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精神物理学的測定法【せいしんぶつりがくてきそくていほう】

最新 心理学事典

せいしんぶつりがくてきそくていほう
精神物理学的測定法
psychophysical method(英),Psychophysische Massmethode(独)
心理物理学的測定法ともいう。フェヒナーFechner,G.T.によって提唱された精神物理学psychophysicsにおいて用いられた測定法に由来する一群の心理学的測定法を指す。実験心理学の始祖とされるフェヒナーは「実在は物理的側面と精神的側面の二つの面をもつ」として,物理的事象(物理量)とそれに対応する心理的事象(心理量)の関数関係を定量化する科学的測定法に重点をおいた。ただし,フェヒナーの思想とは無関係に,その方法のみが独自に発展してきたという経緯があり,どの範囲までを精神物理学的測定法に含めるかは研究者によって異なるようだ。ここでは,まず精神物理学的測定法の適用例と特徴を紹介したのち,測定値の種類と現在も広く用いられている伝統的精神物理学的測定法である調整法,極限法,恒常法を中心に説明する。

【精神物理学的測定法の適用例】 測定法の具体的説明に入る前に,以下に簡単な適用例を二つ挙げる。一つは,光が見えるか見えないかの境に相当する光覚の刺激閾(光覚閾light threshold)を測定する場合である。あらかじめ予備実験を行ない,光覚閾に相当すると予想される刺激強度の範囲(ほとんど見えない光点から見える光点まで)で等間隔(あるいは対数的に等間隔)に,たとえば5段階の強度値(刺激値)を選択しておく。実験では,各段階の刺激値(光点)をランダム順で100回ずつ(計500試行)実験参加者に呈示したとしよう。このように,一定の幅で変化する数段階の刺激をランダム順で呈示する方法を恒常法という。たとえば実験の結果,図1のように,それぞれの刺激段階の光点に対して実験参加者が「見えた」と反応した割合が,段階1=2%,段階2=7%,段階3=31%,段階4=61%,段階5=90%だったとする。刺激閾は通常,反応(感覚)が0.5の確率で生じる刺激値とされることから,この実験では,段階3と4の間に刺激があると推定される。この値を適当な方法を用いて推定した結果が3.6であったとすれば,その強度値が刺激閾となる(図中の矢印)。ここで仮に用いた1~5までの刺激段階は,実際の実験では具体的な刺激強度の値,またはそれと対応した相対的な強度の値を用いる。

 もう一つは,図2に示されるようなミュラー・リヤー錯視で生じる錯視の量を測定する場合である。この図形の線分aとbとでは,外向図形の線分bの方が,内向図形の線分aよりも長く見えるが,これは錯視によるもので,実際は長さは同じである。そこで,実験では,外向図形の線分bの長さを変えられるように左右に動かせる刺激教材を実験参加者に呈示し,内向図形の線分aを参考に,線分aと線分bが同じ長さに見える位置に調整してもらう(調整法)。このとき変化しない方の刺激(内向図形の線分a)を標準刺激standard stimulus,変化する方の刺激(外向図形の線分b)を比較刺激comparison stimulusとよぶ。参加者が,線分aと線分bが等しい長さに見えるように比較刺激を調節した結果,たとえば比較刺激の実際の長さが7.5㎝であったとすると,その値を標準刺激(たとえば10㎝)に対する主観的等価点point of subjective equality(PSE)とよぶ。すなわち,左右の位置の差に基づく空間誤差を無視すれば,標準刺激10㎝と比較刺激7.5㎝の差,2.5㎝が錯視量となる。錯視量は大きいほど,つまり主観的等価点が小さいほど,外向図形が過大視されていたことになる。

