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脳梗塞【のうこうそく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

脳梗塞
のうこうそく
脳軟化症」のページをご覧ください

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デジタル大辞泉

のう‐こうそく〔ナウカウソク〕【脳梗塞】
脳の血管が詰まり、そこから先の血行が阻害されるためにの機能が障害された状態。脳血栓脳塞栓とがある。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

脳梗塞
 脳血,脳塞栓によって動脈が完全に閉塞し,血液が供給されなくなったときに起こる症状.

出典:朝倉書店
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生活習慣病用語辞典

脳梗塞
脳の動脈に血栓や凝固塊 (動脈硬化のかすのようなもの) などが詰まって血流を止めてしまうため、脳の細胞が壊死する病気です。動脈硬化を起こして血管壁が硬くもろくなると、血液の通路が狭くなり、血管が詰まりやすくなります。脳卒中の 1 つで、脳塞栓と脳血栓の 2 つに分類されます。

出典:あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)
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世界大百科事典 第2版

のうこうそく【脳梗塞 cerebral infraction】
脳を栄養する動脈の狭窄や閉塞のために,その動脈によって血液を供給されていた脳組織が壊死におちいった状態で,脳軟化症ともいう。脳梗塞は次の四つに大きく分けられる。すなわち,動脈硬化であるアテローム硬化を伴う脳血栓症,脳塞栓症,他の原因による脳梗塞,原因不明の脳梗塞である。(1)アテローム硬化を伴う脳血栓症 頸動脈や脳動脈にアテローム硬化をきたし,その部に凝血塊(血栓)を生じるもので,俗に脳血栓ともいわれる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

のうこうそく【脳梗塞】
脳血栓と脳塞栓の総称。脳に酸素と栄養を供給している動脈が細くなったり詰まったりして、その先に血液が流れにくくなる疾患。血流低下がおこった場所に応じて運動麻痺まひ・感覚障害・失語症などを呈する。血流の途絶えた部分の脳組織が壊死えしし軟化するので、脳軟化症ともいう。 → 脳血栓脳塞栓

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

脳梗塞
のうこうそく
脳血管の閉塞により血流が遮断されるために脳組織が壊死(えし)に陥った状態をいい、脳軟化ともよばれる。脳出血とともに脳卒中の二大疾患の一つである。病因的に脳血栓と脳塞栓に分けられる。脳血栓は高齢者に多く、脳動脈の血管壁の動脈硬化性病変によって血管内腔(ないくう)が狭くなり、ついに閉塞するという経過をたどる。脳塞栓は心疾患、とくに心房細動があり、心臓内の血塊が脳に運ばれて血管を閉塞する。[荒木五郎]

症状

脳梗塞では閉塞する血管によって次のように症状が異なる。
(1)中大脳動脈閉塞症候群 下肢より上肢に強い片麻痺(へんまひ)、半盲症(左あるいは右半分の視野欠損)、失語症(ことばが出ず、ことばがわからない)、失行や失認(着物をあべこべに着たり、便所を間違えたり、片側の手足を無視して使わなかったりする)がみられることがある。
(2)内頸(ないけい)動脈閉塞症候群 中大脳動脈閉塞と同様で、両者の鑑別は困難なことが多い。
(3)前大脳動脈閉塞症候群 上肢より下肢に強い片麻痺、精神症状(物忘れ、計算力低下など)、排尿障害などがみられる。
(4)後大脳動脈閉塞症候群 半盲症、軽い片麻痺がくることもある。閉塞が優位半球(普通は左半球)であれば、字は書けるが字が読めないという失書を伴わない失読という症状が現れることが多い。
(5)椎骨(ついこつ)脳底動脈閉塞症候群 脳底動脈閉塞は意識障害が高度で、脳出血との区別がむずかしい。椎骨動脈や脳底動脈の分枝に閉塞があると、嚥下(えんげ)障害、めまい、眼振(他覚的に容易に認められる眼球の律動的運動)などの症状や平衡障害が出現する。
(6)多発性小梗塞 片麻痺や知覚障害があるが、半盲症や失語症などはない。また片麻痺だけ、あるいは知覚障害だけの場合もある。さらに言語障害(舌のもつれ)と手の不器用だけが症状としてみられる場合もある。なお、多発性の梗塞で認知症を伴うものをとくに多発性梗塞痴呆(ちほう)とよんでいる。[荒木五郎]

