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肺水腫【はいすいしゅ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

肺水腫
はいすいしゅ
pulmonary edema
肺のうっ血によって,血液および組織液を含んだ漿液が漏出して肺胞の中にたまった状態をいう。無熱であるが,強度呼吸困難を訴え,血性泡抹状のが出る。急性左心室不全,まれに僧帽弁膜症,毒ガス腎炎肺炎などで起り,重篤な状態である。

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デジタル大辞泉

はい‐すいしゅ【肺水腫】
肺の組織体液がたまった状態。心不全に伴う肺鬱血(うっけつ)などで生じ、呼吸困難や泡沫状の痰(たん)などの症状がみられる。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

はいすいしゅ【肺水腫 pulmonary edema】
漿液性液体毛細血管から間質,さらに肺胞腔内に流出した状態。肺鬱血(はいうつけつ)に際して多かれ少なかれ伴ってみられるものであるが,肺毛細血管と間質腔間の静水圧,血漿膠質(こうしつ)浸透圧バランスの乱れ,あるいは毛細血管透過性の増強によって出現する。したがって原因となる病気は非常に多様であり,左心室不全または僧帽弁疾患による肺鬱血,重症肺感染症,刺激性ガスの吸入,高地滞在,気胸の急速脱気,中枢神経障害,アドレナリン・ノルアドレナリン大量投与,ショックなどがあり,低アルブミン血症も,血漿膠質浸透圧の低下を通じて他の原因による肺水腫発生を促進する。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

はいすいしゅ【肺水腫】
心疾患の代償不全、有毒ガスの吸入などにより肺が鬱血し、肺胞内に液体がたまった状態。強い呼吸困難をきたし、泡沫状の痰たんが多量に出る。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

肺水腫
はいすいしゅ
漿液(しょうえき)性の体液が毛細管から肺組織、ことに肺胞内に急激にあるいは緩徐に漏出した状態をいう。原因としては、肺毛細血管圧の上昇によるもの、肺血管の透過性亢進(こうしん)によるもの、両者の合併によるものがある。すなわち、心疾患または高血圧による左心不全に伴う肺静脈還流障害で肺うっ血をきたすと、肺毛細血管圧が上昇する。有毒ガスや有毒物の吸入または吸引、重症感染症、低酸素血症などは毛細管壁の透過性を高める。ショック肺や麻薬使用による肺水腫は両者の合併による。症状としては、低酸素症を伴う強度の呼吸困難、広範な水泡性ラ音(聴診によって聞かれる雑音)、泡沫(ほうまつ)状喀痰(かくたん)などがみられ、救急処置を必要とするが、つねに原因疾患を念頭に置いて治療を行う。[山口智道]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

はい‐すいしゅ【肺水腫】
〘名〙 肺胞の中に肺毛細血管からしみ出した液体がたまった状態。心不全に伴う肺鬱血によるものが多いが、腎疾患、肺疾患によって起こることもある。主徴は、呼吸困難。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

