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脳出血【のうしゅっけつ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

脳出血
のうしゅっけつ
cerebral hemorrhage
以前は脳溢血ともいった。脳卒中のなかでも主要なもので,脳内出血脳室内出血に分けられる。内包付近に発生することが多い。多くの場合,激しい頭痛,嘔吐,けいれんなどで突然発病し,急速に進行して意識障害に陥る。重症の場合は昏睡のまま死亡する。軽症の場合は意識障害や出血による自覚症状のないこともある。一般には徐々に回復し,麻痺は一定領域に限局し,反対側は反射が亢進し,場合によっては感覚障害,失語症半盲などを残す。一般に昏睡が長く深く,高熱,白血球増加の著しいものは予後が悪い。最近では発作後の代償的な機能回復を重視するようになり,安静期間を短縮して後療法に移る傾向にある。動脈硬化高脂血本態性高血圧などが誘因になるとされている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

のう‐しゅっけつ〔ナウ‐〕【脳出血】
脳内の血管が破れて出血が起こった状態。それが血腫(けっしゅ)となって脳実質を圧迫・破壊し、種々の障害をきたす。高血圧・動脈硬化や動脈瘤(どうみゃくりゅう)の破裂などで生じ、嘔吐(おうと)・痙攣(けいれん)・片麻痺(へんまひ)・意識障害などの症状がみられ、昏睡(こんすい)に陥ることもある。脳溢血(のういっけつ)。脳内出血。

出典:小学館
監修:松村明
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栄養・生化学辞典

脳出血
 脳血管の破裂による脳内の出血.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

のうしゅっけつ【脳出血】

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

のうしゅっけつ【脳出血】
脳の血管が破れて出血したもの。高血圧症や動脈硬化症のある人に、過労や精神興奮、入浴・用便などが誘因となって起こる。部位によって症状が異なるが、多くは回復後も半身麻痺まひや言語障害などが残る。脳溢血。脳内出血。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

脳出血
のうしゅっけつ
高血圧などの種々の原因によって脳血管が破綻(はたん)し、脳内に出血して生じた血腫(けっしゅ)のため、周囲の脳実質が圧迫、浸潤、破壊されることによって発症する疾患で、代表的な脳血管障害の一つ。脳実質を穿通(せんつう)する動脈の細い血管(径約0.2ミリ)に血管壊死(えし)という変化がおこり、血管壁の構造が崩れてもろくなり、やがて同部に脳内小動脈瘤(りゅう)(径0.2~0.5ミリ)を生じ、ついにこれが破綻することによって脳実質へ出血し、血腫を形成する。脳出血の好発部位としては、脳出血動脈ともよばれている線条体動脈外側枝が破れておこる被殻出血がもっとも多く、脳出血全体の50~60%を占める。この被殻出血に次いで多いのは、視床膝(しつ)状体動脈あるいは視床穿通動脈の破綻による視床出血で、25~35%に相当する。なお、この視床出血を内側型出血とよぶのに対して、被殻出血を外側型出血とよぶことがある。このほか、皮質下出血、橋(きょう)出血、小脳出血の順になる。[荒木五郎]

症状

一見健康な人に突然発症し、発作は活動時におこることが多い。脳出血患者の大部分に既往症として高血圧があり、発作時は著しい高血圧を示すことが多く、高血圧性脳出血とよばれる。大部分の患者に意識障害がみられるが、これがなければ高率に頭痛を訴える。通常、半身不随となる。これらの神経症状は数分から数時間以内に進展、完了する。重症の場合は急に昏睡(こんすい)に陥ることがある。しかし、意識清明の軽症患者も10%くらいみられる。腰椎穿刺(ようついせんし)によって髄液を調べると、約85%は血性か黄色調であり、残りは水様で透明である。[荒木五郎]

