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【ぜん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典


ぜん
agathos; bonum; good; das Gute; bien
意志を満足させるゆえに積極的価値をもつと判断されるものすべて。ソクラテスは善を美や有用性と同一視し,善はキュレネ派では快であり,キュニコス派では苦の欠如である。プラトンでは善は存在の根拠,美や真の原理。アリストテレスは人間における善を幸福とし,すべて現実的なものは善であり,善はまず個物に存在するが,一般にはそのものの類的本質の実現にあるとした。彼はまたそれ自体善であるものと,それとの関係で善であるものとを区別した。スコラ哲学は存在と善を等置し,個物の善はそのものが神の意志したとおりのものであること,すなわちそのものの完全性にあるとされた。 T.ホッブズでは善は努力の目標となるもの,功利主義者にとっては幸福は最大の快,最小の苦であり,J.ベンサムは快楽計算を試み,B.スピノザもまた善の相対性,主観性を強調した。 I.カントはそれ自体善である倫理的善を,手段としての善である有用性とはっきり区別した。プラグマティズムは功利主義的相対論を継承し,G.ムーアらの分析哲学派も善か否かは判断される対象がおかれている場に依存することを強調している。特異な立場では,強烈な生の力の高揚を善とした F.ニーチェの思想がある。仏教では,法にのっとり理に従い自他の利益をなす力を善 kuśalaという。仏教では種々の善を説いているが,大別すると有漏 (うろ) 善 (世間の善のこと) と無漏 (むろ) 善 (涅槃の悟りを得るための善) がある。日本の西田哲学が「純粋経験」としての善を主要テーマにしているのは有名。

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デジタル大辞泉

ぜん【善】
よいこと。道義にかなっていること。また、そのような行為。「を積み、功を重ねる」「一日一」⇔

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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ぜん【善】[漢字項目]
[音]ゼン(呉) [訓]よい よく よくする
学習漢字]6年
行いや性質などが好ましい。よい。よいこと。「善意善行善政善人善良改善勧善偽善最善慈善次善十善追善独善不善性善説
物事にうまく対処する。よく。「善処善戦善後策
仲良くする。「善隣親善
[名のり]ただし・たる・よし
[難読]善知鳥(うとう)

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世界大百科事典 第2版

ぜん【善】
〈善〉を意味する西欧近代語のthe good(英語),das Gute(ドイツ語)は形容詞名詞化であり,le bien(フランス語),il bene(イタリア語)は副詞の名詞化である。そこには古代ギリシア語における,特にプラトンにおけるto agathonという語法,ないしはラテン語のbonumの用法の影響が認められる。〈よい〉という形容詞や〈よく〉という副詞は,肯定的価値一般を表示する日常語として,きわめて多義的に用いられるが,〈善〉という名詞は本来的には哲学の術語である。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

ぜん【善】
よいこと。道理にかなったこと。また、そのようなおこない。 ⇔
哲・倫 一定の使用・行為・道徳・秩序などにおいて、人や物の性質(価値)がよいこと、望ましくすぐれていること。また、それらをよくあらしめる根拠。真・美とならぶ基本的価値の一。倫理学の対象とされ、人間のあらゆる営みが目指すところ、あるいは営みを律する義務の源泉とされる。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)


ぜん
good英語
bonフランス語
das Guteドイツ語
広義には、肯定的評価の対象となる価値をもつものがすべて善である。しかし、狭義には、行為および意志の規定根拠が善である。この二義はときとして混同され、多くのものが「善(よ)い」とよばれる。たとえば、すべて「値うちのあるもの」は「善いもの」である、といわれるが、この意味では「見るによいもの」も、「用いるによいもの」も、なんらかの意味では善である。しかし、それらは「美」であり、「有用なもの」であって、本来の意味では「善」ではない。善は本来の意味では、これらの値うちのあるものにかかわる行為が選択される場合の根拠なのである。したがって、善は本来、行為外的に、事物に付着する性質として、「観照」の対象をなすものではなく、行為内的に、意識の自己還帰を構成契機とする「実践」の場面において、実践を成立させる根拠として自覚されるものである。一つの行為は多くの可能な行為のなかから、「いま、なすべきもの」として選び取られるが、この選択の根拠が善である。したがって、善は自由において自覚されるものであって、自由の根拠である。[加藤信朗]

