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統計力学【とうけいりきがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

統計力学
とうけいりきがく
statistical mechanics
統計物理学ともいう。物質を構成する多数の粒子の運動に力学法則および電磁法則と確率論とを適用し,物質の巨視的な性質を統計平均的な法則によって論じる物理学の分野。これにより巨視的世界と微視的世界とが結ばれる。気体の巨視的性質を気体分子の運動によって説明した分子運動論に始り,J.C.マクスウェル,L.ボルツマンが分子の速度分布,エネルギー分布を導入,J.ギブズが統計集団の考えを導入して熱平衡状態の統計力学を完成し,熱力学の微視的な基礎づけを与えた。これは統計熱力学とも呼ばれ,比熱,熱放射,相転移,誘電率,磁性など静的な性質を扱うものである。一方,状態の時間的変化に関係した輸送現象や拡散現象などの動的な性質を論じるものとして,気体の粘性や熱伝導に関する分子運動論を出発点として,非平衡状態の統計力学が展開されている。またブラウン運動や熱雑音のようなゆらぎ現象が,統計的平均からのずれによって起る確率過程として統計力学で論じられる。さらに微視的世界を支配する力学として量子力学が確立され,粒子集団に対するフェルミ統計,ボース統計が明らかとなり,これらを基礎とする量子統計力学が展開され,金属電子論や極低温の量子液体など物性物理学の一層の発展に寄与している。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

統計力学
熱力学」のページをご覧ください

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

デジタル大辞泉

とうけい‐りきがく【統計力学】
原子分子の運動を統計的に取り扱い、それらの集まりである物質の巨視的な性質を説明しようとする理論的方法。用いる力学法則によって古典統計力学量子統計力学とがある。統計物理学

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

とうけいりきがく【統計力学 statistical mechanics】
自然界には種々の物質があり,物質の性質が自然現象の起り方を決めている。人間は古代以来,物質構造についての仮説からその性質を説明しようと努力してきた。その理論の現在の形が統計力学,または統計物理学と呼ばれる学問分野である。統計力学は,ある構造をもつ物質はどのような性質を示すかを予言し,また,ある性質を示す物質はどのような構造をもつはずかという問いに答えて,構造の解明を助ける。 物質は非常に多数の分子や原子,あるいはイオンや電子などから構成されている。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

とうけいりきがく【統計力学】
分子・原子・素粒子などの微視的運動を確率論的に取り扱うことによって、巨視的な物質の性質や法則を導き出す力学。一九世紀末にボルツマンやギッブスが始めた。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

統計力学
とうけいりきがく
statistical mechanics
熱力学は本来、系全体のマクロな性質を扱うが、それをミクロな古典力学あるいは量子力学的情報から導き出す理論が統計力学である。熱力学では、熱平衡状態におけるマクロな物理量(状態量)に関する基本関係式を求めることができるが、物質に固有な性質に関するいわゆる状態方程式に関してはあらかじめ知られた関係として与えなくてはならない。系のミクロな情報、おもにハミルトニアンから熱平衡状態での状態方程式を導くのが統計力学である。
 統計力学の始まりは気体分子運動論である。気体内の分子の速度分布を初めて求めたのはマクスウェルであるが、ボルツマンは気体が自ら熱平衡状態へ向かうという不可逆現象をH関数の減少によって説明した。この論の是非をめぐる議論によって、不可逆現象が統計性に由来することが明らかになり、エントロピーという量の微視的意味づけが確立された。
 このように力学的な運動を考え、その定常状態として熱平衡状態を記述する試みに対し、ギブスによってアンサンブル理論が導入された。これは、等重率の原理とよばれる、等エネルギー状態の出現確率が等しいとする原理に基づき、多くの同等な系を考え、その集団での平均をもって熱平衡状態の期待値とする考え方である。この理論の正当化には、エルゴード仮説など位相空間での平均と観測の関係が重要になる。外界から孤立し、エネルギーが保存された系を扱うミクロカノニカル集団では、等エネルギー状態にある状態数W(E)の対数がエントロピーになっていることがわかる。
S(E)=kBlnW(E)
この関係はボルツマンの原理とよばれ、統計力学の基礎的性質である。また、温度が決まっている熱源とエネルギーのやりとりがある場合の系のとりうる状態の集団はカノニカル集団とよばれる。そこではエネルギーEiをもつある一つの状態の出現確率は、

