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教育評価【きょういくひょうか】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

教育評価
きょういくひょうか
educational evaluation
教育の目標に照して,被教育者が望ましい到達度を示したかどうかを判定すること。すなわち,教育という目標追求過程における教育の成果に関する情報の検出,その情報のフィードバック,目標達成の程度の測定評価,それに基づく教育作用の調整などの一連の過程を意味する。この過程において,教育測定が重要な位置を占め,特に評価の技術は,観察法,テスト法,心理診断法などの測定技術の発達に待つところが大きい。主要な対象領域は,個々の児童生徒学力,人格発達,身体発達,知能適性などの評価であるが,教師の授業方法などの評価,教材教具,施設などの評価,家庭環境の評価も含まれる。究極的な目的は,教育目標追求の過程において,教育成果を最大ならしめるよう教育作用の調整を行うことにある。しかしこの機能は,今後次第に児童,生徒自身による学習,生活の自己評価,自己調整の機能に移行されるべきである。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

きょういく‐ひょうか〔ケウイクヒヤウカ〕【教育評価】
児童・生徒の知能・学力・適性・性格・身体・健康などの変化を、教育目的に照らして価値判定すること。これによって教授計画改善や学習の動機づけをし、教育効果の向上を図る。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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世界大百科事典 第2版

きょういくひょうか【教育評価】
教育評価とは,教師にとっては,みずからの教育実践をふり返り,自己反省と自己点検を行う活動であり,生徒にとっては,教師の評価活動を通して,教師から与えられるさまざまな情報を契機にみずからの学習活動を点検する活動である。したがって教育評価の活動は,単元や学期の終了時に客観テスト等を行うことにより,ある一定の集団の中での相対的な位置を確定する〈評定〉をその中に含みながら,それだけに終わってはならない。また教育評価は,一般的には,ランクづけや序列化の活動と理解されがちであるが,その機能は,本質的にはこれらとは無縁であって,〈教育実践に内在〉し,教師がみずからの教えるべき目標,教材,指導方法等を点検しなおし,〈子どもを見る目〉を一層確かなものにしていく契機なのである。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

教育評価
きょういくひょうか

教育評価とは、教育活動の過程や効果、ならびにその背景となる諸条件について客観的資料を集め、それを教育目標に照らして解釈し、教育活動の改善に役だてることをいう。

[河合伊六・岡東壽隆]

機能

おもな機能としては、
(1)学習指導(教科指導)の効果を高めるために、児童・生徒の知能、学力、適性、興味などの個人差を明らかにし
(2)教師の指導法や教育計画の有効性を反省検討するために、児童・生徒が目標にどの程度到達しえているかの効果を判定し
(3)生活指導や道徳教育を推進するために、児童・生徒のパーソナリティーや行動や環境条件を理解し
(4)健康の増進を図るために、身体や健康の実態を知り
(5)学校経営の組織や計画の改善を図るためにその実態を調査し
(6)指導要録の記入、進級、学級編成などの管理的目的に必要な資料を集め
(7)児童・生徒に自己の進歩や到達の度合いを知らせて学習意欲を高める
などがあげられる。

 教育評価のこれらの機能を達成するには、まず、客観的な資料を集めることが必要である。20世紀に入ってアメリカで盛んになった教育測定運動では、とくにこのことが強調された。しかし、1930年ごろから、客観的資料を得るための測定だけでなく、それを教育目標に照らして解釈し意義づける評価が重視されるようになった。

 従来、教育評価は、指導がなされたあとで、教育活動の締めくくりとして行われるものと考えられていた。しかし、学習指導を例として考えてみても、次の教育実践をより効果的なものとするには、指導に先だって、児童・生徒が学習内容についてどの程度の知識をもっているかの実態を知っておく必要がある。さらに1980年代以降は、指導の前と後だけでなく、指導の途中で、児童・生徒がいまどれだけ理解しえているかを評価することの必要性と重要性が、しだいに認識されるようになった。こうして、評価には、事前に理解度やつまずきの箇所およびレディネス(構え)を調べるための診断的評価と、指導の途中でその後の方向づけの資料を得るための形成的評価と、最後に全体をまとめて教育効果を判定する総括的評価の三者があり、それらは等しく重視されるようになった。

[河合伊六・岡東壽隆]

