Rakuten infoseek

辞書

腎硬化症【じんこうかしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

腎硬化症
じんこうかしょう
nephrosclerosis
腎血管の動脈硬化による疾患で,血流障害の結果,腎が硬化した状態をいう。動脈硬化性と細動脈硬化性とがある。臨床上は良性と悪性とに分けられる。良性腎硬化症は細動脈性で,本態性高血圧同意語といってよい。症状は肩凝り,動悸,頭重感,めまいなどで,高血圧がある。正常血圧でも高齢者には認められ,加齢現象の一つとも考えられる。一方,悪性腎硬化症は,悪性高血圧とほぼ同意語で,激しい頭痛,視力障害,蛋白尿,腎不全を呈し,高血圧で,最小血圧が 120~130mmHg以上となる。予後が不良で,大多数は尿毒症,その他は心不全,脳血管障害などにより1~2年で死亡する。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

じんこうか‐しょう〔ジンカウクワシヤウ〕【腎硬化症】
高血圧の影響で腎臓に動脈硬化が起こって小さく硬くなり、腎機能が衰える病気。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

家庭医学館

じんこうかしょう【腎硬化症 Nephrosclerosis】
◎腎臓が硬く小さくなる病気
[どんな病気か]
[原因]
[検査と診断]
◎食事療法と薬物療法が基本
[治療]
[日常生活の注意]

[どんな病気か]
 本態性高血圧症(ほんたいせいこうけつあつしょう)(原因のわからない高血圧症)にともなっておこる腎臓の病変を腎硬化症と呼びます。腎臓の表面のほぼ全体に小さなつぶつぶができ、腎臓自体は硬く小さくなるので、この病名がつきました。
 腎臓内の細小(さいしょう)動脈の内膜(ないまく)や中膜(ちゅうまく)に線維組織が増え、肥厚(ひこう)します。ついで、内膜にガラスのような(硝子様(しょうしよう))物質が付着して、動脈硬化をおこし、内腔(ないくう)が狭くなります。そのため、糸球体(しきゅうたい)に流れる血液が減少して、糸球体に隣接する傍糸球体装置(ぼうしきゅうたいそうち)という組織からレニンが分泌(ぶんぴつ)されます。
 レニンは、肝臓から分泌されるアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠにかえます。ついで、アンギオテンシン変換酵素(へんかんこうそ)という物質が、アンギオテンシンⅠをⅡにかえます。このアンギオテンシンⅡは、末梢(まっしょう)の血管を収縮させ、副腎(ふくじん)からアルドステロンというホルモンの分泌をうながします(レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系)。このホルモンは血漿(けっしょう)を増やすので、血圧が上がります。するとそのため、さらに腎臓の機能がそこなわれるといった、悪循環がおこります。
 こういう高血圧の状態が長期(10~20年)にわたると、腎臓の動脈硬化が進み、たんぱく尿が出たり、血尿(けつにょう)が出たりして、最終的には腎臓のはたらきが失われます(腎不全(じんふぜん))。
 しかし、本態性高血圧症が初期の段階からコントロールされていれば、腎不全に進行することはありません。
■良性腎硬化症(りょうせいじんこうかしょう)(良性本態性高血圧症(りょうせいほんたいせいこうけつあつしょう))
 良性腎硬化症は、高血圧の影響で、腎臓の細小動脈の病変が何年もかかってだんだん進むもので、腎硬化症のほとんどは、このタイプです。
 良性腎硬化症は、本態性高血圧症のある中年以上の人に多くみられ、高血圧と尿の異常(たんぱく尿や血尿)で見つかることが多い病気です。
 進行すると腎不全をおこします。
■悪性腎硬化症(あくせいじんこうかしょう)(悪性本態性高血圧症(あくせいほんたいせいこうけつあつしょう))
 悪性腎硬化症は、発病から急激に悪くなり、拡張期(最低)血圧は130mmHg以上になります。腎臓の血管の障害がひどく、壊死(えし)(一部の細胞や組織が死ぬこと)をおこす血管炎がみられます。こうした壊死性血管炎だけでなく、糸球体の線維化、硬化による壊死(類線維素壊死(るいせんいそえし))がみられると、悪性腎硬化症と診断されます。
 放置すると、腎臓をはじめ、脳や心臓の血管に障害をおこし、1、2年以内に死亡することが多い病気です。比較的若い年齢(30歳代)で発病することが多いのも特徴です。