鑑別診断

脳出血と鑑別を要する疾患は、脳梗塞(こうそく)とくも膜下出血である。(1)脳梗塞との鑑別 脳出血は活動時に突然おこり、意識障害がくることが多く、頭痛も訴える。脳梗塞はしばしば前駆症状がみられ、発作は休息時におこることが多く、意識も清明か、意識障害があっても軽度である。症状が徐々に出そろってくるのが特徴で、頭痛もないか、あっても軽い。(2)くも膜下出血との鑑別 脳出血は脳内に出血するので、通常、半身不随になるが、くも膜下出血は脳実質の周囲に出血するので、普通は半身不随にならず、いままで経験したことのない、金棒で殴打されたような激しい頭痛と、首の後ろが固くなる項部(こうぶ)強直で始まり、意識障害もひどくなったり軽くなったり動揺性がある。[荒木五郎]

検査

脳出血と脳梗塞との鑑別でもっとも確実な検査法は、頭部のコンピュータ断層撮影(CT)である。CTによると、脳出血は発作直後から画面では白く見える高吸収域を示し、出血の部位、大きさ、脳室への穿破の有無、脳浮腫(ふしゅ)の程度も明らかにすることができる。これに対して脳梗塞は低吸収域として黒っぽく造影される。ただし、この低吸収域が出現するまでに発症後、半日から1日を要する。[荒木五郎]

予後

脳出血は、くも膜下出血と同様、死亡率が高い。半数近くが死亡するといわれ、とくに脳室に穿破する大出血や橋出血などは死亡率が高い。脳出血で死亡する直接原因は、脳ヘルニアによるものが多い。すなわち、大脳半球内で出血して高度な浮腫のため脳の容積が増大した場合、脳は髄液を通して硬い頭蓋(とうがい)骨に囲まれていて逃げ場所がなく、脊髄(せきずい)が頭蓋骨から出ていく大後頭孔のほうへ圧迫されることになる。これが脳ヘルニアであり、呼吸中枢に関係する橋や延髄が上方から下方に向かって圧迫され、死の転帰をとることになる。このほか、消化管出血や肺炎などの合併症で死亡することもあるので、合併症の発症には十分注意して看護する必要がある。[荒木五郎]

治療

外科的療法、内科的療法、合併症に対する治療に大別される。(1)外科的療法 被殻出血(外側型出血)、皮質下出血、小脳出血に対しては脳内血腫除去術が行われるが、視床出血(内側型出血)、橋出血は除去術の対象とはならない。ただし、視床出血に対しては脳室ドレナージが行われ、症状の改善をみることがある。なお、除去術が適応とされる前述の脳出血の場合、意識障害が高度で内科的療法ではむずかしいと思われる患者が、外科的手術により救命しえたという例もしばしばある。(2)内科的療法 止血剤の投与をはじめ、収縮期血圧が200、拡張期血圧が110ミリ水銀柱以上ならば、再出血を予防する目的で緩徐な降圧剤を投与し、血圧を調節する。また脳浮腫に対しては、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤と高浸透圧性脳圧下降剤(マニトール、グリセロール)が使われる。副腎皮質ステロイド剤の効果については賛否両論があるが、消化管出血の引き金になることがあるといわれているので、胃潰瘍(かいよう)の既往のある人には使用しない。また、グリセロールは比較的副作用も少ないので発作直後から使われ、脳浮腫に対する効果も確証されているが、腎臓の悪い患者には禁忌とされている。
 さらに体液のバランスが崩れやすいので、その是正のために輸液が行われる。意識障害や嚥下(えんげ)困難のある患者には1500~2000ミリリットルの水分補給を点滴注射で行う。4、5日経過しても口から食事がとれないときは、鼻腔(びくう)ゾンデから流動食(2000キロカロリー)を流し込む。(3)合併症に対する治療 消化管出血として発病1、2週後に胃・十二指腸潰瘍から出血することがあり、吐血あるいは下血をきたす。最近、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤シメチジンが効果があるとされている。出血が多量で貧血が著しいときは、外科手術に踏み切らなければならないこともある。また、発熱があるときは早く胸部X線撮影を行い、肺炎に対しては広域スペクトルの抗生物質を使用する。なお、床ずれに対しては、2時間ごとに体位を変換したり、エアマットを使うなどによって予防する。[荒木五郎]