評価の方法と種類

教育評価の方法として、(1)テスト法(知能・学力・適性・性格・道徳性テストなど)、(2)質問紙調査法、(3)観察法、そして(4)事例研究法などが用いられるが、教育評価の特徴は、これらの諸方法で得られた資料を総合的に解釈する点にある。

 評価とは一定の価値基準に従って価値判断することであるが、価値基準を何にとるかによって、教育評価は次のように分けられる。

 まず「絶対評価(到達度評価)」というのは、一定の教育目標を基準とし、それにどれだけ到達しえたかによって評価される。これによれば、児童・生徒に到達すべき目標を明示して学習を方向づけうるだけでなく、教育効果の判定も容易で、指導方法の改善に直接役だつ資料が得られる。しかし、教育目標があいまいで不明確な場合、教師の主観的評価に傾きやすい欠点ももっている。

 次に「相対評価」は、学業成績の評価法として長年用いられてきたもので、集団の平均を基準とし、集団内の相対的な位置づけをするものである。これによれば、評価は機械的に客観的にできるが、過度の競争的雰囲気を生みやすいなどの欠点をもっている。相対的な評価方法の一つである偏差値は、分布の平均値と標準偏差を利用して線形変換したZ値を求め、さらにこのZ値を10倍して50を加えたものをいう。一般的に、観測される偏差値は20から80(Z得点の-3から+3)の範囲に収まる。偏差値は個人の相対的な位置を示す合理的な統計指標であるが、受験指導、進路指導のなかで使用され、輪切り選抜の道具となったり、高校や大学のランクづけに利用される「偏差値教育」として大きな問題となった。そのため、1993年(平成5)の文部省(現文部科学省)の指導通知によって、偏差値への依存を改めるため、学校のなかで業者テストを行うことが禁止された。

 最後に「個人内評価」は、個人に着目し、比較的に優れた面と劣った面をみいだそうとするものであるが、個人の知性、感性、情意などは数字で推し量られるほど単純なものではない。子供の過去・現在・未来の見通しにおいて、その子の心のなかに入り共感しあうものが評価につながる。「生きる力」は子供によってさまざまであるため、個に応じた評価が必要であり、それが個性を伸長させるものとなる。子供のよさを認め、自尊心を育てるためには、それぞれの差異や異質性を認め、それらを伸長させる働きが期待される。1990年代末の学習指導要領の改訂趣旨および指導要録のあり方はこの点をとくに重視する。とくに、「総合的な学習」の時間や「道徳」の時間などにおいては、自分で課題をみつけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力などの「生きる力」の育成を目ざす評価を志向している。

[河合伊六・岡東壽隆]

教育評価を包含する学校評価

教育評価はこれまで児童・生徒の学習状況などに焦点があてられてきたが、学校経営の自主性・自律性の確立という文脈のなかで、従来の教育評価を中核としながらも、それを包含する学校評価が重要視されている。学校が組織としてどのような教育課程(カリキュラム)を編成し、どのような教育活動を展開して児童・生徒の学習成果にいかなる効果を及ぼしているのか、といった評価や、学校が保護者や地域社会と連携して児童・生徒の教育的な生活ネットワークの構築をしているかなどの評価が求められている。しかも、それを関係者に説明しなければならない責任(アカウンタビリティ)が求められている。教育評価は学習指導要領の示す目標に沿って、その到達度評価(絶対評価)を基本に、児童・生徒の「生きる力」の育成を図る学校教育全体の評価を総合的に行っていかなければならない。

[河合伊六・岡東壽隆]

『橋本重治著『新・教育評価法総説』上下(1976・金子書房)』『B・S・ブルーム著、梶田叡一・渋谷憲一・藤田恵璽訳『教育評価法ハンドブック』(1973・第一法規出版)』『池田央著『現代テスト理論』(1994・朝倉書店)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

きょういく‐ひょうか ケウイクヒャウカ【教育評価】
〘名〙 児童・生徒の学習や行動の発達を教育の目標に照らして測り、判定すること。単に測定することだけが目的とされるのではなく、それによって教育効果を高める役割を果たすことが望ましいとされる。試験、考査だけでなく、日常の観察による判定も含まれる。