で与えられる。ここで、Zは規格化定数で分配関数とよばれる。
 さらには化学ポテンシャルが与えられた粒子源と粒子のやりとりがある場合のグランドカノニカル集団などがある。そこで、粒子数Nをもつある状態iの出現確率は、

で与えられる。ここで、Ξ(クシー)は規格化定数で大分配関数とよばれる。[宮下精二]

不可逆過程の統計力学

統計力学は、熱平衡状態の性質を微視的な情報から求める手法であるが、より一般に、多数の変数が集団としてみせる現象も研究の対象になっている。熱力学第二法則は、熱の流れる方向を規定しているが、その流れ方については何も示していない。そのため、熱平衡状態にどのように緩和していくのかは未知の問題である。ボルツマンのH定理は、この問題に真っ向から取り組んだものであるが、一般化はむずかしく、通常は平衡状態に関してはアンサンブル理論によって取り扱われている。しかし現在、その緩和の問題が、非平衡統計力学の問題として盛んに研究が進められている。
 粗視化による非平衡現象の把握に成功した例として流体力学がある。また、平衡に近い場合の線形応答理論(久保理論)は輸送現象などの解析で成功している。さらに、ブラウン運動の記述で導入されたランジュバン方程式や、分布関数の時間発展に衝突現象を考慮したボルツマン方程式など、さまざまな方法が考案されている。[宮下精二]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

とうけい‐りきがく【統計力学】
〘名〙 物質を構成する素粒子、原子、分子などの微粒子の運動法則をもとに、物質の巨視的性質・現象を、統計的・確率的に説明する物理学。運動法則に古典力学を用いる古典統計力学と量子力学を用いる量子統計力学がある。〔自然科学的世界像(1938)〕

出典:精選版 日本国語大辞典
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化学辞典 第2版

統計力学
トウケイリキガク
statistical mechanics

物質の巨視的状態は,物質を構成するきわめて多数の微視的粒子(分子,原子,電子,原子核など)の性質および運動の総合的結果である.微視的要素の運動は,原理的には力学の法則によって記述される.この微視的世界の力学に立脚して,確率論的に巨視的世界の法則を導き出す理論的方法が統計力学である.とくに,熱平衡状態にある系に対しては,明確な理論が確立され,熱力学的現象を微視的立場から完全に説明することができる([別用語参照]統計熱力学).統計力学は,気体分子運動論にその萠芽がある.L. Boltzmannは気体分子に対する速度分布則の一般的証明のために,H定理を導き,さらにエルゴード仮説のうえにエントロピーSの統計力学的意味を示すボルツマンの原理

S(N,V,E)=klog W
を与え,統計力学の創始者となった.ここで,kボルツマン定数Wは,粒子総数N,体積V,エネルギーEで指定された系が熱平衡状態で許される微視的状態の数を表す.Boltzmannに対して,J.W. Gibbs(ギブズ)は統計熱力学をさらに明確にした統一的な理論体系を建設した.これをGibbsの統計力学とよぶこともある.この方法は,のちにR.H. Fowlerらによって発展させられた.とくに,Gibbsが名づけたカノニカル集合は一定温度の熱源のなかに存在する統計集団を表現するもので,きわめて重要である.BoltzmannおよびGibbs時代の統計力学は,古典力学にもとづいているので,古典統計力学とよばれる.今日の統計力学は,本質的に量子力学にもとづく量子統計力学であって,古典統計力学は,その近似として成立する.非平衡状態に対する統計力学は,まだ簡明な統一的理論体系となっていない.代表的なものとしては,気体分子の位置・速度に対する確率分布の従う方程式を運動論的に解く方法,たとえばS. ChapmanおよびD. Enskogによる気体の輸送現象の理論がある.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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