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発酵【はっこう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

発酵
はっこう
fermentation
微生物が自己の酵素で種々の有機物を分解あるいは変化させ,それぞれ特有の最終産物をつくりだす現象をいう。したがって最終の物質の名称を取って「…発酵」と呼ばれる。たとえば酵母がをアルコールと二酸化炭素にするのをアルコール発酵乳酸菌が糖を分解して乳酸を生成するのを乳酸発酵という。原則としては酸素による酸化は行われないが,酢酸菌エチルアルコールを酢酸とし,カビがグルコースグルコン酸に変える反応には酸素を必要とし,それぞれ酢酸発酵グルコン酸発酵という。したがって発酵を嫌気発酵好気発酵 (酸化発酵) とに分類することもできて,前者には上記のほかに,グリセリン発酵アセトン-ブタノール発酵,酪酸発酵プロピオン酸発酵などがあり,後者には上記のほかに,クエン酸発酵,イタコン酸発酵,コウジ酸発酵,フマル酸発酵,ソルボース発酵などが知られている。ただし,呼吸における酸素の消費は電子伝達系を通ってきた水素 (電子) の酸化のためであるが,酸化発酵では,基質の変化に直接に酸素が加わる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

発酵
微生物が糖などの炭水化物を酸素なしに分解し、エネルギーを獲得する反応。分解産物の違いによってアルコール発酵、乳酸発酵、酢酸発酵、酪酸発酵などがあり、古くから醸造業に利用されてきた。動物体内において呼吸に先行して起こる解糖は乳酸発酵と同一の反応で、アルコール発酵と共通の糖分解経路(エムデン‐マイヤーホフ‐パルナス経路)をもつ。なお、微生物が窒素や硫黄成分を含む有機物を分解し、有害な分解産物を生じるのが腐敗(putrefaction)である。
(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

デジタル大辞泉

はっ‐こう〔‐カウ〕【発酵/×醗酵】
[名](スル)微生物の働きで有機物が分解され、特定の物質を生成する現象。狭義には無酸素状態で糖質が分解されること。生物体はこれにより必要なエネルギーを獲得する。生成される物質によってアルコール発酵乳酸発酵メタン発酵などとよぶ。酒・醤油・味噌・ビール・チーズなどの製造に利用。

出典:小学館
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編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

発酵
 本来微生物の嫌気的な代謝をいうが,今日では微生物の代謝を利用して有用な物質を生産することをいう場合が多い.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

はっこう【発酵 fermentation】
一般には微生物の作用によって有機物が分解的に変化して,なんらかの物質が生成する現象をいうが,その中でも腐敗に対立して,とくにその作用が人間にとって有用である場合に用いられる。微生物の一種である酵母の作用によって,糖からアルコールと炭酸ガスが生成するアルコール発酵はその代表例であるが,そのほかにも乳酸菌によって糖から乳酸が生成する乳酸発酵,酢酸菌によってエチルアルコールから酢酸が生成する酢酸発酵,ある種の細菌によって糖とアンモニアからグルタミン酸などのアミノ酸が生成するアミノ酸発酵など多様な発酵現象が知られている。

出典:株式会社平凡社
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飲み物がわかる辞典

はっこう【発酵】

の製造において、摘み取った茶葉を萎(しお)れさせて水分を除き、揉んだりこすり合わせたりして細胞組織を破壊し、葉に含まれる酸化酵素が外部の空気に触れるようにして、茶葉を酸化させること。また、この工程で茶葉の酸化が進むこと。緑茶は、茶の葉を摘採後ただちに加熱して酸化させずに作る「不発酵茶」、ウーロン茶などのある種の中国茶は、茶葉の酸化がほどよく進んだ段階で釜で煎って酸化を止める「半発酵茶」、紅茶は揉捻(じゅうねん)後、ほぐして一定時間静置し、十分に発酵させてから乾燥させる「発酵茶」とされる。不発酵茶の製造工程で加工した後に微生物を用いて(一般的な意味での)発酵を行う、中国のプーアル茶や日本の阿波茶などの「後発酵茶」もある。

