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【がん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典


がん
cancer
生体内の細胞が異常かつ無制限に増殖する病気。細胞増殖が生命維持に必要な臓器や組織で起ると正常な機能がそこなわれ,あるいは停止し,死にいたることもある。癌は「岩のように硬いはれもの」を意味する。広義には悪性腫瘍を指し,良性の腫瘍と違うのは広がることである。癌を英語で cancer,ドイツ語で Krebsというが,どちらもカニを意味する言葉で,腫瘍の広がり方をカニの足にみたてている。癌の広がり方は以下の3つの段階に分けられる。 (1) 腫瘍が発生した組織 (原発部位) にとどまっている,初期または限局性の時期。 (2) 転移はしても局所リンパ節のみ,または近くの組織だけに連続性に浸潤している時期。 (3) 癌細胞が,原発部位から血液やリンパ系を経て離れた部位に拡散する転移期。一般に,癌細胞は正常細胞より分裂が速い。しかし癌細胞と正常細胞の成長の違いは,癌細胞の分裂が速いというより,むしろ癌細胞の増殖抑制機能が部分的あるいは全面的に失われ,機能的,形態的にも,正常組織として分化することができなくなることにある。癌はかつて考えられていたような自律的な組織ではない。病変部は患者個人の感受性と免疫の影響を受けると思われる。たとえば乳癌や前立腺癌の一部は,特定のホルモンに依存することが知られており,またほかの癌は特定のウイルスに依存すると考えられている。
癌には 100以上の種類があるが,病理学的分類によれば大きく癌腫 carcinomaと肉腫 sarcomaの2種類に分けられる。癌腫は,皮膚粘膜などの上皮組織に発生する悪性腫瘍で,乳房,呼吸器系,消化器系,内分泌系,尿生殖器系に生じる。肉腫は,線維組織,脂肪組織,筋肉,血管,骨,軟骨などの結合組織に発生する。まれに上皮組織と結合組織の両方に発生する癌があり,これを癌肉腫 carcinosarcomaと呼ぶ。造血組織の癌 (白血病やリンパ腫) ,神経組織 (脳を含む) の悪性腫瘍,悪性黒色腫は別の分類になる。
癌はさまざまな要素が単独,あるいは組合さって引起されることは知られているが,その詳しいメカニズムはまだ解明されていない。発癌物質としてはアスベスト,多環式炭化水素化合物 (→縮合環式炭化水素 ) ,たばこの煙に含まれる化合物などが確認されている。さらにX線などの電離放射線放射性降下物紫外線にも発癌性が認められているが,どの程度までこうしたものの影響を受けているのか判断するのは極めて難しい。ウイルスが原因と考えられている癌もある。たとえば,バーキットリンパ腫はエプスタイン・バー (EB) ウイルスが原因とされ,子宮頸癌もヘルペスウイルスによる可能性が指摘されている。また,癌遺伝子の存在も明らかになってきた。癌遺伝子は,正常細胞には癌原遺伝子として入っており「沈黙している」が,何かのきっかけで活性化すると,正常細胞が癌化する。今までにチロシンキナーゼ遺伝子,ラス遺伝子,ミック遺伝子,シス遺伝子などが発見され,その構造と活性化のメカニズムが研究されている。
現在の癌治療は,薬剤による化学療法,手術,放射線療法,またはこれらの組合せで行われている。早期癌で治療が早いほど,治癒する可能性は大きい。どの治療にも欠点がある。化学療法に使われる薬剤は,癌細胞のデオキシリボ核酸 DNAを攻撃し,癌の増殖と拡散を抑えようとする。しかし,これらの薬剤は健康な正常細胞をも破壊してしまう。放射線療法でも,癌に向けて照射された放射線が周辺領域の正常組織を破壊するおそれがあるが,放射線源と機器の改良によって,このリスクは少くなってきた。結腸や肺の一部など,腫瘍の位置がはっきり限定されていれば,手術で取除くことが可能である。この場合は,転移のリスクをできるだけ少くするために,癌細胞を完全に取除くことが必要になる。たとえば乳癌は骨に,悪性黒色腫は肺に転移しやすい。いったん癌がほかの部位に転移すると,それを外科的に取除くのは非常に難しい。癌細胞の数が増え,手術をしにくいため化学療法が唯一の選択となる。
腫瘍によっては成功率の高い治療法がある。たとえば,卵巣癌や睾丸癌には白金化合物の薬剤が効果的である。リンパ組織の癌は,薬剤と放射線療法を併用することで生存期間を延ばすことができる。小児白血病は,骨髄移植の普及により死亡率が低下した。この方法が成功したのは,提供者と被提供者の骨髄細胞を適合させて拒絶反応を防ぎ,新しい宿主を攻撃しそうな骨髄の一部を排除することが可能になったためである。また,癌細胞に対する免疫機構の解明が進みつつあり,これを治療に応用する免疫療法に期待が集っている。免疫を増強させる OK-432などの薬物や,インターロイキン,TNFなどの生物活性生物の使用が臨床的に開始され,これらを複数使用する合併療法も試みられている。
先進国では,3人に1人が一生のうち一度は癌にかかるといわれ,日本でも死亡原因の第1位は癌である。より効果的な治療法が確立されるまでは,早期発見に努め,発癌物質を避けることが癌に対抗する唯一の方法といえよう。

