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偏見【へんけん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

偏見
へんけん
prejudice
ある対象,人,集団などに対して,十分な根拠なしにもたれる,かたよった判断意見などをさす。このような判断や意見は強固なものであり,それらが誤っていることを示す証拠をみせられても容易に変らない場合が多い。

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デジタル大辞泉

へん‐けん【偏見】
かたよった見方・考え方。ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断。「偏見を持つ」「人種的偏見

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

へんけん【偏見】
事実上の根拠なく,対象に対してもつ,なかば固定した意見。人それぞれ,生きてゆくうえで,そういうかたよった意見をもつ。強い偏見は,それをもつ人の人生活力をあたえる。偏見のない人生は,無気力な人生であろう。いかなる情熱も,たとえば〈恋愛〉をとってみても,その対象をあるがままに見すえることをむずかしくする。しかし,重大な困難は,偏見が,対象についての情報を刻々新しく得て軌道修正を行うことを不可能にしてしまうときにおこる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

へんけん【偏見】
かたよった見方。ゆがめられた考え方・知識にもとづき、客観的根拠がないのに、特定の個人・集団などに対して抱く非好意的な意見や判断、またそれにともなう感情。 -をいだく 人種的-

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

偏見
へんけん
ある種の事物、ことに特定の集団や個人に対して、客観的な事実の裏づけや合理的根拠が認められないのに人々が示す非好意的な偏った態度、信念ないし意見のこと。黒人やユダヤ人などに対するいわゆる人種的偏見は、その典型的なものである。
 偏見は、その対象との直接的な接触の経験に基づいて形成されるというより、しばしば自分の所属する社会集団内に存続しており、多くの人々に共有されているものが、年少のころから大人とのコミュニケーションを通して学習されることが多い。ひとたび偏見が形成されると、その対象に対してたとえ客観的に正しい情報が与えられても、選択的にゆがめて受け取られ、偏見は是正されずかえって強められてしまいがちである。また偏見は、パーソナリティー特性とも関係があり、権威主義傾向の者は強固な偏見をもちやすいとされている。偏見を見直させる有効な方法としては、実際に対象と直接接触する経験をもたせることがよいと考えられている。[辻 正三]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

へん‐けん【偏見】
〘名〙 かたよったものの見方・考え方。公平を欠いている意見。
※令義解(833)序「或専守家素、或固拘偏見
※談義本・風流志道軒伝(1763)五「火吹竹で釣鐘を鋳やうな偏見を説出し」 〔漢書‐杜鄴伝〕

出典:精選版 日本国語大辞典
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最新 心理学事典

へんけん
偏見
prejudice
偏見とは,特定の集団やその構成員に対する固定的な見方を指す概念であり,集団(グループ)をベースとして個人を判断することである。ただし明示的な集団が存在しない場合でも,たとえば「トラッド系のスーツを着こなしている人は,仕事ができる」といったように,共通の特徴をもつ人びとに対して画一的な見方をすることも偏見である。偏見と関連した概念としてステレオタイプstereotypeがある。ステレオタイプは,認知すなわちとらえ方を重視した概念であるのに対して,偏見は態度の側面を重視し感情的な要素を強調する概念である。しかし,近年の心理学研究では偏見とステレオタイプの境界は明確なものではなくなってきている。現実社会では偏見という用語が一般的であるが,心理的メカニズムを探究する認知志向的な心理学研究においては,ステレオタイプの方が広く用いられてきている。偏見やステレオタイプは,社会科学の創生期から扱われてきた大きなテーマである。集団をもとにして個人に対する判断を行なうことから,「個」を尊重し「個」に即して対応をすべきと考える現代先進社会の価値観に合致しないという点で問題を抱えている。

 さらに,偏見やステレオタイプは,特定の集団や人びとに対する不利益な扱いや排除といった差別discriminationという行動と結びつきやすいという問題を有している。偏見や差別と深く関連するスティグマstigmaとは,他者や他集団から付与された,ぬぐいがたいほどの否定的な価値づけのことを指す。もともとは,犯罪者などに対する身体上の「烙印(焼き印)」を表わすことばで,社会学者であるゴフマンGoffman,E.(1963)の著作によって心理的な概念となった。スティグマ化された人たちは,自己認知としても自己に対して否定的な価値を付与してしまうことによって,さらに大きな問題を引き起こす。

 なお,態度である偏見と行動である差別とは,態度が行動の基礎となっていることを考えると,両者は高い相関関係を示すことが予想される(態度と行動の一貫性attitude-behavior consistency)。しかし実証的研究の結果からは,両者の相関関係は一般にかなり弱いことが見いだされて大きな論争となった。現在では,エイゼンAjzen,I.(1991)による計画的行動理論theory of planned behaviorなどの態度理論によって,態度と行動との間に介在している行動意図などの媒介要因について探究がなされている。

【偏見の様相】 偏見を取り巻く社会環境は,ここ数十年で,制度的にも行動規範的にも劇的に変遷した。それに応じて偏見のあり方が変容し,偏見のとらえ方自体も変化した。さらに測定手法の進展も伴って,偏見という概念そのものが大きな変容と発展を遂げてきた。ここでは,いくつかの代表的な偏見概念について取り上げる。