後遺症に対するリハビリテーション

脳出血の後遺症には、病巣の部位と広がりに関連して出現する第一次障害と、発症後の経過中にみられる第二次障害とがあるが、いずれにしてもそのリハビリテーションの目標は、日常生活動作activities of daily living(ADL)の自立である。これが社会復帰につながるわけで、とくに片麻痺に対する効果はその実績からも高く評価されている。
 発症後、意識が覚醒(かくせい)して痛みがわかるようになったら、寝たままの姿勢で健側と患側の四肢の関節を自動的あるいは他動的に動かすことから始める。痛がらない範囲内で行う。重症度にもよるが、発症三週後には床上で起きる練習を始め、1か月後からは歩行練習に入る。これらはリハビリテーションチームによるプログラミングに従って行われる。[荒木五郎]

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精選版 日本国語大辞典

のう‐しゅっけつ ナウ‥【脳出血】
〘名〙 =のういっけつ(脳溢血)〔医語類聚(1872)〕

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内科学 第10版

脳出血(血管障害)
定義・概念
 脳出血は脳梗塞,くも膜下出血とともに脳卒中の一病型であり,脳を灌流する血管が破綻して脳内に出血を生じる病態であり,形成された血腫により急激に局所神経症状を生じる.
分類
 脳出血は高血圧に起因するため高血圧性脳出血ともよばれるが,原発性脳出血と総称される.高血圧以外に血液疾患,薬剤,脳腫瘍,血管奇形,脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy:CAA)が原因となる.
原因・病因
 高血圧性脳出血は穿通枝の細動脈硬化に起因する小動脈瘤の破綻により生じる.非高血圧性脳出血で最も多いのはCAAである.CAAは高齢者において脳表動脈にアミロイドが沈着して生じる.CAAの一部には遺伝的に発症する家系が報告されており,シスタチンCの遺伝子変異により生じるアイスランド型(シスタチンC型)CAAが日本人でも報告されている.そのほかに白血病や血小板減少症などの血液疾患,血友病や血小板無力症などの出血性素因,抗血栓薬や血栓溶解薬などの薬剤,原発性・転移性脳腫瘍,動静脈奇形・血管腫・もやもや病などの血管異常が原因となる.
疫学
 脳出血は徐々に減少しており,脳卒中に占める比率は20%以下となっており,寒冷地域で高く,大都市圏で低い.毎年約10万人の患者が発症し,約2万人が死亡している.飲酒と低コレステロール血症は脳出血の危険因子になる.高血圧性脳出血は被殻,視床,橋,小脳が4大好発部位であり,それぞれ約40%,30%,10%,10%を占める.高血圧性脳出血の減少とは対照的に,高齢者の増加によりCAAが増加している.CAAは剖検例において高齢になるほど頻度が高くなり,70~80歳代では40~50%,90歳以上では60~70%に達する.CAAではアポEのε2アレルがCAA関連脳出血の危険因子とされている.
病理
 高血圧性脳出血は脳深部を灌流する細動脈である穿通枝が高血圧によりリポヒアリノーシスやフィブリノイド壊死とよばれる変性をきたして小動脈瘤(Charcot-Bouchard動脈瘤)を形成し,破綻することにより生じる.CAAは皮質や皮質下にしばしば多発する脳葉型の出血を生じ,確定診断は剖検によりCongo-red染色で動脈壁にアミロイドを証明することによりなされる.
病態生理
 高血圧性脳出血は,主幹動脈から鋭角的に分岐するため高血圧による圧力を受けやすい穿通枝が変性をきたして小動脈瘤が形成され,それが破綻することにより生じる.CAAは髄膜や脳表の動脈にアミロイドが沈着し,動脈壁が脆弱化して破綻することにより皮質や皮質下に出血を生じる.脳出血は血腫を形成して脳組織を破壊し,局所神経症状をもたらし,大出血では頭蓋内圧亢進により脳ヘルニアを生じて脳幹を圧迫し,しばしば致命的となる.また,視床・橋・小脳出血では出血が脳室に穿破し,水頭症を併発しやすい.最近は大出血が減少し,小出血の比率が増加している.
臨床症状
 高血圧性脳出血は日中活動時,血圧が上昇しやすい状況下で発症することが多く,頭蓋内圧上昇による頭痛,悪心,嘔吐を呈しやすく,血腫の増大により神経症状が徐々に進行し,意識障害が出現することが多いが,小出血の場合には典型的症状を示しにくく,臨床症状のみから脳梗塞と鑑別するのは困難である. 被殻出血では片麻痺,半身感覚障害,水平共同偏視がみられ,視床出血では片麻痺,半身の感覚障害・疼痛 (視床痛),下方共同偏視がみられる.橋出血では四肢麻痺,pinpoint pupil(著明な縮瞳),ocular bobbing(下向きの垂直性自発眼振,眼球浮き運動)を生じ,小脳出血では回転性めまい,嘔吐,後頭部痛,失立失歩,小脳失調を生じる.皮質・皮質下出血では種々の皮質症状や半球症状を呈する.大出血や脳幹出血では種々の程度の意識障害,異常呼吸(Cheyne-Stokes呼吸,中枢性過呼吸,群発呼吸,吸気性無呼吸など),脳ヘルニア徴候(鈎ヘルニアによる動眼神経麻痺など)を伴う.
