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国立図書館【こくりつとしょかん】

日本大百科全書(ニッポニカ)

国立図書館
こくりつとしょかん
national libraries
国立の図書館を意味するが、国の中心的役割を受け持つ図書館をさす場合が多い。1950年代から60年代にかけて、国際図書館連盟International Federation of Library Associations and Institutions(IFLA(イフラ))を中心に、国立図書館の機能が論じられ始めた。それはアジア・アフリカ諸国に国の中央図書館が設立されたことと、出版物の書誌面、利用面で国際間の協力が必要になってきたことを示している。[藤野幸雄]

機能

国立図書館の機能は、(1)その国の出版物を網羅的に収集、保存する。そのため各国は、出版物の納本義務を法律で定めている。納本の仕方、部数は国によって異なる、(2)国内出版物のよりどころとなる目録記述を「全国書誌」の形で出版する、(3)「国内図書館の図書館」の役割を果たす、などである。
 (1)の場合、自国について外国語で書かれたものを含める国もあり、(3)については国民の直接利用、貸出しを含める国もある。さらに、外国語文献の大型コレクションをもつこと、国内図書館の所蔵総合目録をつくることもあげられているが、これらはかならずしも一致した見解とはなっていない。
 IFLAでは、こうした機能に基づいて、以下のような取組みをしている。
〔1〕世界的な書誌記述の標準化universal bibliographic controlを図る。これによって、どの国の出版物情報も統一した姿で使えるようにする。1960年代以後、各国の国立図書館は自国の機械可読目録(MARC(マーク))の開発に取り組み、出版物の書誌情報がコンピュータに記録されるようになった。この結果、コンピュータがネットワークに接続されていれば、どの国の出版情報も検索が可能となった。こうした状況を踏まえて記述の標準化が進められている。
〔2〕出版物の相互貸借universal availability of publicationsに取り組んでいる。大英図書館貸出局やアメリカ議会図書館では自国内の図書館はもとより他国からの資料複写要求にも積極的に応じている。1998年1年間でアメリカ議会図書館が世界中の国から受け付けた図書貸借申し込みや文献複写依頼は5万点を超えている。ただし、各国の政治・経済事情が絡み、また図書館の規模の差もあるため、現在のところ相互貸借とはいっても、一部の大図書館からその他の多くの図書館への貸出しという一方向の提供の段階である。
 次に代表的な世界の国立図書館をあげてみる(日本の国立図書館は、「国立国会図書館」の項参照)。[藤野幸雄]

イギリス

1973年に発足した大英図書館The British Libraryは、歴史の古い大英博物館の図書館部門、国立科学技術貸出図書館、『英国全国書誌』を刊行していた同名称の法人組織、ならびに公共図書館の全国ネットワークの中心にあった国立中央図書館などが合併してできた。現代の国立図書館の機能を、(1)保存と研究、(2)図書館への貸出し、(3)全国書誌の作成・刊行、の三つと考え、大英図書館はそれぞれを受け持つ3部局からなっている。その一つロンドンにある参考局は、大英博物館の蔵書をそっくり受け継いでいる。独立の新館はカムデン地区(セント・パンクラス駅の隣)に完成した。蔵書は約1600万冊、職員数は2393名(2000年9月現在)。また貸出局はヨークシャーのボストン・スパにあり、貸出しはすべて郵送により、国内は1日半、アメリカ、ヨーロッパには2日半でサービスできるようになっている。蔵書は図書約300万冊、雑誌25万タイトルで、利用は年間約390万件(複写を含む、うち国外は約100万件)、要求資料の充足率は90%を誇る(以上1994年3月統計)。また、インターネット上で図書館サービスに関する情報提供をするとともに、所蔵資料の目録を公開し、外部からの検索を可能にしている。[藤野幸雄]

アメリカ

1800年発足のアメリカ議会図書館U. S. Library of Congressは、学術図書館ネットワークの中心でもある。アメリカ、カナダの約2000図書館の総合目録を編纂(へんさん)し、世界に先駆けてMARCシステムを開発した。外国各地に事務所を開設し、その国の国立図書館の協力を得て目録カードを作成、国内の学術図書館に奉仕している。蔵書は、図書が約1800万冊、地図435万枚。日本語図書は約87万冊、旧ソ連圏諸国以外での最大のロシア語コレクションをもつ。所蔵資料のうち、歴史的・文化的価値の高いものはデジタル化を進めており(この事業を「アメリカンメモリー」という)、すでにデジタル化されたものについてはインターネット上で見ることができるようになっている。職員数は4572人。不要出版物斡旋(あっせん)のアメリカ図書交換局もここに置かれている。
 アメリカには議会図書館のほかに、国立医学図書館National Library of Medicine(1836年設立。医学文献情報検索サービスを行う。蔵書は医学史関係60万冊を含み計約578万冊)、国立農学図書館National Agricultural Library(1862年設立。蔵書約330万冊)があり、それぞれの領域の専門中央図書館となっている(数字はいずれも1999年末現在)。[藤野幸雄]

