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心・情・意【こころ】

精選版 日本国語大辞典

こころ【心・情・意】
[1] 〘名〙 人間の理知的、情意的な精神機能をつかさどる器官、また、その働き。「からだ」や「もの」と対立する概念として用いられ、また、比喩的に、いろいろな事物の、人間の心に相当するものにも用いられる。精神。魂。
[一] 人間の精神活動を総合していう。
① 人間の理性、知識、感情、意志など、あらゆる精神活動のもとになるもの。また、そうした精神活動の総称。
※古事記(712)下・歌謡「大君の 許許呂(ココロ)をゆらみ 臣(おみ)の子の 八重の柴垣 入り立たずあり」
※万葉(8C後)一二・二九〇七「大夫(ますらを)の聰(さと)き神(こころ)も今は無し恋の奴(やつこ)にあれは死ぬべし」
② 表面からはわからない本当の気持。精神・気持のありのままの状態。本心。
※古事記(712)上「然らば汝(いまし)の心の清く明きは何(いかに)して知らむ」
※古今(905‐914)春上・四二「人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける〈紀貫之〉」
③ 先天的、または習慣的にそなわっている精神活動の傾向。性格。性分。気立て。
※万葉(8C後)一二・二九八三「高麗剣(こまつるぎ)(わ)が景迹(こころ)からよそのみに見つつや君を恋ひ渡りなむ」
※伊勢物語(10C前)二「その人、かたちよりは心なんまさりたりける」
④ 人知れず考えや感情などを抱くところ。心の中。内心。
※霊異記(810‐824)下「猶、願を果さむと、睠(かへり)みて常に懐(こころ)に愁ふ〈真福寺本訓釈 懐 心也〉」
※俳諧・三冊子(1702)わすれ水「人の方に行に、発句心に持行事在り」
[二] 人間の精神活動のうち、知・情・意のいずれかの方面を特にとり出していう。
① 物事を秩序だてて考え、行動を決定する精神活動。思慮分別。また、細かなところまで行きとどいた気の配り。周到な配慮。
※万葉(8C後)一四・三四六三「ま遠くの野にも逢はなむ己許呂(ココロ)なく里のみ中に逢へる背なかも」
※源氏(1001‐14頃)薄雲「心の至る限りは、おろかならず思ひ給ふるに」
② とっさの気の配り。また、事に臨んで物事を処理してゆく能力。機転。気働き。臨機応変の心。
※枕(10C終)八三「さらば、かくなんと聞えよと侍りしかども、よも起きさせ給はじとてふし侍りにきと語る。心もなの事や、と聞く程に」
③ 自分の気持と異なったものを受け入れるときの精神的許容性。度量。
※源氏(1001‐14頃)夕顔「我がいとよく思ひ寄りぬべかりし事を、譲り聞えて、心広さよ」
④ 感情、気分など、外界の条件などに反応して心理内で微妙にゆれ動くもの。情緒。
※万葉(8C後)二・一四四「磐代の野中に立てる結び松情(こころ)も解けずいにしへ思ほゆ」
※古今(905‐914)春上・五三「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〈在原業平〉」
⑤ 他に対する思いやり。他人に対して暖かく反応する気持。情け。人情味。情愛。
※万葉(8C後)一・一八「三輪山をしかも隠すか雲だにも情(こころ)有らなも隠さふべしや」
⑥ 詩歌、文学、芸術、情趣、もののあわれなどを理解し、それを生み出すことのできる感性。風流心。
※大和(947‐957頃)一四四「この在次君〈略〉心ある者にて、人の国のあはれに心細き所々にては歌よみて書きつけなどしける」
※山家集(12C後)上「こころなき身にも哀はしられけり鴫たつ沢の秋の夕暮」
⑦ ことばの発想のもとになる、人間の意識や感情。言語表現を支える精神活動。
※古事記(712)序「上古の時、言(ことば)(こころ)、並びに朴(すなほ)にして、文を敷き句を構ふること、字に於きて即ち難し。已に訓に因りて述べたるは詞(ことば)心に逮ばず」
※古今(905‐914)仮名序「やまと歌は、人のこころを種として、よろづのことの葉とぞなれりける」
⑧ ある物事を意図し、その実現を望む気持。考え企てること。また、その考え。企て。意向。意志。
※万葉(8C後)三・四八一「結びてし 言(こと)は果さず 思へりし 心は遂げず」
⑨ 気持の持ち方。心構え。また、意図を実現させるのに必要な意気ごみや精神力。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「心によりなん、人はともかくもある」