予後

脳梗塞は脳出血のように病気そのものが死因となることは少なく、合併症による死亡が多いので、看護にはこれに十分留意する必要がある。また麻痺の予後についてみると、初めからすこしでも動くようであれば、3か月後あるいは6か月後には杖(つえ)歩行、独歩が可能となる。しかし、完全麻痺の場合は、杖歩行や独歩ができるのが半分以下となる。[荒木五郎]

治療

血圧を調節するための降圧剤は、急性期には原則として使用しない。脳浮腫(ふしゅ)の治療としては副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の注射、マニトールやグリセロールの点滴が奏効し、内科治療の範囲も広くなってきた。また、血栓を溶解する目的でウロキナーゼを投与する線溶(線維素溶解)療法は、脳塞栓の重症例では再開通による脳浮腫の助長、出血性梗塞の誘発のおそれがあるので禁忌とされている。脳代謝賦活剤は発病当初より使われ、脳血管拡張剤は軽症例を除き、2~3週後に投与する。合併症である肺炎、尿路感染症、床ずれの治療には、2時間ごとの体位変換、早期発見、広域スペクトルの抗生物質を投与する。[荒木五郎]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

のう‐こうそく ナウカウソク【脳梗塞】
〘名〙 脳血管の狭窄、閉塞、その他の原因で脳血流が減少ないし途絶し、脳実質が壊死に陥る状態。動脈の粥状(じゅくじょう)硬化による脳血栓や、心臓から塞栓が飛び脳血管が閉塞される脳塞栓などがある。

出典:精選版 日本国語大辞典
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六訂版 家庭医学大全科

脳梗塞
のうこうそく
Cerebral infarction
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 脳梗塞とは、脳の血管が詰まったり何らかの原因で脳の血のめぐりが正常の5分の1から10分の1くらいに低下し、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、その状態がある程度の時間続いた結果、その部位の脳組織が壊死(えし)(梗塞)してしまったものをいいます。

 この脳梗塞は、以前は脳血栓症(のうけっせんしょう)(血管が動脈硬化によりだんだん細くなり、最後には詰まってしまう状態)と脳塞栓症(のうそくせんしょう)(どこかにできた血栓がはがれて、栓子(せんし)となって脳に流れてきて詰まる状態)に分けられていました。

 しかし最近は予防的な立場からも、また脳梗塞が起きた直後の治療の面からも、脳梗塞を次の3つに分類することが多くなってきました。

①アテローム血栓性脳梗塞

 脳や頸部(けいぶ)の比較的太い血管の動脈硬化が、加齢、高血圧糖尿病脂質異常症、喫煙などにより起こり、その部位で血管が詰まってしまったり、血流が悪くなったり、またはそこにできた血栓がはがれて流れていき、さらに先端の脳の血管の一部に詰まってしまう状態です。

心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)

 心房細動(しんぼうさいどう)心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)心筋梗塞(しんきんこうそく)などのために心臓のなかに血栓ができて、それが脳に流れてきて詰まった状態です。

③ラクナ梗塞

 主に加齢や高血圧などが原因で、脳の深部にある直径が1㎜の2分の1~3分の1くらいの細い血管が詰まり、その結果直径が15㎜以下の小さな脳梗塞ができた状態です。

 脳卒中全体のところで書いたように、日本では今、脳卒中の約4分の3が脳梗塞です。またその内容をみると、以前は日本の脳梗塞の約半分を占めていたラクナ梗塞が少しずつ減り始め、アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症が増え始めているようです。

