます。

症状の現れ方

 特徴的な症状は「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」です。間欠性跛行とは、歩き始めはとくに症状が強いわけではないのですが、しばらく歩くと脚が痛くなったり、しびれたり、こわばったりして歩くことができなくなる状態を指します。しゃがんだり座ったりすると症状はすぐになくなり、また歩いたり立ったりできるのが特徴です。これは立つことで構造上、脊柱管がいっそう狭くなり神経を圧迫するためで、体が前かがみになると脊柱管がやや広くなり、神経圧迫は解除されて症状はなくなります。

 進行するに従って、連続歩行距離や時間が短くなっていきます。重症の場合は50mも歩かないうちに症状が強くなって歩けなくなったり、5分程度立つだけでも症状が出たりします。さらに、徐々に下腿の筋肉が萎縮し、永続的な歩行障害が起きることもあり注意を要します。

 また、馬尾(ばび)神経の症状として会陰(えいん)部のしびれ感や灼熱(しゃくねつ)感が出現したり、男性では間欠性跛行と同時に疼痛を伴う陰茎勃起(間欠性勃起)を認めることもあります。

検査と診断

 主症状である間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)のような血管の病気でも起こるため注意が必要です。本症の場合、立っているだけで症状が出ることや、手押し車を使った歩行や自転車などでは症状が出にくいなどの血管性と異なる特徴があります。血管性病変の評価として、まずは下肢の動脈拍動を触知してみます。さらに、上肢と下肢の血圧の比(ABPI)で閉塞性動脈硬化症の程度を調べる方法もあります。

 画像検査ではX線・MRI・CT検査などが行われますが、責任病巣の診断には神経根ブロックや筋電図などの補助的検査が必要な場合があります。

治療の方法

 まずは、神経を圧迫するような動作や姿勢を避けることです。背中を反らせる姿勢は、脊柱管をより狭くして神経を圧迫するので、脊柱管を少し広くするためには、歩く際に前かがみの姿勢を心がけます。症状が出る前に休憩をとったり、杖や手押し車を使うなど、日常生活を少し工夫することでかなり症状を軽減できます。また、腰椎の伸展位を防ぐコルセットを使う方法もあります。

 薬物療法では、一般的な消炎鎮痛薬のほかに神経の血流を促進する血流改善薬が使われます。また、痛みが強い場合は神経ブロック(硬膜外ブロック・神経根ブロック)が行われます。神経ブロックを数回行うことで痛みが軽減することもあります。さらに牽引や温熱慮法などの理学療法を併用して治療します。

 このような治療を行っても症状が改善しない場合は、手術療法を考えます。

 手術療法の基本は、狭くなっている脊柱管の部分を広くして神経の圧迫を取り除くことです。方法には「開窓術」「椎弓切除術」「脊柱管拡大術」などがあり、神経の圧迫の部位や範囲により選択されます。椎体同士の動きが大きかったり、腰痛が強い場合などは脊椎固定術を併用する場合もあります。

病気に気づいたらどうする

 前述の間欠性跛行がある場合は、早めに整形外科を受診して診断をつけることが重要です。年齢のせいだろうと放置すると、知らない間に症状が進行することがあります。とくに、安静時に両脚のしびれや麻痺がある場合は、重い症状であるという認識が必要です。

久保 紳一郎

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

EBM 正しい治療がわかる本

腰部脊柱管狭窄症
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 頸椎(けいつい)から仙骨(せんこつ)まで、脊髄(せきずい)が通っているトンネル部分を脊柱管(せきちゅうかん)といいます。脊柱管のうち、腰の部分では脊髄が1本ずつの神経に分かれて馬の尻尾(しっぽ)のようになっているので馬尾神経(ばびしんけい)と呼んでいます。
 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、脊柱管が狭くなってなかにある神経根(しんけいこん)や馬尾神経を圧迫し、足や腰に痛みを感じたり、しびれや麻痺(まひ)がおきたりする病気です。馬尾神経が障害されると、腰痛、足の痛みやしびれ、脱力感がひどくなって歩けなくなることがあります。
 腰を前に曲げたり、しゃがんだり、座ったりして、しばらく休むと歩けるようになりますが、少し歩くと再び痛んで歩けなくなります。このような症状を馬尾神経性間欠性跛行(ばびしんけいせいかんけつせいはこう)といい、この病気の特徴的な症状です。
 病気が進行すると膀胱(ぼうこう)や直腸の機能が損なわれ、頻尿(ひんにょう)や残尿感(ざんにょうかん)などの排尿障害や排便障害に悩まされることがあります。また、狭窄(きょうさく)が進んで神経を障害する場所によっては、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアでみられるような坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)をきたすこともあります。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 多くは老化によって椎間板、椎間関節、椎体が変形・変性して脊柱管が狭くなっておこります。もともと脊柱管の狭い人がこの病気をおこす場合もあります。
 椎間板などの変形・変性によって、新たな骨(骨棘(こっきょく))ができて神経を圧迫することもあります。男性では変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)、女性では変性すべり症によって脊柱管が狭くなることが多く、腰椎椎間板ヘルニアとの合併も少なくありません。

