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脳波【のうは】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

脳波
のうは
electroencephalogram; EEG
脳細胞の電気的活動を増幅器を用いて記録したもの。大脳皮質上,あるいは頭皮上の2点間の電位差脳電図に記録して,てんかん脳腫瘍頭部外傷脳血管障害脳炎などの診断に用いる。また,覚醒と睡眠など,脳の生理学的研究にも欠かせない。記録した曲線波状を描くので,この名がある。

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デジタル大辞泉

のう‐は〔ナウ‐〕【脳波】
脳細胞の活動によって発生する電位変化を体外に誘導し、増幅・記録したもの。てんかん脳腫瘍(のうしゅよう)などの診断や心理活動の研究に用いられる。脳電図。EEGelectroencephalogram)。

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監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

脳波
 通常,脳電図,脳波図をいう.大脳皮質神経細胞に起こる興奮の電位変化(正式にはこれが脳波,brain wave)を増幅して記録したもの.

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デジタル大辞泉プラス

脳波
米国の作家ポール・アンダースンの長編SF(1954)。原題《Brain Wave》。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

のうは【脳波 brain wave】
脳から自発的に生じる電位変動で,脳電図electroencephalogramまたは略してEEGともいう。最初に動物の脳の電位変動を記録したのは,イギリスのリバプール医学校の生理学教授ケートンR.Catonである(1875)。ウサギの大脳皮質から電気活動を記録し,音を聞かせたり,痛み刺激を与えると変化することをみている。ヒトの脳波を最初に記録したのは,ドイツのイェーナ大学の精神科教授H.ベルガーである(1929)。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

のうは【脳波】
脳の活動によって起こる電位変動。また、それを記録した図。癲癇てんかん・脳腫瘍しゆよう・意識障害など脳の疾患の診断の補助として広く応用される。 -計

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日本大百科全書(ニッポニカ)

脳波
のうは
electroencephalogram
大脳皮質の神経細胞が出す電気的変化を増幅器で増幅し、オシログラフや用紙に記録したものをいう。ドイツの精神科医ベルガーHans Berger(1873―1941)は1924年、脳手術で頭蓋(とうがい)骨欠損のある患者の大脳皮質から活動電流の導出記録に成功し、1929年に発表、心電図に倣って脳電図Elektroenzephalogram(ドイツ語)と名づけた。EEGと略称される。
 脳波は、患者に侵襲を与えることなく簡単に記録できるため、脳機能障害を調べる有用な生理学的検査法となっている。すなわち、頭部外傷、脳血管障害、脳腫瘍(しゅよう)、頭蓋内感染症などに適用されているが、とくに「てんかん」の診断において威力をもっとも発揮する。[加川瑞夫]

検査法

記録電極の位置により、頭皮上誘導法と特殊誘導法に分けられる。頭皮上誘導法は、種々の電極を用いて頭皮上から記録するが、電極の配列(モンタージュ)は通常、国際脳波学会標準電極配置法を採用している。特殊誘導法としては、側頭葉内部のてんかん焦点の検索のため、電極を経皮的に蝶(ちょう)形骨底部に刺入して脳波を導出する方法(sphenoidal lead)や鼻咽腔(いんくう)に咽頭電極を挿入する方法もある。また、てんかん焦点を決定するため、開頭手術により大脳皮質から直接脳波を記録する皮質脳波(electrocorticogram)記録法、深部電極を挿入し脳深部から記録する深部脳波(depth electrogram)記録法なども必要に応じて用いられる。
一般的な記録方法は、縦軸に電位、横軸に時間をとって標準感度(50マイクロボルトを5ミリメートル)で描記する。使用する電極は針または皿状電極で、これを頭皮上に左右対称的に19個(10‐20法(テン・トゥエンティほう))置き、単極誘導法、双極誘導法、あるいは平均基準電極法で記録する。単極誘導法は頭皮上に置かれた電極と耳朶(じだ)(耳たぶ)間の電位差を記録する方法で、双極誘導法は頭皮上の各電極間の電位差を記録する方法である。また、平均基準電極法は、すべての電極を結んで電位変動がもっともゼロに近い基準電極をつくり、この電極と各電極間の電位差を記録する方法である。そして、2か所の電極間の電位差を1単位(素子)とし、8~16素子脳波計に紙送り速度毎秒3センチメートル、標準感度(増幅度)50マイクロボルトを5ミリメートルで描記するのが一般的になっている。このようにして記録された脳波の波形は正弦波に近く、正常者では左右ともほぼ同じ波形(同期的)である。[加川瑞夫]

