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名物【めいぶつ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

名物
めいぶつ
由緒をもつ茶道具。名物と呼ばれるものは数百種に及ぶといわれるが,なかでも茶道の祖とされる村田珠光の秘蔵した「珠光名物」,千利休秘蔵の「利休名物」,小堀遠州所蔵の「中興名物」は著名。ほかに「千家名物」「本願寺名物」「藪内名物」「松屋三名物」「雲州名物」なども知られる。また,これらの名物のうち,特に利休以前に選定されたものを「大名物」と呼ぶが,これは足利義政治世の「東山御物」を主とし,唐物が多い。名物の語はのちに茶菓子をもさしていうようになり,さらに各地の名産称呼ともなった。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

めい‐ぶつ【名物】
その土地で名高い産物。名産。
その土地や社会で、特有な物事や評判になっている人。「ロンドン名物の霧」「名物教師」
茶道具類で、美術的、歴史的価値においてすぐれたもの。利休以前のものを大(おお)名物、利休時代のものを名物、小堀遠州の選定したものを中興名物という。
植物・動物・器物などの名と性質。また、それを研究する学問。
「其の―度数、訓詁、異同を研究するを以て事とす」〈童子問・下〉
すぐれているもの。名器。
「元興寺と云ふ琶琵は―なり」〈江談抄・三〉

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世界大百科事典 第2版

めいぶつ【名物】
広く人に知られている文物は,品物であれまた食物の類であっても,名物と称するが,美術用語とくに茶の湯の分野では,千利休の時代に名を得た名品を指している。これに対して,利休以前に知名のものを大名物(おおめいぶつ)といい,利休以後小堀遠州の選定になるものを中興名物と呼んだ。ただ利休時代というのは,利休が盛名を得た1582年(天正10)から終焉までのおよそ10年間が基準となる。大名物,中興名物は,利休時代の名物があって成立するといえる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

めいぶつ【名物】
その土地の有名な産物。名産。
ある地域や社会で風変わりだったり独特だったりして、評判の人や物。 「ご当地の-男」 「 -の裸祭り」
由緒あるすぐれた茶道具。松平不昧ふまいによって東山時代のものを大名物、千利休時代のものを名物、小堀遠州の選定したものを中興名物と分類された。
物の、名と性質。また、それを研究する学問。
名高いもの。名器。 「玄象にもあひおとらぬ希代の-なりけり/平家 7
[句項目] 名物に旨い物なし

