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幼児期【ようじき】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

幼児期
ようじき
乳児期に続く生後1年から学齢に達する6歳までの期間をいう。直立二足歩行と言葉の開始で真に人の段階に達して乳児期が終るが,幼児期は人としての基礎的な発達をとげる時期といえる。乳児期に次いで発達の目ざましい時期で,大脳神経系は 80%が完成される。運動面では全身の基本的な動きを2歳までに達成し,速度や柔軟性が加わり,細かい局部的な動きが発達する。精神面では認知,記憶が著しく発達し,内面化も可能になり,表象作用が始る。種々の経験を通して外界の認知が深まり,学習によって新しい行動が形成されていく。基本的習慣も3~4歳で一通り完成され身辺自立が行われる。直観的思考作用が可能になるが,抽象的,論理的な思考は次の段階になる。この時期は自己中心性が強く,他の立場に立ってみることができない。言葉は急速に進み,語彙量が著しくふえ,6歳頃はほとんど完全な言葉使いができるようになる。運動が自由になり,外界の認知が進むと独立性が強まり自我が芽生える。おとなの干渉を嫌ってなんでも自分でしたがり,反抗期 (2歳半から4歳) に入る。情緒面も2歳までに基礎的な情緒が出そろい,さらに細かい表出や抑制が可能になり,複雑な反応を示すようになる。2歳半頃から友だちを強く求めるようになり,活発な遊びが展開される。幼稚園や保育所に入ることで社会性が養われ,生活習慣も進み,やがて学校教育を受ける準備が整えられる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

ようじ‐き〔エウジ‐〕【幼児期】
乳児期以後、満6歳の学齢に達するまでの時期。自己中心的な思考、直観的な思考、自我意識の芽生えなどが特徴。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

幼児期
 満1歳から小学校就学の始期に達するまでの時期.英語のchildhood,adolescenceは出生から成熟するまでの期間をいう.infancyは生後ほぼ歩けるようになるまでの時期.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

ようじき【幼児期】
人間の発達過程の時期区分において,乳児期と児童期の間にあたる,生後1歳半ばから就学(6歳ないし7歳)までをいう。二足歩行と言語の習得,道具の社会的用途による使用,離乳の完了などは,乳児期の終りを意味し,幼児期の生活と活動の基盤となる。幼児期は乳児期にひきつづき発達的変化の顕著な時期であるので,一般に3歳を節目として前半と後半に分けることが多い。ただし身体の発達については,体重の増加率のほうが著しい第1充実期(5歳まで)と,身長の増加率が著しい第1伸長期(5歳以後)とに分けられる。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

ようじき【幼児期】
乳児期(生後一年ないし一年半の期間)以後、小学校入学までの期間。自己中心性・具体性・情緒性が特徴。前期では話し言葉の獲得・生活習慣の確立などがなされ、後期になると個性が明確になってくる。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

幼児期
ようじき
一般的には、1歳から就学するまでの時期をいう。1歳前後に離乳が完成し、歩行が始まり、話しことばが多くなり、人間としての資格が整うと、その後、人間としてのすばらしい能力を発揮していく。とくに、人格の基盤をつくる時期であり、それだけに家庭における両親の影響は大きい。その意味で「三つ子の魂、百まで」という諺(ことわざ)のもつ重みをかみしめる必要がある。人格形成にあたっては、情緒の安定を図り、その発達を援助し、自主性の発達とともに意欲の盛んなる子供になるように、育児に精を出す必要がある。[平井信義]