予防は生活習慣の改善から

 脳卒中の危険因子のところで書いたように、脳梗塞が起きやすいのは高齢者です。また男性に多いのですが、他の危険因子である高血圧糖尿病脂質異常症、心臓病、ストレス、喫煙、大量飲酒、脱水、肥満などは、いずれもいわゆる生活習慣に関係したものです。

 脳梗塞の予防はまず生活習慣を正し、かかりつけ医の指導に従って、治療すべき生活習慣病を早めに治すように努力することが必要です。

症状の現れ方

 脳梗塞の典型的な症状には、意識障害、片麻痺(かたまひ)(片方の手足の麻痺。時には片側の手あるいは足だけ動かなくなる単麻痺もある。両方の手足が全部動かなくなった状態は四肢麻痺(ししまひ)と呼ぶ)、片側の手足や顔面の感覚障害、言語障害、失語症(しつごしょう)(考えても言葉が出てこなかったり、相手の言うことが聞こえても理解できない状態)などがあります。

 ほかにも健忘症(けんぼうしょう)同名性半盲(どうめいせいはんもう)(両眼とも視野の半分だけが見えなくなる状態)、複視(物が二重に見える)、ふらつき、嚥下(えんげ)障害などだけのこともあります。

急いで病院に運ぶ理由

 最近は脳の検査法が非常に進歩して、脳卒中はCTやMRIを使うと早期に確実に診断ができるようになりました。図3は脳梗塞の患者さんの画像です。発症して数時間以内なので、まだCT検査ではみなさんにわかるような異常は出ていません。

 しかしMRI像では向かって左側に白く写っている梗塞(矢印)がすでに現れています。CTで梗塞がもっとはっきりしてくるのは、24時間たってからです。

 診断法ばかりでなく治療法も進歩しています。詰まってしまった塞栓(そくせん)や血栓をt(ティー)­PA(ピーエー)という薬で溶かしたり、また梗塞の中心部や周辺部に生じるフリーラジカルという有害物質を除去する薬も開発されています。

 脳梗塞の中心部は、血管が完全に詰まるとその先は1時間くらいで梗塞になってしまいますが、その周囲の部分(ペナンブラと呼ぶ)は1~数時間はまだ生きていて、早めに適切な治療が行われれば機能を回復することも可能です。しかし治療開始が遅れると周囲の組織も徐々に壊死に陥り、1本の血管が詰まっただけなのに時間とともに梗塞は少しずつ大きくなっていきます(図4)。

 また、詰まった塞栓を溶かすといっても、詰まってすぐならよいのですが、3~4時間以上たってしまうと、詰まった塞栓をせっかく溶かしても、壊死に陥った組織(梗塞になった部分)に大量の血液が入り込むので、部分的に出血を起こして出血性梗塞になることもあるのです。

 ですから脳梗塞ではなるべく早く、できれば発症して3時間以内に治療が開始できるよう、すぐに専門医のいる病院に患者さんを運んでください。

治療の方法

 発症したばかりの脳梗塞の治療は、内科的な薬物療法が主体になります。脳外科の手術が超急性期に有効なのは、小脳という部分の大きな梗塞や、大脳全体が梗塞のためぱんぱんにふくれ上がって、生命の危険がある時だけです。

 治療薬には脳のむくみをとる薬(抗脳浮腫薬(こうのうふしゅやく))、血栓を溶かす薬(t­PA、コラム)、抗血小板薬(こうけつしょうばんやく)や抗血栓薬(できた血栓がさらに心臓側に向かって延びてくるのを防いだり、再発を防ぐ薬)、脳保護薬(フリーラジカルなどの有害物質を除去する薬)などがありますが、これらの使い方は専門の医師にまかせておけばよいでしょう。

 今は、設備の整った専門病院にかなり早期に入院した患者さんでは、脳梗塞発作そのもので亡くなる人は10%以下になりました。発作を起こした人のだいたい45%くらいが完全に社会復帰しています。残りの人は残念ながら寝たきりになったり車椅子の生活を余儀なくされたり、何らかの後遺症で悩むことになります。