【精神物理学的測定法の特徴】 伝統的精神物理学的測定法の主な特徴は2点ある。一つは,測定の際,実験参加者に求める反応カテゴリーが数種類,一般に2種類または3種類に限られる点である。換言すれば,実験者が測定において観察する反応や判断は,きわめて単純なカテゴリーから成るということである。たとえば,前述した光覚閾を求めるときのように,実験参加者に「見えた」「見えない」のどちらかで報告させる。あるいは,二つの音刺激を聞かせて,一方の音が他方と比べて「大きい」「等しい」「小さい」の三つのいずれかで報告させるなどである。反応カテゴリー数に応じて,それぞれ2件法method of two categories,3件法method of three categoriesとよばれる。3件法での測定の場合,「等しい」カテゴリーは,実験条件に応じて「同じ」あるいは「不明」などに置き換えられることがある。また場合によって,「確実に見えた」「たぶん見えた」「たぶん見えない」「確実に見えない」など反応カテゴリーの数が多くなる場合もある。報告は一般に口頭もしくはボタン押しで行なわれる。何種類の反応カテゴリーを用いるかは,それぞれに長所と短所を踏まえて検討する必要がある。2件法は明解であり,データ処理は単純であるが,一方で選択肢が極端に限られていることから実験参加者が判断に困る場合もある。3件法は,参加者が2件法での判断に困難を訴える場合や,実験者がデータを処理するうえであえて「不明」や「等しい」などの反応データを必要とする場合に用いればよいとされる。ただし,実際に第3の反応カテゴリーを用いるか否かについては,個人差や条件差が大きいこと,また閾値や主観的等価点を算出する手続きが複雑になるなど,いくつか問題があることも理解しておく必要がある。

 伝統的精神物理学的測定法におけるもう一つの特徴は,測定の指標(インデックス)にある。測定値は多くの場合,反応の値ではなく,つねに刺激の値で示される。つまり,実験者の関心の的は,実験参加者の反応そのものではなく,刺激値に応じた反応カテゴリーの出現率やその分布型にあり,たとえば「見えた」といった特定の反応カテゴリーの出現確率が50%(あるいは75%)となるような刺激値を求めることにある。光が見えたか見えないかの2件法による課題を考えてみると,「見えた」という反応カテゴリーの出現率を(+)として,刺激の輝度をs,波長をとすると,P(+)=f(s,w)で表わすことができる。そこで,(+)=0.5とおくとすると,0.5=g(s,w)が得られ,さらに刺激閾はの関数として,s=g(w,0.5)を基に,0.5h(w)を得ることができる。すなわち,精神物理学的測定法では,刺激-反応(S-R)の関係を観測することにより,刺激-刺激(S-S)の間の関数関係を求めることがねらいであり(大山正,1969),この点が特徴であるといえよう。

【測定値の種類】 前述したように,精神物理学的測定法における測定値は反応値ではなく,刺激値で表わされる。実験参加者への教示やデータの整理法において,どのように反応や反応出現率の基準を定めるかによって,測定値はいくつかの種類に分類される。

⑴刺激閾stimulus threshold,stimulus limen 感覚が生じるか生じないかの境界点,すなわち反応を生じさせる最小の刺激強度のことを指す。後述の⑶で述べる弁別閾と区別する意味で,絶対閾absolute thresholdとよばれることもある。一般に,実験参加者の反応曲線は,刺激強度sの増加に対して,図1のようなS字型の連続的なオジーブ曲線(累積正規分布曲線)を示すとされている。そこで,たとえば「見えた」や「聞こえた」といった「+」の反応出現頻度が50%,すなわち,P(+)=0.5となるときの刺激強度(刺激量)を刺激閾とすることが多い。

⑵刺激頂terminal threshold,terminal stimulus 感覚を生じさせる最大の刺激強度を指す。それ以上,刺激強度を上げると感覚は変化しないか痛みに変わる。感覚的に耐えがたくなる限界の刺激強度を指す。刺激頂は一般に刺激強度が非常に大きいことから,その測定には困難を伴うとされる。

⑶弁別閾difference threshold,difference limen(DL) 二つの刺激が同時または継時的に呈示されたとき,刺激間の差異を感覚的に弁別できる最小の刺激差を指す。丁度可知差異just noticeable difference(jnd)とよぶこともある。通常,その刺激間において0.5の確率で区別できる刺激差を弁別閾とする。標準となる刺激に対して刺激強度が「大」となる側を上弁別閾upper threshold,「小」となる側を下弁別閾lower thresholdと区別することがある。