生活習慣

生活習慣は、年齢の上昇とともに自立していく。自立を願うならば、子供が自発的に行動しようとしているときには、子供に「まかせる」ことがたいせつである。まかせてみると、子供は、失敗をしたり、能率の悪い状態を呈したり、試行錯誤を重ねるが、それをじっとみているのがまかせる態度である。ついみていられなくなって、口を出せば干渉や命令になるし、手を貸せば過保護になり、自発性の発達は阻害される。
 生活習慣のなかで、食事は、4歳から5歳の間に、ほとんど大人の援助を必要としないで食べることができるようになる。ただし、その間に、手づかみにして食べたり、茶碗(ちゃわん)をひっくり返したり、途中で遊んでしまったりするなどの経過をたどる。発達は、右に揺れ左に揺れながら実施されるからである。それに対しては寛容な親であることが要請される。
 排尿便は、1歳半から2歳の間に「ウンコ」とか「オシッコ」といって予告するようになるが、失敗が少なくなるのは2歳半前後である。排尿便のしつけを急ぐと、それに抵抗して、かえって失敗が多くなったり、昼間遺尿(ちびるおもらし)や、夜尿、頻尿がおこることさえもある。わが国には一般的に排尿便のしつけを急ぐ傾向があるが、この面でも子供の自発性に基づく経過を尊重し、失敗があってもしからないようにしたい。夜尿は、3歳前後で約7割の子供が消えていくが、学齢になるまで続く子供もいる。夜尿による被害はあっても、子供を責めないのがよい。
 睡眠は、昼間の活動の盛んな子供には問題が少ない。ただし、寝床にいろいろな物を持ち込んだり、母親にそばにいてもらって話を聞いたり、子守唄を聞いたりするのを好む。母に付き添ってもらうことによって情緒が安定し、安眠する。とくに1歳半から2歳半にかけては、夜中に母親のふとんの中にもぐりこんできて添い寝を求めることがある。おそらく怖い夢をみたのであろうが、そのときには、ためらわず添い寝をするのがよい。それは、母子間の情緒的な関係を緊密にするためのよい方法でもある。わが国のように地震や火事の多い国では、小学校就学までは、親といっしょの部屋で寝かせるほうが安全である。
 衣類を着たり脱いだりすることも、2歳前後から子供にまかせる部分を増やしていくと、4歳から5歳の間に、ほとんど自立する。親はできるだけ手を貸さないようにすることが、自立を助ける方法である。下着のまま遊んでしまったり、裸のままでほかのことを始めたりするが、「早く」とせかさない努力も必要である。入浴も、幼児期になるとひとりでできる部分が多くなる。ただし、子供は湯の中で遊べるので入浴を楽しんでいることを忘れてはならない。清潔と保温のみを考えずに、楽しく遊ぶことができるように配慮したい。そのほか、衛生上の習慣としては、洗面、歯磨き、手洗い、うがいなどがある。それらは、初めは下手であっても、子供にまかせることを多くしたい。その際に、親が手本を示し、また遊びを導入して楽しい部分をつくることが望ましい。
 生活習慣のしつけというと、とかく命令的圧力を用いることが多く、それを怠けたり途中で遊んだりすると、しかることが多い。子供の遊びは生活であり学習であるといわれているように、生活習慣をしつける際にも、遊びを許容したり、導入することが必要である。しつけを急がないようにすることが、真の自立に結び付く。命令的圧力によるしつけは、命令する人がいないときには、まったく役だたなくなるからである。[平井信義]

素材・教材

幼児に与える教材としては、玩具(がんぐ)や遊具、絵本、クレヨンや画用紙などの文房具、その他さまざまな市販のものがある。しかし、子供にとって非常にたいせつな素材は自然であることを忘れてはならない。自然にはなにひとつとして同じものがなく、画一的な教育ができないようになっている。自然物の利用は、同時に土に親しむ機会を与えることになる。これは、自然を知る第一歩といってもよい。その意味で泥んこ遊びが奨励されている。
 それに加えて、廃物やがらくたは、子供にとって、自由に使いこなすことのできるよい素材である。第一に、ただ(無料)であることが、親の気持ちを楽にする。広告紙、ダンボール箱、板ぎれ、発泡スチロールなどなど、捨てようと思う物があったら、大きな箱の中に入れておくとよい。はさみとセロファンテープやガムテープなどがあれば、子供は剣や槍(やり)をつくったり、家、飛行機、船、城など、自分のイメージに浮かんだものを次々とつくりだす。それを眺めていると、子供という存在がいかに創造的であるかがわかり、親たちも楽しむことができる。それを壊してしまってももともとであるし、次々と補充もできる。しかし、子供が製作したものはたいせつに保存したり飾っておくとよい。
 絵本は、その絵柄からいろいろとイメージを膨らますのによい教材である。ところが、字を教え込まれた子供は、絵柄をみない。つまり、情緒の発達が閉塞(へいそく)しているといってもよい。また、親が童話を読み聞かせることは重要である。その声はいつまでも耳に残っているものである。しかも、子供が好むならば、同じものを何回も繰り返して読み、そのときの母親の気分で、読み方が違ったりするのがおもしろい。その点で、テープに吹き込まれた市販のものなどはいつも同じ調子であり、イメージを膨らませるのには役だたない。また、砂場は戸外遊びとしてもよい教材である。さまざまな造形活動をすることができるからである。
 子供の人格形成を考えるならば、子供が自発的に遊ぶことができ、しかもイメージを膨らませることのできる素材や教材を考える必要があるが、いつも、自然を十分に与えるように、戸外に連れ出すことが必要である。子供は無限の可能性を秘めた存在であるし、もともと創造性の豊かな存在であるだけに、可能性を引き出し、創造性を抑圧しない素材や教材を与えるように努力すべきである。[平井信義]