検査成績
 脳出血はCT上,高吸収域として認められる(図15-5-17).高吸収域は,高血圧性脳出血では被殻,視床,橋,小脳にみられるが,CAAでは皮質・皮質下にみられ,しばしば多発する(図15-5-18).高血圧性脳出血患者やCAA患者では頭部MRIのT2*画像でそれぞれの好発部位を中心に無症候性の微小出血を認めることが多い.
診断
 緊急CTにより脳内に高吸収域を認めれば脳出血である.高血圧があり,CTで好発部位に高吸収域が認められれば高血圧性脳出血と診断される(図15-5-17).好発部位でない皮質・皮質下に出血がみられた場合,高齢者ではCAAを疑う必要がある(図15-5-18).若年者では出血傾向を検索するため血液凝固検査や薬物服用歴を調査し,血管の異常を検索するため脳血管撮影を施行する必要がある.
鑑別診断
 急性局所性脳症候群を生じた患者ではCTにより頭蓋内出血の有無を確認する必要がある.高吸収域の部位と性状により脳出血とくも膜下出血や硬膜下血腫との鑑別は可能である.脳梗塞は発症直後に低吸収域はみられないが,脳卒中症候群を呈し,緊急CTで高吸収域がなければ虚血性脳卒中と判断する.最近ではMRI拡散強調画像で発症直後でも虚血病巣が検出できるようになった.
合併症
 意識障害を伴う脳出血では感染症と消化管出血を合併しやすい.脳浮腫は予後を左右する危険な合併症である.脳室穿破を生じると水頭症を併発する.CAAはAlzheimer病を合併しやすい.
予後
 意識障害を伴わない小出血の生命予後は良好であり,機能予後は出血部位に依存する.昏睡や深昏睡などの高度の意識障害を伴う場合は致命的な脳ヘルニアを生じている可能性が高く,救命は困難である.感染症や消化管出血の管理も予後に重大な影響を及ぼす.
治療・予防・リハビリテーション
 緊急CTを施行したら呼吸・循環を確保する.血圧は180 mmHg以下または平均血圧の80%以下を目標に降圧を行う.重症の脳出血では頭蓋内圧亢進により脳ヘルニアを生じる危険性があるのでマンニトールの急速点滴静注を行う.意識障害患者では感染症と消化管出血を合併しやすいので抗菌薬と抗潰瘍薬を投与する.経口摂取が困難な場合には経管栄養や中心静脈栄養が必要となる.長期に及ぶ高度の嚥下障害には胃瘻造設術の適応がある.
 外科治療の適応は神経学的重症度とCT所見により決定され,開頭血腫除去術が行われてきたが,最近では定位的手術や内視鏡手術も行われる.被殻出血は血腫量が30 mL以上で,軽度の意識障害(軽眠または混迷)がある場合に手術適応が考慮される.小脳出血は血腫径が3 cm以上(血腫量15 mL以上)の場合に手術適応がある.皮質下出血は血腫量30 mL以上の場合に手術適応が考慮されるが,CAAでは手術により予後が悪化する危険性がある.視床出血と橋出血は血腫除去術の適応とはならないが,血腫が脳室に穿破して急性水頭症が生じた場合には脳室ドレナージを行う.
 片麻痺などの後遺症に対しては早期からリハビリテーションを開始する.意識障害がなく,神経症状が進行性でなければベッド上での起座,椅子座位を開始する.急性期には褥瘡,拘縮,筋力低下を予防するリハビリテーションケアが中心となる.離床が可能になったら起立,基本動作,筋力増強,歩行訓練を行う. 神経因性膀胱には頻尿治療薬が適応となる.夜間譫妄,うつ状態,不眠などの精神症状には向精神薬を投与する.視床出血による視床痛には抗うつ薬や抗痙攣薬を投与するが,薬物療法が無効な場合には脳深部刺激療法や定位放射線手術などの外科的治療を行う.痙攣には抗痙攣薬を投与する.脳出血の一次・二次予防には高血圧の管理が最も重要である.飲酒や低コレステロール血症は脳出血の危険因子になるので,禁酒や摂酒を励行し,低栄養状態の改善に努める.日本でも発症後4.5時間以内の虚血性脳卒中に血栓溶解薬である組織プラスミノーゲンアクチベーター(アルテプラーゼ)が承認されたが,適応基準を逸脱して使用すると重篤な脳出血を併発する危険性があるので注意が必要である.[内山真一郎]
■文献
Kase CS, et al: Intracerebral hemorrhage. In: Stroke: Pathophysiology, Diagnosis, and Management (Mohr JP, et al), pp327-376, Churchill Livingstone, New York,
2004.内山真一郎:脳血管障害.内科学(2分冊版Ⅱ) (黒川 清,松澤佑二編),第2版,pp1707-1715,文光堂,東京,2003.内山真一郎:脳出血.ダイナミックメディシン(下条文武,斉藤 康監修),第5巻,pp18-37-18-49, 西村書店,新潟,2003.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

