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侵略【しんりゃく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

侵略
しんりゃく
aggression
元来は,一国が他国に対する要求を貫徹するために,武力行使によって事態を変更せしめることをいう。国連憲章では,体系的な侵略の定義は行われず,侵略の存在の決定は安全保障理事会の自由裁量にゆだねられていた。しかし 1974年 12月に総会本会議は正式に「侵略の定義」を決議した。この定義は適用範囲を国連憲章の枠内に限り,安全保障理事会の判断の指針となるべきものである。これによると侵略とは,国家が他国の主権,領土保全もしくは政治的独立に対してなす武力行使,または国連憲章と両立しない他の武力行使である,としている (1条) 。侵略となりうる行為は,(1) 兵力による他国領域への侵入もしくは攻撃,またはその結果生じる軍事占領もしくは武力行使による他国領域の併合,(2) 兵力による他国領域に対する爆撃または武器の使用,(3) 兵力による他国の港または沿岸の封鎖,(4) 兵力による他国の陸海空軍または船隊もしくは航空機隊に対する攻撃,(5) 合意に基づき他国にある兵力の駐留条件に反する使用または期限後の駐留延長,(6) 第三国に対する侵略行為のために自国領域が使用されるのを許容すること,(7) 以上の行為に相当する武力行為をなす武装団,集団,不正規兵もしくは傭兵の派遣,またはそのような活動への実質的関与,である (3条) 。これら以外の行為も安全保障理事会は侵略行為となすことができる (4条) 。憲章に反して最初になされる武力行使は侵略行為の一応の証拠を構成し,安全保障理事会は,関連する事情を考慮して独自の判断を下すことができる (2条) 。このほか,侵略の結果としての領域取得の否認 (5条) ,定義が人民の自決権を害さないこと (7条) に関する規定がある。安全保障理事会が侵略行為の存在を決定すると,侵略国に対しては軍事的・非軍事的強制措置がとられ (国連憲章 39~42) ,加盟国はこれに協力し侵略国に援助を与えてはならない (同2条5項) ことになっている。

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デジタル大辞泉

しん‐りゃく【侵略/侵×掠】
[名](スル)他国に攻め入って土地や財物を奪い取ること。武力によって、他国の主権を侵害すること。「隣国を―する」「―戦争」

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

しんりゃく【侵略 aggression】
自衛措置のような正当な理由もなしに,武力攻撃によって他国領土を剝奪すること。何をもって侵略行為とするかの具体的な内容を明示することは困難な問題である。侵略側は決まって,自己の侵略行動を否定したり,また自衛勢力均衡保持のためなどとして正当化したり,あるいは被侵略側に責任を転嫁したりする。後述のように国連の安全保障理事会は,武力紛争が発生した場合,どちらが侵略国で,どちらが被侵略国(自衛権行使国)であるかを認定できることになっているが,その認定は事実上,政治的要素拒否権発動によって容易ではない。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

侵略
しんりゃく
aggression
侵略が国際法上で重要な概念となったのは、20世紀になって戦争が違法とされるようになってからのことである。第一次世界大戦後のベルサイユ条約で、連合国がドイツおよびその同盟国の「攻撃(aggression)ニ因(よ)リテ強ヒラレタル」戦争の結果、被ったいっさいの損害について責任がドイツおよびその同盟国の側にあると規定された(第231条)のは、その最初の例である。
 国連憲章は、安全保障理事会が侵略行為の存在を決定し、それに対処するため勧告または強制措置をとることとしているが(第39条)、侵略そのものについては定義をしていない。1933年にソ連が近隣諸国との間に侵略定義条約を締結したことはあるが、国際社会一般ではこの種の条約は結ばれていない。しかし、国際連合では1950年の第5回総会以来、侵略の定義が問題として提起され、53年にはそのための特別委員会が設置されて、検討が続けられた。その結果、1974年に国連総会で「侵略の定義」と題する決議が採択されている。
 この国連総会決議は、「侵略とは、この定義に定められているように、一国が他国の主権、領土保全もしくは政治的独立に対して武力を行使すること、又は国際連合憲章と両立しない他のいずれかの方法により武力を行使することをいう」(第1条)と規定し、「憲章に違反して武力を最初に行使することは侵略行為の明白な証拠となる」(第2条)としている。それに続いて決議は侵略行為を例示し、一国の軍隊による他国領域への侵入もしくは攻撃、軍事占領や領土併合、他国の領域に対する爆撃や武器の使用、軍隊による他国の港もしくは沿岸の封鎖、他国の陸・海・空軍または商船隊・航空隊に対する攻撃のほか、他国に駐留する軍隊を所定の条件に違反して使用することや、所定の期間後も撤収しないこと、他国の使用に供した領域をその国が第三国に対する侵略行為のために使用するのを許す行為などを例示している(第3条)。政治的、経済的、軍事的その他のいかなる理由も侵略を正当化することはできない(第5条)。もっとも、人民の自決、自由および独立に対する権利は害されない(第7条)。いいかえれば、植民地や人種差別体制下の人民の解放闘争は侵略ではない。このように、決議はかなり具体的に侵略を構成する諸行為を列挙しているが、それ自体法的拘束力をもつものではない。1998年にローマで開催された政府間外交会議で採択された国際刑事裁判所規程でも、この裁判所による処罰の対象となる犯罪として、名目的に「侵略の罪」があげられてはいるが(第5条1項)、改正手続によってその定義などが新たに規定されるまで、裁判所の審理はなされないとしている。[石本泰雄]
『石本泰雄「戦争と現代国際法」(高野雄一編『現代法と国際社会』所収・1965・岩波書店) ▽筒井若水著『戦争と法』(1976・東京大学出版会)』

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