感覚運動的知能

幼児期の知的発達の著しい特徴は、イメージが芽生え、膨らみ、活発に働くようになることである。確かに、幼児期に入ったばかりの1歳児は、まだイメージをもたず、もっぱら感覚運動的活動に基づいて、知的機能を果たしている。しかしその感覚運動的知能は、乳児期のそれと比べると、はるかに分化し、多様で柔軟な仕方で働く。たとえば、同じ動作を繰り返す循環反応も、単なる機械的反復ではなく、意図的な調節を施して、運動と、それによって引き起こされる感覚の変化とを、注意深く調べている。こういう模索活動はしだいに内面化されていき、困難な状況のなかでも、実際に行動せずに、心のなかで試行錯誤する解決行為へと進展する。このようにして満2歳ごろにイメージが出現し始め、表象的思考の時期へ入っていくのである。[滝沢武久]

表象的思考

イメージの出現は、シンボル操作の能力の発達に結び付いている。事実この時期から、実物のかわりにそのシンボルである代理物を使って思考を進めることができるようになる。幼児の遊びも、単なる活動遊びよりも、ごっこ遊びのようなシンボル遊びが増えてくるし、描画もなぐり描きではなく、実物に似せて描こうとする努力が表れてくる。
 しかしイメージによる思考は、概念的思考と違って、論理の枠に縛られずに展開する。そのため、幼児の思考のなかでは、奔放な想像力が駆け巡る。その結果、ときには内界と外界との区別がつかなくなってしまうことさえある。ここに幼児特有の自己中心性が出てくる。
 たとえば、すべてのものを幼児自身になぞらえてみるため、無生物すら生きていると考えたり(アニミズム)、夢や想像のような純粋に自分の内部的思考の産物も、客観的実在とみなしたり(実念論)、自然物と人工物を区別できず、あらゆるものが人間の手でつくられたと思い込んだり(人工論)する。自己中心性は、言語活動においても、ひとりごとのような自己中心語として表現される。[滝沢武久]

前概念的思考と直観的思考

表象的思考期は、4歳ごろまでの前概念的思考の時期と、6、7歳ごろまでの直観的思考の時期とに分けられる。前概念とは、一般的性格をもった概念を獲得する以前の、きわめて個別的性格の濃い概念である。だからその意味は不安定で、類をさすこともあれば、個をさすこともある。幼児はそういう前概念で思考するので、特殊な前提から特殊な結論を引き出す幼児特有の転導的推論が表れる。自分が三輪車に乗れるから、母親も三輪車に乗れると考えたりするのがそれであり、大人の目からみれば、論理に合致しない思考である。
 やがてこの前概念は概念へと発展していくが、4歳を超えてもなお表象は不安定で、論理よりも知覚が優越する。その結果、ものの外観に支配される直観的思考が、この時期を支配する。幼児の数量認識が保存性を欠くのも、事物の大きさを見かけだけで判断するからである。直観を超えて、外観の背後の関係をつかむようになるためには、論理構造に立脚して働く操作的思考を必要とする。幼児期は、この操作的思考へ一歩一歩迫っていく過程なのである。[滝沢武久]

自我意識の芽生え

幼児期は、自我意識が芽生え、発達していく時期でもある。とりわけ3歳ごろ、大人の世話が束縛に感じられ、独立しようと努め始める。ことに反抗が目だつので、反抗期(第一反抗期)ともよばれているが、このころは同時に、自分を一人称でよんだり、「ぼくのもの」と所有権を主張したりするようになる時期でもある。普通、反抗は4歳になるとあまり生じなくなり、逆に自分を他人にできるだけ美しくみせようとする行動が目だつ。それは、他人から褒められることによって自我を確認しようとする欲求の表れであって、この時期を優美期とよぶ。
 さらに5歳に入ると、積極的に大人の行動を模倣することによって、自我を膨らませようとする模倣期へと進んでいく。自我意識の成長のこの一連の段階は、子供の人格形成にとって重要な時期でもある。とりわけ、自我の発達に伴う自制能力の発達は、集団の共同活動を円滑に営むことを可能にする。[滝沢武久]