脳出血
のうしゅっけつ
Cerebral hemorrhage
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳のなか(大脳、小脳および脳幹(のうかん)の脳実質内)に出血した状態をいいます。そのために意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れます。血腫(けっしゅ)が大きくなると脳浮腫(のうふしゅ)によって頭蓋内圧が高くなって脳ヘルニアを起こし、重い場合は脳幹部が圧迫されて死に至ります。

 近年、脳出血の死亡数は減ってきましたが、その最大の理由は高血圧の内科的治療が広く行きわたり、血圧のコントロールが十分に行われるようになったためと考えられます。また最近、脳出血は軽症化していますが、運動障害や認知症(にんちしょう)などの後遺症で悩む患者さんが多いのも事実です。

原因は何か

 高血圧が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占めます。血管の病変をみてみると、脳内の100~300㎛の細い小動脈に血管壊死(けっかんえし)という動脈硬化を基盤とした病変ができ、これに伴ってできる小動脈瘤(しょうどうみゃくりゅう)(小さな血管のこぶ)の破裂が脳出血の原因になります。そのほか、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)破綻(はたん)腫瘍内出血(しゅようないしゅっけつ)、脳の外傷、白血病(はっけつびょう)などの血液疾患が原因になります。高齢者では血管の壁に老人性変化のひとつであるアミロイドが沈着して脳出血の原因になることがあります。

 高血圧性脳出血を部門別にみてみると、最も頻度が高いのは被殻(ひかく)出血(40%)と視床(ししょう)出血(35%)で、この2つが約4分の3を占めます。次いで皮質下出血(10%)、(きょう)(中脳と延髄(えんずい)との間にある)出血(5%)、小脳出血(5%)、その他(5%)と続きます。

症状の現れ方

 一般的には頭痛、嘔吐、意識障害、片麻痺(かたまひ)が多くの患者さんにみられます。出血部位および血腫の大きさにより症状は違います。慢性期になっても何らかの後遺症を示す患者さんも多くみられます。

①被殻出血

 片麻痺、感覚障害、同名性半盲(どうめいせいはんもう)(両眼とも視野の片側半分が見えなくなる状態)などが主な症状で、進行すると意識障害がみられます。優位半球(ゆういはんきゅう)(通常左半球)の出血の場合では失語症(しつごしょう)もみられます(図6)。