周波数による分類

脳波を周波数で分類すると、2分の1から3ヘルツまでがδ(デルタ)波、4~7ヘルツがθ(シータ)波、8~13ヘルツがα(アルファ)波、14ヘルツ以上がβ(ベータ)波となる。正常成人の基礎律動は、10ヘルツ前後のα波に少量の低振幅速波(β波)を混じたものである。[加川瑞夫]

脳波の判定

脳波は、周波数、振幅、波形の三つを検討して、正常脳波、境界脳波、異常脳波を判定する。このうち、境界脳波は、正常とはいえないが積極的に異常とも断定しがたいものをいう。[加川瑞夫]
正常脳波
異常波の出現がないものをいうが、正常者が正常脳波を呈するとは限らず、正常者の5~15%に異常脳波の出現をみるといわれる。また、正常な脳波は脳組織にまったく異常のないことの証明にもならないことはよく知られている。したがって、正常脳波の判定は、異常波の程度、年齢、臨床症状などを加味して相対的、経験的に下される。
 脳波は、年齢、睡眠(意識)、過呼吸、薬物および精神活動などによって著しく変化し、影響を受けやすい。
(1)年齢による変化 小児は発育に個人差があるため、脳波の個人差も著しく、正常範囲も年齢によって大きく異なる。1歳ころまでは規則的なα律動に乏しく、高振幅のδ波やθ波が中心になっている。年齢とともに律動性を増し、しだいに8ヘルツくらいの高振幅α律動成分が増加して10歳ころから成人のα律動に近づき始める。15歳ころには40~50マイクロボルト、10ヘルツのα律動が増えて成人脳波と大差がなくなる。一方、成人では4~6ヘルツ、高振幅θ波の出現をみなくなる。60歳以上の高齢者になると、α律動は8~9ヘルツと遅くなり、低振幅速波(β波)成分も増加する。
(2)睡眠による変化 脳波は睡眠の深さによって著しく変化する。入眠期(睡眠第一段階)ではα波の周期が遅くなって不規則な徐波が増す。軽眠期(睡眠第二段階)ではα波が消失し、14~20ヘルツの低振幅速波(漣波(れんぱ))や高振幅徐波(瘤波(りゅうは))の混在した状態になる。中等度の睡眠状態(睡眠第三段階)になると12~14ヘルツの紡錘波が出現し、深睡眠状態(睡眠第四段階)になると1~3ヘルツの高振幅徐波(丘波)が中心になる。そして、賦活(ふかつ)睡眠期(逆説睡眠期)を経て覚醒(かくせい)する。この覚醒期には眼球が水平方向に急速に運動する状態がみられ、この時期に寝言をいったり、夢をみていることが多い。これをREM(レム)睡眠rapid eye movement sleepともいう。
(3)開眼による変化 成人の安静覚醒時における閉眼状態の基礎律動は10ヘルツ前後のα波であるが、この状態で開眼するとα波は消失してβ波に移行する。この現象をαブロッキングα-blockingといい、暗算などの精神活動でも生じる。
 以上のほか、過呼吸、閃光(せんこう)刺激、音刺激、低血糖および薬物などによっても著しく変化する。このように脳波は種々の要因で変化するため、これらの方法は異常脳波の誘発に用いられている。これを脳波の賦活という。[加川瑞夫]
異常脳波
正常範囲を逸脱したものや、特殊な波形の出現をみた場合を異常脳波とする。
(1)周波数の異常 周波数は年齢によって著しく異なるが、成人の安静時閉眼状態の基礎律動は10ヘルツ前後のα波であって、徐波を恒常的にみることはない。とくにδ波の出現は異常で、これが限局性に出現すれば病的意義が大きい。
(2)振幅の異常 限局性に低振幅α波や150マイクロボルト以上の高振幅波が出現すると、異常脳波である。
(3)波形の異常 棘波(きょくは)(スパイク)は異常波の代表で、波形のとがった13ヘルツ(毎秒20~30ミリメートル)以上の速波をいう。鋭波はスパイクよりも遅い(毎秒80~200ミリメートル)持続性をもつ鋭い形の波で、本質的にはスパイクと同じものと考えられている。棘波や鋭波はいずれも「てんかん」に特異的な異常波である。棘徐波結合は棘波に続いて徐波の出現をみるもので、3ヘルツ棘徐波結合は、てんかん小発作にみられる。多棘徐波結合は連続した棘波に徐波が結合したもので、てんかん大発作やミオクロヌス(間代(かんたい)性筋けいれん)発作に認められる。高度律動異常(ヒプサルスミアhypsarrhythmia)は乳幼児点頭てんかんに出現する脳波で、高振幅徐波に鋭波や棘波がまったく不規則に出現する。
 なお、これらの異常波は安静覚醒時に出現するとは限らないため、異常波の出現を促す方法として睡眠、過呼吸、閃光刺激、音刺激、薬物などによる賦活法がある。
(4)脳波活動の停止 脳波活動の限局性消失は病巣診断に有効となる。また、脳波活動の完全消失は脳死の判定に用いられる。
(5)健常では当然出現するべき瘤波、紡錘波、薬物性速波等が、表在性の病変に影響されて出現しない状態をレイジィ/アクティビティーlazy activityという。機能障害が軽度で基礎律動に明らかな変化がないときには、局所性脳病変を診断するのに有用である。[加川瑞夫]

