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腎性骨ジストロフィ

内科学 第10版

腎性骨ジストロフィ(腎・尿路系の疾患の病態生理)
(5)腎性骨ジストロフィ(renal osteodystrophy:ROD)
定義・概念
 広義には腎機能障害とその治療に起因する代謝性骨疾患を総称する概念で,カルシウム・リン代謝異常に起因する骨疾患以外に,アミロイド骨関節症,アルミニウム骨症なども含まれる.腎性骨症,腎性骨異栄養症なども同義で用いられる.狭義には慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常症(chronic kidney disease-mineral bone disorder:CKD-MBD)の骨病変を意味する(Moeら,2006).CKD-MBDは腎機能障害に伴うカルシウム・リン・ビタミンD代謝異常,二次性副甲状腺機能亢進症,腎性骨ジストロフィ,異所性石灰化からなる疾患概念である.
分類
 CKD-MBDによる腎性骨ジストロフィは骨病理組織所見から骨代謝・回転(turnover),石灰化速度(mineralization), 骨量(volume)の3点から診断され,一般に,①骨吸収と骨形成がともに亢進し,高代謝回転と骨髄の線維化をきたす線維性骨炎,②類骨の石灰化が障害され,類骨が増加する骨軟化症,③骨吸収・骨形成がともに低下した低回転骨の無形成骨症,④ほぼ正常の微小変化型に分類される.
病因
 腎機能が低下すると尿中リン排泄量が減少し,体内にリン蓄積刺激が加わると,骨から線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)の産生・分泌が増加する.FGF-23は腎臓に働いてリンの尿中排泄を促し,高リン血症を抑制すると同時に,腎臓でのビタミンD1α水酸化酵素活性を抑制して活性型ビタミンD(1.25(OH)2ビタミンD)濃度を抑え,腸管からのリン吸収を減少させ血中リン濃度上昇を抑制する(図11-1-8).腎機能低下が持続するとこのプロセスが繰り返され,FGF-23濃度は著増するにもかかわらず血清リン濃度は上昇,活性型ビタミンD,血清カルシウム濃度は減少し,これらは副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)の分泌刺激となる(二次性副甲状腺機能亢進症).PTHは尿中リン排泄を促進,腎臓でのビタミンD1α水酸化酵素活性と骨吸収を促進して,高リン血症,低カルシウム血症,活性型ビタミンDの欠乏を代償するが,やがて末期腎不全に至ると,代償機能が追いつかず,二次性副甲状腺機能亢進症,高リン血症,低カルシウム血症,活性型ビタミンDの低下が顕在化する. 線維性骨炎は二次性副甲状腺機能亢進症に伴うPTHの骨代謝亢進作用に起因し,骨軟化症は活性型ビタミンD欠乏と低カルシウム血症が原因となる.また,リン吸着薬としてリン低下の目的でかつて頻用されたアルミニウム製剤の骨への蓄積が骨軟化症の原因となった(アルミニウム骨症).腎不全では骨のPTHに対する反応性が低下し,これは線維性骨炎の防御因子として働く一方,PTHが十分分泌されない状態ではPTHの骨への作用が減弱し,無形成骨症が発症する.
臨床症状
 線維性骨炎では骨痛,関節痛,(多発)骨折,骨格の変形,腱断裂などの骨関節症状に加え,PTH過剰による骨組織以外の石灰化(異所性石灰化),ESA抵抗性貧血,瘙痒感など多彩な症状がみられる.骨軟化症は小児ではくる病を呈し,骨痛,骨変形,偽骨折,筋肉痛などに加え,アルミニウム蓄積症では,ESA抵抗性貧血や脳症(アルミニウム脳症)を併発することがある.無形成骨症の症状は乏しいが異所性石灰化,特に血管石灰化をきたしやすい.
診断
 CKD-MBDによる腎性骨ジストロフィの真の診断には骨生検が必須であるが,わが国では日常診療に行われておらず,症状やほかの臨床検査所見から総合的に診断する.
 線維性骨炎では血清PTH濃度は著増し,骨型アルカリホスファターゼなどの骨代謝マーカーも増加する.X線所見では異所性石灰化に加え,rugger-jersy,salt and pepper,骨膜下骨形成,骨膜下骨新生,褐色腫(Brown 腫瘍)などが,骨シンチでは骨折部や骨への取り込みが増加する.また副甲状腺の腫大がエコーやCT,シンチなどで検出される.骨軟化症ではPTH,骨代謝マーカーの上昇はみられず,X線所見では偽骨折像が特徴的である.アルミニウム蓄積が原因の場合は血清アルミニウム濃度の増加,骨生検で石灰化前線に一致したアルミニウムの沈着がみられる.無形成骨症ではPTHや骨代謝マーカーは著減し,血管石灰化を中心とする異所性石灰化が著明となる.
治療