 しかし昔は脳卒中は3分の1の人が亡くなり、3分の1の人が重い後遺症で悩まされるといわれていましたから、それに比べればかなりよくなっているといえます。ただし亡くならなくても発症後1年以内に10人に1人弱の人が再発を起こしています。再発すると後遺症をもっと強く残したり、寝たきり、認知症などの原因にもなります。

 再発の予防には危険因子をあらためて十分治療することと、抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾールなど)を毎日服用することが基本になります。なお、心原性脳塞栓症の再発予防には、抗血小板薬よりも抗凝固薬(こうぎょうこやく)(ワルファリン)などをすすめます。そのため、脳梗塞の細かい病型までをしっかりと診断することが必要なのです。

病気に気づいたらどうする

 いずれにしても本人や家族が何かおかしいと感じたら1分でも早く専門の医師のいる病院に行くことです。また、普段から脳卒中が起こったらここ、心臓発作らしかったらこの病院などと考えておくことが必要です。

篠原 幸人

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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EBM 正しい治療がわかる本

脳梗塞
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 脳梗塞(のうこうそく)は、血のかたまり(血栓(けっせん))によって脳動脈の血液の流れが止まり、そこから先の脳細胞の働きが損なわれる病気です。
 脳そのものの動脈硬化が悪化してできた血栓によっておこるものを脳血栓、体のほかの場所、たとえば心臓などでできた血栓や脂肪のかたまりが、脳の血管に流れついたためにおこるものを脳塞栓(のうそくせん)といいます。
 脳血栓はさらに、ラクナ梗塞とアテローム梗塞の2種類に分かれます。ラクナ梗塞とは、脳の奥のほうにある非常に細い血管がつまる状態で、小さな梗塞が多発することが多く、症状が現れないごく小さな梗塞も少なくありません。ラクナとは小さな穴という意味です。
 一方、アテローム梗塞とは、脳の太い動脈や頸動脈(けいどうみゃく)の動脈硬化が進行して血栓ができたり、血栓が血管の壁からはがれて流れていき、脳の奥の血管をつまらせてしまうものです。
 血栓がつまった場所により症状はさまざまですが、半身麻痺(はんしんまひ)、感覚の低下、頭痛、めまい、吐き気・嘔吐などがよくみられるほか、意識障害や昏睡(こんすい)状態に陥る場合もあります。回復しても、麻痺やなんらかの障害が残ったり、脳血管性の認知症を招いたりすることがあります。
 脳血栓の場合は、睡眠中など安静にしているときにおこることが多く、数時間から数日かけて徐々に症状が進んでいきますが、脳塞栓の場合は急激に症状が発生し、数分の間に悪化してしまいます。脳梗塞に先だって、「一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)」という症状をおこしている患者さんもいますが、これは非常に軽い意識障害や麻痺で、しかも数分から数時間、長くても一昼夜といった一時的な発作であるため、本人も周囲も気づかなかったり、気づいたとしてもほとんどが医療施設に行かないまま放置されたりするようです。この段階で脳動脈の状態の改善を行えば、大きな発作を予防することができます。
 脳梗塞が疑われる発作がおきた場合には、一刻も早く治療を行うことが重要で、とくに発作がおきてから数時間以内の適切な処置が、その後の経過や後遺症を大きく左右します。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 脳血栓の場合は、脳の動脈硬化が原因となります。血管の弾力性が低下したり、血管の壁の厚みが増して血液の通路が狭くなったりすると、血液が流れにくくなってくるため、血液が固まりやすくなります。こうしてできてしまった血栓が血液の流れを止め、この動脈から酸素の供給を受けていた脳細胞が酸素不足をきたし、障害を受けるために、いろいろな症状がおこってきます。
 脳塞栓の場合は、脳以外のどこかでできた血栓(心臓で生じることが多い)や脂肪のかたまり、腫瘍細胞(しゅようさいぼう)、場合によっては細菌などが血流にのって運ばれ、脳の動脈につまって、血液の流れを止めてしまうことで、発作が現れます。