社会性の発達

子供同士の遊びは、最初、ひとり遊びが主である。たまたまほかの子供といっしょに遊ぶことがあったとしても、めいめいがやりたいように行動するので、すぐにけんかが始まる。しかし幼児は、けんかを通して他人の存在と自分の限界に気づき、やがて他人の立場にたって考えるようになっていく。このことは、自己中心性の解消を促進する。また、いま自分がやりたいことを抑さえておくことができるようになるにつれ、集団の規則の存在に気づいていく。こうして子供の遊びには、規則を尊重しながら共通の目標を追求する協同遊び(規則の遊び)が多くなる。したがって社会性の発達は、幼児期における知的・人格的発達と不可分の関係にあるといえるのである。[滝沢武久]
『藤永保・高野清純編『幼児心理学講座』全6巻(1975・日本文化科学社) ▽エリクソン著、草野栄三良訳『幼年期と社会』(1974・日本教文社) ▽平井信義著『育児としつけの百科』(1979・小学館) ▽黒田実郎著『乳幼児教育論』(1979・創元社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

ようじ‐き エウジ‥【幼児期】
〘名〙 新生児の段階を経て、児童期に至るまでの間の時期。満一歳から満六歳までで、就学前期ともいわれる。身体言語機能の発達は著しいが、自己中心性、未分化性、情緒中心性などが特徴的。〔育児読本(1931)〕

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最新 心理学事典

ようじき
幼児期
early childhood(英),enfance(仏),fru¨he Kindheit(独)
幼児期は,話しことばと歩行が獲得される1歳半ころから就学する6歳ころまでの時期を指す。この時期は,食事,排泄,衣服の着脱,睡眠などの基本的生活習慣を身につけ,乳児期に比べて運動やコミュニケーションの能力が大きく発達して,周りの物や人とより能動的にかかわっていくことが可能になっていく。そのようにして,日常の生活や遊びを通して,さまざまな経験を積み重ねることで,学齢期以後の学習や人格発達の基盤が形成されていく。ピアジェPiaget,J.は,幼児期に相当する時期を前操作期pre-operational periodとよんでおり,さらにこの発達段階を前概念的思考段階と直観的思考段階に区別している。この区分と対応して,一般に3~4歳ころを境に幼児期前期と幼児期後期に分けられることが多く,保育や幼児教育の制度における年齢区分もそれに対応している。

【運動能力の発達】 個人差はあるものの,定型発達において子どもは1歳3ヵ月ころまでには歩き始め,1歳半を過ぎるころより安定した直立二足歩行が可能になり,「新聞を持ってきて」などの指示によって,目標に向かって移動し元の場所に帰ってくることができるようになる。同じく1歳半を過ぎるころより,直接的に物に手指で触っていたのが,スプーンや鉛筆などの道具を介した操作が可能になっていく。3歳ころからは,平衡感覚が養われてきて,走る,跳ぶ,投げる,蹴るなどの運動の基本動作が獲得されるようになり,子どもは自らのイメージどおり身体を動かすことに手応えを感じるようになる。さらに4歳から5歳にかけて,片足をあげながらケンケンで前進する,片手で紙を持ちながらもう一方の手でハサミを操作するなど,二つの動作を同時にできるようになる。

【認知と言語の発達】 1歳半ころより,子どもは目の前にない事物を心的に思い浮かべる表象能力を獲得し,「今,ここ」にない世界,すなわち過去や未来の出来事や直接見たことのない世界を想像できるようになり,さまざまな精神活動の基盤を形成するようになる。表象能力を準備するものとしてピアジェが注目したのが,モデルとなる行為を目撃してから時間を経てなされる延滞模倣delayed imitationである。この模倣は,観察した他者の行為や光景を一定時間,保持している必要があるために表象能力が不可欠であり,そのためモデルを直前に見て行なう模倣が生後10ヵ月ころに出現するのに対して,延滞模倣の出現は遅れるのである。もう一つ,表象能力の現われとしてピアジェが取り上げたのが,象徴遊びsymbolic playであり,これはたとえば積み木を自動車に見立てて遊ぶ活動である。なお,行為に着目してみると,現実とは異なる世界や心的態度を表わすふりpretenseは,生後10ヵ月ころより枕に頭を当てて寝るふりをするといった行為として見られ,1歳後半以降,しだいに展開されるふり遊びは複雑になっていく。また,他者の目を意識して泣き方を大げさにするといったふりも,1歳から2歳にかけて観察されるようになる。

