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倫理学【りんりがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

倫理学
りんりがく
ethics
ギリシア語のエートス ēthos (習俗,性格) に由来し,個人的にはよきエートスの実現,社会的には人間関係を規定する規範,原理の確立を目的とする学問。時代,社会によっていくつかの立場に分れる。まずエピクロス学派にみられるように道徳の規範を利己,主観に求める傾向や,またこれに隣接して実存の主体的なあり方を問題とする実存哲学の倫理学がある (→実存主義 ) 。これに対して道徳の規範を先駆的なものに求める傾向はカントに代表される。さらにギリシアの懐疑主義 (→懐疑論 ) に始る懐疑主義的傾向があり,現代では論理実証主義の場合のように,倫理学の命題そのものの成立の可否を問い,それを情緒的な表白として把握する立場もある。東洋では仏教思想,老荘の無の思想,孔孟の仁の思想などを中心に,倫理思想の展開がみられる。

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デジタル大辞泉

りんり‐がく【倫理学】
《ethicsの井上哲次郎による訳語共同体における人と人との関係を律する規範・原理・規則など倫理・道徳を研究する哲学の一部門。

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世界大百科事典 第2版

りんりがく【倫理学 ethics】
倫理学は倫理に関する学である(〈倫理〉〈倫理学〉の語義については〈道徳〉の項を参照されたい)。それは古代ギリシア以来歴史の古い学であり,最初の倫理学書といえるアリストテレスの《ニコマコス倫理学》と,近代におけるカントの倫理学とによって,ある意味では倫理学の大筋は尽くされているといえなくもないし,また倫理学の長い歴史を踏まえて,その主題とされている事柄,たとえば義務などについて,一般に認められている考え方を述べることは可能である。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

りんりがく【倫理学】
〔井上哲次郎による ethics の訳語〕
道徳・倫理の起源・発達・本質などを研究対象とする学問。その中心問題は道徳規範と善の問題である。論理学(または認識論)・美学とともに哲学の基本的部門とされてきた。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

倫理学
りんりがく
ethics
世間で通用している道徳をそのまま受容するのではなく、それについて哲学的な反省を加え、どのような原理に従って生きるのが真に道徳的な生き方であるかを探究する学問。あるいは同じことだが、倫理学とは、人間はいかに生きるべきかを考え、人間らしく生きるためにはどのような生き方を選んだらよいかを探究する学である、ともいえよう。そうした意味では、ソクラテスの場合のように、倫理学はもともと哲学と一体であるが、アリストテレスによる理論学と実践学の区別は、近世以降、哲学内部における理論哲学と実践哲学の区別として定着し、今日では倫理学は実践哲学として、哲学の一部門とみなされるのが普通である。[宇都宮芳明]

道徳を道徳たらしめる原理

もっともこれとは別に、レビ・ブリュールやデュルケームのように、倫理学は習俗をも含めて道徳を社会的な一現象としてとらえ、その機能や構造を実証的方法によって考察する社会科学であるべきだとする見方もある。また倫理学は従来の規範倫理学のように、ある種の規範を設定したり根拠づけたりするのではなく、もっぱら「よい」とか「べき」といった道徳言語の意味や用法を価値中立的立場から分析し、それらの言語を含む文の論理的構造を明らかにすべきだといった、いわゆるメタ倫理学の見方もある。しかし道徳現象を他の現象から区別したり、道徳言語を他の言語から区別したりするためには、それに先だってすでに道徳とは何かが知られていなければならない。そうした意味で、倫理学の中心課題は、依然として道徳を道徳たらしめている原理の探究にあるといえるであろう。[宇都宮芳明]

