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浸透圧【しんとうあつ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

浸透圧
しんとうあつ
osmotic pressure
溶媒 (たとえば水) は通すが溶質は通さない半透膜を固定して,その両側溶液と純溶媒とを別々に置くと,溶媒のほうが溶液へ浸出する傾向が強いため,半透の両側で,溶液側から溶媒側へ向う圧力を生じる。この圧力を溶液の浸透圧という。一般化していえば,化学ポテンシャルの差を圧力で表現したものが浸透圧である。希薄溶液の溶質の浸透圧は J.ファントホフ法則 (1887) として定式化される。溶液の浸透圧は浸透計によって直接的に測定される。生細胞も細胞膜が半透性であるので,生体内部間では等浸透圧であるが,水環中では外部に対して一定の浸透圧を示す。

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デジタル大辞泉

しんとう‐あつ【浸透圧】
半透膜を境にして溶液と溶媒とが接触し、浸透の現象が起こるときの両方の圧力の差。溶液の濃度が低い場合には、濃度と絶対温度に比例する。

出典:小学館
監修:松村明
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栄養・生化学辞典

浸透圧
 半透膜を介して高濃度の側から低濃度の側へ溶媒が移動する現象における浸透する力の強さ.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

しんとうあつ【浸透圧 osmotic pressure】
溶液中で溶媒が浸透していく力。浸透による溶媒の移行を抑えるためにちょうど必要な力として測定することができる。たとえばU字管中央半透膜仕切り一方に純水(A),他方にショ糖水溶液(B)を,両方の液面の高さを等しくするように入れ放置しておくと,浸透により水がAからBに移っていく。その結果,Bの液面は高くAの液面は低くなるが,両方の高さがある差に達すると水の移動が止まり釣合いの状態になる。これは水の浸透していこうとする力が液面の高度差による圧力に抑えられ,釣合いの状態に達したためであり,この圧力が浸透圧に等しい。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

しんとうあつ【浸透圧】
半透膜を隔てて溶媒と溶液をおいたとき、溶媒の一部が膜を透過して溶液側へ移動することによって平衡に達する。その際に両液の間に生じる圧力差。その大きさは希薄溶液では、その濃度差と絶対温度に比例する。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

浸透圧
しんとうあつ
osmotic pressure
濃度の異なる2種の溶液を半透膜を境として接触させると、溶質の濃度の小さいほうから濃厚溶液のほうへと溶媒の移動がおこる(ナメクジに塩をかけたときを考えればよい)。この現象を浸透という。以前は「滲透」と書いた。このような溶媒の移動を阻止するためには、濃厚溶液のほうに余分の圧力を加える必要がある。つまり、半透膜を通して希薄溶液のほうから、この余分の圧力に相当するだけの圧力がかかっていることになる。この圧力が浸透圧である。通常は希薄溶液のかわりに純溶媒を用いて測定したものを「溶液の浸透圧」という。溶液の浸透圧は溶液の濃度、温度によって変化するが、あまり濃厚でない溶液については、ΠVinRTまたはΠicRTが成り立つ。ここでΠは溶液の浸透圧、Vは溶液の体積、nはモル数、cはモル濃度(=n/V)、iはファント・ホッフ係数、Rは気体定数、Tは絶対温度である。非電解質、たとえばアルコールやショ糖などではiは1に等しいが、電解質においては1よりも大きくなる。これは溶液中で解離がおこるためで、分子数が初めに加えたモル数よりも増加していることを示している。生理食塩水は0.85%の塩化ナトリウム水溶液であるが、これは動物や人間の体液とほぼ等しい浸透圧を示す。つまり「等張である」という。赤血球などを純水に投入すると浸透圧のために吸水がおこって破裂するが、生理食塩水の中では変化しないのはこのためである。
 また、濃厚溶液のほうに浸透圧よりも大きな圧力をかけると、半透膜から逆に溶媒が絞り出される現象がおこるが、これは逆浸透とよばれ、海水淡水化、廃水処理などに利用が始まっている。しかし、大きな圧力に耐える半透膜をつくるには、まだかなり困難な問題がある。[山崎 昶]