出典:精選版 日本国語大辞典
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最新 心理学事典

きょういくひょうか
教育評価
educational evaluation
広義には,教育に関連する事象の実態を把握して判断する解釈プロセスおよびそこで解釈された情報を教育的な問題解決に生かす活用プロセスの総体を意味する。狭義には前者のみを意味する。すなわち,学習・成長にかかわる具体的な事柄を適切に把握,判断し,それらを意味づけたり価値づけたりすることを通して,教育システムや教育実践の改善のために教育のあり方を点検するとともに,評価情報を活用して具体的な問題を解決するための意思決定に役立てることを目的とした活動の総称が教育評価である。

 学校教育における教育評価の主な目的としては,⑴教育行政の点検と改善(国や地方による教育施策等の検討),⑵学校運営の点検と改善(各学校のカリキュラムや運営の仕方等の検討),⑶教育実践・学習指導の点検と改善(授業など,教師による教育実践や指導のあり方の検討),⑷学習者による自己評価の促進(学習・成長の自己確認と自己省察),⑸家庭や地域に対する情報提供(教育や学習・成長をめぐる学校の家庭,地域社会との連携)が挙げられる。

【教育評価の対象】 教育評価の対象は多岐にわたっているが,主に学習者,教育実践,教育条件に大別できる。学習者の学習・成長の促進が教育の目的であることから,教育評価は原則的に学習者を対象とした評価を基盤として行なわれる。具体的には,各学習者あるいは学習集団としての適性(レディネス,知能,性格,興味,態度,認知スタイルなどの学習の成立に影響を及ぼす個人差要因)や,各学習者の学習・成長のプロセスと結果が評価対象となる。後者はとくに学習評価とよばれ,教育評価の最も重要な基盤となる。

 教育実践に関する具体的な評価対象としては以下のものがある。第1に,個別具体的な教育活動の評価である。これには教科教育の活動(授業など)のみならず,学校行事,自治活動,クラブ活動などの教科外の教育活動も含まれ,これらの計画,実施過程,成果のすべてが評価対象となる。また,教育活動を組織する主体である教師も評価対象に含まれる。第2に,カリキュラム評価である。すなわち,教育課程の編成原理,教育内容とその構造(教科編成,コアの設定,内容の配列,学年配当など),履修の仕方,指導指針などが評価対象になる。その際,意図的,計画的に組織された顕在的カリキュラムだけを問題にするのではなく,教育する側の意図や計画とは無関係に学習される潜在的カリキュラムをも含めて評価しようとする姿勢が求められる。第3に,教育環境としての学級(成員間の相互作用,集団構造,学級集団化の過程,学級風土など)や学校(教職員集団,学校運営組織など)が評価対象となる。

 教育条件を対象とした評価としては,物理的環境の評価(施設・設備など),地域社会の評価(ニーズなど),教育制度の評価などが挙げられる。

【教育評価の主体】 評価主体(評価者)は,教育や学習・成長の点検と改善にかかわる立場あるいは参加できる立場にある者であり,教師,学習者,学校の管理運営者(校長など),教育行政当局(地方教育委員会など),保護者・地域住民などが挙げられる。なお,評価者と被評価者の関係によって教育評価は他者評価と自己評価の二つに区別できる。他者評価とは,評価者と被評価者が別人である場合を指す。他者評価のうち,評価者が同じ立場の他者である場合(典型的には,学習者同士が評価し合う場合)をとくに相互評価とよぶ。一方,自己評価とは,評価者と被評価者が同一人物である場合,自分自身の性質や行為,成し遂げた成果などを解釈し,将来の行為を改善していく問題解決的思考について評価する(たとえば,教師が自ら実践した授業を評価したり,学習者が自分の学習成果を評価する)場合を指す。

【教育評価の意義】 教育実践を対象とした評価の場合,教師が学習者の実態を把握,判断することを通して単元を構想したり,自らが実践した授業と子どもの学習活動,学習成果との関係についてさまざまな視点から問題点を探り,見いだされた反省点を授業改善に生かしていくといった機能がある。このような教育評価の機能は,教育実践と教育評価活動とを表裏一体のものとして位置づける「指導と評価の一体化」によって実現する。そこでは,評価によってのちの指導を改善し,さらに,新たな指導の成果を再度評価するといった発展的循環過程が展開される。