●病気の特徴
 脳梗塞と脳出血を合わせて脳卒中(のうそっちゅう)といいますが、これは、日本人の三大死亡原因の一つに数えられています。加齢とともに、脳卒中の発症率は増加し、脳卒中の約3分の2は、65歳以上のお年寄りに発生しています。とくに、脳梗塞の発症率は加齢とともに急激に上昇します。男性は、女性と比べて脳卒中発症率は1.7倍と高くなっています。
 また、高血圧糖尿病脂質異常症などは脳梗塞の大きな危険因子となっています。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]ただちに適切な医療機関に入院する
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 急性期にストロークユニット(チーム医療)で治療を受けると脳卒中後の死亡率が低下し、早期に退院できることが非常に信頼性の高い研究報告によって確認されています。さらに、病後の生活についても、日常生活を営むうえで支障をきたすような後遺症を減らし、その人らしい生活を保てるようにする(生活の質を改善する)ことが報告されています。
 ストロークユニットとは医師だけではなく、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、メディカルソーシャルワーカーなどで構成され、それぞれのメンバーが専門性を生かし、いろいろな側面から協力して治療とケアを行うチーム医療のことです。(1)~(4)

[治療とケア]必要に応じ、薬を用いて血圧を管理する
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 急性期の脳梗塞の患者さんに降圧薬を用いて急激に血圧を下げると、手足の麻痺や感覚の低下などいろいろな神経症状が悪化するという非常に信頼性の高い臨床研究があります。解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)高血圧性脳内出血(こうけつあつせいのうないしゅっけつ)などを合併していない限り降圧療法は行いません。ただし、血栓溶解療法を行う場合は、一定のレベルまで降圧することが推奨されています。厚生労働省や日本高血圧学会がまとめたガイドラインでも、治療法、合併症の有無、時期などに応じて血圧を管理することが推奨されています。また、高血圧は脳梗塞の最大の危険因子なので、慢性期にも血圧をコントロールすることが推奨されています。(5)~(7)

[治療とケア]血栓を溶解する
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 血栓溶解療法/発作がおきてから4.5時間以内に血栓溶解薬であるrt-PA(遺伝子組換え式のt-PA、血栓を溶かす薬)を静脈内投与した場合と、同じく6時間以内にプロウロキナーゼを動脈内投与した場合の有効性を明らかにした非常に信頼性の高い臨床研究報告があります。一方で、血栓溶解療法は深刻な出血症状の副作用を引きおこすこともあるため、適応については慎重に判断する必要があります。
 抗凝固療法/急性期のヘパリンナトリウム(血栓ができるのを予防する薬)の使用は勧められません。発症48時間以内のアテローム脳梗塞については、抗トロンビン薬のアルガトロバンの有効性を示す研究があります。
 抗血小板療法/発作がおきてから48時間以内にアスピリン(血液を固まらせる働きをもつ血小板の働きを抑えて、血栓ができるのを予防する薬)を用いると、脳梗塞の再発を防ぎ、長期にわたって病後の経過を改善するという非常に信頼性の高い研究報告があります。また、オザグレルナトリウムがラクナ梗塞の患者さんで運動麻痺を改善したという非常に信頼性の高い臨床研究報告があります。(1)(8)~(11)

[治療とケア]脳圧を下げる
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 脳圧を下げるためにD-マンニトール、濃グリセリンなどの利尿薬が使用されています。脳の腫(は)れ(脳浮腫(のうふしゅ))によって、最悪の場合は死に至る可能性もあるので、脳浮腫の程度によっては重要な治療となります。このことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(12)(13)