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デジタル大辞泉

がん【×癌】
生体にできる悪性腫瘍(しゅよう)癌腫肉腫の総称。なんらかの原因で臓器などの細胞が無制限に増殖するようになり、周囲の組織を侵し、他へも転移して障害をもたらし、放置すれば生命をも奪うまでに増殖する病気。狭義には、癌腫のみをさす。キャンサー。クレーブス。カルチノーム。
組織などの内部にあって、大きな障害となっているもの。「職制機構のを取り除く」

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がん【癌】[漢字項目]
[音]ガン()(
悪性の腫瘍(しゅよう)。「癌腫(がんしゅ)胃癌舌癌腸癌乳癌肺癌
[補説]もと中国医学の用語で、ころ作られた字。

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岩石学辞典

球状岩の赤い斑点で,球塊の周囲に形成され,時には球塊を腐食してその中に突っ込んで産出する.これは他形の石英および赤色斜長石である[Eskola : 1938].

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世界大百科事典 第2版

がん【癌】
癌を完全に定義づけることは難しいが,ひとまず次のようにいうことができる。すなわち,〈癌とは,多細胞生物の体の中に生じた異常な細胞が,生体の調和を無視して無制限に増殖し,他方,近隣の組織に浸潤したり他臓器に転移し,臓器不全やさまざまな病的状態をひき起こし,多くの場合生体が死に至る病気〉である。 癌は多細胞生物の病気であって,細菌やアメーバなど単細胞生物には癌はない。多細胞生物では,1個の生殖細胞が分裂増殖し,さまざまな器官に分化し,全体として調和のとれた個体として活動している。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

がん【癌】
多細胞生物の細胞の分裂が不規則になって無制限に増殖し、周囲の組織を侵したり他の臓器に転移したりして生体を死に至らしめる病気。上皮性の悪性腫瘍しゆようのみをさすこともある。悪性腫瘍。悪性新生物。
組織全体に障害を及ぼしている事柄。 社会の-

出典:三省堂
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精選版 日本国語大辞典

がん【癌】
〘名〙
① 一般に悪性腫瘍をさし、癌腫と肉腫を含むが、狭義には癌腫のことをいう。
※合類医学入門(1666)一六「已に潰て深く陥り岩の如きを癌と為す」
② (比喩的に) 機構、組織などの中にあって、大きな障害となっているもの。
※春泥(1928)〈久保田万太郎〉冬至「従来新派の癌(ガン)とされてゐた諸種の情実だの因襲だのを根本から芟除(せんぢょ)する」
[補注]「癌」の字を国字とする説もあるが、既に中国宋代の「仁斎直指方」に見える。

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