[原因]
 最近の研究では、高血圧は複数の遺伝子によって決定された体質(高血圧になりやすい体質)に、食塩のとりすぎやストレスなど、環境の影響も加わって発病する、多因性遺伝疾患(たいんせいいでんしっかん)ということがわかりました。しかし、その原因遺伝子を含めた病因は、まだはっきりとはわかっていません。
●高血圧と遺伝子
 自然に高血圧になるラットや、食塩を与えると血圧が上がりやすいラットの遺伝子を調べた結果、高血圧体質をつくっているらしい遺伝子の候補が十数種類見つかってきました。
 たとえば、アンギオテンシン変換酵素の遺伝子は、ラットでは第10染色体(ヒトでは第17染色体の長腕)にあると報告されています。
 ちなみに、この酵素のはたらきを阻害してアンギオテンシンⅡができなくする薬をアンギオテンシン変換酵素阻害薬(そがいやく)といい、降圧効果があります。
 また、ラットでは、食塩抵抗性遺伝子(食塩を与えても高血圧になりにくい)や、逆に食塩感受性遺伝子(食塩を与えると容易に高血圧になる)など、環境との関連で血圧を調節する遺伝子があることがわかっています。
 また、一連の昇圧遺伝子に対抗する降圧遺伝子も見つかっています。
 ヒトの本態性高血圧症に関連する遺伝子も報告されており、これらの遺伝子の相互作用や変異と、食塩のとりすぎやストレスなどの環境のプレッシャーが互いに影響して、高血圧が発病すると考えられています。
●高血圧と食塩摂取
 本態性高血圧症をうながす環境要因として、もっとも重要なのは食塩の摂取ですが、食塩のとりすぎで、すべての人が高血圧になるわけではありません。ラットの食塩感受性遺伝子にあたるものは、ヒトではまだはっきりしていませんが、ヒトでも食塩の摂取で血圧が上がりやすく、減塩食や利尿薬で容易に血圧が下がる場合(食塩感受性高血圧群)と、食塩を摂取しても血圧の上昇が軽度で、減塩食や利尿薬に反応しない場合(食塩非感受性高血圧群)があることがわかっています。

[検査と診断]
 腎硬化症は、良性と悪性の2つに診断されます。
 良性腎硬化症の場合は、軽度から中等度の高血圧が長く続きます(図「日本高血圧学会の定義」)。そのため、頭痛や動悸(どうき)などの自覚症状があります。軽い心臓の肥大や心音(Ⅱ音)の高まりがみられ、眼底(がんてい)にも高血圧による細動脈(さいどうみゃく)の狭小化、動静脈交差現象(網膜(もうまく)の細動脈と細静脈(さいじょうみゃく)の交差部で静脈が動脈をコの字状に迂回したり、先細りになったりすること)がみられます。
 尿は軽いたんぱく尿となり、沈殿物中に赤血球(せっけっきゅう)や硝子円柱(しょうしえんちゅう)という変形した細胞などが現われます。
 血液検査では、とくに異常はありません。糸球体が血液を濾過(ろか)する能力は正常範囲内にあり、腎臓での血液中の水分調節力(濃縮力や希釈力)の障害もごく軽度です。
 悪性腎硬化症の場合は、拡張期血圧が130mmHgを超えることが多く、脳内の圧力が高まって、頭痛、耳鳴(みみな)り、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などが現われます。出血やうっ血乳頭(けつにゅうとう)などの眼底変化をともない、視力障害もおこります。また、動悸など、心臓の症状もみられます。
 尿検査では、たんぱくがみられ、沈殿物中には赤血球、白血球(はっけっきゅう)、円柱細胞などがみられます。心電図やX線検査で心臓の肥大がみられます。尿素窒素(にょうそちっそ)、クレアチニン、尿酸の値が異常に上昇し、カリウム、ナトリウム、カルシウムなど体液に含まれる電解質の値も異常で、腎臓障害はあきらかです。
 血漿中のレニンの値は、ほとんどの場合、上昇しますし、副腎(ふくじん)ホルモンであるアルドステロンの値も上昇します。

