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腎尿細管性アシドーシス

内科学 第10版

腎尿細管性アシドーシス(尿細管疾患)
 腎尿細管性アシドーシスは,糸球体濾過量が正常,または軽度の低下であるにもかかわらず,アニオンギャップ正常([Na]-[HCO3]-[Cl]=12 ± 2 mEq/L)の高クロール性代謝性アシドーシスを呈する.
病態生理
 障害部位により,それぞれ近位型腎尿細管性アシドーシス(2型腎尿細管性アシドーシス),遠位型腎尿細管性アシドーシス(1型腎尿細管性アシドーシス,古典型,4型腎尿細管性アシドーシス)に分類される.
1)近位尿細管における酸排泄機構(図11-9-3):
近位尿細管では濾過されたHCO3の85~90%が再吸収される.近位尿細管管腔側細胞膜に存在するNa/H交換輸送体とHポンプによって尿細管腔に分泌されたHが,糸球体から濾過されたHCO3と反応し,H2CO3となり,尿細管上皮細胞刷子縁に存在する炭酸脱水酵素によってH2OとCO2に分解される.CO2は拡散によって近位尿細管上皮細胞に移行し,H2Oから生じたOHとともに,細胞内の炭酸脱水酵素によってHCO3となり,血管側細胞膜に存在するNa/HCO3共輸送体によって血管内に再吸収される.
2)遠位尿細管における酸排泄機構(図11-9-3):
遠位尿細管では,HCO3の10~15%が再吸収され,また,体内で産生された不揮発性の酸(体重1 kgあたり1 mEq/日程度)をNH4と滴定酸として排泄する.これらの量は少量であり,HCO3再吸収量の3~5%をこえない.
 NH3は,近位尿細管で産生され,Hと反応しNH4となる.Henleの太い上行脚でNa-K-2Cl共輸送体などにより間質へ再吸収される.間質のNH4はNH3となり,尿細管腔内に排泄されHと反応しNH4となり,尿中へ排泄される.
 滴定酸には,HPO42-,SO42-などがあり,Hを受け取って排泄される.
 また,Na再吸収とK分泌,H分泌はアルドステロンによって促進される.
 a)近位型腎尿細管性アシドーシス(2型腎尿細管性アシドーシス):障害部位としてはNa/H交換輸送体,Na/HCO3共輸送体,炭酸脱水酵素,および輸送体のエネルギー源となるNa-K-ATPaseなどである.臨床的には炭酸脱水酵素2型の遺伝子異常,Na/HCO3共輸送体をコードする遺伝子の異常が報告されている.
 尿酸性化能障害だけでなく,汎アミノ酸尿,糖尿,リン酸尿など近位尿細管再吸収全般の障害を伴ったFanconi症候群の形をとることが多い.原因疾患を表11-9-3に示す.
 遠位尿細管におけるH分泌能は小さいため,近位尿細管から漏れたHCO3は遠位尿細管で少ししか回収されず,HCO3は尿中へ漏出し,代謝性アシドーシスが進行する.アシドーシスが高度になると,糸球体から濾過されるHCO3が減少するため,近位尿細管へのHCO3負荷が減少し,障害された近位尿細管でも対応できるようになり尿中へのHCO3喪失はなくなる.このため,血中HCO3濃度は一定の値を下回ることはない.遠位尿細管での尿酸性化能は正常であるため,アシドーシスが存在した状態では尿pHは5.5以下に低下する.
 近位尿細管でのNa,HCO3再吸収が障害されると遠位尿細管への負荷量が増大するため,遠位尿細管におけるNa再吸収,K分泌が亢進し,低カリウム血症をきたす.
 b)遠位型腎尿細管性アシドーシス:
 ⅰ)1型腎尿細管性アシドーシス:1型腎尿細管性アシドーシスでの障害部位としては,Hポンプによる水素イオンの分泌障害,尿細管のH透過性亢進によるpH勾配形成障害,Na再吸収低下による電位依存性H分泌障害,遠位ネフロンへのNH3供給低下などがある.臨床的には家族性遠位型腎尿細管性アシドーシスにおいて炭酸脱水酵素,HCO3/Cl交換輸送体,H-ATPase,Naチャネル,ミネラルコルチコイド受容体などの遺伝子異常が報告されている.原因疾患を表11-9-4に示す.
 遠位尿細管での尿酸性化障害があるため,尿pHは高く,酸負荷をしてもpH 5.5以下にならない.
 近位型腎尿細管性アシドーシスと異なり,遠位尿細管での酸分泌障害は,アシドーシスが進行しても,ある程度のHCO3は尿中へ失われ,血漿HCO3はさらに低下する.尿中のHCO3はNa,Kなどの陽イオンの分泌を促し,Na喪失による体液量の減少により,二次性アルドステロン症性低カリウム血症を引き起こす.
 ⅱ)4型腎尿細管性アシドーシス:遠位尿細管におけるアルドステロン作用の低下による.1型腎尿細管性アシドーシスと異なり,高カリウム血症が特徴である.原因疾患を表11-9-5に示す.
