Rakuten infoseek

辞書

微分幾何学【びぶんきかがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

微分幾何学
びぶんきかがく
differential geometry
曲線,曲面,さらには空間自身の研究に微分学積分学の手法を用いる幾何学の一分科であって,微分積分学の発見と同時に始ったということができる。しかしこれを幾何学の一分科として確立したのは C.ガウスである。 B.リーマンは,ガウスの曲面論を拡張して,一般次元の曲率をもつ空間の概念に達した。これは現在リーマン空間と呼ばれ,その幾何学はリーマン幾何学と呼ばれている。これは,C.リッチ,T.レビ=チビタなどによって発展させられ,アインシュタインによって一般相対性理論へ応用された。リーマン幾何学は,H.ワイル,E.カルタンなどによって接続の幾何学に拡張され,現在でも盛んに研究されている。微分幾何学の最近の傾向は,図形の位相的性質も考慮に入れることと,その範囲を,概複素空間,概接触空間,およびそれらの拡張へ広めつつあることであろう。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

びぶんきかがく【微分幾何学 differential geometry】
現在,微分幾何学の意味するものは広い。本来はその方法論の一つとして,多様体上に定義された関数,またはそれを一般化したベクトル,テンソル場などの微分量を用いる幾何学というところからついた名称であるが,微分される対象,微分量の取扱い方,あるいは目的とする幾何学等々の差異によって,等しく微分幾何学と呼ぶものの中にもニュアンスの違いが生ずる。おおまかにいえば,それらは曲線,曲面の微分幾何学,リーマン多様体上の微分幾何学および必ずしもリーマン的とはかぎらない微分可能多様体上の微分幾何学ということになるであろう。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

びぶんきかがく【微分幾何学】
微積分学を用いて曲線・曲面の性質を研究する幾何学。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

微分幾何学
びぶんきかがく
differential geometry
微分幾何学は、古典的な意味では、平面および空間における曲線や曲面などの性質を微分学を応用して研究する数学の一分野である。現代的には、リーマン計量、複素構造、接続などのようになんらかの構造が与えられた多様体の理論を意味する。古典的な意味の微分幾何学を確立したのはK・F・ガウスである。
 曲線や曲面、あるいは一般に多様体に関する概念や性質には、各点の十分小さい近傍(きんぼう)内の情報だけで定まるものと、全体に関連して定まるものとがある。前者を局所的(または小域的)といい、後者を大域的という。曲線や曲面の曲率は局所的概念の典型である。これに対して、凸閉曲線の幅、閉曲線の長さとその囲む面積との関係、曲面の穴の数、閉曲面上に存在する閉測地線の数などは、大域的な概念(または性質)である。局所的な性質は、微分学を主要な手段として研究されるのに対して、大域的な性質の研究には、位相幾何学やリー群論などをはじめとする他の諸分野の知識を動員する必要がある。[荻上紘一]

平面曲線の幾何学

平面曲線を弧長sを変数としてx=x(s)と表せば、e1=x′(s)は単位接ベクトルである。e1を正の向きに90度回転して得られるベクトルをe2とすれば、e1、e2は曲線上の各点で正規直交系をなす。このときe1、e2は微分方程式

を満たす。κを曲線の曲率という。κ≡0(曲線上の各点で恒等的にゼロ)ならば直線であり、κ≡1/r(一定)ならば半径rの円である。平面曲線の局所的な性質は曲率によって完全に決まる(平面曲線の基本定理)。平面曲線に関する大域的な性質としては、四頂点定理、等周不等式、定幅曲線などが有名である。[荻上紘一]

空間曲線の幾何学

空間曲線を弧長sを変数としてx=x(s)と表し
 e1=x′(s),e2=x″(s)/x″(s),e3=e1×e2
とすれば、e1、e2、e3は曲線上の各点で正規直交系をなす。e1を単位接ベクトル、e2を単位主法線ベクトル、e3を単位従法線ベクトルという。このときe1、e2、e3は微分方程式(フレネ‐セレーの公式)

を満たす。ただし
  κ=x″(s),
  τ=(1/κ2)(x′×x″)・x
であり、κを曲率、τを捩率(れいりつ)という。曲率は曲線がその接線から離れる度合いを表し、捩率は曲線がe1、e2で張られる平面(接触平面という)から離れる度合いを表す。空間曲線の局所的な性質は曲率と捩率により完全に決まる(空間曲線の基本定理)。空間曲線に関する大域的な性質としてはフェンヒェルWerner Fenchel(1905― )やミルナーJohn Willard Milnor(1931― )らによる全曲率∫κdsに関する不等式が有名である。[荻上紘一]