●病気の特徴
 脊柱管が先天的に狭い人の場合は、比較的若年の30歳~40歳代で発症することがありますが、一般にはお年寄りに多い病気です。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]軟性(なんせい)コルセットを装着する
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 腰椎後湾(ようついこうわん)を少なくさせることが目的です。コルセットの装着により脊椎の不安定性を取り除くことで、腰痛や神経症状の改善を期待します。馬尾神経性間欠性跛行のある患者さんを対象にした臨床研究で、少々ですが歩行距離、痛みの改善があるとしています。(1)

[治療とケア]温熱療法をする
[評価]☆☆
[評価のポイント] 温めることで患部の血行を改善させて、筋肉の緊張を取り除き、痛みを緩和(かんわ)する理学療法の一つです。信頼性の高い臨床研究による報告はまだないようですが、ほかの治療で効果のない場合は試してもよいと思われます。

[治療とケア]骨盤を牽引(けんいん)する
[評価]☆☆
[評価のポイント] 骨盤を牽引することで腰部の筋肉などの緊張緩和に効果があるといわれます。臨床研究による根拠はないようですが、ほかの治療で効果のない場合に試してもよいと思われます。

[治療とケア]仙骨硬膜外(せんこつこうまくがい)ブロックを行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] 脊髄神経を取り囲んでいる硬膜(こうまく)(仙骨部)の外腔(がいくう)に局所麻酔薬などを注射することで、神経の働きを抑え、痛みを緩和させる方法です。臨床研究による報告では、治療した直後は約60パーセントの患者さんで背部痛(はいぶつう)や下肢痛(かしつう)などの軽快を認めましたが、約8週間後には24パーセントに減少しました。馬尾神経性間欠性跛行における歩行距離の改善に関するほかの研究でも、短期での症状の軽快は認めますが、長期的(約3カ月後)にはあまり効果がないとしています。(2)(3)

[治療とケア]神経ブロックを行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 痛みを引きおこしている神経やその周辺に局所麻酔薬を注射し、痛みを抑えます。神経根(しんけいこん)症状(神経根の圧迫による痛みなど)があり、手術適応のある患者さんに神経ブロックを行ったところ、約80パーセントの人が1~4日以内に症状が改善し、約60パーセントで症状の緩和が数カ月間継続したとの臨床研究があります。消炎鎮痛薬などで痛みがおさまらない場合に選択されます。(4)

[治療とケア]カルシトニンを注射する
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 骨粗(こつそ)しょう症(しょう)でよく用いられる薬です。骨からカルシウムが溶けだすのを抑え、また腰などの痛みをやわらげる作用もあります。信頼性の高い臨床研究で、鎮痛作用効果、歩行障害の改善が報告されています。保存療法の一つとしてよいと思われます。(5)

[治療とケア]消炎鎮痛薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 急性の腰部痛に用いたところ、1週間後、症状緩和に効果があったという臨床研究があります。しかし、慢性の腰部痛にはっきりとした効果を認める臨床研究はまだないようです。また、消炎鎮痛薬のなかの非ステロイド抗炎症薬については、どの薬でも効果の差は認められていません。ただし、腰部脊柱管狭窄症の患者さんのみを対象にした臨床研究はほとんどないため、根拠としては明確ではありません。(6)

[治療とケア]ニコチン酸誘導体を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 血管拡張作用のある薬です。ほかの治療で効果のないときに試してもよいと思われます。

[治療とケア]プロスタグランジン製剤を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 血管拡張作用のある薬です。ほかの治療で効果がないときに試してもよいと思われます。

[治療とケア]プレガバリンを用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 神経障害性疼痛(とうつう)の薬です。ほかの治療で効果がないときに試してみてもよいと思われます。

[治療とケア]後方椎弓切除術(こうほうついきゅうせつじょじゅつ)を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 椎弓と呼ばれる脊椎後方部分を切除する手術です。保存療法で症状が改善されない場合に行われます。臨床研究によると、手術と保存療法を4年後に比較したところ、手術によって約70パーセント、保存療法で52パーセントの患者さんが下肢痛、腰痛の改善を認め、手術療法のほうがよい結果となっています。しかし、まずは保存療法を行うことが勧められています。(7)


よく使われている薬をEBMでチェック

消炎鎮痛薬
[薬名]ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)(6)
[評価]☆☆
[薬名]ノイロトロピン(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(せっしゅかとえんしょうひふちゅうしゅつえき))(6)
[評価]☆☆
[薬名]ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)(6)
[評価]☆☆
[評価のポイント] ロキソプロフェンナトリウム水和物とジクロフェナクナトリウムには、急性の腰部痛には効果があったという臨床研究がありますが、慢性の腰部痛についてははっきりとした効果を示す臨床研究は見あたりません。また、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液は、専門家の意見や経験から支持されています。

