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地方交通問題【ちほうこうつうもんだい】

日本大百科全書(ニッポニカ)

地方交通問題
ちほうこうつうもんだい
過疎地域や離島における交通に関する諸問題。
 地方の鉄道交通の中心となっていた国鉄は、地方の過疎化と、モータリゼーションの進行によって経営が圧迫された。そのため、国鉄の膨大な赤字をなくし、再建を図るために、政府は1979年(昭和54)12月「国鉄再建について」を閣議了解し、80年12月、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(昭和55年法律111号)を制定した。そのなかで赤字ローカル線について、旅客輸送密度(1977年度から79年度までの旅客営業キロ1キロメートル当り1日平均旅客輸送人員)が4000人以下のローカル線(特定地方交通線)を路線廃止してバスに転換することとし、第一次から第三次まで、順次廃止路線を発表し、1990年(平成2)に第三セクターの経営によって存続する線以外はバスへの転換を完了した。この間、1986年11月に国鉄の分割・民営化の関連法が成立し、87年4月から国鉄はJR6旅客会社と1貨物会社に分割・民営化された。しかしJR会社、とくにJR北海道、JR四国、JR九州および第三セクターの経営状況は厳しく、地方交通における鉄道の比重は減少をたどっている。
 また、過疎地域の民営乗合バスも、乗客数の激減による赤字を理由にして路線廃止が増え、それにかわって市町村が申請し認可された公共の代替バスが走っている。しかし、ここでも赤字が累積し、最近では政府はそれを補うものとして、自家用車の公共利用制度を提唱するに至っている。運輸省(現国土交通省)は1969年、これら過疎地域の民営バス、代替バスに対して補助制度を設けたが、補助金額が少なく、過疎バスの赤字は克服されるに至っていない。
 同じように、全国に点在する約430の離島で生活する約200万人の島民にとって、命綱ともいうべき離島航路も、巨額の赤字を抱えて崩壊に直面している。法人指定事業者は、指定航路であるために、国や自治体から欠損金にほぼ見合う補助金を交付されている。しかし、国の補助対象事業者に指定されない未指定事業者(だいたい1社平均200万円の資本金で、木船と鋼船を1船ずつ所有し、老朽船を走らせている程度の)は、補助航路に指定されないので、自治体から学童輸送の割引運賃に対する補助金がいくらか入る以外は、全額自己持ち出しの欠損となっていて、とくに悲惨である。離島航空も同様で、日本トランスオーシャン航空、日本航空、全日本空輸などが、それぞれ定期・不定期で運航しているが、八丈島、奄美(あまみ)大島、対馬(つしま)などごく少数を除いては、1日2便以下で航空運賃も高く、しかも経営は赤字である。
 このように過疎地域や離島の陸海空の交通が危機に直面している共通の原因は、(1)国の高度成長政策によるこれらの地域における人口の激減、(2)自家用車の普及や海上タクシー(小型貸切船)の横行など、無秩序な交通市場競争、(3)石油危機以後の燃料費の上昇、(4)幹線部門の黒字でこれらローカル部門の赤字を埋め合わせることができなくなったこと(内部補助体制の崩壊)、(5)国家の補助が少ないこと、などであって、いまやその緊急な解決が切実に望まれている。[平井都士夫]
『天野和治著『交通戦争の現場』(1981・勁草書房) ▽全運輸省労働組合編『生活交通の現状』(1982・勁草書房) ▽『ジュリスト増刊総合特集31 国鉄――公企業と公共交通』(1983・有斐閣)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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