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心筋炎【しんきんえん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

心筋炎
しんきんえん
myocarditis
心筋の炎症急性慢性があり,急性はジフテリアリウマチ熱など細菌ウイルスによる熱性感染症の部分現象あるいは続発症として起ることが多く,慢性の場合は間質炎として発病することが多い。発熱,疲れやすいなどの症状に続いて,原因不明の心不全症状が起り,不整脈の生じることもある。原因療法のほか心臓庇護を行う。

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デジタル大辞泉

しんきん‐えん【心筋炎】
心筋に炎症が起こる病気。リウマチ熱肺炎猩紅熱(しょうこうねつ)ウイルス性疾患などの経過中あるいは回復期に発症することが多い。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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家庭医学館

しんきんえん【心筋炎 Myocarditis】
[どんな病気か]
 心臓を構成する心筋(しんきん)に炎症がおこる病気です。原因は、かつてはリウマチ熱やジフテリアにともなう心筋炎が多かったのですが、最近ほとんど姿を消し、かわってウイルス感染に引き続いておこるウイルス性心筋炎が問題になっています。
 そのほか、細菌、真菌(しんきん)、原虫(げんちゅう)、寄生虫などの感染や、薬物、放射線照射などでも心筋炎が生じることがあります。
 ウイルス性心筋炎で原因となるウイルスは、コクサッキーウイルスやインフルエンザウイルス、エコーウイルスなど、日常ふつうにみられるウイルスが主流です。感染しても心筋炎を発症する確率は、高くはありませんが、発症するときは感染した後、数日から1週間ほどのうちにおこります。
[症状]
 発熱や筋肉痛など、たちの悪いかぜのような症状が出てから数日から1週間ほどの間に、動悸(どうき)(心臓がどきどきする)や息苦しさなどの症状が現われてきます。ときには突然、不整脈(ふせいみゃく)、失神(しっしん)(気絶)、ショック状態などの危険な状態になることもあれば、症状がほとんどでず、目立たずに治ってしまうこともあります。
 不整脈、失神、ショック状態などの危険な症状が現われたときは、一刻も早く救急治療が受けられる病院を受診することが必要です。たとえ症状が軽くても、特発性心筋症(とくはつせいしんきんしょう)(「特発性心筋症」)に類似した後遺症を残すこともあるといわれています。早期に循環器専門医の診察を受けておくことをお勧めします。
[検査と診断]
 経過を検討し、血液検査、心電図、胸部X線撮影、心臓超音波検査などが行なわれます。
 ウイルス性心筋炎の場合は、ウイルスを証明しなければなりませんが、病原ウイルスの同定は容易ではありません。そこで、重症の場合は、治療方針を決めるため、心臓カテーテルで米粒の半分ぐらいの大きさの心筋組織をとり、顕微鏡で病変を調べる心筋生検(しんきんせいけん)によって診断をつけることもあります。
[治療]
 治療法の進歩によって、重症でも、初期の段階で治療を受ければ無事に退院できることが多くなってきました。ただし、ウイルス性心筋炎のウイルスに対する原因療法は、まだ確立されていません。そのため、まず安静にして酸素吸入を行ない、十分な栄養をとります。不整脈、ショック状態、心不全などを合併している場合は、それらの治療も行なわれます。
 軽い心筋炎の場合、症状は完全に消えてしまい、ふつうに生活できることが多いものです。しかし、いったん心筋炎にかかると、不整脈などの後遺症が残り、10~20年後に重症の不整脈や心不全などの症状が現われてくることがあります。心筋炎が治ってからも、主治医にずっと経過を観察してもらうことがたいせつです。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

しんきんえん【心筋炎 myocarditis】
心筋の炎症性病変で,症状を表さずに治癒するものから心筋収縮力の低下によって心不全に至るものまである。発病のしかたが異なるため通常心内膜炎,心外膜炎と区別して述べられるが,炎症性病変は局所的なものから全壁性に及ぶものまであり,厳密には二つを区別することは不可能である。原因としては感染性と非感染性とがあり,前者では細菌,ウイルス,真菌が,また後者では膠原(こうげん)病に伴う血管炎性病変,薬物に対する過敏性などが原因となる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