ニコチン酸誘導体
[薬名]コレキサミン(ニコモール)
[評価]☆☆
[評価のポイント] ニコモールは脂質異常症に対する薬で末梢血行障害の改善作用をもっています。腰部脊柱管狭窄症に対する末梢血行障害を認めている場合は適応になるかもしれません。

プロスタグランジン製剤
[薬名]オパルモン/プロレナール(リマプロストアルファデクス)
[評価]☆☆
[評価のポイント] リマプロストアルファデクスはプロスタグランジンE1誘導体で末梢血行障害改善効果をもっています。腰部脊柱管狭窄症に対する効果については確認できませんが、専門家の意見や経験から支持されています。

神経障害性疼痛治療薬
[薬名]リリカ(プレガバリン)(8)~(10)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 神経障害性疼痛に効果のある薬です。プレガバリンはカルシウムチャネルを阻害することで神経伝達物質の過剰な放出を抑制し鎮痛します。ほかの鎮痛薬で効果がない場合に試してみてもよいかもしれません。

オピオイド鎮痛薬
[薬名]トラマール(トラマドール塩酸塩)(8)~(10)
[評価]☆☆
[評価のポイント] ほかの鎮痛薬で効果のない慢性の痛みや神経障害性疼痛に効果のある薬です。トラマドール塩酸塩は麻薬に近い薬で、神経伝達物質を抑制し神経細胞の興奮を抑える効果があります。ほかの鎮痛薬で効果がない場合に試してみてもよいかもしれません。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
原因と診断を明確に
 歩いたり、立ったりすると背中やお尻、下肢に痛みを生じ、座ると痛みが消失するというのが、この病気の特徴です。原因には年齢に伴うものから、外傷、代謝内分泌疾患(たいしゃないぶんぴつしっかん)まで、さまざまなものがあります。
 的確に治療を行うためには、動脈の狭窄による下肢の痛みとの鑑別がまず大切です。そして、腰部脊柱管狭窄症と診断されたなら、原因となっている病気(代謝内分泌疾患など)自体に対する治療が可能かどうか、明確にする必要があります。

まずは薬物療法や装具などで経過を見る
 症状を軽減するためには、消炎鎮痛薬や神経障害性疼痛治療薬の服用や、骨粗しょう症のある患者さんではカルシトニンの注射を行い、さらに、軟性コルセットの装着、温熱療法、骨盤の牽引などをまず試みるのが一般的です。
 それらの治療法で十分な効果が得られない場合には、仙骨硬膜外ブロックや神経ブロックなど、ペインクリニックでの治療を考慮します。

最終的には手術の選択も
 保存的な治療をしても、日常生活に支障をきたすような症状が続く場合には、後方椎弓切除術を行います。手術で症状が消失したり軽くなったりする確率は高いのですが、似たような狭窄症が再発する可能性もあります。
 これまでに行われた臨床研究では、長期的に見ても有効率のもっとも高い治療法は後方椎弓切除術です。ただし、手術に伴うリスクや苦痛はゼロではありませんので、有効性は少々低くても、合併症や副作用の少ない方法から試してみるのが賢明でしょう。

(1)Prateepavanich P, Thanapipatsiri S, Santisatisakul P, et al. The effectiveness of lumbosacral corset in symptomatic degenerative lumbar spinal stenosis. J Med Assoc Thai. 2001;84:572-576.
(2)Rosen CD, Kahanovitz N, Bernstein R, et al. A retrospective analysis of the efficacy of epidural steroid injections. Clin Orthop. 1988;228:270-272.
(3)Fukusaki M, Kobayashi I, Hara T, et al. Symptoms of spinal stenosis do not improve after epidural steroid injection. Clin J Pain. 1998;14:148-151.
(4)Narozny M, Zanetti M, Boos N. et al. Therapeutic efficacy of selective nerve root blocks in the treatment of lumbar radicular leg pain. Swiss Med Wkly. 2001;131:75-80.
(5)Eskola A, Pohjolainen T, Alaranta H, et al. Calcitonin treatment in lumbar spinal stenosis: a randomized, placebo-controlled, double-blind, cross-over study with one-year follow-up. Calcif Tissue Int. 1992;50:400-403.
(6)van Tulder MW, Scholten RJ, Koes BW, et al. Non-steroidal anti-inflammatory drugs for low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD000396.
(7)Amundsen T, Weber H, Nordal HJ, et al. Lumbar spinal stenosis: conservative or surgical management?: A prospective 10-year study. Spine. 2000;25:1424-1435.
(8)Lumbar spinal stenosis: a brief review of the nonsurgical management Can J Anesth/J Can Anesth 2010 57:694-703.
(9)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会.腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011.日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会.2011.
(10)Takahashi N, Arai I, Kayama S, Ichiji K, Fukuda H, Konno S.One-year follow-up for the therapeutic efficacy of pregabalin in patients with leg symptoms caused by lumbar spinal stenosis. J Orthop Sci. 2014 Nov;19(6):893-899.

出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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