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伊勢物語【いせものがたり】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

伊勢物語
いせものがたり
平安時代中期の歌物語。作者,成立年未詳。在原業平 (ありわらのなりひら) を思わせる男を主人公とした和歌にまつわる短編歌物語集。流布本では 125の章段から成り,初冠 (ういこうぶり) から臨終まで生涯をたどる形に配列。『古今集』以前に成立していたが,その後次第に章段の増補や改編が行われて成長していき,現在みる形になったのは 11世紀以後。流布本は藤原定家の校訂したものであるが,かなり組織の異なる塗籠 (ぬりごめ) 本なども伝わる。初め業平の詠歌を中心につくられた物語が,そのうちの二条后や斎宮との禁じられた恋の絶唱から,やがて好色者の物語として,業平とは無関係な庶民の純愛の物語などが増補されていったものであろう。抒情的な作品の代表として古来広く愛され,近代にいたるまで多くの影響作を生んだ。

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デジタル大辞泉

いせものがたり【伊勢物語】
平安時代の歌物語。作者・成立年未詳。多く「むかし、男(ありけり)」の冒頭句をもつ125段から成り、在原業平(ありわらのなりひら)と思われる男の生涯を恋愛を中心として描く。在五が物語。在中将。在五中将日記。

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世界大百科事典 第2版

いせものがたり【伊勢物語】
平安前期の歌物語。現存する歌物語中最古の作品。古くは《在五が物語》《在五中将日記》などの異称もあった。書名の由来も,伊勢(伊勢御(いせのご))の筆作にかかること,〈伊勢〉は〈えせ(似而非)〉に通ずること,巻頭に伊勢斎宮の記事があること,などをそれぞれ根拠に挙げる諸説があったが,なお不明である。作者も上の伊勢の説のほか,在原業平自記説もあり,紀貫之説も近年有力となりつつあるが,これまた特定は困難であろう。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

いせものがたり【伊勢物語】
歌物語。一巻。作者未詳。現在のような形になったのは、平安中期か。百二十余の短い章段からなり、在原業平ありわらのなりひららしい人物の恋愛を中心とした一代記の構成をとる。源氏物語・古今集とともに、後代への影響がきわめて大きい。在五が物語。在中将。在五中将の日記。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

伊勢物語
いせものがたり
平安前期の歌物語。別称に『在五(ざいご)が物語』『在五中将の日記』(「在五」は在原(ありわら)氏の五男業平(なりひら)のこと)。[鈴木日出男]

内容

それぞれの冒頭が「昔、男……」と始まり、その多感な「昔男」の恋愛、友情、流離、別離など多岐にわたる内容が、和歌を中心に語られる小編の物語集。その章段は、流布本(定家本(ていかぼん))で125段だが、伝本によって多少増減がある。この「昔男」は在原業平に擬せられてもいて、その「初冠(ういこうぶり)」(元服)の段から、死を自覚した「辞世」の段に至る一代記的な構成をとっている。しかし配列上、厳密な年代順でもなければ、各章段相互の関連も緊密でない。詠まれている和歌が業平の実作という点から、とくに業平の実話ともみられる章段に、「西の対(たい)」「芥河(あくたがわ)」などの段の二条后高子(にじょうのきさきたかいこ)との許されぬ恋、「狩の使」などの段の斎宮(さいくう)との禁断の恋、また「渚(なぎさ)の院」などの段の落魄(らくはく)の惟喬(これたか)親王との主従関係を超えた親交、「東下(あずまくだ)り」などの段の東国への漂泊に生きる者のわびしく孤独な話、あるいは「さらぬ別れ」の段の老母との死別を悲嘆する話などがある。しかし近時の研究では、実際の業平は東国に漂泊したこともなければ、二条后や斎宮との恋愛関係もなく、惟喬親王との親交も姻戚(いんせき)関係以上ではなかったとして、その実像と虚像が峻別(しゅんべつ)されるようになった。したがって、この物語は、業平実作の和歌を主軸にしながらも、業平の実像をはるかに超える虚構の広がりをもっている。たとえば、田舎(いなか)の少年少女の恋とその結末を語る「筒井筒(つついづつ)」の段の話、夫の出奔後に再婚した女が元の夫に巡り会う運命の皮肉を語る「梓弓(あずさゆみ)」の段の話など、地方的、庶民的な章段も含まれている。この物語には和歌が209首(流布本による)含まれているが、そのうち、業平実作とみられるのは35首。ほかは『万葉集』『古今集』『後撰(ごせん)集』『拾遺(しゅうい)集』『古今六帖(ろくじょう)』などの、業平以外の和歌を「昔男」の作に仕立てていることになる。しかし部分的に業平実作の和歌が含まれるところから、「昔男」が業平その人であるという印象を与える。また、この「昔男」という呼称が不特定の人称であるところから、一面では業平に即しながらも一面ではその実像から離れることもできるという独自な方法たりえている。それと関連して、一段一段の話も一面では関連しあいながら、一面では独立性をもちえてもいる。また作中の和歌は、単に情緒を添える程度ではなく、物語の中心に据えられて主題性を担い、作中人物たちが和歌を詠むという行為に重大な意味が込められている。しばしば、和歌を詠み上げるという行為自体が、その人物の存在の証(あかし)とさえなっている。したがって散文(詞章)も、和歌の叙情性を極限的に高めるべく、時と人と事柄の推移を的確に語り進める簡潔な表現となっていて、歌集一般の詞書(ことばがき)が詠歌の経緯を説明する固定的な文体であるのとは異なっている。ここでは、中心をなす和歌へ向かって推移する求心的な文体を形成している。[鈴木日出男]