⑷主観的等価点point of subjective equality(PSE) 評定価ともいう。二つの刺激c(比較刺激comparison stimulus)とs(標準刺激standard stimulus)を同時または継時的に呈示したとき,ある感覚・知覚特性に関して,両刺激が等しいと判断される(あるいは区別できない)とき,csの等価刺激equivalent stimulusといわれ,cの値を主観的等価点とよぶ。

 錯視や対比などの知覚現象において,主観的等価点を測定する場合,通常,錯視や対比効果が生じている刺激をsとして一定に保ち,それらの効果を受けない刺激をcとして組織的に変化して測定する。ただし,場合によっては,視覚現象が生じている刺激をcとして,単純な条件下にあるsと比較する場合もあり,このときのsは基準刺激reference stimulusとよばれる。

⑸絶対特性をもたらす刺激 二つの刺激が呈示されなくても,一つの刺激だけでその特性を判断することができる場合がある。たとえば,単独で呈示された線分が垂直であるかどうか,あるいは呈示された色が最も青らしい青かどうかなどの判断を求める場合である。cを必要とせず,sに相当する刺激だけでよいことから,単一刺激法method of single stimulus,または絶対判断法method of absolute judgmentとよばれる。ただし,この方法は厳密に絶対特性を測定するものではなく,順応水準adaptation levelのように,一時的に呈示され経験によって生じる感覚・知覚特性を測定するものとして用いられる。

⑹等価刺激差異equal-appearing intervalsと等価刺激比率equal-appearing ratios 三つ以上の複数刺激を同時または継時的に呈示して,それらの刺激間の感覚的な隔たりや比率が等しく感じられるときの刺激値の差異をそれぞれ等価刺激差異,等価刺激比率という。二等分法method of bisectionは,三つの刺激の中央の刺激を調整して二つの等価刺激差異を求める方法で,かつては感覚距離等分法method of equal sense distanceとよばれた。等価刺激比率を求める方法としては,オヤマOyama,T.(1959)の移調法method of transpositionやスティーブンスStevens,S.S.(1957,1961)のモダリティ間比較法cross-modality ratio-matchingなどがある。

【測定法の種類と基本的手続き】 以上の測定値を求める方法としてよく知られているものに,伝統的精神物理学的測定法である調整法,極限法,恒常法がある。以下に,これら3種類を中心に,極限法の変形である上下法なども含めて概説する。

⑴調整法method of adjustment 古くは平均誤差法method of average error,再生法method of reproductionなどとよばれていた。実験参加者自身が,呈示された刺激を変化させる方法である。ただし,コンピュータを用いた実験などで,参加者の指示に従って,実験者が刺激を変化させることもある。主観的等価点の測定には適しているが,感覚が生じるか否かの境で調整することは困難であるため,刺激閾の測定には適さない。弁別閾は,各回の調整値のばらつきから求めることができる。通常,確率誤差(PE:標準偏差すなわちSDの0.6745倍)を弁別閾とすることが多い。

 実験では,csよりも明らかに大きい(強い,遠いなど)と判断される刺激を小さく調整していく試行(下降系列)と,csよりも明らかに小さい(弱い,近いなど)と判断される刺激を大きく調整していく試行(上昇系列)を半数ずつ取り入れる。また,試行ごとに系列方向の順序および測定の出発点をランダム化する。この方法によって,参加者が刺激を変化させすぎたり,逆に変化させないなどの調整誤差の方向性の偏りを取り除くことができると同時に,刺激範囲の上限と下限を求めることができる。調整法では,調整誤差以外にも,空間誤差(刺激呈示の位置関係の違い)や時間誤差(刺激呈示順序の違い)が生じることが知られており,その場合は実験において位置や順番を入れ換えるなどの工夫をすることが望ましい。またcsは同時に呈示されることが望ましいとされる。

