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立・起・建【たつ】

精選版 日本国語大辞典

た・つ【立・起・建】
[1] 〘自タ五(四)〙
[一] 物、人などが、目だった運動を起こす。
① 雲、霧、煙などが現われ出る。⇔いる(居)
※古事記(712)上・歌謡「項(うな)かぶし 汝(な)が泣かさまく 朝雨の 霧に多多(タタ)むぞ」
※万葉(8C後)一四・三五一五「吾が面(おも)の忘れむ時(しだ)は国はふり嶺(ね)に多都(タツ)雲を見つつしのはせ」
② 風、波などが起こり動く。
※万葉(8C後)一・四八「東(ひむがし)の野に炎(かぎろひ)の立(たつ)見えてかへりみすれば月かたぶきぬ」
※伊勢物語(10C前)七「浪のいと白くたつを見て」
③ 月、虹などが高く現われる。
※万葉(8C後)一一・二五一二「味酒(うまさけ)の三諸の山に立(たつ)月の見がほし君が馬の音そする」
④ 横になったり、すわったりしていた人が身を起こす。また、席から去る。
※万葉(8C後)三・三七二「立(たち)てゐて 思ひそわがする 逢はぬ児ゆゑに」
※伊勢物語(10C前)四「去年を恋ひて行きて、たちて見ゐて見見れど、去年に似るべくもあらず」
⑤ (発) (④から転じて) 出発する。出立する。
※万葉(8C後)一七・三九九九「都方(みやこへ)に多都(タツ)日近づくあくまでに相見て行かな恋ふる日多けむ」
⑥ 鳥、虫などが飛びあがる。
※万葉(8C後)一四・三三九六「小筑波の繁き木の間よ多都(タツ)鳥の目ゆか汝を見むさ寝ざらなくに」
⑦ 勢いよくある行動をおこす。
※御伽草子・土蜘蛛(室町時代物語大成所収)(室町末)下「御大事にはたたずして、せんもなきわたくしいくさして」
[二] 作用、状態などが目立ってあらわれる。
① 音や声が高くひびく。よく通る。
※万葉(8C後)二〇・四四六〇「堀江漕ぐ伊豆手の船の楫つくめ音しば多知(タチ)ぬ水脈(みを)早みかも」
② 人に知れわたる。評判になる。「うわさが立つ」
※万葉(8C後)四・七三一「わが名はも千名の五百名(いほな)に立(たち)ぬとも君が名立(たた)ば惜しみこそ泣け」
※伊勢物語(10C前)一七「あだなりと名にこそたてれ桜花年にまれなる人も待ちけり」
③ 目に見えるようにはっきり示される。
※伊勢物語(10C前)四六「目かるとも思ほえなくに忘らるる時しなければ面影にたつ」
※海道記(1223頃)池田より菊川「其目に立(たつ)者は剣戟の刃、魂を寸神の胸にけす」
④ 新しい時節が来る。
※万葉(8C後)五・八一五「むつき多知(タチ)春の来らばかくしこそ梅を招(を)きつつ楽しき終へめ」
※古今(905‐914)春上・一「春たちける日よめる 袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立(たつ)けふの風やとくらん〈紀貫之〉」
⑤ (建) 建造物などが造られる。建設される。
※日葡辞書(1603‐04)「イエガ tatçu(タツ)
※浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)四「去年からの御普請で結構に建った奥御殿は」
⑥ 催される。「場が立つ」
※万葉(8C後)一七・三九九一「宇奈比川 清き瀬ごとに 鵜川多知(タチ)
※日葡辞書(1603‐04)「イチガ tatçu(タツ)
⑦ 水が十分に熱せられて湯気やあわが生じる。たぎる。湯や風呂がわく。
※名語記(1275)四「あつき湯のたつ、如何。これも立也。たちあかる也」
※銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉後「もう風呂がたってゐるじぶんだと思って」
⑧ (興奮して気持が)高まる。激する。
※虎明本狂言・二千石(室町末‐近世初)「某はいつもよりもはらが立たに依て」
※日葡辞書(1603‐04)「ハラガ tatçu(タツ)
※俳諧・曠野(1689)員外「夕鴉宿の長さに腹のたつ〈其角〉 いくつの笠を荷ふ強力〈越人〉」
⑨ ある気持や状態が生じる。
※浮世草子・好色五人女(1686)五「源五兵へ入道不思義たちて」
⑩ すぐれた性能が発揮される。「弁が立つ」
※徒然草(1331頃)二二九「妙観が刀はいたくたたず」
[三] 物や人が、たてにまっすぐな状態になる。また、ある位置や地位を占める。
① 足などでまっすぐに支えられる。
※古事記(712)中・歌謡「さねさし 相摸の小野に 燃ゆる火の 火中に多知(タチ)て 問ひし君はも」
※枕(10C終)二二六「田植うとて、女のあたらしき折敷のやうなるものを笠に着て、いとおほうたちて歌をうたふ」
