Rakuten infoseek

辞書

減圧症【げんあつしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

減圧症
げんあつしょう
decompression sickness
気圧の高い場所から低い場所に急に移動した際に体内に気泡が形成されることによって生じる症状。潜水病潜函病ケーソン病とも呼ばれる。与圧されていない航空機の操縦士,潜水作業者,ケーソン工事作業者(→ケーソン基礎工法)などにみられる。大気圧下では身体組織に少量のガス(気体)が溶け込んでいる。航空機が高高度に急上昇して操縦士の周囲の気圧が低下すると,溶解していた気体が体内で気化して気泡となる。時間をかけて上昇すれば,気体は血中へ溶け出し,呼吸によって体外へ吐き出される。潜水作業は,潜水深度に比例して水圧が増す。潜水作業者が呼吸する圧縮空気の圧力は周囲の水圧に等しく,潜水時間や深度が増すと,体内に吸収される圧縮空気の量は多くなる。この状態で急浮上すると,身体組織に気泡が生じる。減圧症の原因となる気体は窒素である。吸入された窒素は飽和状態に達するまで体内に蓄積され,周囲の圧力が下がると過飽和となった窒素が気泡となる。窒素は脂肪組織に吸収されやすく,約 60%が脂質である神経系は特に影響が出やすい。脳や脊髄,末梢神経に気泡が生じると,麻痺けいれん(潜水夫麻痺),運動障害やめまい,しびれ,吐き気,言語障害などの症状が現れることがある。気泡が関節に形成されると強い痛みを感じる。潜水病をベンズ bends(曲げることの意)と呼ぶのは,痛みのため関節を伸ばせないことからきている。皮膚の下に小さな窒素の気泡ができると赤い皮疹(発疹)ができたり,かゆみを感じたりするが,通常 10~20分で消える。呼吸器系に気泡が発生するとせき込んだり,呼吸が苦しくなったりする。そのほかの症状に胸痛,呼吸時の焼けるような感覚,重度のショック症状などがある。治療法は,高気圧室に入れて再加圧し,その後徐々に減圧するのがほぼ唯一の方法である。しかし必ずしも損傷した組織を完全に元に戻せるわけではない。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

げんあつ‐しょう〔‐シヤウ〕【減圧症】
航空機や宇宙船・潜函(せんかん)の中などの高圧の環境から常圧に戻る時間が早すぎると、血中の窒素が気泡となり血流が障害されて起こる症状。→潜函病

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

ダイビング用語集

減圧症
タンク内の高圧空気中に含まれる窒素を吸うことによって引き起こされる代表的な潜水病の総称。血液中に溶け込んだ窒素を体に影響を与えないレベルに下げそこなうと、血管や関節内に気泡が生じ、最悪の場合には生死にかかわってくる。水深によって潜れる時間が決まっているのも、続けてダイビングする際に休憩時間や次のダイビングの深さ・時間を計算しなくてはいけないのも、すべてはこれを防ぐためなのだ。

出典:ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』
Copyright (C) 2010 DIVENET CO.LTD. AllRights Reserved.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

げんあつしょう【減圧症】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

げんあつしょう【減圧症】

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

減圧症
げんあつしょう
高気圧下での作業終了後、常圧に戻る時間が早すぎると、高気圧下での作業中に血液や組織の中に溶解していた空気中の窒素ガスが気泡となって小血管を閉塞(へいそく)したり組織を圧迫するために、関節の痛みなどの障害をおこすものをいう。潜水作業時にみられるものを潜水病、潜函(せんかん)作業時にみられるものを潜函病(ケーソン病caisson disease)とよぶことがあるが、いずれも急速な減圧が原因であるため、今日では一括して減圧症とよばれるようになった。
 症状としては、急性障害では(1)皮膚の掻痒(そうよう)感(かゆみ)、丘疹(きゅうしん)、大理石様皮斑(ひはん)、(2)減圧症特有のベンズbendsとよばれる四肢の大関節部の痛みや、チョークスchokesとよばれる前胸部の苦悶(くもん)感、(3)めまい、視野障害、意識障害、下半身麻痺(まひ)などがみられ、重症の場合は死亡する。また、不適当な減圧を繰り返して受けると、あとになって大腿(だいたい)骨や上腕骨など長骨の骨頭や骨幹部に壊死(えし)を生ずることがある。治療としては、体内に形成された気泡の除去が基本となる。そのために、発症後できるだけ速やかに患者を高圧室に収容し、再加圧してから徐々に段階的減圧を行う。予防としては、減圧症は水深10メートル以上の潜水作業後、あるいはゲージ圧1平方センチメートル当り1キログラムを超える圧気潜函作業後に発生しやすいので、そのような高圧作業後は、作業圧力と作業時間に応じた減圧スケジュールに基づいて段階的に減圧を行う。なお、加圧時および高気圧下に滞在中と減圧中にも生体に障害がおこる。これを高気圧障害という。[重田定義]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