 アルドステロン作用が低下するとKとHの排泄が障害される.高カリウム血症は,近位尿細管でのアンモニウム産生を抑制するためさらにアシドーシスが増悪する.
臨床症状
1)アシドーシス:
過換気,努力性呼吸,呼吸困難の訴えもある.心収縮力が低下し,肺うっ血を起こしやすい.食欲不振,悪心・嘔吐などが出現する.脳血流量の増加に伴う頭痛や,混迷,昏睡なども出現する.
2)K異常:
1型,2型の腎尿細管性アシドーシスでは低カリウム血症,4型腎尿細管性アシドーシスでは高カリウム血症を呈する.①低カリウム血症では,弛緩性麻痺,四肢近位筋の脱力感が起こりやすい.高度の場合には呼吸筋の抑制も起こる.心電図上U波の出現,QT時間の延長,期外収縮などの危険な不整脈も発生する.濃縮力低下により多尿になる.便秘,イレウスなども起こりやすい.②高カリウム血症では,痙攣や腱反射亢進などの痙性の症状から,後には麻痺性の症状も出現する.心電図上T波の増高,R波の低下,QRS波の開大,PR間隔の延長,P波の消失,高度になるとQRS波とT波が連なりサインカーブとなる.期外収縮や心停止はこの変化の間,いつでも出現する危険がある.
3)腎結石:
腎石灰化や腎結石は1型腎尿細管性アシドーシスに多い.2型腎尿細管性アシドーシスでは,近位尿細管でのクエン酸再吸収が障害されていることが多く,尿細管内のCaキレート作用のあるクエン酸濃度が高いため腎結石の頻度は低い.
鑑別診断(表11-9-6)
1)血清K値:
血清K値が低値を示す1型腎尿細管性アシドーシス,2型腎尿細管性アシドーシスと,高値を示す4型腎尿細管性アシドーシスを鑑別する.
2)TTKG(transtubular K gradient):
皮質集合尿細管でのミネラルコルチコイドの反応性を間接的に示すよい指標である.低カリウム血症にもかかわらずTTKG>2であれば腎からの喪失(1型,2型),高カリウム血症にもかかわらずTTKG<6であれば腎での反応性の低下(4型)を示す.
3)炭酸水素ナトリウム負荷試験:
1型腎尿細管性アシドーシスと2型腎尿細管性アシドーシスの鑑別に用いられる.血中HCO3がほぼ正常域に達したときの尿中HCO3排泄率が15%以上であれば2型腎尿細管性アシドーシスが考えられる.
4)酸負荷試験:
1型腎尿細管性アシドーシスと2型腎尿細管性アシドーシスの鑑別に用いられる.正常人や2型腎尿細管性アシドーシスでは,尿pHが5.5以下に低下する.1型腎尿細管性アシドーシスでは尿pHは5.5以下にならない.
治療(表11-9-6)
 2型腎尿細管性アシドーシスでは,アシドーシスが補正されるにつれて尿中HCO3漏出も増大するので,大量の炭酸水素ナトリウム補充が必要である.補充は炭酸水素ナトリウムかShol液(クエン酸とクエン酸ナトリウム溶液.1 mLが1 mEqのHCO3含有)で行う(HCO3: 2~20 mEq/kg/日).炭酸水素ナトリウムの補充に伴いKが細胞内に移行し低カリウム血症を増悪させるので,Kの補充に留意する. 1型腎尿細管性アシドーシスでは,高度のアシドーシスが補正された後は1日の酸産生量と同量を補充すればよいので,近位型(2型)に比し炭酸水素ナトリウム投与は比較的少量ですむ(HCO3:1~3 mEq/kg/日).アシドーシスの補正により尿中へのK排泄が減少するので,多くの症例ではK補充が不要である.4型腎尿細管性アシドーシスでは,炭酸水素ナトリウム補充によるアシドーシス是正が高カリウム血症の治療にもなる.外因性ミネラルコルチコイドであるα-フルドロコルチコステロン(フロリネフ: 0.1~0.4 mg/日)は有効であるが,Na貯留傾向となるので,利尿薬の併用が必要となりやすい.高度の高カリウム血症にはK吸着レジン(カリメート,ケイキサレート)の投与,K摂取制限なども必要である.[冨田公夫]
■文献
實吉 拓,冨田公夫:I型尿細管性アシドーシス,Ⅱ型尿細管性アシドーシス.別冊日本臨牀.新領域別症候群シリーズNo17, pp757-765, 2012.
Sebastian A, Schambelan M, et al: Amelioration of metabolic acidosis with fludrocortisone therapy in hyporeninemic hypoaldosteronism. N Engl J Med, 297: 576-583, 1977.
Smulders YM, Frissen PH, et al: Renal tubular acidosis. Pathophysiology and diagnosis. Arch Intern Med, 156: 1629-1636, 1996.

出典:内科学 第10版
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