⑵極限法method of limits 丁度可知差異法method of just noticeable differenceに由来するもので,極小変化法method of minimal changeともよばれる。調整法と異なり,実験者が刺激を変化させ,実験参加者に2件法または「等しい(わからない)」などを含む3件法で反応や判断を求める方法である。刺激は,調整法が連続的であるのに対して,極限法では一定のステップで変化する。たとえば,音の刺激閾を測定する場合,まったく聞こえないレベルから一定間隔で徐々にボリュームを上げていき,「聞こえる」反応まで音強度を強める上昇系列ascending seriesと,明らかに聞こえるレベルから徐々にボリュームを下げていき,「聞こえない」反応まで音強度を弱める下降系列descending seriesをランダム順にそれぞれ同数回繰り返し,反応の変化点に対応した刺激値の平均値を刺激閾の推定値とする。

 また,たとえば明るさの弁別閾の測定では,一定の明るさの光源sとそれよりも間違いなく暗いと判断される光源cを対呈示し,実験参加者にどちらが明るいかを判断するように求める。cを一定間隔で徐々に明るくしていき,参加者が「同じ」と反応した時点で,その刺激系列を打ち切る試行(上昇系列)と,cが間違いなく明るいと判断されるところから始める試行(下降系列)をランダム順で半々になるように繰り返す。弁別閾の算出は,まず系列ごとに反応が変化した前後の刺激値の中央値を求め,次に上昇系列と下降系列の両測定値を平均することで求められる。極限法は,刺激閾,弁別閾,主観的等価点のいずれの測定にも適しているが,刺激系列の変化方法が実験参加者に気づかれやすいという難点がある。

 極限法を変形した手法に上下法up-and-down methodがある。実験参加者の反応カテゴリーが変化するごとに,刺激強度の変化方向を逆転させるもので,階段法staircase methodともよばれる。この方法では,たとえば「大」「小」の2件法を用い,実験参加者の反応が「小」から「大」へ変化した時点で刺激系列を上昇から下降へ,もしくは「大」から「小」へ変化した時点で下降から上昇へと刺激の強度方向を逆転させ,1試行前の刺激を再呈示する(図3)。この操作を繰り返し行ない,反応の変化点が一定回数(たとえば8回)得られた後,それらの変化点の刺激値の平均を刺激閾,主観点等価点などとする。また場合によっては,「大」「等」「小」の3件法において,反応が「大」から「等」と反応した後も反応が「小」に変わるまで刺激を呈示していき,「小」になった点もデータとして採用することがある。この刺激呈示方法は完全上下法とよばれ,上下弁別閾の値を同時に求めることができるため,その平均値を算出して主観的等価点を求めることができる。さらに,上下法を発展させた方法に,変形上下法transformed up-and-down methodがある。連続する数試行の反応を考慮して上昇系列や下降系列を繰り返す方法であり,UDTR法up-down transformed response methodともよばれる。たとえば,実験参加者が対象となる音が2回「聞こえた」と反応した場合(=2)は一定の間隔で音圧を下げていき,「聞こえなくなった」と反応した場合は1回で音圧を上げる。上下法が50%の閾値を求めるのに対し,変形上下法ではより高い確率(=2の場合は70.7%,=3の場合は79.4%)での閾値を求める。

⑶恒常法constant method 恒常刺激法method of constant stimulusともいわれ,より古くは当否法method of right and wrong caseともよばれた。とくに弁別閾を測定する場合には恒常刺激差異法method of stimulus differencesということもある。前述の光覚閾の測定例のように,あらかじめ刺激値を一定の間隔で数段階(一般に5~9段階)設定しておき,各段階の刺激をランダム順に20~100回実験参加者に呈示し,反応を求める。参加者の意図や予測が入りにくく,調整法や極限法に比べて精度は良いとされているが,かなり時間がかかるため,参加者の疲労や集中力が低下することなどに注意して実験を行なう必要がある。実験参加者の反応は,同じ刺激に対して,いつも同じであるとは限らない。そこで,恒常法ではそれぞれの刺激に対して反応の出現確率を求め,閾値としたい出現確率が得られる点(刺激値)を数学的方法によって推定する。以下において,その推定方法を簡単に紹介する。

