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公事【くじ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

公事
くじ
(1) 令制における公務朝廷儀式。 (2) 武家社会では訴訟裁判。 (3) 鎌倉時代以後の荘園制下では雑税を意味する。事と称したのは,それまでの田租が私 (荘園領主) 収入であったのが,公 (幕府) 収入と変ったことに伴う。荘園の賦課を大別すると,年貢 (所当) と公事に分けることができる。年貢は田租であり,令制の租にあたるのに対し,公事は調,庸,雑徭の系統をひくものである。公事はさらに夫役 (ぶやく) と雑公事 (ざつくじ) に区分できる。夫役には,勤仕の期間によって長日夫役と日役夫役の区別があるが,一般的には荘官の送迎などに従う京上夫,年貢の運搬,護衛などの兵士役,その他大番役,房仕夫,仕丁などがあった。また佃 (つくだ。荘園領主の直営地) の耕作にあてられた。一方,地頭,荘官以下の名主の収取する夫役もあった。彼らは給田のほか幕府や荘園領主から公事免または雑免 (ぞうめん) の地を獲得して,これを荘民の夫役によって経営する方法も講じた。雑公事には,主として地域的な特産物がこれにあてられ,それは 30種にも及んだ。したがって雑公事の種類に応じて賦課方式も異なり,日別公事,月別公事,反別公事などの区別があった。雑公事は元来現物納を原則としたが,次第に代銭納 (→銭納 ) に変り,公事銭,公用銭,公事役銭などと呼ばれた。荘園制の崩壊期には,田租も公事も大名領主の収入となっていった。

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デジタル大辞泉

おおやけ‐ごと〔おほやけ‐〕【公事】
朝廷の政務・儀式・行事など。公事(くじ)。
「源氏の―知り給ふ筋ならねば」〈・紅葉賀〉
朝廷への奉仕。租税を納め、賦役(ぶやく)に従うことなど。
「武蔵国を預けとらせて、―もなさせじ」〈更級
公式に定まっているやり方。
「祭のほど、限りある―に添ふこと多く」〈・葵〉

出典:小学館
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く‐じ【公事】
公務。
朝廷の政務・儀式。
「今日は―ある日なれば、とく参らるらむ」〈大鏡・伊尹〉
中世、年貢以外の雑税夫役(ぶやく)の総称。
訴訟およびその審理・裁判。
「賢し人、出でて―ども定め申して」〈今昔・二・三三〉

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こう‐じ【公事】
政府・官庁などのおおやけの仕事。公務。⇔私事
公共に関する事柄。⇔私事

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世界大百科事典 第2版

くじ【公事】
〈くうじ〉とも読む。もともとは朝廷の〈公(おおやけ)のこと〉すなわち政務一般をさす語。のち種々の意味をもつようになる。(1)平安時代の儀式化した朝廷の行事 節会(せちえ)や除目(じもく)など四季折々に,あるいは期日を定め,あるいは臨時に,年中行事として行われた。朝廷ではその運用について《延喜式》などの式で定めたが,式の編纂が行われなくなってからは,貴族が私的に著した《西宮記》や《北山抄》等の故実書に記された公事の実際が重視された。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

くうじ【公事】

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大辞林 第三版

おおやけごと【公事】
個人的でないこと。公式のこと。 ⇔ 私事わたくしごと いと馴れて疾く、…と-にぞ聞えなす/源氏 夕顔
政務。政治。 源氏の-知り給ふすぢならねば/源氏 紅葉賀
宮中の儀式・行事。 祭のほど限りある-にそふ事多く/源氏
朝廷への奉仕や租税。 武蔵の国を預けとらせて-もなさせじ/更級
規則・慣例などで決まっている事柄。決まりきったこと。 声づかひ、もてなしさへ例の-なれど/源氏 宿木

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くじ【公事】
くうじとも
表だった公の事。
朝廷で行われる政務・儀式。 -ども繁く、春の急ぎにとり重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや/徒然 19
中世、年貢以外の雑税や賦役の総称。
訴訟。裁判。 某はいままで、-をいたいた事もない/狂言・右近左近
[句項目] 公事三年

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こうじ【公事】
おおやけの仕事や用事。公務。
おおやけに関する事柄。
▽⇔ 私事

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日本大百科全書(ニッポニカ)

