Rakuten infoseek

辞書

楚辞【そじ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

楚辞
そじ
Chu-ci
中国,戦国時代の楚に起った韻文文学およびその系統の韻文を集めた歌謡集。前漢の劉向 (りゅうきょう) の編。 16巻。「楚辞」とはもともと揚子江中流地方に発生した6言または7言を1句とする民謡をいう。本書はその形式をとる屈原の『離騒』『九歌』『天問』,宋玉の『九弁』『招魂』,賈誼 (かぎ) の『惜誓』,東方朔の『七諫』,厳忌の『哀時命』,劉向自作の『九嘆』など 25編を集めたもの。しかし現在伝わるものの祖本は,後漢王逸が自作の『九思』を追加し注を付した『楚辞章句』 (17巻) である。その後,宋の洪興祖の『楚辞補注』,朱子の『楚辞集注』などが出ており,『詩経』と並ぶ中国最古の詩集である。『詩経』が北方の質朴な文化を代表するのに対し,『楚辞』は古代南方の空想的,ロマン的文化を代表し,後世の詩賦に大きな影響を与えた。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

そじ【楚辞】
中国古代の文学作品集。戦国時代の楚の屈原の作品と、その作風にならった宋玉後人の作品を集めた書。現行本は、漢の劉向(りゅうきょう)の編んだ16巻に、後漢の王逸が自作の1巻を加えたもので、17巻。「離騒」「九歌」「天問」などを収める。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

そじ【楚辞 Chǔ cí】
中国,戦国時代後期の楚国の歌謡。それを模倣した漢代の作品も含まれる。南方の楚国では古来巫風(ふふう)(シャマニズム)が盛んであったが,そうした宗教活動にともなって多くの神話伝説や歌謡があったであろう。そうした基礎の上に,戦国後半期の中国全土が統一に向かう趨勢の中で,文学的な内容をそなえた楚辞の作品群が形成されてくる。 天地構造や歴史に関する疑問を列挙した〈天問〉,身体を遊離した魂を招き返そうとする〈招魂〉,山川の神々の祭歌である〈九歌〉などが楚辞の宗教的基盤をよく反映した作品だと言えよう。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

そじ【楚辞】
戦国時代末、楚国に行われた歌謡に基盤をもち、屈原の作品を主とし、その作風をつぐ弟子や後人の作を集めたもの。一六巻。前漢の劉向りゆうきよう編とされ、のち後漢の王逸が自作を加えて一七巻とする。形式・特色は「詩経」とは全く趣を異にし、漢の賦に大きな影響を与えた。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