成立

業平の死没(880)後、原『業平集』の成立が推定され、『古今集』や原『伊勢物語』はそれを資料としたとみられる。その原『伊勢物語』はほぼ業平の歌だけからなると推定され、10世紀末ごろの伝本でも50段たらずの小規模な物語であったらしい。11世紀以後に大幅な増補が行われて現在の形態に至る。作者については古来、在原、紀家系の人物が想定され、一説には文体上の類似などから紀貫之(きのつらゆき)ともされる。増補者についてはまったく不明である。[鈴木日出男]

享受

平安時代末からとくに歌人に愛読研究され、鎌倉時代初頭の藤原定家はこれの書写や校訂を幾度も行っている。室町時代になると、連歌師(れんがし)もこれに加わり、注釈も盛んに行われた。細川幽斎(ゆうさい)『伊勢物語闕疑抄(けつぎしょう)』がその代表的著作。江戸時代の古典普及期には、『源氏物語』とともにこれが尊重され、板本の出版が急増して、注釈類もおびただしくなった。北村季吟(きぎん)『伊勢物語拾穂抄(しゅうすいしょう)』、契沖(けいちゅう)『勢語臆断(せごおくだん)』、荷田春満(かだあずままろ)『伊勢物語童子問(どうじもん)』、賀茂真淵(かもまぶち)『伊勢物語古意』、藤井高尚(たかなお)『伊勢物語新釈』などである。中世までの歌人、連歌師たちの享受では「昔男」がそのまま業平の実録として受け止められたが、近世の春満、真淵の注釈あたりからは業平の事跡に限らぬ虚構の物語とみられるようになったのである。[鈴木日出男]

伝本

次のような5種に分類される。(1)百二十五段本(流布本。藤原定家の書写系統やその類似本。ただし定家直筆の本は今日伝わらない)。(2)広本((1)よりも章段数が少ない)。(3)略本(塗籠(ぬりごめ)本とも。章段数がもっとも少ない)。(4)真名(まな)本(漢字だけで表記された特殊な伝本)。(5)別本((1)~(4)に属さないもの)。[鈴木日出男]
『大津有一・築島裕校注『日本古典文学大系 9 伊勢物語』(1957・岩波書店) ▽福井貞助校注・訳『日本古典文学全集 8 伊勢物語』(1972・小学館) ▽渡辺実校注『新潮日本古典集成 伊勢物語』(1976・新潮社) ▽池田亀鑑著『伊勢物語に就きての研究 校本篇・研究篇・付録「伊勢物語版本聚影」』(1933/校本篇・研究篇 再刊・1958・有精堂) ▽片桐洋一著『伊勢物語の研究 研究篇・資料篇』(1968、1969・明治書院)』

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精選版 日本国語大辞典

いせものがたり【伊勢物語】
[一] 平安時代の歌物語。作者不明。現存本は、ある男の初冠(ういこうぶり)から辞世の歌に至る約一二五の章段より成る。「古今集」以前に存在した業平の歌物語を中心にしてしだいに他の章段が付加され、「後撰集」以降に現在の形になったかという。在五が物語。在五中将日記。在中将。勢語。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典

伊勢物語
いせものがたり
歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
享保8.1(大坂・竹島座)

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伊勢物語
(通称)
いせものがたり
歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
箱伝授伊勢物語 など
初演
宝永8.11(大坂・篠塚座)

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