②視床出血

 片麻痺、感覚障害は被殻出血と同じですが、感覚障害が優位のことがあります。視床出血では、出血後に視床痛という半身のひどい痛みを伴うことがあります(図7図8)。

③皮質下出血

 頭頂葉(とうちょうよう)側頭葉(そくとうよう)前頭葉(ぜんとうよう)などの皮質下がよく起こる部位です。症状は、出血する部位に応じて違いますが、軽度から中等度の片麻痺、半盲、失語などがみられます。

(きょう)出血

 突然の意識障害、高熱、縮瞳(しゅくどう)(2㎜以下)、呼吸異常、四肢麻痺(ししまひ)などがみられます。大きな橋出血の場合は予後が不良です。

小脳出血

 突然の回転性のめまい、歩行障害が現れ、頭痛や嘔吐がよくみられます。

検査と診断

 CTが最も有用で、発症後数分以内に高吸収域(血腫が白く写る)として現れ、3~6時間で血腫が完成し、約1カ月で等吸収域(脳組織と同じ色に写る)になり、やがて低吸収域(脳組織より黒く写る)になります。脳動脈瘤、脳動静脈奇形脳腫瘍(のうしゅよう)による出血が疑われる場合は、脳血管撮影が必要です。

治療の方法

 高血圧性脳出血の治療は、血腫による脳実質の損傷を軽くし、再出血や血腫の増大を防ぎ、圧迫によって血腫の周囲の二次的変化が進まないようにすることです。このため内科的治療としては、頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)に対する抗浮腫薬の投与、高血圧の管理、水電解質のバランス、合併症の予防と治療が基本になります。外科的治療が必要かどうかの検討も同時に行います。

 血腫の増大は、発症してから数時間以内に約20%の患者さんにみられ、多くの場合は発症6時間以内に止まります。一方、脳浮腫は脳ヘルニアを起こして、予後に重大な影響を与えます。通常、脳浮腫は3日目から強くなり、ピークとなるのは1~2週です。抗浮腫薬としてグリセオールとマンニトールを用います。

 高血圧のコントロールは、脳出血の治療のなかで最も重要であり、また難しい問題でもあります。脳には、血圧の変動に対して脳の血流を一定に保とうとする自動調節能があることが知られていますが、急性期脳出血の場合はこの自動調節能が機能せず、脳の血流は血圧の上がり下がりに合わせて変動します。

 そのため急に血圧を低下させると脳血流量が減って組織を流れる循環が悪くなるので、降圧の程度は降圧薬投与前の血圧の80%くらいにするのが適当です。一般に、慢性期での降圧の目標レベルは治療を開始してから1~3カ月の間に140/90㎜Hg以下とするのがよいとされています。

 脳出血に対して手術が適応するかの判断については、出血量が10ml未満の小出血または神経学所見が軽度な症状では、部位に関係なく手術適応はなく、意識レベルが深昏睡の症例も手術適応はないとするのが一般的な方針です。部位別では、被殻出血は意識レベルが傾眠から半昏睡で血腫量が31ml以上、小脳出血は最大径が3㎝以上で進行性のものは手術適応があります。皮質下出血は血腫が50ml以上と大きく、意識レベルが傾眠から半昏睡の場合、手術が考慮されます。

 そのほかの脳出血の合併症として重要なのはけいれん発作、発熱、消化管出血、電解質異常、高血糖、下肢静脈血栓症(かしじょうみゃくけっせんしょう)などで、それぞれに対する治療も行います。

病気に気づいたらどうする

 脳出血の患者さんでは、意識障害とともに呼吸障害を伴う場合が多くみられます。倒れた直後に注意しなければならないのは、吐物によって窒息(ちっそく)することと吐物を誤飲することです。吐いた場合は麻痺側を上に、顔と体を横にして誤飲を防ぎます。救急車が来る前には、頭部を後屈させて下あごを持ち上げ、口を開けさせて気道を確保します。枕はあごが下がり、舌根(ぜっこん)が沈下しやすいので用いません。

 このような処置をして、患者さんをできるだけ早く専門の病院に運び、適切な治療を行うことが大切です。

 普段から血圧の高い患者さんに突然に起こる、上下肢における持続性で片側の脱力は、脳出血を含めた脳血管障害の可能性があるので、軽い場合でも神経内科、脳神経外科のある専門病院で精密検査することをすすめます。

北川 泰久

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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