疾患による脳波の特徴

脳腫瘍では限局性徐波が出現しやすく、大脳半球腫瘍ほど、また悪性度の強いものほど異常波が出やすい。頭部外傷では、脳損傷が限局性の場合は有用であるが、重篤なものでは徐波化が著しくなって診断価値は乏しい。穿通(せんつう)性脳損傷では高率に外傷性てんかんを合併するので、脳波上、てんかん波の発現をみる。脳卒中などの脳血管障害では、特異的な脳波所見に乏しい。てんかんは脳波所見でもっとも有用性が高く、脳波検査は不可欠である。棘波や棘徐波結合などの異常波を高率に認める。[加川瑞夫]

脳波計

脳細胞の電気活動(電位差)は頭皮上で50マイクロボルト前後と低電位であるため、これを記録するには超高感度の低周波増幅器が必要となる。他方、感度をあげると種々の雑音が混入して良好な波形が得られなくなる。これらの問題を解決して完成したものが脳波計である。通常、8~16素子の波形を同時に描記できるようになっている。脳波計には設置型(卓上型)とポータブル型があり、専用の脳波室では設置型が使われ、病室や手術室などではポータブル型が用いられる。記録は通常、専用の記録紙にするが、オシロスコープに描出したり、テープや磁気ディスクに記憶させて脳波の解析が試みられている。[加川瑞夫]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

のう‐は ナウ‥【脳波】
〘名〙 脳の神経細胞が動くときに起こる微量の電流の変化を頭蓋の表面から総合的に記録したもの。脳細胞の変化を知る方法で、てんかん、脳器質障害その他の診断に応用される。脳電図ともいう。略称EEG。〔自然科学的世界像(1938)〕