楚辞
そじ
中国の戦国時代の末ごろ、楚(そ)国(湖北・湖南地方)の屈原(くつげん)のつくった詞賦(しふ)(うた)と、同じ作風の弟子や後人の作とを集めた書物の名。またその文体の称。屈原の楚辞25編を「離騒(りそう)」とも総称する。
 楚の王族屈原(前3世紀ころ)は同僚の讒言(ざんげん)によって退けられ、憂愁怨思(えんし)して「離騒」の賦をつくり、懐王の反省を求めたが用いられず、国の滅びるのをみるに忍びず、ついに汨羅(べきら)(洞庭湖(どうていこ)に注ぐ湘水(しょうすい)の淵(ふち))に投死したと伝えられる。後人は屈原を追慕哀惜して、その作風を学んで賦をつくった。漢の劉向(りゅうきょう)は屈原および後人の作に、自作1編を加えて『楚辞』16巻を編集した。後(ご)漢の王逸(おういつ)はその辞章を校定注釈して『楚辞章句』16巻を著した。現存の書は、屈原の「離騒経」「九歌(きゅうか)」「天問(てんもん)」「九章(きゅうしょう)」「遠遊(えんゆう)」「卜居(ぼくきょ)」「漁父(ぎょほ)」の7巻25編を「離騒」と総称し、弟子宋玉(そうぎょく)の「九弁(きゅうべん)」「招魂(しょうこん)」、同じく景瑳(けいさ)(あるいは屈原)の「大招(だいしょう)」、漢の賈誼(かぎ)の「惜誓(せきせい)」、淮南小山(わいなんしょうざん)の「招隠士(しょういんし)」、東方朔(とうぼうさく)の「七諫(しちかん)」、厳忌(げんき)の「哀時命(あいじめい)」、王褒(おうほう)の「九懐(きゅうかい)」、劉向の「九歎(きゅうたん)」に王逸の「九思(きゅうし)」を加えた10巻を「楚辞」と分類し、計17巻となっている。宋の洪興祖(こうこうそ)は本書について『楚辞補注』17巻をつくった。朱熹(しゅき)(朱子)は、屈原賦を「離騒」、宋玉以下「招隠士」までを「続離騒」として『楚辞集註(ちゅう)』8巻を著し、旧注を訂正して『楚辞弁証』2巻をつくり、晁補之(ちょうほし)の『続楚辞』『変楚辞』を削定して、周の荀卿(じゅんけい)の「成相(せいしょう)」「(きし)」以下、宋の呂大臨(りょたいりん)の「擬招」までの52編を『楚辞後語』6巻とした。明(みん)の汪(おうえん)、清(しん)の林雲銘(りんうんめい)、蒋驥(しょうき)らは屈原賦と「招魂」「大招」とを伝述したので、それだけを『楚辞』とする本もある。いわゆる屈原賦は次のとおりである。
(1)離騒 「離騒経」は尊称である。「離」は「罹(り)(かかる)」、「騒」は「憂」、憂(うれ)いにかかるの意味である。楚と同族の正則、字(あざな)は霊均(れいきん)という貴公子の独白、373句の長編詩である。霊均は潔白純正なために世にあわず、無実の罪で追放されて憂悶(ゆうもん)苦悩し、天空を翔(か)けり、地の果てを極め、伝説神話の世界にまで知己を求めるが得られない。天光のなかを昇ろうとしても楚国の山河に心ひかれて悲しむが、ついに決然と敬慕する彭咸(ほうかん)のもとに去ろうという。構想は雄大、詞句は優美、浪漫(ろうまん)的な情調があふれ、国を憂え君を思う感情の激しさは、屈原自身を投影したもので、実に古典詩の傑作である。
(2)九歌 東皇太一(とうこうたいいち)(天帝)、雲中君(うんちゅうくん)(雲神)、湘君(しょうくん)・湘夫人(湘水の2神)、大司命(だいしめい)・少司命(しょうしめい)(運命の2神)、東君(とうくん)(日神)、河伯(かはく)(黄河の神)、山鬼(さんき)(女性の山霊)、国殤(こくしょう)(戦死者を悼む)、礼魂(通常の祭礼)の11編は9種の祭祀(さいし)歌で、屈原が古歌詞を修正したと伝える。神話的、宗教的な感情に満ちた、優れた祭りの歌である。
(3)天問 屈原が祠堂(しどう)の壁画の怪奇な物語を詰問して、憂憤の情を漏らしたと伝えるが、375句のなかに、天地宇宙や古代の多くの伝誦(でんしょう)を問いの形で述べたものとみられる。
(4)九章 惜誦(せきしょう)、渉江(しょうこう)、哀郢(あいえい)、抽思(ちゅうし)、懐沙(かいしゃ)、思美人(しびじん)、惜往日(せきおうじつ)、橘頌(きっしょう)、悲回風(ひかいふう)の9編は屈原が流離の憂悶を述べたものとされる。橘頌(たちばなのうた)はもっとも早い時代の作。抽思、悲回風、惜誦は離騒とほぼ同じころ、懐王の時代の流離の際に、また思美人、渉江、哀郢、懐沙、惜往日は頃襄(けいじょう)王のときの追放以後、晩年につくられたものであろう。ことに懐沙は砂石を抱いて投水する辞世の詞と伝えられる。
(5)遠遊 離騒と詞句内容も似ているが、神仙思想の色彩もあり、後人の作であろう。
(6)卜居 屈原が、俗人とともに君にこびるか、潔白を守り孤独に住むかに迷って、太卜(たいぼく)(占い)に問うが、卜者は、屈原のように志の固い人は卜(うらな)うことができない。自分の志を行うがよいと答える。これも後人の作のようである。
(7)漁父 屈原は湘水の淵のあたりで老漁夫に会い、「世を挙げて皆濁りて、我独り清(す)めり。衆人皆酔ひて、我独り醒(さ)めたり」という。漁夫は世とともに推移することを勧めるが、屈原は潔白の身を世の塵(ちり)に汚すよりは投死するほうがよいという。漁夫は笑って「滄浪(そうろう)(川の名)の水清(す)まば、以(もっ)て吾が纓(えい)(冠の紐(ひも))を濯(あら)うべし、滄浪の水濁らば、以て吾が足を濯うべし」と歌って漕(こ)ぎ去ったという。これも後人の作であろうが、屈原の性格を鮮明に物語るものであり、「漁父の辞」として知られる。
 楚辞はもと楚国の祝(しゅく)(神官)の祝詞(のりと)の類から発展して、詩句の様式となったものであるから、その祭祀(さいし)や神話伝承のもつ浪漫的な情調が豊かである。これは北方の『詩経』にはみられない南方的特色である。後世の中国文学のもつ浪漫性は『楚辞』の伝統である。句中または句尾に「兮(けい)」という調子をとる助字があるのが「楚辞」の様式である。「招魂」は句末に「只(し)」、「大招」は「些(さ)」の字を置く。また長編の終章に一編の意をまとめた「乱」という短章があるのもその特色である。[星川清孝]
『藤野岩友著『漢詩大系3 楚辞』(1967・集英社) ▽星川清孝著『楚辞の研究』(1961・養徳社) ▽星川清孝著『新釈漢文大系34 楚辞』(1970・明治書院) ▽星川清孝著『中国古典新書 楚辞』(1970・明徳出版社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

そじ【楚辞】
中国の書。一六巻。屈原とその門下およびその体にならった作をおさめ、漢の劉向(りゅうきょう)編と伝える。楚地方の文学で巫史(ふし)の歌唱に起源を持ち、屈原によって文学的に高められたものと推定される。特に「離騒」は屈原の代表作。

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

楚辞」の用語解説はコトバンクが提供しています。

楚辞の関連情報

他サービスで検索

「楚辞」のスポンサー検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE GROUP, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.