 生後9~10ヵ月ころより,事物や事象に対する注意を他者と共有する三項関係が成立し,そこにさらに表象能力が発達することで,ことばを獲得する基盤が整ってくる。初語の出現時期は個人差が大きいが,子どもは1歳前後にことばを話し始める。当初,「ワンワン」といった単語のみが発せられ,そのことばはその場の状況において文として機能していることから,一語文とよばれる。また,「ワンワン」は子どもにとって犬だけではなく,広く4本脚の動物を指している場合があることからわかるように,初期のことばの意味はおとなのものとは異なる。2歳から3歳にかけて語彙は爆発的に増加し,4歳ころには円滑に意思伝達できるだけの文法能力と語彙を獲得するようになる。合わせて,4歳から5歳ころ,ことばは内言として機能し始め,思考や行動制御の手段として使われるようになる。幼児は,事物や事象の表象を形成し,言語的概念を獲得して,認知世界を広げていくが,幼児の認知能力には制約がある。たとえば,雪が降るのを楽しみにしている幼児が「ジャンパーを着れば,雪が降る」といった判断をする場合など,個別的な事例から別の個別的事例を導く必然性を欠く転導推理transductive reasoningが認められる。

 ピアジェによって指摘された幼児の心理的特徴であるアニミズムanimismは,無生物に生命を認めたり,意志や心を付与するものであり,幼児の知的な未成熟に由来するとされてきた。しかし近年,アニミズムに関して,人間以外の生物に関する知識の乏しい幼児が,比較的多くもっている人間に関する知識を積極的に活用して類推しているプロセスとしてとらえ直されている(稲垣佳世子・波多野誼余夫,2005)。

【自己と社会性の発達】 1歳半以降,幼児は鏡に映った自己像を自分だと理解し,自分と他者の名前がわかるようになり,視覚レベルでの自己認知が可能になる。自他の区別ができ,自分に気づき始めることで,他者から注目されると照れたり,恥,誇り,罪悪感を感じたりと,自己意識にかかわる情動が生起するようになる。さらに,独自の意図をもつ行為主体としての自己に気づくことで,おとなからの指示に強い抵抗や拒否を示す,第1反抗期とよばれる時期を迎える。

 4歳以降,認知能力の発達に加えて,保育所や幼稚園といった社会集団に参加することで,自他理解は深まり,幼児の社会性はさらに次の3点において発達していく。一つには,他者の思っていることを推測できるようになり,「心の理論」に関する能力が獲得されていく。そのことで,幼児の社会的相互交渉はより複雑なものになる。二つには,心的状態を自覚する能力の発達とともに,経験の時間的なつながりが意識されるようになり,自己を時間的な広がりをもつ存在としてとらえることができ,自伝的記憶が成立し始める。三つ目に,おとなによる指示に従って他律的に行動制御をしていたのが,おとなの指示を内面化して自己制御機能を徐々に発揮するようになる。その際,自分の思いや感情を表現し主張する側面と,他者との関係で抑制する側面とがバランス良く発達することが期待される。

 幼児期後半において,子どもは同輩を求め,ひとり遊びや平行遊びの状態から,集団での遊びがより多くなり,お店屋さんごっこのように参加者がそれぞれ役割を担うごっこ遊びや,カードゲームや鬼ごっこなどのルール遊びを行なうようになる。そして,幼児は他者との葛藤場面に出会い,その解決プロセスを通して,他者の利益となりその人を援助するための向社会的行動を獲得していく。このような社会性の発達にとって,保育所や幼稚園における保育実践は重要な役割りを担っており,保育の質や保育条件が問われることになる。 →遊び →児童期 →乳児期 →認知発達 →発達段階
〔木下 孝司〕

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