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内科学 第10版

脳波(電気生理学的検査)
(1)脳波
 脳波(electroencephalogram:EEG)とは,脳神経細胞の活動に伴って生じる電位変化を多くの場合体表から記録したもので,脳波計は高感度の増幅器であり,数十μVの微小な電位変化を増幅して数mm程度の振れとして記録する.脳波により脳の機能,特にその活動性について情報を得ることができる.表面電極によって記録できるのは脳表面の電位変化で,表層に密に分布する樹状突起の電位変化の総和を記録していると考えられている.近年機能画像法の発達などで,その有用性が軽視される傾向があるが,両者は相補的に働くもので,昏睡状態の患者の予後判定,脳症における脳機能評価,てんかんの検査などには,脳波が非常に有用である.脳死判定には必須項目となっており,2 μVをこえる脳由来の活動を認めない平坦脳波が基準である.
 導出法には,単極導出法と双極導出法がある.単極導出法は,国際10-20法(図15-4-2)に従い頭皮上に活動電極を装着し,同側の耳朶(A1+A2)に基準電極を装着し,電位差をみる.双極導出法は,2つの頭皮上活動電極間の電位差をみる.得られた波形は7 Hz以下を徐波(slow wave),14 Hz以上を速波(fast wave),20 μV以下を低電圧(low voltage),100 μV以上を高電圧(high voltage)とよぶ.
a.正常脳波
 ⅰ)成人覚醒時正常脳波
 閉眼覚醒時は後頭葉優位にα波(8〜13 Hz)が出現する.これを基礎波という.開眼にてα波は消え,β波(14〜25 Hz),低振幅速波が主体となる.θ波(4〜7 Hz)はみられても少量,δ波(3 Hz以下)はない.通常は,非対称性,徐波,突発波はみられず,これらが存在する際は何らかの異常を疑う.
 ⅱ)小児脳波
 生後間もなくδ波がみられ,成長とともにθ波,α波が加わる.およそ3歳を過ぎるとθ波が基礎波となり,以後1年に1 Hz程度の割で基礎波の周波数が増していく.4~8歳頃からα波が基礎波となる.成人に比較し,高振幅徐波の傾向があり,左右差を認めることもある.ほぼ20歳で成人脳波になる.
 ⅲ)高齢者の脳波
 60歳を過ぎる頃から,脳波の基礎波周波数がα波の中でも8 Hzに近づいていく.60〜80歳で平均9 Hz,80歳以上で8 Hzとなる.θ波も多くなる.個人差が大きいため認知症の診断などには注意を要する.
 ⅳ)睡眠脳波
 睡眠による脳波変化は4段階に分けられる.Ⅰ度の睡眠は,α波が消え全体に波打ったような脳波,低振幅θ波主体となる.Ⅰ度のなかでももう少し深い睡眠になると左右の中心・頭頂部有意に,鈍く尖った,高電位の徐波が単発性もしくは2~3個つらなった瘤波(humpもしくはvertex sharp transient)が出現する.Ⅱ度は睡眠紡錘波(sleep spindle)およびK複合体(K-complex)が出現するステージで,12〜14 Hzの群発波を紡錘波(spindle)とよび,spindleに先行する高振幅徐波をK-complexとよぶ.Ⅲ度になるとspindleは消えθ波とδ波がほぼ半々に出現する.Ⅳ度になるとθ波は少なくなりδ波主体の脳波となる.Ⅳ度がしばらく続いた後,突然低振幅速波およびθ波を主体としたものに変わり,それと同時に急速眼球運動(rapid eye movement:REM)が出現するREM睡眠の段階となる.
 一晩の睡眠を記録すると,I度からⅣ度,REMへとの移行を反復する.成人では一定のパターンがあり,平均3回のREM睡眠が出現する.脳波に加え,呼吸,眼振,筋電図を同時に記録する終夜睡眠ポリグラフィを用いて睡眠障害の分析が行われている.
b.異常脳波
 ⅰ)徐波
 広汎性徐波(7 Hz以下の遅い波が全体的に出現)はもっともよくみられる異常である.中毒,代謝性,低酸素,変性疾患,炎症などの多彩な脳症で出現する.陰(上向き)⇒陽(下)⇒陰(上)の三相性をなす三相波(図15-4-3A)は,肝性脳症の患者に出現することが多い(三相波出現患者の50%が肝性脳症).局所的に出現する徐波は,腫瘍,脳梗塞など,局所的な脳機能低下を示唆し,これを呈する患者の70%以上に画像的に何らかの異常が存在する.周波数については遅い方が患側と考えられ,脳梗塞においては病変部位に対応した徐波を認める.脳出血,くも膜下出血では意識障害を反映した広汎性徐波を認める.
 認知症にみられる脳波変化は基本的には機能低下の所見であり,α波の減少,徐波の増加,周波数の減少など基礎波の不規則化や徐波化がみられるようになる.多くの場合,認知症では,症状が強いのに脳波所見は正常に近い.脳波と臨床症状は個人差が大きいため必ずしも一致しない.
 ⅱ)速波
 β波やγ波(26 Hz
以上)などの速波が多い状態で,向精神薬服薬時,甲状腺機能亢進症・Cushing症候群などの内分泌異常症の際にみられる.
 ⅲ)てんかんの脳波(epileptiform wave)(図15-4-
3Bに一例を示す)