内科学 第10版

減圧症(生活・社会・環境要因)
定義・概念
 減圧症とは,一定の圧力環境から減圧を必要とした場合に当初の溶解ガスが過飽和となって気泡化するために引き起こされる諸々の身体障害現象の総称である.
原因
 減圧症とは,潜水で一定の高圧力環境に滞在(潜水)後,浮上(減圧)速度が速すぎると身体内で過飽和となって形成された気泡が組織圧迫や血管栓塞を生じることにより発症する疾患(図16-1-5)である.この減圧症をダイバーは潜水病,高気圧作業者は潜函病(ケーソン病)などと呼称する場合もある.潜水(気圧暴露)する場合には一定のルールに従って減圧ステップを踏みながらゆっくり浮上(調圧)すれば減圧症は発症しない.しかし,組織内には気泡(無症候性気泡)は常に形成されるので,それを少しでも抑えるためにレジャーダイバーは無減圧範囲内の潜水であっても減圧中に一定水深での安全停止による減圧時間を付加するように指導されている.筆者らの統計では約1万5000回のダイブに1回の確率で減圧症は発症し,国内では毎年約1000人くらいが発症している.減圧症の多くは浮上後2時間以内に発症するが,潜水から1~2日の潜伏時間を有する場合もある.また,潜水時に異常がなくとも2カ月~3年くらいの潜伏期を経て発症する慢性減圧症(無菌性骨壊死)があり,この予防の意味からも十分に安全な減圧時間をとることが肝要である(眞野,1992).
歴史とその発症予防
 潜水の歴史は古く,数千年前まで遡り,ダイバー(海人 )が潜って魚介類を採取していたことが古事記などに記載されている.減圧症の出現は1812年にA. Siebeらが完成したヘルメットや1945年にJ. Cousteauらによって考案されたSCUBAのような呼吸装置出現により,それを使用して水中で呼吸しながら長時間滞在するようになってからといえる(眞野,2001).圧気土木作業にはケーソン工法やシールド工法があり,橋脚の基礎工事,地下シールドの立坑に利用されている.これらの工法は,国内では関東大震災以降に普及したが,潜水と同様の高気圧環境に暴露されるので減圧症発症のリスクがある.国内では地下70 mくらいまで立坑掘削がなされていて,地下水を排除するために地下水圧まで加圧される.したがって,ダイバーと同様の圧力環境下で作業することになり,作業終了後の復帰減圧では正しい減圧管理をしなければならない.現在では酸素吸入による窒素の体内からの「洗い出し」促進をはかることによって,減圧症の予防効果を高めている.
臨床症状
 急性期の減圧症の症状には,①皮膚症状としての紅発疹や大理石斑,②関節・筋肉痛(ベンズ,bends),③中枢神経障害,④呼吸循環障害(チョークス,chokes)の4つに大別されるが,職業ダイバーではベンズの発症が多く(80%),レジャーダイバーでは中枢神経障害の発症が多い(60%).この理由は潜水時間の違いであり,職業ダイバーは長時間潜水をするので減圧時間は長いが,レジャーでは潜水時間が短いので減圧時間をあまりとらないことに起因する.つまり,職業ダイバーは半飽和時間の長い皮膚や筋肉系の減圧管理が問題であり,レジャーでは血流の豊富な神経系の短い半飽和時間組織での気泡管理が不十分になりがちだからといえる.一方,慢性減圧症としての骨壊死(図16-1-6)の場合は四肢の長管骨が侵されるが,これも血流と潜水後の残留窒素が関与しているものと思われる.つまり,長時間の高気圧暴露(潜水時間)を要求される職業ダイバーでは骨壊死は発症しやすいが,SCUBA使用で短時間潜水しかできないレジャーダイバーでは,インストラクターらを除くと慢性減圧症の発症をほとんど認めない.
診断