善と福

古代ギリシア・ローマでは、善を意味するagathon(ギリシア語)、bonum(ラテン語)という語は善の両義を意味しながら、広義の善への傾きをもっていた。この意味での善は、悪kakon(ギリシア語)、malum(ラテン語)に対するとき、禍、不幸に対する福、幸を意味した。しかし、ソクラテスが「不正を蒙(こうむ)るほうが不正をなすよりも善い」と述べ、これを自分の死をもって証明したときに、善の本性は明らかにされた。以後、善は「見えぬもの」であり、不可視な魂が自分自身を善いものとしようとする能動的な配慮において、内的に魂にかかわるものとなる。プラトンとアリストテレスの倫理学はこの問題状況において成立した。同じように、カントも広義の善との関係で成立する「目的倫理学」を退け、善は意志に対して、「汝(なんじ)いつもこれをなすべし」という絶対的な命令(定言命法)という形で迫る普遍的法則として把握されるとした。したがって、真の意味で「善いもの」はただ一つ、善を意志する善意志だけである。意志に対して迫るこの無条件な命令をなんとするかによって、いろいろの倫理学が生じるのである。[加藤信朗]

悪と悪の存在

悪evil(英語)、mal(フランス語)、bel(ドイツ語)は善に対立する。したがって、否定的評価の対象となるものがすべて悪である。それゆえ、「みにくいもの(醜)」も「有害なもの」もなんらかの意味では「悪いもの」である。だが、善についてと同じように、本来の意味で「悪」といえるものは、「善なる行為」を退ける意志だけである。
 そこから、「悪」の存在をめぐって古来二つのパラドックスが生ずる。一つは「だれも自ら進んで悪人たろうとする者はない」というソクラテスのパラドックスである。意志が本来善に向けられているとすれば、善を退けて悪を選ぶ意志はないと考えられるからである。とすれば、世に本来の意味での「悪人」はいないことになる。もう一つは「悪の起源」をめぐるパラドックスである。一般に古代では、悪の起源は形相の完全な実現を許さない質料の粗悪さに求められた。だが、至善なる創造者による世界の創造を信条とするキリスト教にとって、この世界に内在する悪の事実は説明しがたいものであった。創造主に悪の起源を求めることはできない(神は善なるものだから)。他方に、創造主に対立する悪神にも(神は唯一だから)、粗悪な質料にも(神は万物の創造主だから)悪の起源を求めることはできない。ここにキリスト教の弁神論の問題があった。
 アウグスティヌスは、悪がそのもの自体として独立には存在しないこと、悪は存在を前提にしてその否定としてのみ存すること(悪の非存在性)、したがって、善なるものとしてつくられた意志が自己自身の置かれた秩序に離反すること(意志の反逆)としてのみ悪が存すること、この意志の反逆(罪)もそこから帰結する当然の報いとしての罰によって償われ、意志の回心をもたらすよすがとなること、こうして、悪もまた善なる神の経綸(けいりん)(摂理)の内に置かれていることを示して、悪の存在を説明した。[加藤信朗]

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精選版 日本国語大辞典

ぜん【善】
〘名〙
① 正しい道理に従い、道徳にかなうこと。よいこと。また、そのような行為、ふるまい。⇔
※霊異記(810‐824)中「袈沙を著、戒を受け、善を修し、正を以て民を治めたまふ」
鉄眼禅師仮名法語(1691)五「善といふは、よき事おもふ心、悪といふは、あしき心にうかふをいふ」 〔礼記‐曲礼上〕
② このましいこと。すぐれていること。
※滑稽本・風来六部集(1780)飛だ噂の評「右は善の善たる教にはあらね共、いかなる扁柏(ひのき)の上材木でも、初手から銫(かんな)は掛られず」

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よかれ【善】
(形容詞「よし」の命令形) よくあってほしい。うまくいってくれ。
※曾我物語(南北朝頃)七「いかでにくかるべき。ただよかれとおもふ故なりといひもわかで」

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