曲面のいろいろな性質

曲面は第一基本形式と第二基本形式によって完全に決まる。第一基本形式は曲面上で長さを測る尺度を与える二次形式(すなわち二次の対称行列)で、リーマン計量の例である。第二基本形式は外からみた曲面の曲がりぐあいを表す二次形式である。
 曲面S上の点PにおいてSの法線を含む平面とSとの交線のPにおける(平面曲線としての)曲率の(平面をいろいろ変えてみたときの)最大値と最小値をSのPにおける主曲率といい、主曲率の積をガウス曲率という(図A)。ガウス曲率は曲面の「曲がりぐあい」を忠実に表す量である。Pにおけるガウス曲率が正、負、ゼロに応じてPを楕円(だえん)点、双曲点、放物点という(図B)。曲面Sの点Pに対してPにおける単位法ベクトルを対応させる写像をガウス写像という(図C)。ガウス写像はSから単位球面への写像であり、ガウス曲率はガウス写像による「面積の拡大率」に等しい。すなわちSの点Pの周りの閉曲線の囲む面積をA、ガウス写像で対応する単位球面上の閉曲線の囲む面積をA*として、閉曲線をPに収束させたときのA*/Aの極限がPにおけるガウス曲率に等しい。ガウス曲率が一定であるような曲面を定曲率曲面という。平面、柱面、球面などは定曲率曲面である。定曲率閉曲面は球面に限る(リープマンの定理)。主曲率の相加平均を平均曲率という。平均曲率が至る所ゼロであるような曲面を極小曲面という。極小曲面は、局所的には与えられた閉曲線を境界にもつ曲面のなかで面積が最小であるという性質をもつ。針金の輪にせっけん膜を張ってできる曲面は極小曲面である。懸垂(けんすい)線を母線とする回転面(懸垂面という)は極小曲面であるが、逆に極小曲面となる回転面は懸垂面に限る。
 対応する点における第一基本形式が一致するような二つの曲面は、互いに伸縮なく重ね合わせることができる(このとき二つの曲面は互いに等長であるといわれる)。対応する点における第一基本形式と第二基本形式がともに一致するような二つの曲面は、空間の運動によって重ね合わせることができる(このとき二つの曲面は合同であるといわれる)。二つの曲面は、等長であっても合同であるとは限らない。たとえば、図Dにおいて(1)と(2)は大域的に等長であるが(局所的にも)合同ではなく、(1)と(3)および(2)と(3)は、局所的に等長であるが合同ではない。曲面の局所的性質のなかでもっとも重要な結果は、「ガウス曲率が第一基本形式だけで決まる」というガウスの基本定理である。これにより互いに等長な二つの曲面は、対応する点において同じガウス曲率をもつことがわかる。しかし、この逆は成り立たない。たとえば、図Eのように長さの異なる円柱に半球の蓋(ふた)をつけた曲面を考えれば、両者の間に対応点におけるガウス曲率が一致するような1対1の対応がつけられるにもかかわらず、両者は等長ではありえない。平面と局所的に等長な曲面をとくに可展面という。曲面が可展面であるためには、そのガウス曲率が至る所ゼロであることが必要十分条件である。可展面は一径数平面族の包絡面(ほうらくめん)であり、平面、柱面、錐(すい)面、接線曲面のどれかである。
 曲面の大域的な性質のなかで有名なものとして、「互いに等長な二つの凸閉曲面は合同である」というコーン・フォッセンStefan Cohn-Vossen(1902―36)の定理がある。このことからとくに球面は歪曲(わいきょく)不可能であることがわかる。しかし、球面から小円板を取り除いた残りは歪曲可能である。曲面に関する大域的な結果のなかでもっともすばらしい定理は、ガウス‐ボンネの定理である。すなわち、表裏が決められる閉曲面Sのガウス曲率Kとオイラー標数χ(S)の間には

なる関係が成り立つ。オイラー標数χ(S)は、曲面Sの三角形分割に対して
  χ(S)=(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
で定義される。ガウス‐ボンネの定理は、曲面の微分幾何学的な量(曲率)と位相幾何学的な量(オイラー標数)との間の関係を与える非常に美しい定理である。
 曲面の第一基本形式に関する性質はB・リーマンによって一般化されて、リーマン幾何学として今日に至っている。また、第二基本形式に関する性質の研究は部分多様体の幾何学に成長した。今日、微分幾何学は位相幾何学、リー群論、代数幾何学、多変数関数論、偏微分方程式論など、他の分野との関連のもとに著しい発展をしている。[荻上紘一]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

びぶん‐きかがく【微分幾何学】
〘名〙 もと、微分積分学の方法を応用して曲線や曲面の性質を研究する幾何学の一分科。ガウスによって初めて体系化された。現在では、対象も方法ももっと多様なものとなっている。

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

びぶん‐きかがく【微分幾何学】
微積分法を利用して、曲面・曲線の性質を研究する幾何学

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

微分幾何学」の用語解説はコトバンクが提供しています。

微分幾何学の関連情報

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.