 また,教育評価には本来的に当事者(教師など教育活動にかかわる人びとや個々の学習者)の自己評価を促す性質があるため,評価の機会が自らを振り返る契機になることを通して彼らの学習・成長が促進される。たとえば教師の場合,教育評価によって自らの教育実践のプロセスと成果を振り返ることを通して教育専門職としての力量形成が促されることになる。また,学習者の場合,自らの学習活動のプロセスと成果を振り返り,学習上の課題を認識しその情報を将来の学習に向けて活用する「学習と評価の一体化」によって,学習が改善され,ひいては成長が促される。

【対象の把握方法】 教育評価の解釈プロセスは,対象に注目し理解するという「把握」の局面と,評価者自らがもつ判断基準に即して対象を意味づけたり,価値づけたりするという「判断」の局面とに区別できるが,把握においては対象のどのような性質に着目するかという点を明確化する必要がある。とりわけ,教育実践を評価する際には,具体的に設定された教育目標(教育成果として期待される学習者の状態)との関連で学習者の学習・成長のプロセスや成果について把握することが基本となる。

 把握の方法としては,ツールを媒介とする間接的手法と評価者による観察や被評価者とのコミュニケーションに基づく直接的手法とに大別できる。歴史的に重要視されてきた代表的な間接的手法は測定法であろう。測定とはある事象に対して,一定の規則に基づいて数量を割り当てることを指す。20世紀初頭のアメリカで展開された教育測定運動によって,それまでの主観的な評価のあり方が批判され教育の科学化をめざして標準学力テスト,知能検査,性格検査等が開発されるようになった。それ以来,学習者の適性や学習成果などの心理的な変数を客観的に測定するツールとして客観テスト(だれが採点しても同じ採点結果になるような形式をもつ測定ツール)が歴史的に用いられている。測定ツールの開発や活用においては,妥当性(測定しようとしていることが実際に測定されているか)と信頼性(測定が安定しているか,採点が一貫しているか)が重要視される。一方,教育場面における主な直接的手法として観察法や問答法が挙げられる。観察法observational methodとは,現実の場面において評価を目的として対象に関連する事実や事象に関する情報を評価者の五感を通して能動的に収集する方法を指す。問答法question-and-answer methodは,評価対象者,あるいは評価対象に深くかかわる者に対して評価者が質問するなど,主に口語的な相互コミュニケーション過程を通じて情報を収集する方法を指す。これらの直接的手法は,日常的な教育実践に埋め込まれた評価方法としても位置づけることができる。

【対象の統合的解釈】 1980年代後半以降のアメリカにおいて,それまで客観的で科学的とされてきた測定からアセスメントassessmentへと対象を把握する手法が大きく転換することになる。アセスメントとは,狭義には多様な方法による評価対象に関する資料や情報の収集を意味し,広義にはそれに基づく統合的解釈をも含意する用語である。測定による評価にはともすると教育実践の現実を離れ自己目的化されがちな傾向が見られることに対する批判の高まりとともに,教育目標の実現過程やカリキュラム改善における評価の重要性といった教育評価本来の目的に対してより合致した手法が求められるようになった。その帰結として,測定中心の客観的で数量的な把握から,個々の学習者に応じたより教育に適合的で妥当な解釈を生み出す手法への「教育評価方法のパラダイム転換」が起こったのである。

 このパラダイム転換の背景には,学習者の知識の獲得や構造,メタ認知や問題解決的な思考プロセスなどを重視する構成主義的な学習理論の進展がある。すなわち,従来の測定論で前提とされてきた「能力や知識,技能など心理学的要素の分割可能性」や「知識や技能はつねに同じように機能するという非文脈的な仮定」が疑問視されるようになった。学習の成果だけでなく,そのプロセスを適切に把握,判断し教育実践の改善に生かしていくためには,測定に基づく量的な把握だけでは不十分であり,具体的な事象の観察などの質的データをも含めた複数の情報の多角的な収集に基づく,より妥当な解釈や洞察が求められるようになったのである。その結果,オーセンティック評価に代表される新たな評価方法論が提唱されるようになった。