 診断は比較的容易である.既往歴として発症前に水深8~10 m以上の潜水歴または圧気暴露体験を有するかどうかでNoならば減圧症以外の動脈性空気塞栓症や締めつけ現象などを疑う.Yesならばこれらの鑑別診断とともに減圧症のどれに該当するか,特にレジャーの場合には中枢神経障害としての深部知覚麻痺を見落とさないように注意を要する.職業ダイバーの場合には運動麻痺が多いので診断は容易であるが,レジャーの場合には深部知覚麻痺に本人が気づいていないこともある.潜水後の痺れやだるさを主訴とする場合には,深部知覚の部分麻痺を伴っていることが多い.呼吸ガス欠や水中パニック,事故などによる極端な急浮上を行うと動脈性空気塞栓症により,水面で昏倒失神する事例もまれに起こるが,現場で適切なCPRを行いつつ高気圧酸素治療のできる施設へ速やかに搬送すれば治療は可能である.ベンズの場合には潜水では上肢が,圧気土木作業では下肢が侵されることが多く,これは高気圧暴露中ないし減圧中における運動量の多い部位が侵されやすいためである.
治療
 高気圧酸素治療(HBO)が第一選択であり,HBOを行わない限り,完治は望めないといっても過言ではない.現在では国際的標準治療法としてUS Navy Table 6が推奨されている(図16-1-7).国内には約700 台の高気圧治療施設があるが,減圧症の治療にあたっては必ず多人数が入室できる第二種装置を有する医療施設(約50カ所)へ酸素吸入させながら搬送しなければならない.多くの施設では1人用の第一種装置によるHBO治療装置を用いており,これらのほとんどは酸素を動力源として加圧にも利用しているため,減圧症治療には使用できない.減圧症の治療は一般のHBOと異なり治療時間が長い(285分)ため,酸素ブレイクのために空気呼吸を間欠的に行わなければならないが,第一種装置ではそれが行えない.第一種装置で一般に行われている90分間のHBOを減圧症患者に施行した場合には,症状は改善するどころか,悪化させたり,後遺障害を引き起こす要因となってしまう.また,その後に正しい減圧症用のtableを用いて治療しても何回も繰り返す必要が生じてしまい,改善は難しくなる.減圧症治療は発症から治療までの経過時間が短ければ短いほどよく対応でき,多くの場合にはほぼ1回の治療で完治できるが,発症から何日か経過してしまうと治癒させることが困難となる.
 重症減圧症では脱水を伴う場合が多いので補液が必要だが5%グルコース液は禁忌である.副腎皮質ホルモンや抗凝固薬の投与は重要であろう.鎮痛薬は症状を隠してしまう恐れが多くあまり勧められない.
予防と対策
 ダイビングや圧気作業をする前にはかならず減圧症治療のできる施設との連絡方法を確認する.レジャーダイバーにおいてはDAN(divers alert network)が国内のみならず,国際組織として確立されているので会員になっていると保険制度が完備しており,さまざまな情報も入手できるので便利であろう(Divers Alert Network Japan,2011).レジャーダイバーは有減圧潜水をすべきではないが無減圧潜水範囲内でも減圧症は発症しうるので,さらなる安全性が検討され,厚生労働省も従来の標準減圧表の抜本的な改正をはかろうとしている.[眞野喜洋]
■文献
Divers Alert Network Japan: Alert Diver, 48, 2011.
眞野喜洋編著:潜水医学,朝倉書店,1992.眞野喜洋編著:潜水の歴史,(財)社会スポーツセンター,2001.

出典:内科学 第10版
©Asakura Publishing Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

精選版 日本国語大辞典

げんあつ‐しょう ‥シャウ【減圧症】

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

減圧症」の用語解説はコトバンクが提供しています。

減圧症の関連情報

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.