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

名物
めいぶつ
選定された由緒のある優れた茶道具をいう。名物とは本来「名」または「銘」のつけられた物という意であり、茶の湯道具の世界に使われるようになったのは、醍醐寺座主満済(だいごじざすまんさい)の目録『満済准后(じゅごう)日記』の「葉茶壺(はちゃつぼ)、九重(ここのえ)卜号名物」(永享(えいきょう)6年〈1434〉2月4日条)などである。名物とは、ある種の器物を受容できる階層の間でよばれるようになった自然発生的な呼称と考えられるが、茶道の成立とともに足利義満(あしかがよしみつ)・義教(よしのり)・義政(よしまさ)や村田珠光(じゅこう)などに愛玩(あいがん)された器物の総称名となっていったものといえよう。『烏鼠(うそ)集』(1572成立)という書に「名物を敬事(うやまうこと)、むかし御物(ぎょぶつ)なりしを、只今(ただいま)拝見し手にふるゝ事忝(かたじけなし)と申事也(なり)、昔御物ならぬ名物は、少(すこし)心持かくるなり」とあって、名物とは昔の御物か御物に比肩される茶器の名として定着した呼称となっていったものと考えられる。かくして『茶器名物集』の別称をもつ『山上宗二(やまのうえのそうじ)記』(1588成立)が登場する。宗二は器種別に義政や珠光をはじめ著名な武人や茶人の所持した茶器を列挙して、それぞれに評価を下していく。こうした器種別編成法は江戸期に入ると『玩貨(がんか)名物記』(1660刊)や『中興名物記』(元禄~元文ころ〈17世紀末~18世紀前半〉の成立)を生む。
 江戸時代を通じて名物という呼称は、何々名物、あるいは名物手何々という呼び方まで含め、実に広範なものとして展開していく。しかし通常は次の3種に分類されることが多い。大(おお)名物、名物、中興名物である。これらの呼称は松平不昧(ふまい)の『古今(ここん)名物類聚(るいじゅ)』(1789~97刊)に始まるとされるが、そのなかで不昧は、宝物、大名物、中興名物、名物並、上之部、中之部、下之部の7段に分けている。大名物というのは、千利休(せんのりきゅう)以前の東山(ひがしやま)時代のものをいう。名物というのは、利休時代のものであり、中興名物というのは、時代が下って小堀遠州(えんしゅう)が選定したものをいう。大名物とは、すなわち東山御物をはじめ、珠光から武野紹鴎(たけのじょうおう)に至る茶匠の手になる茶器のことである。また利休時代に著名になった道具を単に名物というが、それは織田信長や豊臣(とよとみ)秀吉が、津田宗及(そうきゅう)や千利休らに品定めさせたり、名物狩りと称して収集した茶器のことである。そして中興名物は、小堀遠州の選定した茶道具の名品の称であるため、一名「遠州名物」ともいう。瀬戸藤四郎(とうしろう)以下後窯(のちがま)、国焼(くにやき)などの逸品で、名物に漏れた品を選んだものである。いわゆる『遠州蔵帳(くらちょう)』などに記載されている遠州の秘蔵品だけでなく、当時の諸大名が所持していたものを含め、おびただしい数に上る。
 以上の3種の分類のほかにも名物という呼称は多様に使われている。松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)の所持した名物である「八幡(やわた)名物」、藪内(やぶのうち)家において名物茶器として尊重された「燕庵(えんなん)名物」、三千家において名物茶器として尊重されたとする「千家名物」、摂津国石山本願寺に伝来した名物茶道具「本願寺名物」、奈良の塗師(ぬし)松屋に伝来する徐煕(じょき)筆白鷺緑藻図(はくろりょくそうず)(鷺絵(さぎのえ))、松屋肩衝(かたつき)、存星盆(ぞんせいぼん)の3種を称した「松屋三名物」などはよく知られたところである。また、名物の釜(かま)を記した『名物釜記』『名物釜所持名寄(なよせ)』、名物茶入鑑定のための『名物目利聞書(めききききがき)』、堺(さかい)の数寄者(すきもの)の所蔵する名物目録を掲げた『名物記』など、名物の名を冠した書も散見する。そのほかにも、鎌倉時代から江戸時代中期にかけて渡来した織物の称である「名物裂(ぎれ)」、古筆切(ぎれ)のなかでもとくに優れた名筆の称である「名物切」などがある。さらに一般的な呼称として、地方の名産を「何々名物」と称したり、名物教授、名物男などと使われることもある。[筒井紘一]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

めい‐ぶつ【名物】
〘名〙
① すぐれているもの。名高いもの。高名なもの。
※明衡往来(11C中か)中末「指非精兵。重代名物也。頗可一人当千歟」
※江談抄(1111頃)三「元興寺と云琵琶は名物也」
② その土地特有の名高い産物。その地方の名産品。その土地と密接に結びついた名高い風物にもいう。
※満済准后日記‐永享三年(1431)一〇月二五日「宮城野萩、井手蛙等に至まて所々名物」
※波形本狂言・萩大名(室町末‐近世初)「宮きのとは萩の名物でござります」
③ 特定の地域や社会・集団で、独特だったり評判だったりして名高い人や物事。名詞の上につけても用いる。「名物社員」
※赤い国の旅人(1955)〈火野葦平〉四月二八日「北京の春は、風と、沙漠から吹きつけて来る黄塵が名物なのだが」
④ 茶道などで、古くから由緒のある、すぐれた道具をいう。茶道では特に、利休以前のものを大名物(おおめいぶつ)、利休のころのものを名物、利休以後、小堀遠州が選定したものを中興名物と区別することもある。名物物。
※仮名草子・尤双紙(1632)上「たいせつなる物のしなじな〈略〉めいぶつのだうぐ。どうおちの刀」
⑤ 植物や器物などの名前とその実質。また、その名称と実態とが一致するかどうかを研究すること。名前が実際にどうであるかを研究すること。また、その学問。
※童子問(1707)下「大抵学六経者、専以究其名物度数訓詁異同事」 〔周礼‐春官・司几筵〕

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