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【とく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典


とく
aretē; virtus; perfectio
哲学,宗教の中心的課題の一つ。倫理的,道徳的善に対する意志の恒常的志向性,ないしは善を実現する恒常的能力をいう。したがってそれがみずからの修練によるものであるか否かを問わず身についたものでなければならない。プラトンは徳を有益と結びつけて論じ,賢明,剛毅,節制,正義の四つの徳をあげている。キリスト教哲学でこれら枢要徳としての倫理徳に,神との関係に立つ三つの対神徳 (信仰,希望,愛) を加えた。儒教では仁,義,礼,智,信,父子の親,君臣の義,夫婦の別,長幼の序,朋友の信などいわゆる五倫五常を総称して徳という。アリストテレスは倫理的な卓越性 (徳) は本性的に与えられているのではなく,行為の習慣化によって生じる状態 (ヘクシス) とし,中庸において成立する行為選択の状態を徳とする (たとえば恐怖と平然の中庸としての勇敢) 。ストア派は理性的自然的生活を徳とし,エピクロス派は真に快の何たるかを洞察する能力を徳としている。近代以後では欲望を正しい知識と合致させようとする意志のうちに徳をみるメランヒトンの規定や,徳を義務に従う道徳的強さとするカントの見解が代表的である。

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デジタル大辞泉

とく【徳】
精神の修養によってその身に得たすぐれた品性。人徳。「が高い」「を修める」→徳目
めぐみ。恩恵。神仏などの加護。「をさずかる」「を施す」
得(とく)1
富。財産。
「―いかめしうなどあれば、…家の内もきらきらしく」〈・東屋〉
生まれつき備わった能力・性質。天性。
「鳥といっぱ、高く飛ぶをもってその―とす」〈仮・伊曽保・下〉

出典:小学館
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編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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とく【徳】[漢字項目]
[音]トク(呉)(漢)
学習漢字]5年
りっぱな行いや品性。「徳育徳義徳行徳望悪徳威徳学徳公徳高徳人徳仁徳道徳背徳美徳不徳
すぐれた人格者。「碩徳(せきとく)大徳
恩恵。「徳政遺徳恩徳神徳報徳
もうけ。「徳用福徳
[名のり]あきら・あつ・あつし・あり・いさお・え・かつ・さと・ただし・とこ・とみ・なり・なる・のぼる・のり・めぐむ・やす・よし

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世界大百科事典 第2版

とく【徳】
その漢語原義からすれば,〈徳〉は〈得〉に通じ心に得るものと解され,転じて人間品性が人の道にかなったあり方に仕上げられ高められてあることを意味する。その限りでは,18世紀イギリスのモラリストたちが重視した仁愛benevolenceが最も基本的な徳である。一般的にいえば,人間が単なる動物的存在から脱して,動物的でもあるが同時に理性的でもあるという真の人間らしさ,人間としての優秀性を体得している状態が徳である。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

とく【徳】
修養によって得た、自らを高め、他を感化する精神的能力。 「 -を積む」 「 -を養う」
精神的・道徳的にすぐれた品性・人格。 「先生の-を慕う」 「 -の高い人」
身に備わっている能力。天性。 「よく味あじわいを調へ知れる人、大きなる-とすべし/徒然 122
めぐみ。神仏の慈悲。加護。おかげ。 「 -を施す」 「神の御-をあはれにめでたしと思ふ/源氏 澪標
善政。 「師いくさをかへして、-を敷くにはしかざりき/徒然 171
富。財産。裕福。財力。 「上達部の筋にて、中らひも物ぎたなき人ならず、-いかめしうなどあれば/源氏 東屋
富を得ること。利益。もうけ。得。 「時の受領は世に-有る物といへば/落窪 1

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)


とく
中国の倫理思想と政治思想における重要概念。徳という字は、もと扁(へん)がなく、旁(つくり)は直と心との合成である。また「トク」という発音は得(とく)と通ずるという(『釈名(しゃくみょう)』)。つまり真(ま)っ直(すぐ)な心、わが身に獲したもの、の意味がある。倫理学的には、正しい行為をさす。「肆(ゆえ)に惟(こ)れ王はそれ疾(すみや)かに徳を慎(つつし)め」(『書経』召誥(しょうこう))。政治的には、刑罰に対するものとして、民への恩恵、褒賞を意味する。これは損得の得のニュアンスからである。「徳刑政事典礼」(『左伝(さでん)』宣公12年)。さらに孔子は、為政者が自身を正すことで民を感化するという徳治主義を唱えた。「政(まつりごと)を為(な)すに徳を以(もっ)てすれば、譬(たと)えば北辰(ほくしん)その所におりて衆星これに共(むか)うが如(ごと)し」(『論語』為政篇(へん))。また、倫理的な価値観を含まない、本有的能力とか属性をも徳という。「物の得て以て生ずる、これを徳という」(『荘子(そうじ)』天地篇)。これは道家(どうか)の系列に多い考え方である。たとえば鳥が高く飛んで矢を避け、鼠(ねずみ)が地下に潜って身を隠すのも徳である(『荘子』応帝王)。『易(えき)』繋辞(けいじ)伝に「天地の大徳を生と曰(い)う」とある。万物を生々するのが天地のはたらきという意味で、前述の能力・属性の意味と似た用法である。さらに陰陽五行家は、万物の五元素を木、金、火、水、土と数え、各王朝はそれぞれの元素の属性(木徳、金徳、火徳、水徳、土徳)を宿命的に背負って交代する。たとえば金徳の殷(いん)は木徳の夏(か)に剋(か)ち、火徳の周は金徳の殷に剋ち、水徳の秦(しん)は火徳の周に剋つ、という。[本田 濟]