公事
くじ
中世、官物(かんもつ)、年貢(ねんぐ)と並ぶ主要な税目。本来「おおやけごと」と読まれたように、朝廷における政務や儀式・行事を意味し、それらに必要な経費は国庫でまかなうのがたてまえであった。平安時代後期になると財政難から「おおやけごと」の経費は臨時雑役(ぞうやく)として別途に徴収されるようになる。こうして公的な事業や職務の遂行に必要な物資を徴収する名目として公事が一般化する。公事には、内裏(だいり)造営、大嘗会(だいじょうえ)、伊勢(いせ)遷宮、官寺修造など勅命で全国的に課せられるもののほか、一宮(いちのみや)や国分寺の修理、河川改修など国衙(こくが)が一国内に課すものもあり、官人の往来に際しては送迎・接待も公事とされた。また中央官衙、貴族、武家、寺社も、それぞれ公的職務に携わっているとする立場から自己の所領・荘園(しょうえん)に対して公事を課し、家産経済を運営している。あらかじめ予想される1年間の儀式や行事の経費を恒例公事とよんで、徴収品目、量、納入期日を定め、計画的に賦課している。さらに必要に応じて臨時公事と称して恣意(しい)的な徴収もしばしば強行されている。官人や荘官・地頭(じとう)らも現地に臨んで公事を徴収したが、旅費、生活費から接待饗応(きょうおう)にまで及び、収取の拡大・強化が公事を名目に行われていることが注目される。公事の名目がしきりに用いられ、徴収品目もあらゆる物資から夫役(ぶやく)まで含まれることでしばしば万雑(まんぞう)公事などともよばれた。中世末期、いやでも避けがたいことといった意味で天然痘(てんねんとう)も「くじ」とよばれていたらしい。中世を通じて公事を名目とする徴収が繰り返されたのは、一方で公事を負担することが「おおやけごと」にかかわることと意識され、公民とみなされるための象徴的な意味合いが含まれていたものと考えられる。
 近世、公事は「おおやけごと」のなかでも、とくに裁判に用いられた。[富沢清人]
『網野善彦著『日本中世の民衆像』(岩波新書)』

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精選版 日本国語大辞典

おおやけ‐ごと おほやけ‥【公事】
〘名〙
① 朝廷、国家の政務。公務。おおやけわざ。⇔私事(わたくしごと)
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「おほやけごとも知り給はず、ただ斎(いもひ)精進(さうじ)をし給て」
② 宮中で行なわれる儀式。節会(せちえ)、競技、祭などの行事。公事(くじ)。おおやけわざ。⇔私事(わたくしごと)
※伊勢物語(10C前)八三「おほやけごとどもありければ、え侍はで、夕暮にかへるとて」
③ 租税、賦役(ぶやく)などの国家から課せられた義務的奉仕。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「一国(ひとくに)をおさむるに、おほやけごと、全(また)くなして」
④ 公的に限度の定まっている形式。通りいっぺんのしきたり。お役所仕事。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「内蔵寮(くらつかさ)、穀倉院など、おほやけごとに仕うまつれる、おろそかなる事もぞ」
⑤ 私事ではない、表立ったこと。主君に関する事柄。主人の事。⇔私事(わたくしごと)
※源氏(1001‐14頃)夕顔「手をとらへ給へれば、いと馴れて、疾く、『朝霧の晴れ間も待たぬけしきにて花に心をとめぬとぞ見る』と、おほやけごとにぞ聞えなす」

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くう‐じ【公事】
〘名〙 「くじ(公事)」の変化した語。
※金刀比羅本保元(1220頃か)上「あはれ節会(せちゑ)・印奏・除目(ぢもく)なんど公事(クウジ)の奉行には似ぬものを」

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く‐じ【公事】
〘名〙
① 公務。朝廷の儀式。
※続日本紀‐和銅五年(712)五月乙酉「又国司因公事京者」
※徒然草(1331頃)一九「公事ども繁く、春の急ぎにとり重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや」
② 荘園制で、年貢以外の雑税や夫役(ぶやく)を総称していう。荘園領主のほかに、預所、守護、地頭、下司、公文も賦課した。また、中世中期以後は銭貨で代納されるものが多く、公事銭、公用銭、公事別銭、公事役銭などと称した。公用(くよう)
※御成敗式目(1232)三条「而近年分補代官於郡郷、充課公事於庄保、非国司而妨国務
③ 訴訟およびその審理、裁判をいう。
※今昔(1120頃か)二「賢し人、出て公事(くじ)共定め申して、日暮方に家来たり」

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こう‐じ【公事】
〘名〙 (古くは「こうし」とも)
① おおやけの仕事。公務。⇔私事
※菅家文草(900頃)四・書懐奉呈諸詩友「公事聞人談説得、野情趁我寂寥来」
※政党評判記(1890)〈利光鶴松〉一「公事を議するの心を以て私事を議す可からず」 〔詩経‐大雅・瞻卬〕
② 公共の事柄。おおやけごと。公儀。
※治安警察法(明治三三年)(1900)三条「公事に関する結社又は集会にして政治に関せざるものと雖」

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旺文社日本史事典 三訂版

公事
くじ
②中世〜近世の訴訟・審理・裁判
③荘園制下における雑税
①朝廷の公務・儀式をいう。
江戸時代には主として民事訴訟をいう。公事方御定書の名称もこれに由来する。
土地を対象とする年貢に対し,人間を対象として課せられ,公に奉仕する課役を公事といった。関東御公事など。江戸時代には公事は小物成になったものが多い。

出典:旺文社日本史事典 三訂版
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