 CKD-MBD治療の観点からは血清リン,カルシウム,PTH濃度を設定された管理域に保つのが重要である(表11-1-5)が(日本透析医学会,2012),優先順位はリン,カルシウム,PTHの順とされる.高リン血症の是正には食事中のリン制限と腸管でリンを吸着して糞便中への排泄を促すリン吸着薬の服用を行う.リン制限は蛋白制限につながり,保存期CKDでは有効であるが,透析期CKDでは栄養障害につながるため,炭酸カルシウム,塩酸セベラマー,炭酸ランタン,ビキサロマーなどのリン吸着薬が多用される.これらのうち,保存期CKDに適応をもつのは炭酸カルシウムのみである.低カルシウム血症,活性型ビタミンD欠乏に対しては活性型ビタミンD製剤が用いられるが,透析期の高度の二次性副甲状腺機能亢進症に対しては活性型ビタミンD製剤の静注パルス療法が選択される.本療法はPTHの産生・分泌を抑制するばかりでなく,副甲状腺で減少しているビタミンD受容体を増加させ,ビタミンDに対する副甲状腺細胞の感受性を改善する効果を発揮する.さらに進行した二次性副甲状腺機能亢進症に対しては,副甲状腺のカルシウム受容体を刺激してPTHの分泌を抑制するカルシウム受容体作動薬(シナカルセト塩酸塩)が投与される.本薬はPTHの低下を介して血清カルシウム,リン濃度の抑制作用ももつ.したがって,高度の二次性副甲状腺機能亢進症患者にはシナカルセト,活性型ビタミンD静注,リン吸着薬の併用が行われる.こうした内科的治療に反応しない二次性副甲状腺機能亢進症には副甲状腺摘除術や腫大した副甲状腺にエタノールを注入して副甲状腺の組織壊死をはかるエタノール注入療法が選択される.線維性骨炎には上記二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療が,ビタミンD欠乏に起因する骨軟化症にはビタミンDの補充と低カルシウム血症の是正が,アルミニウム蓄積が原因であれば,アルミニウム製剤や含有食品を厳禁し,透析患者であれば透析液中のアルミニウムの逆浸透装置を用いた除去が対策となる.無形成骨症には相対的に欠乏するPTHを増加させるよう,高カルシウム血症や低リン血症を避け,透析患者では低カルシウム透析液なども用いられる.
アミロイド骨関節症
 アミロイド骨関節症(amyloid osteoarthropathy)は透析アミロイド症に起因する骨・関節病変を総称し,CKDに起因する骨病変ではあるが,狭義のCKD-MBDとは別に分類される.透析アミロイド症はβ2ミクログロブリンを主要構成蛋白とする透析患者を中心とする末期腎不全患者に特有のアミロイド症である.β2ミクログロブリンは有核細胞で産生され腎臓の近位尿細管で分解・代謝されるが,腎機能低下に伴い体内に蓄積する.また分子量が11800と透析では効率的除去が困難であることから,長期透析に伴い体内蓄積が進み,変性,アミロイド化する.
病因
アミロイドはカルシウムやコラーゲンなどとの親和性が高く,骨・関節・腱などに沈着して,特有の骨関節症状を呈する.腱などへの沈着により神経や腱鞘が圧迫されると手根管症候群やばね指などが,関節滑膜への沈着と炎症から関節炎を,骨や椎間板への沈着と炎症性サイトカインの誘導で骨囊胞や破壊性脊椎関節症など多彩な病変をもたらす.さらに進行すると血管壁や心筋などにも沈着し,種々の臓器障害をきたす.
臨床症状
初期には手根管症候群やばね指,関節炎などを,進行すると腱断裂,骨囊胞と骨折,破壊性脊椎関節症,脊椎管狭窄症に伴う神経麻痺,歩行障害などの重篤な病変を呈する.軟部組織の病変では腸管血管壁への沈着で虚血性腸炎やイレウス,心筋や弁への沈着で伝導障害や弁膜症など致命的病変をもたらす.
診断
主として10年以上の長期透析患者に発症し,透析期間の延長に伴い発症率は増加する.血清β2ミクログロブリンは高値を示すが,発症,症状との関連はみられず,診断的意義は低い.画像検査では多発性骨囊胞,椎間腔,関節腔狭小化,椎体骨変形,環軸病変,関節滑膜の増殖などがみられ,こうした検査にはMRIが有効である.確診には組織所見でCongo-red染色陽性部位に一致したβ2ミクログロブリンの沈着とアミロイド線維の電顕での確認を要する.
治療
β2ミクログロブリンの蓄積を防止するためβ2ミクログロブリン除去能の高い血液透析濾過法やβ2ミクログロブリン吸着カラムを併用した透析が施行される.発症したアミロイド症には,対症療法としてNSAIDsや少量のステロイド療法が行われるが,副作用に十分な注意を要する.内科的に管理困難な症例には,手根管開放術,自家骨移植,滑膜切除術,椎体固定術,脊柱管拡大術などの整形外科的処置が症状に応じて実施される.[秋澤忠男]
■文献
Moe S, Drueke T, et al: Kidney disease: improving global outcome (KDIGO): Definition, evaluation, and classification of renal osteodystrophy: A position statement from kidney disease: improving global outcome (KDIGO). Kidney Int, 69: 1945-1953, 2006.
日本透析医学会:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン.透析会誌,45: 301-356, 2012.

出典:内科学 第10版
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