生物

半透膜を挟んで接する2溶液間の浸透圧は、各溶液の溶媒に対する浸透圧の差に等しい。細胞の原形質膜(細胞膜)は半透膜の性質をもつため、生物にとっては、体液の浸透濃度を適切な範囲に保つことが、それと接する細胞の生理的条件を維持するために重要である。しかし、生体内において、細胞膜はカリウムイオン(K+)などに対する選択的透過性(物質によって膜透過性が異なること)をもち、また、ナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)および糖やアミノ酸などの能動輸送(濃度勾配(こうばい)に逆らう物質輸送)を行う。その結果、細胞内外の液の浸透濃度が等しくても、かならずしも溶媒である水の移動が平衡状態にあるとは限らない。そこで、ある溶液に細胞を浸したとき、細胞への水の出入りが均衡し、細胞の体積が変化しないならば、その溶液を等張液という。それに対し、細胞から水を奪って細胞の体積を減少させるものを高張液、逆に細胞内に水が入って細胞が膨潤するものを低張液という。たとえば、海水と同じ浸透濃度をもつ塩化ナトリウム溶液、すなわち等浸透液中では、ウニ卵はほとんど体積が変化しない。したがって、この溶液は等張液である。しかし、同じように海水と等浸透液である塩化カルシウム溶液中では、ウニ卵は吸水して体積を増す。すなわち、低張液となる。一般に動物細胞は内圧の変化に応じて容易に変形し、細胞内外の圧差(膨圧)はきわめて低い値に保たれる。したがって、細胞膜が理想的半透膜(溶媒のみを通し、溶質を完全に通さない)であると仮定できる条件下では、細胞への水の出入りは細胞内外の浸透濃度が一致した点で平衡に達する。実際に、ウニやゴカイの卵では、非水相(浸透的に不活性な細胞体積部分)とよばれる補正値を減じた体積の価は、ある程度薄めた海水などの細胞外液の浸透濃度に反比例して変化する。
 一方、植物細胞は細胞壁によって体積が制限され、膨圧は数気圧から数十気圧にまで達する。浸透圧は、植物体の力学的強度を保ったり、成長運動や就眠運動の原動力を提供するなど、植物においても重要な役割を果たしている。[村上 彰]

人体

人体内の体液の浸透圧は腎髄質(じんずいしつ)を除いてすべて等しく、かつ一定に保たれている。このため、浸透圧が変化すると、細胞内外、あるいは各体液間に水の移動がおこり、細胞内部の水欠乏や水過剰を生じ、円滑な生体機能が失われてしまう。したがって浸透圧は生体内部環境としてもっとも重要な条件の一つといえる。血液の浸透圧は腎臓から排泄(はいせつ)される水およびナトリウムの量によって調節されている。たとえば血漿(けっしょう)の浸透圧が上昇すると、下垂体後葉からの抗利尿ホルモン分泌が増加して、腎尿細管における水の再吸収が増すこととなる。その結果、尿量が減少して血漿の濃縮を防ぐ一方、渇きを感じて水分の摂取が増加する。逆に血漿の浸透圧が低下した場合は、抗利尿ホルモン分泌が抑制されて水分の排泄が増加する。
 体液の浸透圧の大部分は電解質によって生じるもので、その圧力は285ミリ浸透圧モル(5500ミリメートル水銀柱)である。一方、血液の中には電解質のほかにタンパク質などの大型分子も含まれており、このような大型分子による浸透圧を膠質(こうしつ)浸透圧という。電解質は毛細血管壁を自由に透過するため、それによる浸透圧は血管壁の内外でただちに平衡に達する。ところが血漿の膠質浸透圧は約20ミリメートル水銀柱にすぎないが、タンパク質は毛細血管壁を透過しないため、間質液に対して血漿は高張となり、水を血管内に吸引する力となる。このため、逆に栄養障害などによって低タンパク血漿になると、膠質浸透圧が減少するため、水分が血管から組織へ出て浮腫(ふしゅ)(むくみ)をきたすこととなる。[真島英信]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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化学辞典 第2版

浸透圧
シントウアツ
osmotic pressure

半透膜を隔てて純溶媒と溶液を接したとき,溶媒側から溶液側への溶媒の進入(浸透)を止めるために,溶液側にかけるべき過剰の圧力.記号Π.最初,J.H. van't Hoff(ファントホッフ)は,浸透圧と溶液の濃度の間に

ΠVRT
の関係があることを見いだした.ここで,Vは溶質1 mol を含む溶液の体積,R気体定数Tは絶対温度であり,理想気体の法則に形式的に類似している.しかし,この式は希薄溶液についてのみ近似的にあてはまり,少し濃い溶液での実験値との不一致はいちじるしい.上式のVとして,1 mol の溶質を含む溶媒の体積を用いたH.N. Morseの式は,ファントホッフの式より濃い濃度まで成り立つ.さらに,熱力学的に導かれた理論式

は,Morseの式よりもさらに高濃度まで実測値とよく一致する.この式で,は溶液中における溶媒の部分モル体積p°およびpは,それぞれの温度における純溶媒および溶液の蒸気圧である.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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