② 草木などが地から生える。また、棒などが下の面に垂直にささる。
※古事記(712)中・歌謡「ちはやひと 宇治の渡りに 渡瀬に多弖(タテ)る 梓弓まゆみ」
※古今(905‐914)春上・四二・詞書「そこにたてりける梅の花ををりてよめる」
③ とげ、矢など細長いものがささる。
※今昔(1120頃か)一〇「此の岩を射るに、箭不立(たた)ずして」
※保元(1220頃か)中「余る矢が法㽵厳院の門の方立に、篦中せめてぞ立たりける」
④ 建物など、高大なものが位置をしめる。
※蜻蛉(974頃)中「戸おしあけて見わたせば、堂いとたかくてたてり」
⑤ 乗物などが、とどまってある場所を占める。置かれる。
※蜻蛉(974頃)下「檳榔ひとつに四人許のりていでたり。冷泉院の御門の北の方にたてり」
⑥ ある位置を占める。ある立場に身を置く。「優位に立つ」「苦境に立つ」
※大智度論天安二年点(858)「後に在(タチ)て行けと語ふ」
※古今(905‐914)仮名序「人丸は赤人がかみにたたむ事かたく、あかひとは人まろがしもにたたむことかたくなむありける」
⑦ 重要な地位につく。
※大和(947‐957頃)五「后にたち給ふ日になりにければ」
⑧ (閉) 門、戸、ふすま、障子などがとざされる。また、他動詞的に用いて、とざす。
※石山本願寺日記‐私心記・天文一四年(1545)九月朔日「四時過歟、興正寺賀阿往生。門たつ間、今夜不行」
⑨ 立稽古をする。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)四「ナンノ鉄砲場の一ト幕ばかりわかりきった事だ。すぐにたって見やう」
[四] ある状態が保たれる。また、物事が成り立つ。
① 使ったり、仕事をさせたりすることができる。間に合う。
※平家(13C前)九「なんの用にかたたせ給ふべき」
② 面目などがそこなわれないで保たれる。
※歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)中「盗みをしたと言はれては立(たた)ぬ」
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上「ゐなか者にし負けては此の与兵衛がたたぬ」
③ 生活をして行く。やっていく。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)四「唐琴屋はどうもむづかしい様子、どうか立(タチ)そうもないといふ噂でございます」
※交易問答(1869)〈加藤弘之〉上「活計(くらし)が立(タチ)にくいといふ国ならば」
④ 言い分などが他に認められる。また、物事がはっきりと成り立つ。確立する。
※曾我物語(南北朝頃)一「祐経が申状、たたざる事こそ、無念なれ」
[五] (経) 時や盛りの状態が過ぎて行く。
① 時が経過する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・炭俵(1694)下「人の物負(おは)ねば楽な花ごころ〈野坡〉 もはや彌生も十五日たつ〈利牛〉」
② 炭火、ろうそく、油などが燃えつきる。
※俳諧・犬子集(1633)一七「白き物こそ黒く成けれ 灯心のたちし行ゑは油煙にて〈慶友〉」
※浮世草子・男色大鑑(1687)八「長蝋燭の立(タツ)事はやく」
[六] 補助動詞として用いる。他の動詞の連用形に付いて、さかんに…する、すっかり…するの意を表わす。
※蜻蛉(974頃)中「さなめりと思ふに、心ちまどひたちぬ」
[2] 〘他タ四〙
① 人に知られるようにする。評判を広める。
※古今(905‐914)秋上・二二九「をみなへし多かる野辺にやどりせばあやなくあだの名をやたちなん〈小野美材〉」
② 気持を興奮させる。
※大鏡(12C前)三「馬の上にて、ない腹をたちて」
③ 使用に間に合わせる。
※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下「我らもおにやけを御用にたち申べし」
[3] 〘他タ下二〙 ⇒たてる(立)
[補注]四段活用の他動詞と見られる用法は、近世に多く見られるが、「洒・古契三娼」の「これでぬしのかほほたっておくんなんし」、「滑・浮世風呂‐二下」の「いくぢなし男に情を立(タッ)て」、「人情・清談若緑‐三」の「飛脚を立って呼び返さうサ」などのように、「たって」の例が圧倒的に多いところから、あるいは「たてて」の変化した形かともいわれる。

出典:精選版 日本国語大辞典
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