肺水腫(肺循環障害の臨床)
(1)肺水腫(pulmonary edema)
定義
 肺水腫は肺血管外での異常な液体貯留と定義される.
発症機序
 肺微小血管での水分平衡はStarlingの式により規定される.       Qf=Kf(ΔP−σΔπ)
 ここで,Qf:血管外へ流出する体液量,Kf:濾過係数,ΔP:微小血管内外の静水圧差 σ:蛋白質に対する反撥係数,Δπ:微小血管内外の膠質浸透圧差. 水腫液の排出機構として,リンパ系,肺・気管支循環系,胸腔,縦隔,気管支系がある. 水腫液が増加し排出が間に合わないと肺水腫となる.
初期には間質性,次いで肺胞性肺水腫へと進展する.
分類
 発症機序から,①静水圧性(hydrostatic)肺水腫②透過性亢進型(increased permeability)肺水腫③混合型肺水腫に分類される. ΔPの上昇およびΔπの低下が静水圧性肺水腫,σの低下,Kfの増加が透過性亢進型の肺水腫を惹起する.
 疾患としては,表7-10-3のように分類される.
病理
 心原性肺水腫は静水圧性肺水腫のなかで最も頻度が高く,肺は容積と重量を増し割面や気管支からは泡沫ピンク色の液体が流出する.組織学的には血管・気管支周囲の間質性浮腫や肺胞内浮腫がみられる.
 肺うっ血(pulmonary congestion)では,肺胞にヘモジデリン顆粒を含む食細胞,すなわち心不全細胞(heart failure cell)がみられ,肺小動脈や肺毛細血管壁は肥厚しフィブリン沈着や結合組織の増生があり内腔は赤血球で充満している.さらに慢性の例では肺ヘモジデリン症を呈しうる.
 透過性亢進型肺水腫をきたす急性肺損傷(ALI)/急性呼吸促迫症候群(ARDS)では,原因によって差があるものの,組織学的に肺水腫,出血,硝子膜形成,好中球を主体とした細胞浸潤など,びまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage:DAD)の像がみられる.
病態生理
 心原性とそれ以外の非心原性肺水腫に大別される.
 心原性肺水腫では肺の基本構造は保持されており,酸素吸入により低酸素血症は改善しやすい.肺うっ血を軽減するために起坐呼吸(orthopnea)となる.一方,非心原性肺水腫は基礎疾患によって病態生理が異なり,診断・治療に苦慮することが多い.急性呼吸促迫症候群(ARDS)などでは肺内シャントの病態を伴うことが多く,酸素投与によっても低酸素血症は改善しにくい.
臨床症状
 心原性肺水腫では喘鳴,呼吸困難,特に,発作性夜間呼吸困難や起座呼吸,咳および泡沫状のピンク色の痰が特徴である.身体所見では努力性呼吸,頻呼吸,頻脈,頸静脈の怒張がみられる.皮膚は蒼白で冷湿,チアノーゼを伴い,ショックに陥ることもある.聴診上,肺で水泡音(coarse crackle)が聴取される.
 ALI/ARDSは,非心原性肺水腫の大半を占める透過性亢進型肺水腫である.原因によって特異な臨床像を呈することが多い.表7-10-3に示す基礎疾患の経過中に,治療抵抗性の急性呼吸不全を呈し,胸部画像所見で両肺に浸潤影がみられる.
 神経原性肺水腫(neurogenic pulmonary edema)は,くも膜下出血,痙攣発作後など急性で重症の中枢神経系障害に伴う肺水腫である.おもな発症機序としては,脳室圧の上昇による交感神経系の関与が示唆されている.
 再膨脹性肺水腫(reexpansion pulmonary edema)は,気胸や胸水で虚脱した肺を急に再膨張させたときに発症する.虚脱の程度が重症で虚脱の期間が長いときにみられやすい.
 高地肺水腫(high-altitude pulmonary edema)は,心肺に異常のない健常人が2500 m以上の高地に急に到達した際に発症する.一般に高地に到達後2~3日以内に出現する.眼底出血や脳浮腫を合併することがある.低地移送で速やかに軽快する.
検査成績
 心原性肺水腫は,胸部X線では,肺胞性浸潤影(air space consolidation)を呈し,心拡大を伴うことが多い.心不全の悪化とともに血中BNP濃度が上昇する場合が多い.非心原性肺水腫の診断は,胸部X線写真ではときに困難であるが,胸部CTではすりガラス様陰影(ground glass opacity)を呈するが,心拡大は伴わない(図7-10-5).なおいずれの肺水腫でも動脈血ガス分析では低酸素血症および呼吸性アルカローシスを呈する.
発症機序・鑑別診断
 臨床的に静水圧性および透過性亢進型を鑑別するには以下のような方法がある.
1)胸部画像診断:
心原性肺水腫では心陰影,肺血管影は拡大する.血管や気管支周囲には浮腫のため輪郭は肥厚し不鮮明(cuffing sign)となる.重症肺水腫では水腫影が両肺門から肺野の中心にかけて蝶形あるいは蝙蝠の羽(butterfly, bat’s wing)様を呈することがある.中心静脈圧が上昇すれば,上大静脈陰影が幅広くなり奇静脈も拡張する.胸水,特に右側優位がみられる.限局性の胸水貯留は腫瘤様でかつ治療により改善するのでvanishing tumorとよばれる(図7-10-6).また,小葉間隔壁の浮腫によるKerley B 線がみられる.
 一方,透過性亢進型肺水腫では,心原性とは異なり,心拡大はなく肺血管影や上大静脈の拡大もみられない.
2)Swan-Ganzカテーテルによる肺動脈楔入圧(Pwp)の測定:
心原性か非心原性肺水腫を鑑別するために有用である.Forresterの分類では,Pwp≧18 mmHgのとき左心不全と定義されており,心原性肺水腫と診断する.
3)肺水腫液の解析:
肺水腫液が多く採取されれば,その細胞成分や生化学的解析により鑑別が可能である.たとえば,肺水腫液/血液の蛋白濃度比は,静水圧性では0.5以下,浸透圧亢進型では0.7以上である.
診断
 典型的な肺水腫の診断はその臨床像からは困難ではない.基礎疾患の推定も,先行する慢性の心疾患が存在する場合は容易であるが,心疾患のない場合は,重症の肺炎,肺塞栓症などとの鑑別が必要になることがある.
治療
 低酸素血症の改善,肺水腫に対する治療および原因疾患の治療が主体となる. 安静,半座位とし痰の喀出をはかる.PaO2 60 torr(SpO2 90%)以上となるように酸素吸入を行う. 肺水腫に対しては,透過性亢進型であっても,肺血管内圧を下げるのが基本である.心原性肺水腫に対しては利尿薬の投与をはじめとする心不全の治療が中心となる.透過性肺水腫であるALI/ARDSでは原因となった基礎疾患により治療法が異なる.[木村 弘]
■文献
Crandall ED, Staub NC, et al: Recent developments in pulmonary edema. Ann Intern Med, 99: 808-822, 1983.
Fraser RS, Colman N, et al: Synopsis of Disease of the Chest, 3rd ed, Elsevier, Philadelphia, 2005.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