よく使われている薬をEBMでチェック

降圧薬
[薬名]ペルジピン(ニカルジピン塩酸塩)(1)
[評価]☆☆☆
[薬名]ヘルベッサー(ジルチアゼム塩酸塩)
[評価]☆☆
[薬名]ニバジール(ニルバジピン)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 血圧の管理のために使用されます。急激な降圧は神経症状を悪化させることが臨床研究によって確認されています。急性期ではガイドラインに従って血圧を管理する必要があります。また、高血圧は脳梗塞の最大の危険因子なので、慢性期にも血圧をコントロールすることが推奨されています。

脳循環・代謝改善薬
[薬名]カタクロット/キサンボン(オザグレルナトリウム)(1)(11)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ラジカット(エダラボン)(14)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 血流が止まったために障害を受けた脳細胞から放出されるフリーラジカル(活性酸素など)を消去するエダラボンの有効性については、非常に信頼性の高い研究報告があります。フリーラジカルを消去することによって、脳梗塞の悪化を防ぐことができます。

血栓溶解薬
[薬用途]rt-PA
[薬名]アクチバシン/グルトパ(アルテプラーゼ)(1)(8)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬用途]

[薬名]ウロナーゼ(ウロキナーゼ)(1)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 血栓を溶解する薬です。発症4.5時間以内に治療可能な患者さんに対しては、rt-PA(アルテプラーゼ)の静脈内投与が推奨されており、改善に有効との非常に信頼性の高い研究報告があります。また、発症から6時間以内の患者さんにはウロキナーゼが有効だったとする臨床研究があります。ただし、血栓溶解療法には出血の危険があるため、専門的な施設でしか実施されていません。

抗血栓薬
[薬名]スロンノンHI/ノバスタン(アルガトロバン)(9)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]ヘパリンナトリウム(ヘパリンナトリウム)(1)
[評価]☆☆☆
[薬名]バイアスピリン(アスピリン)(10)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 急性期ではアスピリンの有効性が世界レベルで証明されていますが、その有効性はあまり大きくはありません。また、アルガトロバンの有効性は日本の研究でしか証明されていません。ヘパリンナトリウムは急性期の患者さんの予後を改善する効果はありませんが、深部静脈血栓症や肺塞栓の予防効果は証明されています。

脳浮腫を改善する薬
[薬名]グリセオール(濃グリセリン・果糖配合液)(12)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]マンニットール(D-マンニトール)(13)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 濃グリセリンは発症後14日以内の死亡を減少させたという非常に信頼性の高い臨床研究があります。D-マンニトールは、専門家の意見や経験から支持されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
発作がおきたらただちに専門施設へ行く
 つまった血管の先の脳細胞が完全に死んでしまう前に治療が始められれば、いろいろな機能が損なわれずにすむことになります。発作後どれだけ早く診断を下し、治療を開始できるかが、その後の経過を決める大きなポイントです。早期にいろいろな職種の専門家がチームを組んで厳重に患者さんを管理すること(ストロークユニット)、また、発作がおきてから48時間以内に、バイアスピリン(アスピリン)を用いることについて、多くの研究で有効性が証明されています。現時点では、これらが信頼できる治療手段です。
 発作がおきたなら、できるだけ早く専門のスタッフによって適切な処置が行われるように、専門の病院へ行くことが大切です。高血圧や糖尿病、脂質異常症があるなど危険率の高い人は、日ごろから専門の施設を探しておくべきでしょう。

発作がおきて4.5時間以内なら血栓溶解療法を
 超急性期(発症4.5時間以内)であれば、rt-PAを静脈内投与して血管をつまらせている血栓を溶かすこと(血栓溶解療法)で、脳細胞を死なせずに救える可能性が期待できます。治療がうまくいった場合は、劇的な症状の改善がみられます。しかし、血栓を溶かす作用は出血という重大な合併症をおこす可能性と紙一重でもあるため、血栓溶解療法は治療体制の整った専門の医療機関でのみ実施されます。また、血栓溶解療法に適応するかどうかも、非常に慎重に検討されます。
 脳出血がある、またはその恐れが高い患者さん、消化管や尿路など体のどこかが出血している患者さんは、rt-PAによる血栓溶解療法を受けることはできません。肝臓や腎臓に重度の障害がある、重い高血圧や糖尿病がある、75歳以上の高齢者なども出血の危険が高いことから治療の適応とならないことがあります。