しんきんえん【心筋炎】
心臓の筋肉の炎症。細菌やウイルスの感染、アレルギー反応などによって起きる。不整脈や心不全などの症状があらわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

心筋炎
しんきんえん
感染症などに伴って心筋障害を生ずる一連の疾患群の総称。原因は多彩で、ジフテリア菌などの細菌やコクサッキーAおよびB型などのウイルスに起因するものをはじめ、急性リウマチ熱や全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、サルコイドーシスに起因するもの、特発性心筋炎(フィードレルFiedler心筋炎)などが知られている。自覚症状は一般に軽度で、倦怠(けんたい)感、発熱、感冒様症状などが出現するだけで、心筋炎と気づかれないことが多い。発熱のわりには頻脈が続き、動悸(どうき)や前胸部痛を伴うときには心筋炎が疑われる。定型的な例では、しだいに運動時の息切れをはじめ、浮腫(ふしゅ)、チアノーゼ、不整脈などの心症状、あるいはうっ血性心不全症状が出現する。治療は、うっ血性心不全に対しては安静臥床(がしょう)を守らせるとともに、ジギタリス剤や利尿剤を用い、塩分を制限する。副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤や抗生物質の投与は、ときに症状の寛解に有効なことがある。ウイルス性心筋炎の場合は一般に予後はよく、後遺症を残さないことが多いが、心筋だけに炎症が限局する特発性心筋炎は難治性で、不幸な転帰をとることが多い。[井上通敏]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

しんきん‐えん【心筋炎】
〘名〙 心臓の心筋に起こる炎症。頻脈心悸亢進、不整脈、心臓部痛などの症状があり、重症のときは心不全を起こす。リウマチ熱、肺炎、猩紅(しょうこう)熱、ウイルス性疾患などの経過中あるいは回復期に発症することが多い。急性と慢性とがある。〔からだの科学(1968)〕