肺水腫
はいすいしゅ
Pulmonary edema
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 肺水腫とは、血液の液体成分が血管の外へ滲み出した状態をいいます。肺内で液体成分がたまるため肺のガス交換が障害されて、低酸素血症となり、呼吸困難が現れます。

原因は何か

 原因は大きく分けて2つあります。肺の毛細血管静水圧(せいすいあつ)が上昇したために液体成分がもれ出るもの(静水圧性)と、肺毛細血管壁の病的変化により液体成分が滲み出したもの(透過性亢進型(とうかせいこうしんがた))です。

 静水圧性肺水腫は、心臓弁膜症心筋梗塞など、心臓の病気が原因となって起こることが多く、これらは心原性肺水腫と呼ばれています。肺水腫のほとんどが心原性肺水腫です。また、このタイプは肺から心臓へ血液を運ぶ肺静脈の閉塞(へいそく)でも起こります。

 透過性亢進型肺水腫は、別名で急性呼吸窮迫(きゅうはく)症候群(ARDS)とも呼ばれ、誤嚥(ごえん)(胃の内容物が肺に入ってしまうこと)、重症肺炎、刺激性ガスの吸入、敗血症(はいけつしょう)(病原菌が血液中に入り、毒素を出したために起こった全身性炎症状態)、多発外傷膵臓炎(すいぞうえん)など、さまざまな原因で起こります。

症状の現れ方

 肺水腫では、呼吸困難、とくに、横になると息苦しいため起き上がって座位を取ったり(起座(きざ)呼吸)、夜中に突然息苦しくて目が覚めたり(発作性夜間呼吸困難)します。また、胸がゼーゼーしたり(喘鳴(ぜんめい))、ピンク色(薄い血液の色)の泡状の痰(泡沫痰(ほうまつたん))が出ます。進行すると皮膚や口唇は紫色になり(チアノーゼ)、冷や汗をかいてショック状態に陥ることもあります。

検査と診断

 胸部の聴診でぶつぶつというラ音が聞こえます。血液ガス分析では低酸素血症を認め、心原性肺水腫では、胸部X線像で心臓が大きく写り、蝶が羽を広げたような影(蝶形陰影)を認めます。

治療の方法

 原疾患の治療を行います。そして、血液中の酸素濃度を上げることが大切です。そのため、酸素吸入、時には人工呼吸器をつけることもあります。

 心原性肺水腫では、毛細血管圧を下げるために、ジゴキシンやジギトキシンなど心臓のはたらきを高める強心薬や、フロセミドなど余分な水分を尿として排泄させる利尿薬、マレイン酸エナラプリル(レニベース)やロサルタンカリウム(ニューロタン)などの血管拡張薬を使います。

病気に気づいたらどうする

 慢性の心臓病がある人は、定期的に受診して医師の指導に従ってください。

 突然呼吸困難の発作が起こったら、上半身を起こし、何かに寄りかからせて座位にします。横にすると余計に呼吸困難がひどくなるので、無理に寝かせないでください。患者さんをできるだけ落ち着かせ、すぐに医師に連絡し指示を受けてください。

金澤 實, 加賀 亜希子

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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