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心身問題【しんしんもんだい】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

心身問題
しんしんもんだい
mind-body problem
心身二元論における精神と肉体 (的現象と身体現象) の関係の問題 (徹底した唯物論や唯心論では偽問題である) 。知覚では外界からの刺激を受けて感官に生じた物理的,化学的変化がいかにして知覚像という心理現象を引起すのかという問題があり,意志作用ではたとえば腕を動かそうという意欲がいかにして身体運動を引起すのかという問題がある。アリストテレスの質料形相論では肉体は受動的原理である質料,霊魂は能動的原理である形相とされ,中世を通じてこの思想が支配的であった。デカルトにいたって精神と物質がそれぞれ自律的な実体とされると,両者の関係のかなめにある心身問題は彼の哲学における重大な課題となった。デカルト自身はこれを経験的事実として素朴な心身相互作用説をとったが,それと彼の二元論との調和の点でのちに課題を残した。デカルト哲学の批判から独創的な3つの説が生れた。第1は全現象の直接原因を神に求める N.マルブランシュらの偶因論,第2は精神と肉体を唯一の実体すなわち神の2つの様態とする B.スピノザの平行論であり,第3は一種の平行論であるが,G.ライプニッツの予定調和説である。また唯物論に近い立場では,精神現象随伴説や,精神の過程を消去する行動主義心理学説などがあり,さらには L.クラーゲスのように心身を一体的にとらえて両者の区別そのものを否定する立場がある。

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世界大百科事典 第2版

しんしんもんだい【心身問題 mind‐body problem】
心身問題は古来,霊と肉,魂と身体の問題として,宗教や日常の場で絶えず顔を出す問題であったが,また量子力学での観測問題や大脳生理学ではいまだに人を悩ましている。もちろん哲学ではそれぞれの哲学の性格をきめるほどの基本問題であったし,今でもそうである。この問題の大筋は,まず人間を心と体に分け,その上でこの心と体がどう絡みあっているのかを問うことである。ところがその絡みあいの仕方についての各種各様の考えのどれもが満足のゆくものではない。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

心身問題
しんしんもんだい
mind-body problem英語
Leib-Seele-Problemドイツ語
problme de l'union de l'me et du corpsフランス語
心と身体とが人間のなかでどのように結び付いて人間を構成しているか、また両者はどのように影響を及ぼし合うかという問題。哲学上の古来の問題の一つ。
 心が物質に生命を与えるものと考えられた古代・中世においては、心と身体がどのように結び付いて人間を構成するかが主として問われた。そして心を独立したものと考えるプラトン的立場もあったが、心と身体とは人間という実体を構成する2側面(形相と質料)であるとするアリストテレス的立場があった。後者の立場では、心は物質という材料(質料)に働きかけて、物質を単なる物質にみられぬ特殊なふるまいをする(生き、栄養をとり、感覚し、思考する)人間にまで仕上げる原理(形相)と考えられた(アリストテレス、トマス・アクィナス)。中世には後者の考えが有力となった。
 一方、近世以降は、主として、心と身体とがどのような機構で影響を与え合うかについての考察が盛んとなった。それに対する考え方は大別して一元論と二元論に分かれる。一元論は、心身いずれか一方しか存在しないとする立場であり、(1)真に存在するのは物質のみで、心は物質どうしの作用の一形態ないしその結果であるとする「唯物論」(ホッブズ、ラ・メトリ、現代の生理学など)と、(2)物質・身体こそ心の働きによって成立すると主張する「唯心論」(バークリーら)に分かれる。二元論は、心と身体をおのおの独立して存在するものと考える立場であるが、そのなかには、心身間の直接的な影響を認める「相互作用説」(デカルト)、心身の一方に生じた変化に応じて、神が他方に変化をおこさせるとする「機会原因説」(ゲーリンクス、マルブランシュ)、心身間の影響関係はいっさい認めないが、両者の変化がうまく同調するように宇宙創生の始めから神が計らってあるとする「平行説」(ライプニッツ)などがあった。また一元論の変形として、心的現象と身的現象とが、それらの根底にある一つの実在の変化を二様に表現したものとする「二重側面説」(スピノザ、フェヒナー)がある。
 このほかにも、身体と心の関係を行動とその背後にあると想定されるものとの関係としてとらえようとする「行動主義」(ワトソン、ライル、ウィットゲンシュタイン)、さらにカント以来の先験哲学の伝統にのっとって、経験の前提条件としての「わたし」を心として、それと身体との関係をみようとする立場もある。
 しかし、身体をもって地上に生きる人間にとって、心身問題は倫理、宗教、科学にわたる基本的問題を提供するものである。[伊藤笏康]
『プラトン著、藤沢令夫訳『パイドロス』(岩波文庫) ▽アリストテレス著、山本光雄訳『霊魂論』(『アリストテレス全集 第6巻』所収・1968・岩波書店) ▽E・ジルソン著、服部英次郎訳『中世哲学の精神』上下(1974・筑摩書房) ▽デカルト著、桝田啓三訳「省察」(『世界文学大系13 デカルト・パスカル』所収・1958・筑摩書房) ▽ヒルシュベルガー著、高橋憲一訳『西洋哲学史』全4巻(1970~78・理想社) ▽ド・ラ・メトリ著、杉捷夫訳『人間機械論』(岩波文庫) ▽バークリー著、大槻春彦訳『人知原理論』(岩波文庫) ▽スピノザ著、畠中尚志訳『エチカ』全2巻(岩波文庫) ▽ヴィトゲンシュタイン著、藤本隆志訳『哲学探究』(1977・大修館書店) ▽オースティン著、丹治信春・守屋唱進訳『知覚の言語』(1984・勁草書房) ▽シャッファー著、清水義夫訳『こころの哲学』(1971・培風館)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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