出典:講談社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

発酵
はっこう
fermentation
微生物の作用によって有機物が分解され、より単純な物質に変化する反応のうち、無酸素的に行われるものをさしたのが、発酵の最初の定義であった。しかし、最近では酸素の存在下で進行する反応も発酵とよばれることがある。この定義に当てはまる反応をすべて発酵とよぶわけではなく、有害な反応である腐敗は除外し、とくにその作用が人間にとって有用である場合を発酵とよんでいる。代表的なものは、酵母の作用によって糖からアルコールと炭酸ガスが生じるアルコール発酵である。そのほか乳酸発酵、酢酸発酵、アミノ酸発酵など多くの発酵現象が知られている。また、複数の胃をもつウシやヒツジなど反芻(はんすう)動物の第一胃の中で、原虫や細菌の作用によって行われる発酵があり、これをルーメン発酵とよぶ。発酵は生化学的にみて、呼吸や光合成と並ぶ生物のエネルギー獲得の一形式と理解されるが、それは微生物のもつ酵素によって触媒される化学反応である。特殊な例としては、紅茶とウーロン茶がある。チャの葉に含まれる酵素の働きを十分に活用して製造したのが発酵茶(紅茶)であり、酵素の活性を途中で止めてつくるのが半発酵茶(ウーロン茶)である。
 人類は古来、酒、酢、チーズ、乳酸飲料など醸造食品の製造に微生物の発酵現象を利用してきたが、発酵が何によっておこるかについては長い間不明で、神秘的なものとされてきた。発酵の学問は酒、とくにぶどう酒の研究から始まった。すなわち、経験を頼りに行われていたぶどう酒製造がヨーロッパで大きな産業に成長するとともに、発酵の原理を明らかにして、よりうまいぶどう酒を安定的に生産したいという要求が高まってきたのが、その動機であった。近代化学の父といわれるラボアジエに始まる定量的化学分析法が、まずアルコール発酵のベールの一枚をはがした。ラボアジエは、ブドウ糖がアルコールと炭酸ガスに分解する現象がアルコール発酵であることを発表し、19世紀の初期にはゲイ・リュサックやJ・B・A・デュマによって、1分子のブドウ糖から2分子のエチルアルコールと2分子の炭酸ガスが生成するアルコール発酵の化学方程式がつくられた。しかし、この化学変化が何によっておこるかはなお不明で、多くの学者の間で論争が繰り返された。この論争にくぎりをつけ、発酵は特殊な微生物の作用によっておこる現象であることを明らかにしたのは、パスツールである。彼はアルコール発酵、乳酸発酵、酢酸発酵などの研究を通じて、これらの発酵現象がそれぞれ固有の微生物の働きによることを疑問の余地なく証明し、発酵は無生物の触媒作用によっておこると主張していたベルツェリウスやリービヒら化学者の説を否定した。パスツールの死後、ブフナーは1897年、完全に擦りつぶした酵母の抽出液でもアルコール発酵がおこることを発見し、発酵が酵母細胞中にある酵素の触媒作用によることが実験的に示された。その後、20世紀初頭にかけて、ハーデン、S・ヤング、ノイベルクCarl Neuberg(1877―1956)ら多くの酵素化学者により酵母抽出液から発酵に関与する酵素や補酵素が次々と発見・分離され、それに伴ってアルコール発酵の機序が細部にわたって明らかになった。[山口雅弘]

種類

無酸素状態で進行する本来の意味の発酵としては、酵母によるアルコール発酵、乳酸菌による乳酸発酵、酪酸菌による酪酸発酵・アセトンブタノール発酵、プロピオン酸菌によるプロピオン酸発酵、メタン細菌によるメタン発酵、大腸菌による混合酸発酵がある。他方、酸素の存在を必要とするものとしては、酢酸菌の酸化能力によってアルコールから酢酸を生ずる酢酸発酵が代表的な例である。これはエネルギーの獲得形式からいうと狭義の発酵には当てはまらないが、微生物の働きによって大量の有用物質が生産されることから同様に発酵とよばれ、酸化発酵ともいわれる。また、コリネバクテリウムCorynebacteriumによるアミノ酸発酵や多くのカビによる有機酸発酵なども、酸素の存在が必要である。
 以上が微生物の生命維持に不可欠な代謝活動の結果、大量の有用物質がつくられる発酵現象であるが、これに対してペニシリンやカナマイシンなど抗生物質は二次代謝産物であり、それらを生産する微生物にとって必要不可欠なものではない。しかし、これは産業上きわめて重要な意味をもち、発酵生産とよばれている。つまり、今日では微生物の力を借りて有用物質を生産することを広く発酵とよんでいるわけで、物質生産を目的とした発酵では特定の微生物を純粋培養して用いるのが普通である。醸造の場合は同じ発酵現象を利用するにしても、複数の微生物の増殖を人為的に制御して製品を得る点でほかと異なる。しかし、最近では醸造においてもバイオテクノロジーを利用して特定の微生物を改良したり、微生物を固定化した装置を用いるなどして生産の効率化、風味の向上を図る試みが盛んに行われており、発酵と醸造の厳密な意味での区別はなくなりつつある。[山口雅弘]

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