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

心筋炎(心膜疾患)
概念・定義
 心筋炎は,心筋自体の炎症疾患である.病因としては感染,化学物質,物理的刺激,膠原病などが関与するが,不明の場合も少なくない.臨床像は無症状から心原性ショックに至るまで多彩であり,心不全,不整脈,突然死をきたすこともある.慢性に経過した場合,長期の経過をたどり拡張型心筋症に進むことが考えられてきた.さらに,急性心筋梗塞類似の局所壁運動異常,心室瘤や右室形成不全を呈することもある.
病因
 心筋炎の病因は感染症が大半を占め,ウイルス・リケッチア・真菌・寄生虫などによって起こることが知られているが,欧米や日本における心筋炎の多くはウイルスによると考えられている.ウイルス性心筋炎の原因ウイルスはRNAウイルスが多く,ピコルナウイルス群のなかでもエンテロウイルス,特にコクサッキーウイルスは,ウイルス性心筋炎をきたす最も頻度の高い原因と考えられてきた(表5-13-3).しかし,これらのウイルスのなかで心臓から分離されたものはごく少数で,通常,血清学的診断や,心臓以外からのウイルス分離により診断されたものが多く,直接的な証明が行われたものは少ない.WHOによるウイルス性疾患プログラムのグローバルサーベイランスによれば,心疾患と関連するウイルス性感染症はコクサッキーBウイルスが最も頻度が高く,インフルエンザウイルスが次に多い.筆者らの研究により,心筋炎および心筋症の原因としてC型肝炎ウイルスが重要であることが明らかになった.
疫学
 米国での4万例の一般剖検例の検討では1402例に心筋炎がみられた.このうち76例でウイルス性疾患が疑われたが,そのほとんどの例は臨床的に心筋炎の存在が考えられていなかったことは,心筋炎は無症状に経過するものが多いことを示している.また,原因不明の突然死90例の調査では,17%に心筋炎が発見されている.イギリスでのコクサッキーB5ウイルス感染の流行では心疾患は5%にみられ,世界各国の急性心筋炎の報告でコクサッキーウイルスが原因と考えられたものは3~78%と大きな差が認められている.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により,生検組織中でのウイルス遺伝子を調べた結果では,小児の急性心筋炎ではコクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスとの関連が示唆されたが,成人の拡張型心筋症では関連性は低いとされている.
 近年のH1N1インフルエンザ流行時に,心膜炎,劇症心筋炎など種々の心症状が報告された.
臨床症状
①突然の不整脈,伝導障害,心不全の発症や,感冒様症状に続く心異常をみた場合,本症を考える.②上気道感染症状や消化器症状を初発症状とすることが多い.③発熱,筋肉痛,頭痛など全身症状が強く前面に出ている場合は,心異常が見逃されることも多い.④心肥大,心拡大,脈圧の減少,血圧低下,僧帽弁閉鎖不全,頸静脈怒張,奔馬調律,交互脈,肝腫大,浮腫などがみられる.⑤心膜摩擦音をしばしば聴取する.⑥肺塞栓,全身性塞栓症,ショックに陥る例もある.虚血性心疾患と誤ることもまれではない.
検査成績
1)胸部X線:
心室腔の拡大または心膜液貯留により心陰影は拡大する(図5-13-30).肺の間質性浮腫,上大静脈,奇静脈の怒張をみることもある.
2)心電図:
非特異的なST-T変化が最も多い.広汎なST上昇,異常Q波,低電位がみられることもある.経過を追って繰り返し心電図をとることが重要である.一過性の第2度または第3度の房室ブロックや,洞性頻脈,心房性および心室性不整脈がみられることが多い(図5-13-31).
3)血液生化学:
軽度ないし中程度の白血球の増加,赤沈値の亢進,血清酵素値(AST,LDH,CPK,MB-CK),心筋トロポニンTの上昇がみられる.
 心不全のマーカーとしての脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),N末端プロBNP(NT-proBNP)は検出感度が高く有用である.
4)心エコー図検査:
びまん性の壁運動の低下のみならず,一過性の中隔の肥大や局所的な異常もみられる.心膜液の貯留,心室内血栓形成をみることもある(図5-13-32).
5)核医学検査:
67Gaシンチグラフィ,99mTc-ピロリン酸心筋シンチグラフィで陽性像がみられるが陽性率は低い.201Tl
心筋シンチグラフィは心筋傷害の局在の診断に有用で虚血性心疾患との鑑別に役立つ.
6)MRI検査:
造影MRI検査では炎症を反映した画像がみられることがある.
7)ウイルス学的検査:
PCR法により,心筋生検標本からウイルスゲノム検出を試みる.常在ウイルスを検出した場合,結果は慎重に検討する必要がある.抗ウイルス抗体検査は,急性期と回復期のペア血清で,抗体価の有意な上昇(通常4倍以上)をもって病原診断をするが間接的な証拠にすぎない.
診断
(表5-13-4)①心筋生検による病理組織診断が急性心筋炎の唯一の確定診断法である.②心筋生検は早期に行うほど陽性率は高い.③心筋細胞の変性,壊死とリンパ球浸潤の存在が活動性の心筋炎を示唆する所見である(図5-13-33).④C型肝炎ウイルスによる場合は細胞浸潤は軽度であることが多い.
鑑別診断
①急性心筋梗塞の鑑別:急性心筋炎にみられる胸痛は合併した心膜炎によるもので,急性心筋梗塞の胸痛に比べ軽度であり,後者と異なり体位で変化することが多い.②AST,LDH,CPK(CK-MB),心筋トロポニンTなどは急性心筋梗塞に比べると通常最高値が低く,低下するのが緩徐である.冠動脈造影により急性心筋梗塞と鑑別する.
経過・予後
①急速に進行する心不全がある場合は予後不良であり,心機能の注意深い観察が必要である.②心室頻拍など重症不整脈の合併は突然死につながり予後不良である.③心機能低下が持続し拡張型心筋症類似の病像へと進展することがあり,心エコー図などで心機能を継続的に観察する.④血栓・塞栓症が合併することがある.
治療
1)一般療法:
運動負荷,酸素欠乏,栄養不良は心筋炎を悪化することが示唆され,安静を保ち,十分な酸素と栄養を摂取することが重要である.
2)心不全:
左心不全がある場合,利尿薬およびACE阻害薬またはアンジオテンシンI
I受容体拮抗薬を投与する.ジギタリスは不整脈を悪化することがあり注意を要する.
3)劇症心筋炎:
重症心不全となり低拍出心でショック状態に陥った場合,強心薬を投薬する. これらの療法でも低拍出状態から回復しなければ大動脈内バルーンパンピング,経皮的心肺補助装置,補助人工心臓を用いる.急性期を乗り切れば回復する例も少なくない.
4)不整脈:
心室性不整脈や房室ブロックの突然の出現は生命にかかわることがあり,急性期はICU,CCUでの管理や心電図モニターなどによる監視が必要である.完全房室ブロックでは一過性であることが多いため,一時的ペーシングを行う.心室性不整脈に対しては抗不整脈薬を投薬するが,植え込み型除細動器を必要とする場合もある.
5)抗凝固薬:
血栓塞栓症が合併する危険があるため,うっ血性心不全のある場合は十分な抗凝固療法を行う必要がある.
6)免疫抑制療法:
慢性活動性心筋炎に対するプレドニゾロン,シクロスポリンによる免疫抑制療法や免疫グロブリン投与が試みられることがあるが,大規模臨床試験の結果これらの療法による心機能や長期予後の改善効果は対照群と差がないことが明らかにされた.
7)抗ウイルス療法:
実験的研究により抗ウイルス薬リバビリンやインターフェロンの有用性が明らかとなり,また,C型肝炎ウイルス感染に対してこれらの併用療法が有効であることから,今後心筋炎の治療に応用できる日も近いと思われる.[松森 昭]

