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異端【いたん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

異端
いたん
heresy
異端の語はすでに『論語』為政編 12にみえるが,歴史上おもにキリスト教で多用された。転じて一般に,正統の相関概念とされる。キリスト教では正統教会により誤謬として排斥された教義やその体系をいう。異端は同じ集団や伝統の内部で,教義の解釈を異にした場合に起るもので,キリスト教からみた仏教やイスラムなどの異教や,教義を同じくしながらも別の教会を立てる分派 (ギリシア正教など) とは区別される。これはキリスト教会が創設当初より,自己のみを,啓示を正しく解釈しうる啓示の保持者と規定したことに始る。キリスト教初期には,キリストの実在,神人イエスの本性,あるいは三位一体説をめぐって,キリスト仮現説,マルキオン説,キリスト養子説,アリウス派などの異端説が多く現れたが,ローマ・カトリック教会にとって最大の異端は,プロテスタンティズムである。プロテスタンティズム内部でも教会が樹立されると,異端問題が起る (カルバンのセルベツス事件など) 。しかし,今日では近代的な社会構造の確立に伴って,総じて宗教に関する異端の論議は少くなっている。政治,社会の分野でも正統対異端の論争がみられるが,これらは同様に教義あるいは綱領の解釈の異同によるもので,上述の意味の転用である。

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デジタル大辞泉

い‐たん【異端】
正統から外れていること。また、その時代に多数から正統と認められているものに対して、例外的に少数に信じられている宗教・学説など。「異端の説」

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世界大百科事典 第2版

いたん【異端 heresy】
ギリシア語hairesisに由来し〈分派〉を意味する語であるが,通常は特定の教義を信奉・標榜する団体において,正統教説に対立して,断罪・排除される立場,もしくはその主張者をさす。したがって,異端は,正統orthodoxyの対立物として定義されるかたわら,ことなった教義にもとづく敵対物たる異教とは区別される。ヨーロッパにおいて,異端が問題となるのは,歴史的には,キリスト教の確立以降である。排他性のつよい一神教であるキリスト教にあっては,すでに2世紀から異端問題が発生し,とりわけ4世紀にキリストの属性をめぐる論争において,アリウス派,ネストリウス派などの異端が生まれた。

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大辞林 第三版

いたん【異端】
その時代の大多数の人から、正統と認められているものから外れているか、それに反対する立場であること。 ⇔ 正統

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日本大百科全書(ニッポニカ)

異端
いたん
広義では、思想界、学界などにおいて、一般に容認されている説に対して異なる立場を主張することをいい、狭義では、一宗教集団内部において、教義上の重大な異説の固執による正統信仰からの逸脱をいう。したがって異端は、正統に対して相関的概念であるだけに、自己の意見を正統とする側からの排他的呼称であり、何が正統であるかを決定する権威あるいは機構が拘束力をもてばもつほど、正統と異端の対立は著しくなる。
 漢語としての異端は、儒者が他の思想、すなわち老子、荘子、楊子(ようし)、墨子など諸子百家を称した語であるが、仏教ではこれに相当する用語として異安心(いあんじん)、異解(いげ)、異流、異形(いぎょう)などがあり、仏教以外の宗教は外道(げどう)、外教(げきょう)などとよばれる。しかし、正統と異端の対立関係がもっとも顕著に現れてきたのは、ユダヤ教、キリスト教およびイスラム教といったような一神教においてであり、その歴史は正統と異端との葛藤(かっとう)の歴史であったといっても過言ではなかろう。
 例外的用法を除いて、異端は、同一の宗教を共通基盤として成り立つものの関係をさすので、「異教」とは区別される。さらに、異端視の規準が教義上の異見なので、単なる分派は普通異端とみなされない。たとえば、カトリック側からみてプロテスタント諸教会は「異端」と称される場合が多いが、ギリシア正教、ロシア正教などは信仰上の問題に関する差異が少ないので、異端よりも「シスマ」(離教)とよばれる習慣がある。[J・スインゲドー]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

い‐たん【異端】
〘名〙
① (「論語‐為政」の「攻乎異端、斯害也已」から) 思想、信仰、学説などで、一般的に信じられ権威のある正統からはずれていること。儒教以外の教えや、仏教以外の宗教をさしていわれることが多かった。また、特にキリスト教で、多数の者に一般的に承認されている正統に対して、それ以外の特殊な少数の者によって信じられ主張される教義。また、それを信奉する人。→異教
※続日本紀‐天平元年(729)四月癸亥「有習異端、蓄積幻術、圧魅呪咀害傷百物
※仮名草子・ぬれぼとけ(1671)上「いらざる儒・仏の修行して、だんむ・いたんにおちんより」
※引照新約全書(1880)可林多前書「正き者の爾曹の中に顕れんため異端(イタン)おこらざるを得ざれば也」 〔漢書‐武五子伝・戻太子〕
② 先例に従わないこと。新例を開くこと。
※玉葉‐文治三年(1187)一一月二二日「大神宝之時、上下各一備。是為流例。更無異端

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旺文社世界史事典 三訂版

異端
いたん
heresy
カトリック教会が正統とする信仰・教義に異を唱える説,およびその信徒たち
4世紀に正統教義(三位一体説)が確立すると,アリウス派・ネストリウス派が異端とされて退けられた。そのほか,単性説など当時の異端は東方に多かったが,西ヨーロッパの異端は教会勢力が最盛期を迎え,腐敗も著しくなった13世紀初めごろから活発になった。マニ教の流れをくみ,キリスト教の純化を説くカタリ派が伝わると,各地に信徒が増大した。南フランスのアルビジョワ派はその代表で,その刺激を受けてワルド派もおこった。教会はアルビジョワ十字軍宗教裁判による処刑などで鎮圧したが,14世紀末からウィクリフ・フスらを生み,宗教改革につながった。

出典:旺文社世界史事典 三訂版
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