⑩ 構えて、そういう気持になること。わざと、そのものとは違った見立てをすること。つもり。
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)上「これかかまだ蓬莱はかざらね共、先正月の心三ばうかざってもっておじゃ」
⑪ あらかじめ事の成りゆきを想定または予定しておくこと。また、その予想。予期。想像。覚悟。常識的想定。
※枕(10C終)三一九「よう隠し置きたりと思ひしを、心よりほかにこそ漏り出でにけれ」
※読本・椿説弓張月(1807‐11)前「われ心ありて来たれども、終に索め得ず。今心なくして鶴を見るこそうれしけれ」
[三] 人間にある特定の分野に関わりの深い精神活動を特にとり出していう。
① 相手に逆らうような気持をひそかに抱くこと、また、その気持。相手に反逆したり、分け隔てをするような気持。水くさい心。二心。異(こと)心。あだし心。隔意。
※万葉(8C後)四・五三八「人言を繁みこちたみ逢はざりき心あるごとな思ひ吾が背子」
② 宗教の方面に進んでいる気持。道心。宗教心。信仰心。信心。
※枕(10C終)一二〇「などて、この月ごろ詣でで過しつらんと、まづ心もおこる」
※大鏡(12C前)六「さばかり道心なき者の、はじめて心起る事こそ候はざりしか」
③ 世俗的なものに執着する気持。迷いのままで悟れない心。雑念。妄念。我執。煩悩。俗情。
※ささめごと(1463‐64頃)下「ひとへに放埒を先として、身を軽くなす歌人世に多し。心を捨てたる人にまぎれ侍るべし」
[四] 事物について、人間の「心」に相当するものを比喩的にいう。
① 人に美的感興などを起こさせるもの。事物の持つ情趣。風情。おもむき。
※枕(10C終)三七「橘の葉の濃くあをきに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまにをかし」
② あまりおおやけにされていない事情。また、詳しいいきさつ。内情。実情。
※源氏(1001‐14頃)若紫「門うちたたかせ給へば、心知らぬ者の開けたるに」
③ 物事の本質的なあり方。中心的なすじみち。物事の道理。
※古今(905‐914)仮名序「ここに、古へのことをも、歌のこころをも知れる人、わづかにひとりふたりなりき」
④ 内々でたくまれた、物事の趣向。くふう。
※源氏(1001‐14頃)帚木「九日の宴にまづ難き詩の心を思ひめぐらし、いとまなきをりに」
⑤ ことばの意味。わけ。語義。また、詩歌文章などの含んでいる意味内容。
※古今(905‐914)仮名序「ちはやぶる神世には、歌の文字も定まらず、すなほにして、言の心わきがたかりけらし」
※平家(13C前)六「たとへば、此の朗詠の心は、昔、堯の御門に二人の姫宮ましましき」
⑥ 事柄を成り立たせている根拠。物事の理由。また、謎ときなどの根拠。わけ。
※海道記(1223頃)逆川より鎌倉「法師は詣らずと聞けば、其の心を尋ぬるに」
⑦ 歌論・連歌論用語。
(イ) 和歌や連歌の主題。表現の意図。意味内容。
※古今(905‐914)仮名序「この歌、いかにいへるにかあらん、その心、えがたし」
(ロ) 和歌や連歌の情趣、感動、余情などをいう。
※新撰髄脳(11C初)「凡そ歌は心ふかく、姿きよげに、こころにをかしき所あるをすぐれたりといふべし」
(ハ) 和歌や連歌の表現の上にみられる、すぐれた感覚。美的なセンス。
※永承五年女御延子歌絵合(1050)「末いまめかしく、こころありなど侍るは、ゆかぬことにぞ」
[五] 人体または事物について「心」にかかわりのある部位や「心」に相当する位置をいう。
① 物の中心。物の中央。特に池についていうことが多い。まんなか。なかご。
※躬恒集(924頃)「散りぬともかげをやとめぬ藤の花池のこころのあるかひもなき」
② 人体で、心の宿ると考えられたところ。心臓。胸のあたり。胸さき。
※古事記(712)下・歌謡「大猪子が 腹にある 肝向ふ 許許呂(ココロ)をだにか 相思はずあらむ」
※枕(10C終)二九「こころときめきするもの。雀の子飼ひ。ちご遊ばする所の前わたる」
[2] (こゝろ) 小説。夏目漱石作。大正三年(一九一四)発表。友人Kを死に追いやった「先生」の心理的過程を、学生である「私」の目と、「先生」の遺書を通して描く。近代知識人のエゴイズムの問題を追究した作品。

出典:精選版 日本国語大辞典
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