 棘波は持続時間20~70 msecの尖った電位,鋭波は70~200 msecの電位変化である.発作間に棘波や鋭波がみられたときは,局所的あるいは全般的な痙攣を伴うてんかん性の活動電位があることを示唆する.
 皮質焦点を有する単純部分発作の間欠期脳波では,同部に棘波の出現をみることがある.発作期には律動性棘波が観察される.局在決定に関しては,てんかん特異性電位は通常陰性(上向き)であるので,単極導出法においては一番振幅の大きいチャネルが示す部位がてんかん特異性電位の最大値を取る点(焦点;focus)であり,双極導出法においては位相が逆転する2つのチャネルに挟まれる部位がてんかん特異性電位の最大値を取る点(focus)である.側頭葉てんかんは,側頭葉中心に律動的なθ帯域の波が出現する.ミオクローヌス患者でも,ミオクローヌス筋放電の直前に棘波などの発作性放電がみられることがある.これは3~4秒に1回程度の不規則な波で,2,3回続いた後に徐波が続くのが典型的である.欠神発作時は,3 Hzの棘波と尖っていない徐波の複合波(棘徐波)が全誘導に反復して出現し,特徴的である.
 ⅳ)周期性同期性放電
(periodic synchronous discharge:PSD)(図15-4-3C) 脳波において,周期性に出現する異常波を周期性異常脳波・複合波(periodic complexes:PC)というが,そのなかでもCreutzfeldt-Jakob病に特徴的な短周期(1秒前後)で出現するものをPSDという.PSDは,Creutzfeldt-Jakob病の90%に出現し,比較的特徴的である.しかしながら,代謝性脳症でも同様の脳波所見を呈することがあり,絶対的なものではない.さらに,新型Creutzfeldt-Jakob病では通常典型的なPSDはみられない.亜急性硬化性全脳炎では長周期(3秒前後)のPSDを認める.
 ⅴ)周期性一側性てんかん型発射(periodic lateralized epileptiform discharge:PLED)
 一側性にPCが出現するような波形で,PLEDは急性の偏在性病変で,比較的重度の脳機能障害を反映する.35%が脳梗塞,26%が腫瘍などの占拠性病変に関連し,ほかに炎症,低酸素脳症などで出現する.
 ⅵ)ヒプスアリスミア(hypsarrhythmia)
 点頭てんかん(West 症候群)患者にみられる特異的なてんかん性異常脳波である.高振幅な徐波・棘波が不規則に出現し,大多数において覚醒・睡眠時ともに明瞭に認められる.生後まもなくから2
歳頃までの間にみられ,その後はslow spike and wave patternに移行することが多い.
 ⅶ)意識障害と脳波
 脳波は,意識障害患者に対する診断法として,非侵襲的かつ病室での検査が可能であることより非常に有用である.意識障害があると大脳皮質機能が低下し,α波が低い周波数帯に移行し減少する一方,びまん性あるいは多巣性に徐波が混入するようになる.意識障害の深さと対応がみられ,予後を診断する1つの指標となり得る.
 橋の広範な障害(橋出血など)では,患者は深昏睡であるにもかかわらず脳波にはα波が出現していることがある.このような昏睡をα昏睡とよぶ.一方,昏睡状態で紡錘波を認めることがあり,spindle comaとよばれる.これはα昏睡に比較し予後が割合に良好といわれている.
c.賦活脳波
 覚醒安静閉眼時脳波に明らかな異常所見がみられない場合においても,被検者にある種の刺激や負荷をかけると異常脳波を検出できることがある.通常の検査では,脳波異常を検出しやすくするために脳細胞を賦活させ,その賦活の程度が正常程度であるかなどを検査する.
 ⅰ)開閉眼賦活
 安静閉眼時に開眼させるとα波の振幅が急激に減少し,広汎性の低振幅速波が前景に立つ.この現象をα-blockingとよぶ.大脳皮質の反応性,活動水準を示すので,軽度の意識障害などが疑われる患者に有用である.ナルコレプシー患者では,開眼によって逆にα波の増強する逆説的α-blockingを認めることがある.
 ⅱ)過呼吸賦活
 過呼吸により動脈血PCO2が低下し,その結果脳血管が収縮して脳が虚血状態になる.そのために,脳波の振幅が増大し,徐波化が顕著となることをbuild upという.健常人でも軽度認められるが,著明である場合,もしくはbuild upが消失するまでの時間が長いときは異常である.Willis動脈輪閉塞症(もやもや病)では,過呼吸後著しいbuild upを認めたり,過呼吸終了後に元の脳波像に戻った後に再び徐波化(rebuild up)がみられることがある.
 ⅲ)光賦活
 健常人では,光刺激により脳波の変化を示すことは少ない.光刺激の周波数あるいはその倍数に一致した波が出現することを光駆動(photic driving)という.これは頭頂から後頭部に出現しやすく,特に左右差があった場合に診断的価値がある.光刺激によるてんかん発作が生じる疾患を光感受性てんかんという.
 ⅳ)睡眠賦活
 異常脳波は睡眠時に出現しやすいことから,脳波の睡眠による賦活も行われる.自然睡眠と薬物による睡眠の方法がある.[望月仁志・宇川義一]
■文献
原 常勝,秋山泰子,他:脳波検査依頼の手引き—所見をどう読むか—,医事出版社,東京,1996.
大熊輝雄:臨床脳波学,第4版,医学書院,東京,1991.