 マッコーナーMcConahay,J.B.ら(1981,1986)は,あからさまで直接的にではなく,婉曲に表わされる人種主義を現代的人種主義modern racismとよんだ。これは,たとえば人種間での特性や能力の違いを主張するといったような,現在ではほとんど見られなくなった明示的な偏見ではなく,婉曲な形(たとえば「ある人種の人たちは,社会政策的に手厚すぎる保護を受けている」)で表わされる偏見のことである。嫌悪的人種主義aversive racismとは,意識的・意図的には,偏見は許容されるべきでないと認識し,偏見をもたないようにしていながら,非意識的には偏見的態度をもっており,状況手がかりが曖昧な状況下では偏見的態度(や差別的行動)を示すタイプの偏見を表わす。なお,嫌悪的人種主義は回避的人種主義とも訳される(Gaertner,S.L.,& Dovidio,J.F.,1986)。グリックGlick,P.とフィスクFiske,S.T.(1996,2001)は,性別にかかわる概念として善意的セクシズムbenevolent sexism(慈善的セクシズム,好意的セクシズムとも訳される)を提唱した。これは,マイノリティ・グループである女性に対して,表面的には好意的ではあるが,実はその好意的態度の背景には,伝統的な性差別的態度が横たわっているとする概念である。また,偏見に対する測定手法の面からも新しい偏見概念が提唱されてきている。潜在的偏見implicit prejudiceとは,自分自身では正確に内省introspectionすることができない非意識的な偏見のことを指す。潜在的偏見の測定にはさまざまな認知科学的手法が提供されているが,最も一般的で代表的な指標はグリーンワルドGreenwald,A.G.ら(1998)によって開発された潜在的連合テストimplicit association test(IAT)である。これは,特別なカテゴリー分け課題に要する反応時間を指標として,自身が意識できない潜在的態度implicit attitudeを測定する手法である。

【偏見の低減に向けて】 偏見の問題にアプローチしていく以上,偏見の低減を目標とすることは必然といえる。偏見を取り巻く環境が大きく変化してきた以上,偏見が低減するということの意味,そして偏見低減の手法も大きく変容してきた。オルポートAllport,G.W.(1954)の直接接触仮説contact hypothesis,direct contact hypothesisは,1970年代から1980年代にかけてアメリカで実施された強制バス通学の理論的根拠ともなり,さまざまな社会政策的な取り組みもなされてきた。直接接触が有効となるためには,①対等な立場での接触,②協力的な関係,③意味のある関係を築き上げるに十分な頻度,時間,親密さ,④社会的,制度的(法的)な支持,が必要であるとされている。アロンソンAronson,E.(1978)のジグソー学習法jigsaw methodは,協同学習cooperative learningの一形態として位置づけられる。ジグソーパズルを完成させるためには,すべてのピース(情報断片)が不可欠となるのと同様に,学習に参加しているすべてのメンバーが自分自身だけが所有している情報を相互に提供し合うことによってのみ課題達成が導かれるという学習課題を活用した教育プログラムである。

 近年の偏見研究では,心理学研究が認知科学的な進展を遂げ,表象representationという視点を取り込むことが可能となった。このことから,集団接触や集団間関係における集団表象の視点に立脚し,偏見を低減するためにはカテゴリー化categorizationされた表象を明確な表象として抱かないようにするという方策が考えられてきた。ブリューワーBrewer,M.B.とミラーMiller,N.(1984)は,脱カテゴリー化モデルdecategorization modelを提起し,カテゴリーに依存せずに個人としてとらえることを重視した。ガートナーGaertner,S.L.ら(1989)は,既存のカテゴリーを包摂するような上位のカテゴリーに注目させることを重要視した再カテゴリー化モデルrecategorization modelを主張している。その一方で,ヒューストンHewstone,M.とブラウンBrown,R.(1986)は,それぞれのカテゴリーが補完的で異なった役割をもって相互協力を行なうことを重視し,下位カテゴリー化モデルsubcategorization modelを提唱している。さらにドワースDoise,W.(1978)は,特定のカテゴリーの顕現性を低減するために別のカテゴリー(カテゴリー次元)を顕在化させることの有用性を主張し,交差(交叉)カテゴリー化モデルcrossed categorization modelを主張している。またアーロンAron,A.ら(1991)は,自己という表象がさまざまな他者表象と包摂関係をもちうることを実証し,自己と他者の内包関係inclusion of other in the self(IOS)という概念を提唱した。家族や親しい友人といった重要な他者は,その表象が自己表象と不可分に包摂されているために,たとえばその他者の苦悩や失敗を自身のもののように感じることになる。この考え方は,ライトWright,S.C.ら(1997)の拡張接触仮説extended contact hypothesisに取り入れられていく。拡張接触仮説とは,偏見の対象となっている集団の構成員と自分自身とが直接的な接触をもつことがなくても,自分と同じ集団に属している内集団in-groupの成員,あるいは自分と近しい人物が,偏見対象となっている集団の構成員と接触をもち,その接触を通じて親しい関係性が構築されている場合には,その集団に対する偏見が低減されるという考え方を指す。さらに近年の偏見研究では,潜在的連合テスト(IAT)に代表される潜在指標によって測定される潜在的偏見という概念が広く展開されてきている。このことを受けて,潜在的偏見と顕在的偏見の相互の関係性,潜在的偏見が偏見の表出や差別行動全体の中でどのような役割を果たしているのか,さらには潜在的偏見を変容させるにはどのような方策が有効かについて研究が進められている。 →集団間関係 →態度
〔潮村 公弘〕

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