西欧

西欧思想でこのことばにあたるものは、ギリシア語のアレテーαρετη、ラテン語のビルトゥスvirtus(フランス語のvertu、英語のvirtueはここから派生)、ドイツ語のトゥーゲントTugendなどであるが、これらのことばにはみな特有の根源的な意味がある。まず、アレテーは、ホメロスなどの古い時代には、なんであれ、おのおのの事物のもつ優秀な機能を意味していた。たとえば、ナイフのアレテーはよく切れることであり、馬のアレテーは速く走ることである。この段階では、人間のアレテーは、人間の所有するあらゆる意味での優秀な能力を意味しえたが、これが倫理化され内面化されてゆくところにギリシア倫理思想の発展があった。他方、ラテン語のビルトゥスは男(vir)ということばから形成された語であり、本来「男らしさ」を意味する。すなわち、男の場所である戦場における勇気がそれの本来の意味であり、そこから内面的な強さ、倫理的徳という展開をたどることになる。ドイツ語のトゥーゲントにも似たような事情がある。すなわち、この語は「役にたつ」taugenという語に由来し、本来、なににせよ事物や人物の所有する「有能さ、卓越した点」を意味していたのである。
 このように、徳は原初においては自然的能力の優秀性を意味していたが、西欧思想において、これが倫理徳として明確に体系化されたのは、ソクラテス、プラトンの思索を経たのち、アリストテレスにおいてである。アリストテレスは徳をヘクシスεξιとしてまず一般的に規定する。ヘクシスとは、人間が後天的に獲得した一定の行為能力のことである。すなわち、人間には生まれつき身に備わった本性的な徳(ないしは善へのまなざし)があるが、これは情緒的なもので確固とした基礎をもたない。この素質を理性的選択に基づく自覚的行為の反復によって不動の行為能力へと形成したとき、本来の意味での徳が生まれる。そして、倫理的な意味での徳とは、欲望、衝動、激情など、総じて快苦によって示されるパトス的な要素を理性的原理によって規定するところに成立するが、この規定原理が「正しい理(ことわり)」であり、規定された状態がいわゆるメソテースμεσοτη(中庸)にほかならない。西欧思想における徳論のもう一つの柱はキリスト教の教説にある。すなわち、イエスの説いた隣人愛がその基礎であるが、神学上では、パウロが「コリント前書」で述べた信仰、希望、愛がキリスト教の語る本来の意味での徳である。以後の西欧思想における徳論はすべてこの二つの根源からの展開にほかならなかった。[岩田靖夫]
『赤塚忠・金谷治・福永光司・山井湧編『中国文化叢書2 思想概論』(1968・大修館書店) ▽本田濟編『中国思想を学ぶ人のために』(1975・世界思想社) ▽アラスデア・マッキンタイア著、篠崎栄訳『美徳なき時代』(1993・みすず書房) ▽日本倫理学会編『徳倫理学の現代的意義』(1994・慶応通信) ▽藤原保信・飯島昇蔵編『西洋政治思想史1』(1995・新評論)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

とく【徳】
〘名〙
① 道徳的、倫理的理想に向かって心を養い、理想を実現していく能力として身に得たもの。また、その結果として言語・行動に現われ、他に影響、感化をおよぼす力。社会的な観点から評価される人格。カントでは、義務を尊重しようとする道徳的心情。
※古事記(712)序「道は軒后に軼(す)ぎ、徳は周王に跨(こ)えたまひき」
※栄花(1028‐92頃)浦々の別「これにつけても、若宮の御徳と世の人めでののしる」 〔易経‐乾卦〕
② 本来備えている能力。天賦。天性。人格の作用。また、すぐれた力・はたらき。能力。効果。
※源平盛衰記(14C前)一六「禽獣も加様の徳(トク)を以て、君を悩まし奉る事の有ける事よ」 〔韓愈‐原道〕
③ ある人格から受けるめぐみ。恩恵。慈悲。特に、天子のめぐみや神仏の加護。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「こよひ、かの御とくのうれしさは、ぬしのおはしたるなり」
④ おかげ。ため。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「あてこそのみとくに、おもしろうめでたきものをも聞きつるかな」
⑤ 長所。美点。すぐれているところ。
※無名抄(1211頃)「よく境に入れる人の申されし趣は、詮はただ詞に現れぬ余情、姿に見えぬ気色なるべし。心にも理深く詞にも艷極まりぬれば、これらの徳はおのつから備はるにこそ」
⑥ 富。富裕。福分。財産。経済力。
※今昔(1120頃か)二八「亦身の徳なども有ければ、家の内も豊也けり」
⑦ ⇒とく(得)

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