早期の対応ができなかった場合にはさらなる悪化を防ぎ、脳細胞を保護する
 発作がおきてから専門施設へ行くまでにある程度時間がかかり、脳細胞がほとんど死んでしまった状態になっている場合には、血管の開通を目指すより、梗塞がこれ以上進展するのを防ぎ、ダメージを受ける脳細胞をできるだけ少なくすることが治療の目的となります。アスピリンや脳循環・代謝改善薬を用います。

抗トロンビン薬、抗血小板薬、脳保護薬の有効性はさらに国際的研究を
 なお、血栓を溶解する目的の抗トロンビン薬・スロンノンHI/ノバスタン(アルガトロバン)、抗血小板薬・カタクロット/キサンボン(オザグレルナトリウム)、脳保護薬(活性酸素を消去し、脳細胞が酸化され障害が広がるのを抑える)・ラジカット(エダラボン)はわが国で行われた二重盲検試験(にじゅうもうけんしけん)でしか有効との結論に達していません。国際的な視点からの検証が、将来必要になるでしょう。

(1)Jauch EC, Saver JL, Adams HP Jr, et al.Guidelines for the early management of patients with acute ischemic stroke: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association.Stroke. 2013;44:870-947.
(2)Stroke Unit Trialists' Collaboration. Organised inpatient (stroke unit) care for stroke.Cochrane Database Syst Rev. 2013;9:CD000197.
(3)Meretoja A, Roine RO, Kaste M, et al. Effectiveness of primary and comprehensive stroke centers: PERFECT stroke: a nationwide observational study from Finland.Stroke. 2010;41:1102-1107.
(4)Candelise L, Gattinoni M, Bersano A, et al. Stroke-unit care for acute stroke patients: an observational follow-up study.Lancet. 2007;369:299-305.
(5)Wang H, Tang Y, Rong X, et al. Effects of early blood pressure lowering on early and long-term outcomes after acute stroke: an updated meta-analysis.PLoS One. 2014;9:e97917.
(6)ENOS Trial Investigators, Bath PM, Woodhouse L, et al. TIEfficacy of nitric oxide, with or without continuing antihypertensive treatment, for management of high blood pressure in acute stroke (ENOS): a partial-factorial randomised controlled trial.Lancet. 2015;385:617-628.
(7)Bath PM, Krishnan K. Interventions for deliberately altering blood pressure in acute stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2014;10:CD000039.
(8)Hacke W, Kaste M, Bluhmki E, et al. Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke. N Engl J Med. 2008;359:1317-1329.
(9)Wada T, Yasunaga H, Horiguchi H, et al. Stroke. Outcomes of Argatroban Treatment in Patients With Atherothrombotic Stroke: Observational Nationwide Study in Japan. 2016;47:471-476.
(10)Sandercock PA, Counsell C, Tseng MC, et al. Oral antiplatelet therapy for acute ischaemic stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2014;26:CD000029.
(11)Zhang J, Yang J, Chang X, et al. Ozagrel for acute ischemic stroke: a meta-analysis of data from randomized controlled trials.Neurol Res. 2012;34:346-353.
(12)Bereczki D, Fekete I, Prado GF, et al. Mannitol for acute stroke.Cochrane Database Syst Rev. 2007;18:CD001153.
(13)Righetti E, Celani MG, Cantisani T, et al. Glycerol for acute stroke.Cochrane Database Syst Rev. 2004;2:CD000096.
(14)Feng S, Yang Q, Liu M, et al. Edaravone for acute ischaemic stroke.Cochrane Database Syst Rev. 2011;12:CD007230.

出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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