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

心筋炎
しんきんえん
Myocarditis
(子どもの病気)

どんな病気か

 ウイルス、細菌などの感染症、川崎病(かわさきびょう)膠原病(こうげんびょう)などが原因で、心不全や不整脈が起こる心筋(心臓の筋肉)の炎症のことです。小児の心臓病のなかでは、頻度が低い病気です。

 原因のなかで最も重要なものはウイルスによるものです。主な原因ウイルスはコクサッキーウイルス、エコーウイルス、アデノウイルスなどですが、そのほか、多くのウイルスが心筋炎を起こします。

症状の現れ方

 胸痛のほか、心不全による症状、不整脈による症状があります。心不全による症状は、尿量の低下、浮腫(ふしゅ)(むくみ)、呼吸困難、四肢の冷感、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)などで、重症になれば意識や血圧の低下などショック症状になります。不整脈では、動悸(どうき)や失神を起こすことがあります。失神は不整脈の一種である房室(ぼうしつ)ブロック頻拍(ひんぱく)性の不整脈などで、心臓から送り出される血液量が減るためです。

 さらに注意すべきは、発熱、頭痛、(せき)、咽頭痛などのかぜの症状や、嘔吐、腹痛、下痢などの腹部の症状、発疹、関節痛、筋肉痛などが、心不全・不整脈の症状の数日前から現れることが少なくないことです。

 そのため、発症初期にはかぜなど他の疾患との区別が困難なことがありますが、経過するうちにいつものかぜや嘔吐下痢症などより重症感があり、何かおかしいと感じます。胸痛、動悸などは小さな子どもは訴えられないため、この「何かおかしい」という感じはこの病気を見つけるうえで非常に大切です。

検査と診断

 前記の症状のほか、徐脈(じょみゃく)などのリズムの異常や聴診所見(心音減弱、ギャロップリズムなど)、胸部X線検査で心拡大や肺うっ血、血液検査で心筋酵素の上昇、炎症反応の上昇、心電図の変化、心エコーで心拡大、左心室機能の低下などで診断します。

 ギャロップリズムとは、心音が健常な時と違い、馬が駆けるようなリズムになることです。

治療の方法

 心不全に対しては強心薬(カテコラミンなど)や利尿薬、血管拡張薬による治療、房室ブロックによる徐脈には一時的に心臓のリズムを正常に保つ体外式ペースメーカーによる心臓ペーシング、頻拍性の不整脈には抗不整脈薬の投与などを行います。薬物治療に効果がみられない場合には、心機能が改善するまで心肺補助装置という機械によって心臓から送り出す血液を補助します。

 また近年、川崎病の治療に有効な大量の人免疫グロブリン(ガンマグロブリン)投与が心筋炎にも有効との報告があり、著者らも著効例を経験しています。

 心筋炎の予後は、急性期を乗り越えれば比較的良好で、約半数が後遺症を残さずに治りますが、心機能の低下が続く場合もあります。死亡率は10~15%で、急激に病状が進行する劇症型(げきしょうがた)では予後が悪くなります。死亡は心不全や不整脈が原因ですが、突然死のような形になることもあります。