 最も簡単な方法は,直線補間法method of linear interpolationである。閾値としたい出現確率P(+)=0.5の前後の測定値を利用して,この2点間を所定の出現率(図1の例では段階3,段階4の刺激段階における出現率)が直線的に変化すると仮定して,2点間を直線で結ぶこと(直線的内挿法)によって50%の反応レベルが得られる刺激強度を刺激閾として推定する。直線補間法を改善した方法として,正規補間法normal interpolation procedureがある。閾値としたい出現確率の前後の値をZ値に変換してから,刺激強度とZ値の関係を直線補間する方法である。直線補間法,正規補間法ともに簡便であるが,二つの刺激段階に対する刺激値しか用いない点が欠点である。これに対して,正規グラフ法normal graphic procedureでは,正規確率方眼紙上で,刺激に対するすべての反応点に最も当てはまる直線を目分量で引き,この直線と出現確率50%との交点を閾値とする。この方法ではすべてのデータが有効に用いられるため,直線補間法や正規補間法に比べて,より正確であると言える。また一般に,人間の反応は単調な刺激変化に対して,図1のようなS字型にカーブを描いて出現することから,直線より累積正規曲線の方が当てはまりが良いとされる。ただし,正規グラフ法では,刺激呈示段階が少ない場合には推定しにくく,目分量で作図するため誤差が生じやすい。そこで正規グラフ法よりも正確に閾値を求めるには,最小2乗法least squares methodが有効とされる。これは推定誤差(理論値と測定値の差)の2乗和が最小になるように,正規グラフ上で直線(=回帰直線)を定めることによって,閾値を求める方法である。ほかに最小2乗法の代わりに最尤法を用いるプロビット法probit analysisや,データに重みづけをして出現率50%前後の値を重視するミュラー-アーバン法Müller-Urban processなどがある。

【精神物理学的測定法の応用・展開】 伝統的精神物理学的測定法は,心理的事象(心理量)は物理的事象(物理量)に還元できるとする立場であり,心理量を直接的に数値化して扱うことは難しいとされた。そこで,あらかじめ心理量を段階的に設定し,たとえばAはBより美しい,CはDより好ましいなど順序による測定を基に好みや印象に関する心理量の間隔尺度を構成する方法などが考案されている。一対比較法paired comparisonでは,例として5枚の絵画刺激を用意し,その中から2枚の絵画を組み合わせて実験参加者に対呈示し,どちらがより「心地よい」かなどを判断させる。参加者にはすべての刺激の組み合わせがランダム順で呈示され,それぞれの刺激において「心地よい」と選択された割合(選択率)に基づいて,刺激間の心理的距離を算出するというものである。一対比較法は評定法rating methodに属するが,実験参加者に順序判断のみを求める点は伝統的な測定手法に近い。これに対して,スティーブンスStevens,S.S.は,実験参加者が報告する数値から直接的に感覚尺度を構成する方法としてマグニチュード推定法magnitude estimationを考案し,心理量と物理量についてさまざまな関係性を見いだした。しかし,こうした直接的尺度構成法では,得られる感覚尺度の性質がつねに明確であるとは限らない。

 精神物理学的測定法の伝統的な閾値の概念を一新し,今日広く用いられている方法として信号検出理論signal detection theory(SDT)が挙げられる。SDTは実験手続きなどは伝統的手法に基づくと考えられるが,SDTの中では閾の存在そのものは否定されており,また得られる指標は物理的な刺激値ではないという点で,伝統的精神物理学的測定法と大きく異なっている。その一方で,SDTが精神物理学的測定法に位置づけられて説明されることが多い理由としては,曖昧な刺激事態における人間の反応特性を確率理論に基づいて決定するという点,とくに人間の刺激に対する感受性と反応基準の変動(態度や動機,反応バイアスなど)を独立に評価することを可能にした点にあるといえるだろう。現在,その適用範囲は知覚分野のみならず,医療診断や人間工学をはじめ,さまざまな分野に取り入れられ,現実的な問題場面における評価法として活用されている。 → →感覚尺度 →刺激 →信号検出理論 →精神物理学
〔池田 まさみ〕

出典:最新 心理学事典
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