出典:内科学 第10版
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最新 心理学事典

のうは
脳波
electroencephalogram
脳波は,頭皮上の電極からその部位を中心とする電気活動を,他の部位との比較により記録した電位差の時間的変動である。略称はEEG。脳の電気活動は脳機能の解明に手がかりを与えるものとして,古くから多くの人びとに興味を抱かせてきた。ドイツのイエーナ大学のベルガーBerger,H.もその一人であり,頭皮上に置いた誘導電極を介して律動的な電位変動が見られることを確認し,Elektroenkephalogramm(EEG)と名づけた。ベルガーによる報告はイギリスの生理学者エイドリアンAdrian,E.D.により再確認され,脳波は学会において正式に認められるようになった。脳波の記載に用いられているアルファ波α waveやベータ波β waveなどの名称もベルガーが初めて用いたものである。脳波が視覚刺激など外的な刺激や精神活動により変動することを発見したのもベルガーであった。

【脳波の律動】 脳波の中で周波数がほぼ規則的であり,一定の周波数帯域内にあるものは律動rhythmとよばれる。脳波の律動は,大きく分けると以下のように分類されている。

 デルタ(δ)波:周波数が4Hzより低い律動

 シータ(θ)波:周波数が4Hz以上で,8Hzより低い律動

 アルファ(α)波:周波数が8Hzから13Hzの律動

 ベータ(β)波:周波数が13Hzから30Hzの律動

 ガンマ(γ)波:周波数が30Hzより高い律動

デルタ波δ wave,シータ波θ waveは,ウォルターWalter,W.G.により命名された律動で,ともに徐波slow waveともよばれる。

 律動は意識状態と比較的よく対応して出現することが知られている。覚醒時の安静状態に最も顕著に出現する波がアルファ波である。アルファ波は成人の閉眼状態で典型的に見られる基礎律動であり,脳の後頭部を中心として顕著に出現する。健常成人のアルファ律動は10~11Hzであり,頭頂から後頭部にかけて高振幅であるが前頭部では振幅が低くなる。また,1秒から数秒の間隔周期で振幅の増減を繰り返す漸増漸減waxing and waning現象が見られる。振幅は閉眼安静時に最も大きく20~50マイクロボルトとなるが,開眼や視覚刺激により振幅が急激に減少するアルファ波減衰alpha wave attenuationが生起することも知られている。なお,近年になって,脳波の振幅を記述する単位はμVからµVの記号に変更されているが(2006年アメリカ臨床神経生理学会指針),呼称ではマイクロボルトが継承されている。

 シータ波は,睡眠時に特徴的な律動である。とくに,入眠時に頻繁に認められる。睡眠がさらに深くなると,より周波数が低く振幅の大きなデルタ波が出現する。睡眠段階により脳波の変化が見られることから,脳波は睡眠段階の客観的指標になる。行動の指標からは深い睡眠段階にあると判断されているにもかかわらず,脳波が覚醒時の反応を示す,いわゆる逆説睡眠時には閉じた眼が急速に動く急速眼球運動rapid eye movement(REM:レム)が生起するが,レムの生起時には夢を見ていることが検証されている。

 速波fast waveともよばれるベータ波,ガンマ波γ waveは開眼状態やさまざまな脳の活動時に頻繁に見られ,脳の覚醒状態を示す。とくにガンマ波は,情報の統合などの高次の認知活動に関連していることが指摘されている。

【脳波の発現機序】 脳波は,大脳皮質にある多数の神経細胞の先端樹状突起apical dendriteで生じたシナプス後電位postsynaptic potential(PSP)の総和から成ると考えられている。神経細胞のシナプス後電位は,数十ミリボルトの単位であるが,頭皮上から測定される脳波の電位は数十マイクロボルトの単位である。これは,大脳皮質を覆う脳軟膜,クモ膜,硬膜,頭蓋骨,筋肉,皮膚というように何層もの電気抵抗を受けるためである。そこで脳波の記録には,高感度の増幅装置を必要とする。増幅された脳波は,時間の経過に伴う電位差の波の連続として記録されることになる。