 評価対象について把握された情報は,評価者に内在あるいは外在する基準,すなわち参照枠組みに基づいて判断される。この参照枠組みは「何が達成されたか」という質的な根拠としての評価規準criterionと,「どの程度達成されたか」という量的な根拠としての評価基準standardとに大別される。評価基準の観点から教育評価はさらに相対評価と絶対評価とに分けられる。相対評価とは,評価対象である個人が属する集団の構成員のデータに基づいて設定される集団基準norm standardを用いてある個人の性質を集団内の他者と比較してその相対的位置づけという観点から判断する方法すなわち集団準拠評価norm-referenced evaluationを指す。相対評価は一定の手続きに基づいた場合に実施可能なことが多く,その判断過程に評価者の主観が入り込みにくいという性質をもっている。また,対象者を他者との比較によって理解可能になるという利点がある一方で,能力形成についての情報が得られるわけではないので教育や学習の改善に直接的には寄与しない。

 絶対評価とは,教育や学習の目的や内容との関連で対象を解釈する方法である。絶対評価は,評価者の内的な基準のみに照らして判断する方法(認定評価)と外的に設定された目標基準(criterion standard)を活用する方法,すなわち目標準拠評価criterion-referenced evaluationとに区別できる。認定評価についてはその判断が評価者の主観に依存している点が批判されてきたが,日常的な学習活動や教育実践においてこの認定評価が教育評価の中核的な役割を担っていることも事実であり,また原理的にも評価情報は最終的には評価者によって価値づけられることになるため,そこでは恣意的で独善的な判断に陥らず教育的により妥当な解釈ができる評価者の力量の有無が課題となる。この点に関して,教育の場で起こる複雑で微妙な事柄の質を正しく認識し,その真価を認め判断できる力量について論じたアイスナーEisner,E.W.は,対象の質を認識し理解することを「教育的鑑識」,鑑識によって把握された対象の質を表現し伝えることを「教育批評」とよび,評価者自身を評価のための道具として位置づけた。評価者による解釈は主観性を特徴とするが,その判断は評価共同体(たとえば,教師集団)間における主観的な合意などに基づく教育的な妥当性によって根拠づけられるのだという。一方,評価者の主観性に過度に依存しない解釈を促すために,評価者に外在する評価規準や評価基準を活用する絶対評価システムがこれまでに開発されてきた。たとえば,学力の内容を客観的で具体的な到達目標として設定し,到達度基準に基づいて個々の学習者の目標到達度を測定し判断する方法である到達度評価が挙げられる。到達目標は,実際の教育内容に即しながら,評価の観点となる各目標領域(知識領域,技能領域など)に対応して設定される。その際,具体的に観察可能な行動的目標(「~ができる」「~が言える」など)として表現されることが望ましいとされる。それに対して,到達基準とは,各到達目標をどの程度達成したかを判断する評価基準のことである。この到達度は一般に2段階(「達成している-達成していない」など)や3段階(「十分達成-おおむね達成-達成が不十分」など)の到達段階で示される。また,「量的測定」から「質的解釈」へという「教育評価方法のパラダイム転換」は新たな評価方法の開発をもたらした。たとえば,ルーブリックrubric(パフォーマンスの質を把握,判断するために開発される評価基準表)に基づくパフォーマンス評価(知識や技能を実際に用いる活動を通した評価)は学習評価の主要な方法として位置づけられている。

 なお,被評価者の内部に存在する評価基準によってその個人を解釈するような評価手法を個人内評価intra-indivisual interpretationという。相対評価や絶対評価と本質的に異なる個人内評価の特質は,被評価者に外在する基準によってではなくあくまでも当人について把握された複数のデータ間の比較を行なう点にあり,個人の特性や成長を解釈することを主眼とする。個人内評価には原理的に二つの方法がある。一つは,個人がもつ多様な側面や複数の特性同士を比較する横断的個人内評価(個人内での差異に注目し,ある特定の学習者の中での優れた点,劣った点を判断する方法:プロフィール的解釈)である。もう一つは当人の複数時点(典型的には過去と現在)における同種データを比較する縦断的個人内評価(過去の能力や特性と比べて,現段階でどの程度その学習者が進歩,あるいは退歩したかを判断する方法)である。

 また,ある対象を評価する際,全体として一つの価値判断をする「総合評価」と,複数の観点からそれぞれ価値判断する「観点別評価」がある。わかりやすいが過度に単純化されて理解されがちな前者に比べ,後者にはより分析的で対象の多面的な理解を促すという特長がある。なお,個性的な学習・成長を把握,判断するためには,あらかじめ設定された教育目標やその達成結果にこだわらず教育の結果として何が生じたかについて多面的に検討する「ゴールフリー評価」(目標にとらわれない評価)も有効だとされている。