ドイツ

1990年10月の東西ドイツ統一の結果、フランクフルト・アム・マインの旧ドイツ図書館Deutsche Bibliothekおよびライプツィヒの旧ドイッチェ・ビュッヘライDeutsche Bchereiが統合して実現したドイツ国立図書館Deutsche Bibliothekのほかに、ベルリン国立図書館Staatsbibliothek zu Berlin(旧国立プロイセン文化財団図書館)およびバイエルン州立図書館Bayerische Staatsbibliothekがその役割を担っている。
 ドイツ国立図書館はドイツ語図書の納本図書館で、蔵書はフランクフルト・アム・マインに630万冊、ライプツィヒに890万冊あり、全国書誌の機械化の実績がある。ベルリン国立図書館は外国研究の中央図書館で、蔵書は890万冊、外国雑誌3800タイトル。また、バイエルン州立図書館は戦災を免れたみごとな古書コレクションをもち、蔵書は734万冊(数字はいずれも1998年末現在)。[藤野幸雄]

フランス

歴史的に中央集権の体制をとってきたフランスでは、パリの国立図書館Bibliothque nationale(BN)が、すべての図書館活動の中心である。起源は15世紀にさかのぼることができ、納本制度を実施し、「全国書誌」を始めたのも世界でもっとも古い。アルスナル図書館Bibliothque de l'Arsenal、パリ音楽院図書館Bibliothque du Conservatoire nationalとオペラ座図書館Bibliothque de l'Opraは組織としては国立図書館に属す。本館の蔵書は約1100万冊、逐次刊行物35万点、写本22万冊など(1998年末現在)。[藤野幸雄]

ロシア

国立中央図書館にあたるのはモスクワのロシア国立図書館Российская Государственная Библиотека/Rossiyskaya Gosudarstvennaya Biblioteka(旧レーニン図書館)であるが、「全国書誌」の仕事はロシア図書院が行っている。ロシア科学アカデミー図書館は全国的に独自なネットワークをつくっている。また旧ソ連邦を構成していて、1991年に独立した各民族共和国にはそれぞれ中央図書館がある。国立図書館は全国の大衆図書館の指導本部で、図書館学の研究機関でもある。複数部の納本を受け取り、その一部は国際交換にあて、外国資料を収集する。蔵書は約4100万点(パンフレット・複本・一枚刷も含む)、職員数は約3000名。図書館は全国民に開かれるとのたてまえから、18歳以上であれば、だれでも利用できる。座席数2500(1998年末現在)。またサンクト・ペテルブルグには、歴史が古く蔵書数3255万点(2000年7月現在)のロシア国立図書館(旧シチェドリン図書館)がある。[藤野幸雄]

中国

蔵書数約2000万冊といわれる北京(ぺキン)図書館が国家図書館にあたる。ここには58万冊に及ぶ古書がある。出版物の納本を受け、『全国新書目』を編纂している。北京図書館はセミナーの開催等を通じて、全国の図書館員の養成にもあたっている(1999年現在)。[藤野幸雄]

その他

歴史と現在の事情により各国は自分の国にあった国立図書館をつくっている。フィンランドでは、ヘルシンキ大学図書館が国立図書館の役目を果たしている。また各国の国立図書館では、国内の図書館ネットワークをいかに組み立てるか、隣接地域または国際的な協力をいかに実現するかが課題である。そのためにチェコでは、首都プラハにあるカレル大学、経済中央研究所図書館等を合体させ、1959年国立図書館を設立。またスカンジナビア四国の図書館の中央事務局であり、地域図書館協力の実をあげているストックホルム(スウェーデン)の王立図書館の例もある。言語を同じくするラテンアメリカ諸国では、書誌刊行、図書館員養成の相互協力も図っている。[藤野幸雄]

国立図書館のコンピュータ化

1990年代に入ると、インターネット上にホームページを設け、どの国からでも情報や目録検索などを可能にしている国立図書館が増えてきた。資料そのものを画面上で見ることができる電子図書館計画も現実のものとなってきているが、この面では著作権やプライバシー保護などクリアしなければならない問題も残されている。情報化の進むなか、出版物のデジタル化やオンラインでの情報検索システムの拡大において、各国の国立図書館の果たす役割は、いっそう増大していくことになろう。[藤野幸雄]
『鈴木平八郎著『国立図書館』(1984・丸善) ▽藤野幸雄著『現代の図書館――図書館概説』(1998・勉誠社) ▽藤野幸雄著『アメリカ議会図書館――世界最大の情報センター』(中公新書) ▽The World of Learning 2000, 50th ed.(1999, Europa Publications) ▽番匠裕子「米国議会図書館におけるナショナル・デジタル・ライブラリー・プログラムと地図資料」(『国立国会図書館月報』470号所収・2000・国立国会図書館)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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図書館情報学用語辞典

国立図書館
(1)一般に国家が設置し,経営する図書館.通常国立であっても官庁図書館や国立大学などの図書館は指さず,国の中央図書館を指す.「図書館の図書館」としての機能を発揮しているが,国民に開かれた公共図書館的な役割を担うところ(発展途上国など)もある.国立図書館の機能は,ユネスコの定義によれば,自国の資料の網羅的収集と保存,自国資料の書誌情報の提供,全国ネットワークの中心の役割があげられているが,国により活動範囲はさまざまである.(2)日本の国立中央図書館の1947(昭和22)年12月4日から1949(昭和24)年3月31日までの名称帝国図書館では,帝国主義を連想させると忌まれ,国立図書館と改称した.同図書館は,連合国軍総司令部意向国会の立法調査能力を高めるため新設の国立国会図書館に吸収された.

出典:図書館情報学用語辞典 第4版
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