病気に気づいたらどうする

 できるだけ早く検査を受け、集中治療が可能な施設で治療を受けることが重要です。そのためにも、この病気について医療関係者に限らず広く一般の方も知ることが早期発見に役立ちます。

塚野 真也

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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心筋炎
しんきんえん
Myocarditis
(循環器の病気)

どんな病気か

 心筋自体に炎症細胞の浸潤(しんじゅん)が生じる病態を指しますが(図11)、一般に急性心筋梗塞(しんきんこうそく)によるものは除きます。多くは急性の経過で発症しますが(急性心筋炎)、まれに慢性の経過で進行する患者さんもいます(慢性心筋炎)。

原因は何か

 コクサッキーやエコーなどのウイルス、細菌などの病原微生物の感染が原因になることがありますが、原因のわからない特発性の場合も多くみられます(表18)。

 膠原病(こうげんびょう)などの全身性疾患に伴う心病変として起こることもあり、時に薬物や放射線などによって引き起こされる場合もあります。

症状の現れ方

 急性心筋炎の場合、発熱、鼻水、咳などの感冒(かんぼう)(かぜ)様症状、下痢、腹痛などの消化器症状に引き続き、さまざまな程度の心症状を示します。軽いものでは、動悸や胸部不快感、心膜炎を合併すれば胸の痛みなどが現れます。

 重症化すると、呼吸困難や苦しくて横になれないなど急速に進行する心不全、血圧低下や意識障害などのショック状態を示す場合もあります。重篤な不整脈(ふせいみゃく)により失神したり、心停止を起こすこともあり、突然死の原因になる場合があります。

検査と診断

 血液検査でCRP上昇、赤血球沈降速度亢進、白血球増多などの炎症所見や、クレアチンフォスフォキナーゼなど心筋逸脱酵素(しんきんいつだつこうそ)の上昇が認められます。

 心電図変化は多彩で、比較的短期間に変化するので注意が必要です。心膜炎を合併すれば広範な誘導でST上昇を認め、重症の場合は高度房室(ぼうしつ)ブロック心室頻拍(しんしつひんぱく)などのさまざまな不整脈がとらえられます。

 心臓超音波検査では、心臓の壁運動異常の重症度、心室壁腫大(しんしつへきしゅだい)心膜液貯留(しんまくえきちょりゅう)の程度が判別でき、時間を追った経過観察が可能です。

 ウイルス抗体価は急性期と回復期に2回採血して、その変化を調べます。

 急性心筋梗塞との区別が必要な場合もあり、確定診断のために冠動脈造影と心筋生検(組織の一部を採取して調べる)が行われます。心筋生検は、病態が許せばなるべく早期に行ったほうが、診断率が上がるといわれています。

治療の方法

 心筋炎急性期は症状が軽くても、原則として入院し、重篤な不整脈や循環動態の悪化がみられないかどうか、経過を観察する必要があります。頻脈性(ひんみゃくせい)不整脈に対しては、抗不整脈薬の投与や直流除細動(ちょくりゅうじょさいどう)を、完全房室ブロックなどの徐脈性(じょみゃくせい)不整脈に対しては、体外式ペースメーカーを挿入する場合があります。

 重症心不全(じゅうしょうしんふぜん)の場合では、病態に応じて利尿薬、血管拡張薬、強心薬などが用いられます。ショックに陥った場合は循環を補助する目的で、大動脈内バルーンパンピングや経皮的心肺補助法などを行うことがあります。副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の長期投与の効果は否定的な意見が多いようですが、病態によっては投与される場合があります。最近では、免疫グロブリン大量療法が行われる場合もあります。

 患者さんの約50%は後遺症を残さず完全に治り、約40%が何らかの心異常を残します。その程度は、心電図異常などの軽微なものが大部分ですが、なかには高度の心機能障害を残し、死亡する症例もあります。

病気に気づいたらどうする

 感冒様症状や消化器症状に続いて、前述のような胸部症状を自覚する人は循環器専門医の診察を受け、心電図をとるのが診断の第一歩です。

 ウイルス感染にかからない努力が大切で、うがい・手洗いの励行と、インフルエンザウイルスが心筋炎の原因となることから予防接種も重要です。

矢崎 善一

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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