[治療]
 本態性高血圧の治療が、そのまま腎硬化症の治療になります。血圧が非常に高く、危険と考えられる場合以外は、通院治療が原則です。
 一般的な治療としては、減塩や低たんぱく食の食事療法が中心となります。
 減塩療法は、軽度から中等度の腎臓障害では、1日6g以下に食塩摂取量を制限します。これは、加工食品に含まれる食塩や調理に使う量で、食品素材に含まれる塩分は別です。
 高度の腎障害(尿毒症(にょうどくしょう))では、たんぱく質の摂取量も制限します。
 肥満は、血管の周囲などの余分な脂肪を増加させ、血行をさまたげるので標準体重を維持します。コレステロール値が高いと、動脈硬化が進行しますので、脂肪(とくに動物性の脂肪)を過剰にとらないよう心がけます。
 薬物療法としては、腎臓障害はもちろん、脳卒中(のうそっちゅう)や心不全がおこらないように、はやくから降圧薬を使用します。心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心臓病がともなうのを予防するには、β遮断薬(ベータしゃだんやく)(交感神経にはたらいて血圧上昇を抑える薬)が効果的です。また、利尿薬は脳卒中の予防に効果があるといわれています。
 一方、カルシウム拮抗薬(きっこうやく)とアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬は、長く使い続けることで、腎臓の機能の低下を予防します。いずれにしても、1種類ないし数種類の利尿薬を長期にわたって服用するのが原則です。

[日常生活の注意]
 心理的・社会的ストレスは、高血圧や心臓の病気の発病や進行にかかわるので、注意が必要です。また、たばこに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、一過性の血圧上昇をおこします。
 家庭での血圧の測定は役に立ちますが、家庭用血圧計の精度を確認するため診療施設でチェックを受けるとか、静かな環境で5分ほど安静にした後で測定するなどの注意が必要です。
 また、家庭で測ると、診療施設で測る血圧よりも低くなることが多いので、勝手に判断し降圧薬の服用を中止するなどしないようにしてください。

出典:小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

大辞林 第三版

じんこうかしょう【腎硬化症】
慢性の腎疾患によって腎臓が硬く小さくなった状態。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

腎硬化症
じんこうかしょう
腎臓には無数の細小動脈があるが、その動脈硬化のために機能障害をおこし高血圧症状を呈する疾患で、良性と悪性に大別される。
 良性腎硬化症は高血圧症状が主(すなわち本態性高血圧症)で、炎症性の腎疾患、尿路の通過障害などの血圧亢進(こうしん)を引き起こす原因が認められないものである。予後は比較的良好で、20年ないし30年の経過で進行し、その間に、腎不全よりも脳卒中、高血圧による心不全、冠動脈疾患で死亡することがある。ときに悪性腎硬化症に移行する。
 悪性腎硬化症は高血圧とともにタンパク尿や血尿などの腎不全症状を伴い、眼底にうっ血乳頭が認められ、網膜に白斑(はくはん)出血などがある。経過が早く、尿毒症をおこし、あるいは急に高血圧脳症をおこし、予後不良である。[加藤暎一]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

じんこうか‐しょう ジンカウクヮシャウ【腎硬化症】
〘名〙 腎臓の細動脈に動脈硬化が起こって腎機能が衰えるとともに、高血圧をきたす病気。中年者に発病し腎機能のおかされ方が少ない良性のものと、比較的若い人に発病し初めから腎臓がおかされ進行も速く尿毒症になる悪性のものとがある。

