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検察官【けんさつかん】

日本大百科全書(ニッポニカ)

検察官(司法)
けんさつかん
犯罪を捜査し(検察庁法6条1項)、刑事について公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、かつ、裁判の執行を監督し、また、裁判所の権限に属するその他の事項についても、職務上必要と認めるときは、裁判所に通知を求め、または意見を述べ、また、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う国家機関をいう(同法4条)。検察官は、上級者から権限の委任を受けることなくそれぞれが独自に検察権を行使する官庁である(これを独任制の官庁とよんでいる)。なお、検察官という官名があるわけではなく、個々の検察官は官名として次のうちのいずれかに属する。検事総長最高検察庁の長)、次長検事(最高検察庁に属し、検事総長を補佐し、また、検事総長に事故のあるとき、または検事総長が欠けたとき、その職務を行う者)、検事長(高等検察庁の長)、検事および副検事の5種類である。
 検察官には級数による区別がある。検事総長、次長検事および各検事長は1級とし、その任免は内閣が行い、天皇がこれを認証する(同法15条1項)。検事は1級または2級とし、副検事は2級とする(同法15条2項)。公正な検察権の行使を保障するため、検察官には一般の国家公務員に比べて、欠格事由、任免・俸給等についてより厚い身分保障が与えられている(同法25条)。2級検察官は、司法修習生の修習を終えた者、裁判官の職にあった者および3年以上政令で定める大学において法律学の教授または准教授の職にあった者から任命される。なお、副検事の資格要件は緩和されており、3年以上一定の公務員の職に在った者の中から、副検事選考委員会の選考を経て任命されることも可能である(同法18条2項)。副検事が任命されるのは、区検察庁の検察官の職についてのみである(同法16条2項。ただし、同法12条により、例外として副検事が地方裁判所の検察官の事務を取り扱うこともある)。検察官は、いずれかの検察庁に属し、他の法令に特別の定めのある場合を除いて、その属する検察庁の対応する裁判所の管轄区域内において、その裁判所の管轄に属する事項について、検察庁法第4条に規定する職務を行う(同法5条)。なお、検事正は地方検察庁の長である検察官の職名をさす。[内田一郎・田口守一]

検察官の職務

検察官の主要な職務として次の二つがある。
〔1〕犯罪の捜査 検察官は、いかなる犯罪についても捜査することができる(検察庁法6条1項)。検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる(検察庁法6条2項)。検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができるが、検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない(刑事訴訟法191条)。検察官と都道府県公安委員会および司法警察職員とは、捜査に関し、互いに協力しなければならない(同法192条)。検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによってこれを行う(同法193条1項)。これは一般的指示権とよばれる。また検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる(同法193条2項)。これは一般的指揮権とよばれる。さらに検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる(同法193条3項)。これは個別的指揮権とよばれる。これらの場合に、司法警察職員は検察官の指示または指揮に従わなければならない(同法193条4項、なお同法194条参照)。検察官および検察事務官は、捜査のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる(同法195条)。
〔2〕公訴の提起・維持 公訴は、検察官がこれを行う(同法247条)。犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないこと(不起訴)ができる(同法248条)。公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。起訴状には、(1)被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項、(2)公訴事実、(3)罪名を記載しなければならない。公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所および方法をもって罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。ただし、罰条の記載の誤りは、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。数個の訴因および罰条は、予備的にまたは択一的にこれを記載することができる。起訴状には、裁判官に事件について予断を生じさせるおそれのある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない(同法256条)。裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因または罰条の追加、撤回または変更を許さなければならない(同法312条1項、なお同法312条2項参照)。公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる(同法257条)。
 そのほか、検察官は上訴をすることができる(同法351条)し、再審の請求をすることができる(同法439条1項1号)。裁判の執行は、原則として、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮し、上訴の裁判または上訴の取下げにより下級の裁判所の裁判を執行する場合には、原則として、上訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する(同法472条)。[内田一郎]

検察官同一体の原則

検察官はそれぞれ独任制の官庁であるとともに、上命下服の関係にたち(検察庁法7条~10条)、職務上一体をなしている。検事総長、検事長または検事正は、その指揮監督する検察官に、各自己の管掌する事務の一部を取り扱わせ(同法11条)、またその指揮監督する検察官の事務を、自ら取り扱い(職務承継権)、またはその指揮監督する他の検察官に取り扱わせる(職務移行権)ことができる(同法12条)。検事総長および次長検事、検事長もしくは検事正に事故のあるとき、またはこれらの者が欠けたときは、一定の順序により部下の検察官は、特別の授権なくして、これを代理する権限(下官の上官代理権)を有する(同法13条)。
 法務大臣は、検察庁法第4条および第6条に定める検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。ただし、個々の事件の取調べまたは処分については、検事総長のみを指揮することができる(同法14条)。これは指揮権発動とよばれる。法は公正な検察権の行使を期待している。[内田一郎]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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