三つの見方

ところで、道徳の原理に関しても、現代の倫理学の内部でいくつかの異なった見方がある。
 その一つは、道徳は人間固有の本性に根ざしており、したがっていつの時代にも変わらない普遍的な道徳が存在するとみる立場で、その代表としては功利主義の倫理があげられる。すなわち功利主義によると、人間は快を求め苦を避けるという本性をもつ。人間がこうした本性をもつ以上、道徳的によい行為とは、できるだけ多くの快を人々にもたらすか、あるいは人々からできるだけ多くの苦を取り除く行為である。いわゆる「最大多数の最大幸福」が説かれる所以(ゆえん)である。
 これは、快を求めるという人間の自然的本性に道徳の基礎を置く点で、自然主義的倫理学といってよいが、他方第二の立場として、人間は歴史とともに変化する存在であり、したがって道徳も歴史とともに変化し、永遠不変な道徳は存在しないとみる立場がある。これは歴史的相対主義の立場であって、実証主義の倫理学や、これまでの道徳はいずれも階級道徳であり、階級の利益に奉仕するものだとするマルクス主義の倫理学は、この立場に属するとみてよいであろう。
 そして第三に、個々の人間のあり方をあらかじめ規定しているような普遍的な人間本性は存在せず、したがって普遍的な道徳もまた存在しないとする実存主義の見方がある。たとえばサルトルによると、人間各自の実存は本質に先だつものとして自由であり、既成の価値にとらわれずに自由に自己を創造していく行為が道徳的に善である。普遍的な道徳法の存在を否定し、そのつどの状況に応じた決断を重視する状況倫理もまた、この立場にあるといえよう。
 なお付け加えると、普遍的な道徳の存在を認める第一の見方はギリシア以来の伝統的な見方であり、道徳の歴史的相対性を説く第二の見方は近世の産物であり、個別的な実存の倫理を重視する第三の見方は現代に生じた見方である。しかし現代ではこの三つの見方がそれぞれなお有力な見方として鼎立(ていりつ)しているのが現状である。[宇都宮芳明]

人間の「間」の領域と倫理

日本では、和辻哲郎(わつじてつろう)が、倫理学は「人の間」としての「人間」の学であるとして、独自な体系を樹立した。人間存在の根本構造は個(個人)と全(社会)の二重構造であり、それは全の否定によって個が成立し、個の否定によって全が全に還帰するという、二重の否定運動によって顕現する。道徳的善悪に関していえば、個が全を否定して全から背き出るのが悪であり、個が自らをふたたび否定して全に戻るのが善である。ここには二重構造といっても、個に対する全の優位が示されているが、しかしこうした和辻倫理学とは別に、人間を文字どおり「人の間」にあるものとしてとらえ、そうした視点から道徳の原理を探ることも可能であろう。道徳的善悪は、人間の人間に対する行為、自己の他人に対する行為のうちにもっとも明瞭(めいりょう)な形で現れる。とすれば、道徳の原理は人と人とをかけ渡す「間」の領域にあるとみることができる。それをかりに人「間」性とよべば、道徳の原理の解明にとって必要なのは、人間本性の解明ではなく、むしろこうした人「間」性の解明である、といえるであろう。[宇都宮芳明]
『和辻哲郎著『倫理学』上下(1965・岩波書店) ▽岩崎武雄著『倫理学』(1971・有斐閣) ▽宇都宮芳明著『人間の間と倫理』(1980・以文社)』

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精選版 日本国語大辞典

りんり‐がく【倫理学】
[1] 〘名〙 (ethics に井上哲次郎があてた訳語) 社会における人間と人間との関係を決める規範・原理・規則など道徳・倫理を研究し、またそうした道徳現象を記述する学問。〔哲学字彙(1881)〕
[2] 哲学書。三巻。和辻哲郎著。昭和一二~二四年(一九三七‐四九)刊。解釈学的な方法を駆使して、倫理学は人間の主体的な自己を保ちながら、人と人との間の間柄の秩序を維持するという人間存在論であること、存在の時間性・空間性は具体的には歴史性・風土性であることを究明。存在の究極の根源に「空(絶対空)」を設定した独創的体系的な論述。

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