 脳波には,比較的規則正しい律動性が認められるが,そのリズムの形成には視床が重要な役割をもつとする説が有力である。視床の神経細胞が脱分極depolarizationを起こすと,それに引き続いて100ms(ミリ秒)の周期で興奮が持続し,この興奮が視床の他の神経細胞にも波及して,大脳皮質の神経細胞にも伝わるという説である。

【脳波測定法】 脳波の測定には,国際臨床神経生理学会連合(IFCN)により推奨されている国際10-20電極配置法が基本となる。これは,頭の前後径,左右径,周径をそれぞれ10等分して,電極を10%あるいは20%の距離に配置することにより,頭全体を覆うように脳波を測定することができるようにした配置法である。近年は,この配置に加えて多チャンネルの脳波測定が行なわれ,20%の区間をさらに10%に区切る10-10法が提唱されている(前掲2006年指針)。導出は,脳波の影響が少ない不関電極,たとえば耳たぶとの間の電位差を測定する単極導出法と,脳波の電位変動を受ける部位間の電位測定をする双極導出法がある。

【脳波分析法】 脳波は,波形を目で見るだけでも観察が可能であるが,近年は,アナログの記録方法からデジタルのシステムが採用されている。また,波形を目で見るだけではわからない周波数成分の変化を詳細に知るためには,周波数分析が行なわれる。周波数分析は,脳波を時系列データとして扱い,時間領域での電位変動をフーリエ解析することにより,周波数領域での関数として表現するのである。周波数分析により,特定の周波数におけるスペクトル密度関数であるパワースペクトルが算出される。パワースペクトルの周波数分解能を適切に決定することにより,脳波の周波数構造を明瞭にすることが可能となり,ピーク周波数peak frequencyの変動から,その律動の優勢な周波数の変動を知ることができる。また,パワースペクトルのパワー値や脳波の振幅値の頭皮上分布を,等高線としてマッピングすることにより,脳波トポグラフィEEG topography(2次元分布図)表示をすることも可能である。トポグラフィでは,脳活動の関心領域を,解剖学的な大脳皮質の位置と対応させることから,脳波に現われた変化を引き起こした脳の領域を推定することが行なわれている。また,脳波を測定していない部位の値を,算により推定して補間することが行なわれるが,多チャンネルを記録することができる脳波ではこの推定が有利であり,領域の推定に優れている。

【脳波と認知処理】 脳波は脳の活動水準を反映すると考えられ,人間のさまざまな認知過程,情報処理過程についてその関連性が研究されてきている。ベルガーが脳の電気活動の研究をめざしたのも,精神活動を支える脳の基盤を探索したいと考えてのことといわれている。その後の多くの研究により,脳波と認知活動との関係が探索されてきた。アルファ波減衰はごく簡単な計算では生じないが,課題が複雑になると生起し,問題が解かれるとアルファ波が再現する。このようなアルファ波の変化は,波形を見るだけでは開眼による変化と区別が困難である。しかし,計算時と開眼時の脳波にパワースペクトル分析を行なうと,計算時にはアルファ波帯域の中でも低周波数成分の抑制が強いことが指摘されている。読書時や話を聴いている場合にも,アルファ波の周波数が高くなることも検証されている。また,大脳の機能的半球優位性を反映して,言語や計算問題のような課題を遂行するときには左半球で,ブロックの構成のような空間的課題や音楽課題では右半球でパワーの減少が認められ,それぞれの半球での脳の活動増強が推定されている。脳波パワースペクトルのピーク周波数を指標とした研究でも,アルファ波ピーク周波数が課題と対応した半球において高くなり,さらに課題の困難性を反映する結果も得られている。

 近年は,ガンマ波などの高周波帯域の律動を対象として,指や腕を動かす意図に対応した電位変動の測定が行なわれ,その変動を基に機械やロボットを動かすブレイン・マシン・インターフェースbrain machine interface(BMI)の技術も開発されている。 →神経系 →睡眠 →非侵襲的脳機能研究法
〔苧阪 満里子〕

出典:最新 心理学事典
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