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社会的移動【しゃかいてきいどう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

社会的移動
しゃかいてきいどう
social mobility
単に「社会移動」といわれることも多い。社会のなかで、個人や集団はさまざまの役割を担い、また、さまざまの地位に置かれている。いわば、役割や地位に関してさまざまな位置を占めている。この個人や集団の社会的位置の変化を、あたかも一つの社会的位置から別のそれへ物理的に移動するかのようにみなして、社会的移動とよぶ。社会的位置は、具体的には、さまざまの指標によってとらえられるが、現代社会においては、職業が最良の指標とみなされることが多い。したがって、社会的移動も、職業の変化(これを職業移動とよぶ)を通して考察されることが多い。なお、居住地などの地理的な移動は、社会的位置の変化を伴うことは多いが、それ自体は社会的移動とは区別すべきである。[原 純輔]

意義

社会的移動は、社会学における基本的概念の一つである。なぜなら、社会的移動は、社会構造の維持や変動と深く結び付いているからである。社会は、古い成員が抜けたあとへ、より若い成員が移動したり、新しい成員が社会的位置を獲得したりする形で、つねに新陳代謝を繰り返している。つまり、社会的移動の過程を通して、社会の構造が維持されていくのである。また、ときとして、社会的移動のパターンが変化したり、急激で大量の移動が発生したりすることがある。これらの変化は、社会構造の変動の結果であったり、原因となったりすることが多い。このように社会的移動には、さまざまの形態が考えられるが、そのなかでも、社会的地位の変化を伴う上昇移動、下降移動に対して、社会学では伝統的に関心が払われてきた。これらの移動は、社会の階級・階層構造と関連をもっており、ひいては社会の統合や分裂の問題と深くかかわっているからである。そこで、今日、社会的移動という場合には、社会的地位の移動をさすのが普通である。[原 純輔]

現代社会と社会的移動

社会的移動は、どこの社会にもみられる普遍的現象であるが、同時に、次のような諸問題ともかかわって、現代社会の動向に重要な関連をもっている。
(1)機会の均等 自由と平等とは、近代社会が掲げた理想であるが、社会的移動の機会均等(高い社会的地位に到達する可能性が、意欲と能力があれば、自分の出身とはかかわりなく、だれにも平等に開放されていること)は、その内容の一つであるといえる。しかし、現実の社会は、この理想を実現しえておらず、不当にその機会を阻まれている人が少なくない。
(2)地位病の蔓延(まんえん) 社会的上昇(出世)が容認・賞賛される現代社会では、人々は、上昇移動への自己の欲求や周囲の期待、逆に下降移動への不安によって、絶えず緊張にさらされている。このため「地位病」とよびうるようなさまざまの病理的現象(醜い人間関係、ゆがんだパーソナリティー、有名学校への進学熱など)が無視しえぬものになっている。
(3)近代化の推進力 開発途上国の近代化(産業化)の達成には、種々の環境的条件とともに、その主体的条件の整備が不可欠である。つまり、伝統的生活形態から離れて、第一次産業から第二次・第三次産業へ、より多くの収入、より高い地位へという社会的移動への意欲に支えられて、近代化を担っていく人材の育成が、決定的に重要である。[原 純輔]
『安田三郎著『社会移動の研究』(1971・東京大学出版会) ▽原純輔・盛山和夫著『社会階層――豊かさの中の不平等』(1999・東京大学出版会)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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