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

六訂版 家庭医学大全科

腎硬化症
じんこうかしょう
Nephrosclerosis
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 腎臓は、大きな血管から、糸球体と呼ばれる血液から尿を生成するフィルターの働きをする毛細血管まで、さまざまなサイズの血管が集まっている臓器です。腎硬化症の多くは、長年の高血圧などにより、腎臓の細小動脈に障害が起こり、その結果徐々に腎臓の機能低下を来す、良性腎硬化症です。

 しかし、なかには、急激な経過をたどる悪性高血圧に合併する悪性腎硬化症もあります。

原因は何か

 良性腎硬化症は、高血圧の大多数を占め、一般に遺伝や生活習慣と関連する本態性高血圧によって、長い年月を経て腎臓の細動脈に動脈硬化が起こり、そのため徐々に腎機能の低下を来したものです。

 一方、悪性腎硬化症は、本態性高血圧や腎血管性高血圧褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)などの二次性高血圧などの経過中に急激に悪化する高血圧により、腎障害のみならず、心不全(しんふぜん)脳血管障害など全身の症状を呈する、予後の悪い病気です(表8に診断基準)。

症状の現れ方

 良性腎硬化症は、自覚症状を伴わない場合が少なくありません。初期の症状は高血圧に伴う頭痛や動悸、肩こり程度です。しかし、腎臓の機能が低下し腎不全を呈した場合には、むくみや倦怠感、食思不振、貧血、息切れなど、いわゆる“尿毒症(にょうどくしょう)”の症状が出現します。

 悪性腎硬化症は、急激な血圧上昇により、腎臓機能の急激な悪化とともに、頭痛、嘔吐(おうと)などの症状や、時にはけいれん発作や意識障害、うっ血性心不全、眼底出血による視力障害など全身にわたるさまざまな臓器症状が出現します。適切な治療を行わないと生命に関わることになります。

検査と診断

 良性腎硬化症は、本態性高血圧の経過中に、尿検査で蛋白尿を認めたり、血液検査で腎機能の低下(血中尿素窒素・クレアチニンの上昇)や電解質異常などが出現した場合に、疑われます。また、進行例では超音波検査やCTなどの画像検査において、両側の腎臓の萎縮所見が認められます。

 悪性腎硬化症は、悪性高血圧による腎機能の急速な悪化に加え、眼底検査や心臓機能(心電図、胸部X線、心臓超音波など)などで多臓器にわたる異常所見を認めます。

 また、昇圧ホルモンの異常分泌による腎血管性高血圧褐色細胞腫などの二次性高血圧が原因となることもあり、その鑑別のための検査も必要です。

治療の方法

 良性腎硬化症では、まず高血圧の治療が中心となります。2009年高血圧治療ガイドラインでは、腎臓病症例で130/80㎜Hg未満と厳格なコントロールを推奨しています。まずは、食事療法(減塩食1日6g以下)や適度な運動療法など、日常の生活習慣を改善します。それでも目標に達しない場合は、降圧薬による薬物療法を併用します。

 一般に腎機能低下は慢性に進行し、その度合いにより蛋白制限などの腎臓病食や腎不全に対する治療を行い、尿毒症を呈した場合は透析(とうせき)療法が必要となります。

 悪性腎硬化症の場合は、血圧コントロールとともに全身管理が必要で、一般に入院安静とします。降圧療法は、内服薬だけでは効きにくいので多くは注射薬を使用し、経過により透析療法も含めた治療を行います。

病気に気づいたらどうする

 腎不全において透析療法を必要とする原疾患としての腎硬化症は、糖尿病腎症慢性糸球体腎炎に続き頻度の高い疾患です。そのため日常の高血圧の治療とともに、自覚症状がなくとも定期的な血液・尿検査により腎機能の評価を行うことが、この疾患を進行させないための重要なポイントとなります。

武田 之彦

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
(C) HOUKEN CORP. All rights reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

腎硬化症」の用語解説はコトバンクが提供しています。

腎硬化症の関連情報

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.