【解釈された評価情報の活用】 以上の解釈プロセスによって得られた評価情報は,よりよい教育の実現に向けて活用されることが期待されている。ブルームBloom,B.S.は,評価情報の活用プロセスについて,教育活動の過程に応じて診断的評価,形成的評価,総括的評価の三つに分類した。診断的評価diagnostic evaluationとは,ある教育活動の開始前に評価を実施し,学習の前提となるレディネス(指導を受けるために必要な学習者側の準備状態)が事前に形成されているかどうかを把握,判断し,その情報を教育的な決定に活用するような指導の出発点となる評価を指す。また,形成的評価formative evaluationとは,教育プログラム(単元など)の開始後,教育目標に応じた成果が得られているかについて,指導過程の途上で適宜把握,判断し,その結果をそれ以降の教育,学習活動の計画に活用していくような評価を指す。さらに,総括的評価summative evaluationとは一定の教育活動が終了した際に評価を実施し,教育実践や学習活動を全体として反省的に把握するためのものである。指導や学習を結果として評価するものであり,総括的な認識をする際に役立つ。一般に教育評価というと総括的評価のイメージが強いが,診断的評価と形成的評価によって指導と評価の一体化がより効果的に実現する。そこでは評価者と被評価者がともにより良い教育・学習実践を実現するために意味ある情報を相互に交流させ,解釈し合うような相互コミュニケーションのあり方を模索することが課題となる。たとえば,ポートフォリオ評価portfolio assessmentは,ポートフォリオ(学習者の学習のプロセスや成果を示す作品や記録,教師による指導と評価の記録などをファイルなどに蓄積し整理したもの)の作成を通して学習評価をすると同時に学習者の自己評価を促す方法であり,評価的な相互コミュニケーションを促進する。「テスト」や「通知表」といったシステム化されたフォーマルな評価だけではなく,褒めたり,同意したり,共感するといった日常的なコミュニケーションに埋め込まれた「インフォーマルな評価」の役割も大きい。

 また,リフレクションreflection(問題解決的な探究における反省的な思考)を通じた指導と評価の一体化も課題である。ショーンSchön,D.A.(1983)はこれを行為の途上で瞬時に行なう「行為に埋め込まれた省察reflection in action」と事後的に行なう「行為についての省察reflection on action」とに区別し,両者を教師など専門家の活動の本質的な特徴であるとした。一連の教育実践とその改善において,教師が学習者の状態を見ながら,教育目的に沿って学習が成立するように授業状況を運営する際の,教師の認知や判断とそれに基づく行為を含む意思決定過程において教師の評価的思考が機能しているのである。

【教育評価の心理学的影響】 一般に評価の機会(テストなど)は被評価者の学習を促進する効果があり,それは評価に向けての準備を通して学習内容に注意を向けたり,再吟味する努力をしたりすることなどによる「評価予期による効果」と,評価結果の伝達によって学習が改善される「フィードバック提供による効果」とに分けられる。

 一方,成績を評定されるという状況や,正誤に関するフィードバックの提供することは,課題や自己に関する認識,欲求(達成動機など)が充足される程度,情動体験(成就感,不安,ストレスなど)などの心理的要因を規定し,その後の課題遂行に影響を及ぼすといった副次的効果も見いだされている。たとえば,評価不安(特性としてのテスト不安,あるいは心理的状態としての状態不安)を媒介として評価事態は学習に悪影響(たとえば,パフォーマンスの低下)をもたらすことがある。また,多肢選択式などのテスト形式がテストに対する信念や態度を形成し,受験者の学習行動を方向づけ,学習成果の質を左右することも明らかになっている。評価の計画や実施にあたっては,以上のような評価事態が学習者に与える心理的影響を踏まえ,細心の注意を払う必要があり,評価者には「評価リテラシー」(測定方法・評価方法の種類,目的,利用法に関する知識および測定・評価手法を適切に運用する能力)が求められている。 →オーセンティック評価 →学力 →心理アセスメント →テスト →パフォーマンス評価
〔鹿毛 雅治〕

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